リオデジャネイロ・オリンピックは、メダル獲得数も史上最多ということで、日本選手の活躍が各競技で非常に目立つ大会でした。中でも、陸上のトラック競技では史上初のメダルとなった男子4×100mリレーは快挙でした。
現在、100m走の記録は、基礎体力や瞬発力に優れる黒人に絶対にかなわないと考えられています。実際、今回、決勝に残った8チームのうち、中国と日本を除けば、残りの6チーム(ジャマイカ・アメリカ・カナダ・ブラジル・イギリス・トリニダード=トバゴ)は全員黒人です。
それにも関わらず、日本チームは、最終走者のウサイン・ボルトにバトンが手渡されるまで、トップの快走を見せ、最後の100mでもアメリカ・カナダに競り勝って、見事に2位でゴールインしたのです。
日本は、個々の力では劣っていても、技術とチームワークで克服し、見事な結果(アジア新記録)を納めました。

〈男子400mリレー〉
日本(銀)
ケンブリッジ飛鳥 179㎝/79kg 10秒10
桐生祥秀 175㎝/65kg 10秒01
山県亮太 176㎝/70kg 10秒05
飯塚翔太 185㎝/80kg 10秒22
平均 179㎝/74kg

ジャマイカ(金)
アサファ・パウエル 190㎝/88kg 9秒72
ヨハン・ブレーク 180㎝/76kg 9秒69
ニケル・アシュミード 183㎝/77kg 9秒90
ウサイン・ボルト 196㎝/94kg 9秒58
平均 187㎝/84kg

アメリカ(3位でゴールするも失格)
タイソン・ゲイ 180㎝/79kg 9秒69
ジャスティン・ガトリン 185㎝/79kg 9秒74
トレイボン・ブロメル 175㎝/71kg 9秒84
マイク・ロジャース 176㎝/76kg 9秒85
平均 179㎝/76kg



さらに、女子バトミントンでの日本選手の活躍も、素晴らしかったです。特に、ダブルスの世界ランク1位の〝タカマツ〟ペアによるバドミントン史上初の金メダルは快挙でした。このペアは、2〜4位までのペアに比べて、平均身長で10㎝以上の差がありました。特に、決勝の相手だったデンマーク・ペアとは、平均で18㎝もの差があったのです。さらに、カミラ選手と松友選手では24㎝の差です。参加ペアの中でも最も小さいタカマツペアと、最も大きいデンマークペアとの試合は、まるで、大人と子どもの戦いのようで、向き合った時の圧力は相当なものがあったでしょう。その圧力をはねのけて、最後の5連続得点での逆転勝利を勝ち取ったのですから、本当にたいしたものです。

〈女子バドミントン・ダブルス〉
日本(金)
高橋礼華 165㎝/60kg(奈良県橿原市出身)
松友美佐紀 159㎝/50kg(徳島県板野郡藍住町出身)
平均身長162㎝

デンマーク(銀)
クリスティナ・ベデルセン 178㎝
カミラ・リターユヒル 183㎝/71kg
平均身長180.5㎝(+18.5)

韓国(銅)
鄭径恩 172㎝/59kg
申昇瓚 172㎝/63kg
平均身長172㎝(+10)

中国(4位)
唐淵渟 175㎝/70kg
于洋 168㎝
平均身長171.5㎝(+9.5)


また、今回は女子バスケットボールチームの活躍も目立ちました。予選では、世界ランク16位の日本チームが、ベラルーシ、ブラジル、フランスと上位のチームを次々と破って決勝リーグへと勝ち進み、史上初の8強入りを果たしました。また、負けたとはいえ、世界ランク2位のオーストラリアを大いに苦しめました。土壇場で逆転を許しましが大健闘でした。
準々決勝では、世界ランク1位のアメリカと対戦し、110対64と力負けしました。けれども、参加チーム中最も世界ランクが低く、最も小さい日本チームが、最も平均身長の高い世界ランク1位のアメリカと、準々決勝で戦ったのですから、それ自体、快挙と言えます。

