アルゼンチンのブエノスアイレス生まれの精神科医であり、臨床心理療法家(セラピスト)のホルヘ・ブカイが、対話を通して今抱えている問題への患者自身の気づきを促すゲシュタルト療法の一環として、状況に応じて患者に語った51の物語を、一冊の本にまとめたものです。人生に悩む青年にホルヘが語るという形式をとっていますが、一つ一つの物語に、それぞれ深い味わいがあります。
例えば、鎖につながれたサーカスの象の話があるのですが、サーカスを見ていた少年が、素朴な疑問を抱くのです。象を鎖で繋いでいる杭は本当に小さくて、巨大な象がその気になったら一瞬で抜けそうなのに、どうして象はおとなしくしているのだろう、と。すると、隣にいた賢い大人の人が説明するのです。あの象はとても小さな時に、あの杭に繋がれたのだよ、と。小象は必死に抵抗したのだけれど、その時の象には杭は頑丈すぎたのです。象は来る日もくる日も抵抗を続けたのですが、杭はびくともしませんでした。そして、ついに象は諦めたのです。それ以来、象は一度も杭を抜こうと試みたことはありませんでした。杭はいまでは、あんなに小さいのに、それでも象は、ちょっと試してみることさえ、してみようという気を起こせないのです。
「どうして、ほんの少しの勇気も振り絞ることができないのか」と責められても、どうにもならないことがあります。「どうしてか」と訊かれても、自分でも理由がわからないのです。
おそらくは、記憶に残らないほど幼い昔に、人生の理不尽さに対して、一度は激しい抵抗を試みたのですが、完膚無きまでに打ちのめされ、その挫折以来、根深いところで人生を投げ出してしまっている、そんな人もいるのだと思うのです。その時のショックと、あまりにも根深い挫折感と不信感を、どうやってぬぐいさればよいのか、見当もつかずに、いまも心を彷徨わせ続けているのです。
「やる気を出せ」とか「投げやりになるな」と言われても、「いったいどうやって」と途方にくれるばかりです。「何に諦めているのか」と訊かれても、自分に、すべてに、何もかも、と具体的なことは一つも言えないのです。こうした言葉に表現できない挫折感と諦めから立ち上がるために、一生内なる自己と戦い続けなければならない人もいるでしょう。
人の心の奥底に潜む哀しみや憂鬱や不安や諦めや空虚感は、それほどに一筋縄ではいかないものです。誰もが幸福になりたいと願いながら、胸の奥に取れないつかえやしこりを抱えているのです。そんな終わらない苦悩を、人に伝えて理解してもらうのは、何と難しいことでしょう。
この「寓話セラピー」は、そんな言い知れない苦悩に、そっと寄り添ってくれるのです。時には優しく、時には面白おかしく、ホルヘは語りかけてくれます。
別に自分は今、そんな深い苦悩は抱えていないという人にとっても、それぞれの物語はとても興味深いので、さらりと読んでみるのも良いかと思います。さまざまな読み方ができる本です。物語好きの人にとっては、あるいは一生の友となる場合もあるかと思います。
残念ながら、現在は古本でしか手に入れることができません。しかも、最近はどんどん値段が釣り上がっているようです。是非とも復刊して欲しいものです。
寓話セラピー―目からウロコの51話/ホルヘ ブカイ

¥1,620
Amazon.co.jp
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「どうして、ほんの少しの勇気も振り絞ることができないのか」と責められても、どうにもならないことがあります。「どうしてか」と訊かれても、自分でも理由がわからないのです。
おそらくは、記憶に残らないほど幼い昔に、人生の理不尽さに対して、一度は激しい抵抗を試みたのですが、完膚無きまでに打ちのめされ、その挫折以来、根深いところで人生を投げ出してしまっている、そんな人もいるのだと思うのです。その時のショックと、あまりにも根深い挫折感と不信感を、どうやってぬぐいさればよいのか、見当もつかずに、いまも心を彷徨わせ続けているのです。
「やる気を出せ」とか「投げやりになるな」と言われても、「いったいどうやって」と途方にくれるばかりです。「何に諦めているのか」と訊かれても、自分に、すべてに、何もかも、と具体的なことは一つも言えないのです。こうした言葉に表現できない挫折感と諦めから立ち上がるために、一生内なる自己と戦い続けなければならない人もいるでしょう。
人の心の奥底に潜む哀しみや憂鬱や不安や諦めや空虚感は、それほどに一筋縄ではいかないものです。誰もが幸福になりたいと願いながら、胸の奥に取れないつかえやしこりを抱えているのです。そんな終わらない苦悩を、人に伝えて理解してもらうのは、何と難しいことでしょう。
この「寓話セラピー」は、そんな言い知れない苦悩に、そっと寄り添ってくれるのです。時には優しく、時には面白おかしく、ホルヘは語りかけてくれます。
別に自分は今、そんな深い苦悩は抱えていないという人にとっても、それぞれの物語はとても興味深いので、さらりと読んでみるのも良いかと思います。さまざまな読み方ができる本です。物語好きの人にとっては、あるいは一生の友となる場合もあるかと思います。
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