ヨーロッパに中東からカフェ(コーヒー)という飲み物が伝わって間もない頃、ブルボン朝絶頂期であるルイ14世時代の1686年に創業した、現存するヨーロッパ最古のカフェと言われる老舗カフェ・レストラン「カフェ・プロコップ」へ行ってきました。
初めてではありません。実は、25年前にもフランス人の友人の招待で来たことがあるのですが、その当時はそれほど由緒ある有名なレストランだとは知らず、せっかく連れて来てくれた友人にも申し訳ないことをしました。今回も、店内に入って初めて、「ああ、あの時のレストランは、ここだったのか」とわかった次第です。
玄関を入ると、右手の絵には、この店を贔屓にした有名人の名前と顔が描かれています。その絵にある名前の中には、ヴォルテール、ルソー、モンテスキューといった啓蒙思想家たち、マラー、ダントン、ロベスピエールといったフランス革命ジャコパン派の三闘士、それから、この店でアメリカ合衆国憲法の草案を練ったと言われるベンジャミン・フランクリンや、フランス人権宣言の起草者トマス・ジェファーソンの名前が見つかります。さらに、フランス文学最高峰の名作「レ・ミゼラブル」の著者である文豪ヴィクトル・ユーゴーの名もあります。彼らはみな、ここでコーヒーを飲み、ものを書き、議論を戦わせたのです。
また、玄関左手には、ガラスケースの中に、有名なナポレオンの帽子が飾ってあります。財布を忘れたナポレオンが、代金の代わりに店に置いていったと言われる伝説的な帽子です。
中に入ると、全体としてこじんまりとはしていますが、大理石の階段が二階へと続いていたり、壁には巨大な年代物の鏡が架けられていたりと、いわくありげな品々が多く、長い歴史を感じさせます。特に二階の雰囲気は、ちょうど17世紀の貴族の屋敷の典型のような感じで、しかもレプリカではない本物の生々しい空気感があって、実に趣があります。
コートを玄関奥のミニホールで預かってもらった後、案内されたテーブルに着くと、ウェイターが颯爽と注文をとりにきます。一般にパリの飲食店では、従業員のほとんどはアジアやアフリカからの移民なのですが、この店で働いている従業員は、男性も女性も全員が容姿の整った白人の若者です。最初に「英語メニューにしますか、フランス語にしますか」と訊かれますが、実は日本語のメニューもあるので、注文をするのに苦労はありません。かつてはその名の通りカフェだったわけですが、現在はフランス田舎料理に特徴のある著名なレストランです。
一般に名の通ったレストランや和食の店などで食事をすると、たいしたものを頼まなくても、普通に1人100ユーロ(約1万4000円)は超えてしまいますが、その点、この店はかなりリーズナブルで良心的です。1人100ユーロを用意しておけば、何を食べても、まずお金が足りなくなるということはないでしょう。
前菜では、カニみそがぎっしり詰まったカニが甲羅半分、ホクホクの伊勢海老の半身、それに大小のボイルしたエビがたくさん、さらには殻付きで肉厚の生牡蠣と大小のツブ貝がぐるりと置かれている巨大なプレートがオススメです。これだけぎっしり詰まった皿が、70ユーロ(1万円弱)です。相当にお腹が減っていれば一人でも食べられるでしょうが、二人で食べるのが無難です。このプレートをメインディッシュにすることもできます。
それに名物の特製オニオングラタンスープが10ユーロ(約1400円)です。上にチーズがたっぷりのっていて、大きな陶器のボールに入って出てきます。塩っ気がほとんどなく、オニオンとチーズと香辛料の風味とコクだけが感じられるシンプルな味わいのスープです。このスープだけでも、結構な軽食になります。上のプレートに、このスープで、美味しいディナーになります。
さらに、肉料理では、豚の頬肉の煮込みが名物料理です。大きなお肉はトロトロに柔らかく煮込まれていて、それにジャガイモや人参が付け合わせられた田舎風シチューです。豚の頬のお肉は、筋や油が多く、本来は噛みにくく、おそらく脂身がくどいのではないかと思われますが、沖縄のラフテーと同じく、脂は煮込みの過程で完全に落とされていて、スープも油分がなく、さらっとしています。味は、これも塩分がほとんどなく、香辛料とスープのコクだけという究極のシンプルな味付けです。わたしはコリアンダーが苦手なのですが、この料理に関してだけは、みじん切りのコリアンダーの風味が実によく合うのです。シンプルだけど旨味がある、上質の肉料理です。これで30ユーロ(約4200円)は安いと思います。あくまでも、パリ価格では、ですよ。
デザートでは、特製ティラミスがオススメです。これもシンプルな味わいですが、20cm四方の正方形のお皿いっぱいに詰まっていて、カップルなら2人で一皿が良いかと思います。お店の自慢のティラミスで、質量ともに満足できる一品です。これも9(1200円)ユーロぐらいだったかな。
