今日、隣の山が消えた。
一夜にして消えたわけではない。
何週間も、何ヶ月もかけて、山は、少しづつ削り取られ、崩され、運び出されて、とうとう跡形もなく消え去った。
パワーショベルとブルドーザーとダンプカーが、大木も巨岩も何もかも運び去り、綺麗に更地になったのだ。
鬱蒼と茂っていた木々、深い緑の空間が、視界から掻き消え、一つの風景がなくなってしまった。

あの小山は、ここから見える一番素敵な存在で、人工的な住宅地の中で、唯一、無作為の自然を感じさせてくれるものだった。
大きなもくまおうの木が、何本も立っていた。
見ているだけで、なぜかホッとさせられたのだけど。
今はもうない。

代わりに、だだっ広い真っ平らな空き地が生まれた。
「建設予定地」という立て札が、その空き地の端に突き刺さっているだけの、殺風景なこげ茶色の空間が、ぽっかりと生まれたのだ。
一夜で出現したわけでもないのに、その風景の改変は、突然の暴力的な出来事のように思える。
もう、喧しいセミの鳴き声を聞くこともない。
カブトムシやクワガタが、我が家の階段に不時着することもない。
テントウムシが、我が家の庭に迷い込んでくることもないだろう。
すべて消えてしまった。