〈女子バスケットボール〉
16位日本 平均身長177㎝

1位アメリカ 平均身長188㎝(+11)
2位オーストラリア平均身長186㎝(+9)
4位フランス 平均身長183㎝(+6)
7位ブラジル 平均身長182㎝(+5)
10位ベラルーシ 平均身長183㎝(+6)
*グアム 平均身長165㎝(−12)


前回のロンドン・オリンピックで、28年ぶりで銅メダルを獲得した女子バレーボールチームは、8強入りは果たしたものの、準々決勝でアメリカに敗れ、今回はメダルをのがしました。けれども、バスケ同様に、日本チームは参加12カ国中唯一平均身長170㎝台の最小チームです。その最小チームが世界の巨人たちと戦うさまは、一寸法師と鬼の戦いを見ているようで、いじらしく感じてなりません。また、個別の力や技量では劣っていても、ペアやチームの力で劣勢を覆していく姿には、本当に感動させられます。

〈女子バレーボール〉
日本 平均身長176㎝(全国平均男性171㎝/女性158㎝)

中国 平均身長189㎝(全国平均男性172㎝/女性160㎝) +13(+2)
セルビア 平均身長189㎝(全国平均男性182㎝/女性167㎝)+13(+9)
アメリカ 平均身長186㎝(全国平均男性179㎝/女性165㎝)+10(+7)
オランダ 平均身長187㎝(全国平均男性184㎝/女性171㎝)+11(+13)
ブラジル 平均身長184㎝(全国平均男性175㎝/女性165㎝)+8(+7)
韓国 平均身長180㎝(全国平均男性174㎝/女性160㎝)+4(+2)
ロシア 平均身長188㎝(全国平均男性176㎝/女性168㎝)+12(+10)
アルゼンチン 平均身長182㎝(全国平均男性173㎝/女性161㎝)+6(+3)
カメルーン 平均身長181㎝(全国平均男性171㎝/女性161㎝)+5(+3)
プエルトリコ 平均身長181㎝(全国平均男性㎝/女性㎝)+5
イタリア 平均身長184㎝(全国平均男性177㎝/女性168㎝)+8(+10)



それにしても、どのスポーツでも、日本人選手は、世界の強豪の中に入ると、極端に背が低いです。特に、背丈がチームの強さに強く関係するバレーやバスケなどの球技において、他国チームと激しく差があるのが目立ちます。
しかし、どこの国でも、できれば長身の選手を揃えたいのは人情です。それが、ここまで身長でチームに差がつくというのは、長身の選手を集めたくても集められない事情があるということです。つまり、長身の選手がいないわけです。本来、そんなに日本人は、背が低いのでしょうか?
そこで調べてみると、確かに日本人の平均身長は、世界の中でもさほど高い方ではありません。やはり、国全体の身長が低いから、選手も低くなるのです。

〈その他、国別全国平均身長〉
ドイツ・スペイン・ポーランド(男性178㎝/女性165㎝)+7
フランス(男性176㎝/女性163㎝)+5
イギリス(175㎝/162㎝)+4
モンゴル・ジャマイカ(男性172㎝/女性161㎝)+2
台湾・香港(男性172㎝/女性159㎝)+1
日本(男性171㎝/女性158㎝)±0
タイ(男性170㎝/女性159㎝)±0
マレーシア(男性170㎝/女性157㎝)−1
ベトナム(男性166㎝/女性155㎝)−4
インド(男性166㎝/女性153㎝)−5
北朝鮮(男性165㎝/女性154㎝)−5
フィリピン(男性163㎝/女性152㎝)−7
インドネシア(男性158㎝/女性143㎝)−14



