憶測ではあるが、金正恩は亡くなったのではないかと思われる。

権力の空白を生まないように、その事実は秘匿されているのかもしれない。

 

そして、代わりに、金正恩の側近中の側近である妹金与正への権力集中が、密かに始まっている。

それに伴い、金与正の権力に、強引に最高指導者の権威を付与する作業が、北朝鮮国内で急ピッチで進んでいるようだ。

 

北朝鮮がもっとも恐れているのは、韓国に吸収されるかたちでの南北朝鮮統一であろう。

それを阻止する者こそが、軍も官も民も、誰もが認める、北朝鮮の権力の正統な継承者たりうるのだ。

また、その後継者は、金日成の直系の血筋(白頭山血統)でなければならない。

 

それゆえ、金王朝の権威を護持することは、北朝鮮の体制維持の要である。

そのため、かなり唐突ではあるが、金与正が、韓国への対決姿勢を鮮明に打ち出し、金正恩の後継者として、外交の前面に出てきたのだろう。

 

とは言え、金与正は、まだ32歳の若い女性である。

そして、中国大陸や朝鮮半島では、因習的な男尊女卑の意識が、日本では考えられないほど根深い。

 

特に、北朝鮮では、今もって、黙って男の言うことをきく従順で忍耐強い女性が良い女性とされる。

だから、北朝鮮では、伝統的に、「女性は指導者には向かない」と考えられているようだ。

 

そうした背景から、金与正が確固たる権力を握るためには、時として、これまでの男性指導者たちよりも、よりいっそう苛烈な行動が求められることもあるだろう。

それが、今回の韓国への激しい対応に繋がっていると考えられる。

 

はたして金与正は、女帝として立つことができるだろうか。

それはわからない。

 

しかしながら、ほかに帝王として立ちうる人材が、北朝鮮では見当たらないというのも事実であるようだ。