身長の決定要因は三つ考えられます。そのうち最大の要因は、栄養・食事です。当然のことながら、栄養不良では身長は伸びません。従って、栄養の摂取が容易な先進国ほど身長が伸びる傾向があります。欧米諸国の身長が高いのは、主に食べ物の問題と考えられます。また、日本人の身長も、江戸時代には非常に低かったのが、明治以降、順調に伸び始め、平成になっても、さらに伸びてきて、現在の身長になったのです。
第二の要因は緯度です。ベルクマンの法則によると、高緯度の寒冷地ほど身長が伸びる傾向があります。恒温動物の場合、同じ種の動物でも、寒冷地帯では身体が巨大化するのです。体積に比して表面積を小さくすることで、体温が奪われるのを防ぐのだと言われています。ですから、赤道直下のインドネシアが最も身長が低く、高緯度のオランダ・ロシア・ドイツ・ポーランドなどが背が高いというのも、理屈にあっている気がします。日本の中でも、沖縄の身長が低く、青森の身長が高いというのは、緯度との関わりを思わせます。
一方で、同じ民族の韓国と北朝鮮における7〜8㎝の差は、寒冷な北朝鮮の方が、逆に極端に低くなっていますから、完全に栄養の違いが差となったものと考えられます。寒冷地であっても、栄養分が乏しければ、身長は伸びにくいということですね。
しかし、寒冷なドイツと温暖なスペインの身長が変わらないとか、温帯で栄養のゆきとどいた日本と熱帯で栄養が不足しがちなタイの身長が変わらないというのは、どうでしょうか。モンゴルやジャマイカは、日本より栄養状態が悪いですし、ジャマイカなどは相当暑いです。それでも、日本の方が平均で2㎝低いのです。日中韓の東アジア三国の中でも、最も栄養状態が良好な日本が一番背が低いというのも、何かと思います。やはり、畳文化が足を短くしてしまったのかもしれません。
少なくとも、日本は世界で最も親が子供の食事に気をつかう国であり、国土は大部分温帯で、一部は冷帯にかかっている緯度高めの国です。身長が低くなる要素はあまりありません。さらに、日本の中でも、大阪と徳島で2㎝の差があるのは、緯度の差と考えるのは無理がある気がします。栄養の差とも寒暖の差とも考えにくい場合が多いということです。
そこで、三つ目の要因として考えられることは遺伝子です。当然予測されることですが、人種や遺伝によって、背が高くなりやすい人となりにくい人がいるということですね。そう考えると、 日本人は遺伝的には背が高くなりにくい要因を持っている可能性がありますし、日本の中でも、特に沖縄、福岡、徳島などの地域には、背の低い遺伝要因が多いのではないか、と思われるのです。

都道府県別
男性1位石川171.7㎝・2位秋田富山171.4㎝/46位福岡169.3㎝・47位沖縄168.8㎝
女性1位東京158.6㎝・2位青森大阪158.5㎝/46位徳島156.6㎝・47位沖縄155.8㎝



遺伝的要因として考えられるのは、日本人の持つ二つのY染色体古代遺伝子です。一つはC1a1であり、もう一つはD1bです。このうち、特にD1bのグループは、背が低いと言われていますが、どうなのでしょうか。どちらも、日本にしか存在しない遺伝子なので、日本人の背の低さと何らかの関連がある可能性があります。
オリンピックの試合で、体格的に劣る日本人チームが、その肉体的ハンディを、技術と戦略とチームワークで克服し、五分の試合に持ち込む様子は実にスリリングですが、あるいは、その日本人の忍耐や協調性や繊細さにも、もしかしたら遺伝的要因が存在するかもしれません。

C1a1➡1位徳島10%/2位青森8%/3位沖縄7%(全国平均4%/日本のみ)
*C1bはアボリジニ・マオリの多数派、C2はモンゴルの多数派。
D1b➡1位アイヌ88%/2位沖縄56%/青森38%/徳島26%(全国平均40%/ほぼ日本のみ)
*D1aはチベットで50%、未分化のDがアンダーマン諸島の一部族で100%、グアム島で17%。