食後のコーヒーも合わせて、食費は1人分50~70ユーロ(7000~1万円弱)ぐらいが目安になるかと思います。ただし、ワインはピンキリなので、飲みたい人は、その分は別に考えてください。パリでは、ごく普通のレストランで、たいした料理を頼まなくても、とりあえず食事をすれば、軽く1人最低30ユーロ(4200円)はします。ですから、ここプロコップは、パリの有名店としては決して高くはありません。
それでも、高額に感じるとしたら、それはパリの飲食店物価が高い(日本のおよそ3倍ぐらい)のであって、この店が特別に高いわけではないのです。まあ、世界中どこを探したって、日本みたいに安くて美味しい店が、これほどたくさんあるような国は、他にないってことです。はっきり言って、日本でなら、パリの三ツ星レストランより美味しい定食屋さんが、あちこちにありますからね。
今回、この店で、偶然隣同士で同席した同年輩の日本人夫妻と意気投合し、とても楽しい時間を過ごせました。しかも、同じホテルの同じ階に、しかもすぐ隣同士に部屋をとっていて、帰る日も一日違いということがわかって、その後も、ホテルの朝食などで会話が弾み、互いの連絡先を交換し合って別れましたが、日本に帰ってからも良い友達となりそうです。
このカフェは、意外と日本人の客が多く、中国人や韓国人はあまり入りません。店内が混雑していても、上品で気さくで物静かな客が多く、騒々しい客はほとんどいないのです。また、パリのカフェの例外にもれず、この店もテーブルは日本の基準からみると小さく、隣の椅子やテーブルとの間隔も狭いので、見知らぬ同士で気軽に親密な会話ができてしまいます。
そういう意味で、このカフェ・プロコップでは、予期せぬ不思議な良い出会いがあるかもしれません。
初めてではありません。実は、25年前にもフランス人の友人の招待で来たことがあるのですが、その当時はそれほど由緒ある有名なレストランだとは知らず、せっかく連れて来てくれた友人にも申し訳ないことをしました。今回も、店内に入って初めて、「ああ、あの時のレストランは、ここだったのか」とわかった次第です。
玄関を入ると、右手の絵には、この店を贔屓にした有名人の名前と顔が描かれています。その絵にある名前の中には、ヴォルテール、ルソー、モンテスキューといった啓蒙思想家たち、マラー、ダントン、ロベスピエールといったフランス革命ジャコパン派の三闘士、それから、この店でアメリカ合衆国憲法の草案を練ったと言われるベンジャミン・フランクリンや、フランス人権宣言の起草者トマス・ジェファーソンの名前が見つかります。さらに、フランス文学最高峰の名作「レ・ミゼラブル」の著者である文豪ヴィクトル・ユーゴーの名もあります。彼らはみな、ここでコーヒーを飲み、ものを書き、議論を戦わせたのです。
また、玄関左手には、ガラスケースの中に、有名なナポレオンの帽子が飾ってあります。財布を忘れたナポレオンが、代金の代わりに店に置いていったと言われる伝説的な帽子です。
中に入ると、全体としてこじんまりとはしていますが、大理石の階段が二階へと続いていたり、壁には巨大な年代物の鏡が架けられていたりと、いわくありげな品々が多く、長い歴史を感じさせます。特に二階の雰囲気は、ちょうど17世紀の貴族の屋敷の典型のような感じで、しかもレプリカではない本物の生々しい空気感があって、実に趣があります。
コートを玄関奥のミニホールで預かってもらった後、案内されたテーブルに着くと、ウェイターが颯爽と注文をとりにきます。一般にパリの飲食店では、従業員のほとんどはアジアやアフリカからの移民なのですが、この店で働いている従業員は、男性も女性も全員が容姿の整った白人の若者です。最初に「英語メニューにしますか、フランス語にしますか」と訊かれますが、実は日本語のメニューもあるので、注文をするのに苦労はありません。かつてはその名の通りカフェだったわけですが、現在はフランス田舎料理に特徴のある著名なレストランです。
一般に名の通ったレストランや和食の店などで食事をすると、たいしたものを頼まなくても、普通に1人100ユーロ(約1万4000円)は超えてしまいますが、その点、この店はかなりリーズナブルで良心的です。1人100ユーロを用意しておけば、何を食べても、まずお金が足りなくなるということはないでしょう。
前菜では、カニみそがぎっしり詰まったカニが甲羅半分、ホクホクの伊勢海老の半身、それに大小のボイルしたエビがたくさん、さらには殻付きで肉厚の生牡蠣と大小のツブ貝がぐるりと置かれている巨大なプレートがオススメです。これだけぎっしり詰まった皿が、70ユーロ(1万円弱)です。相当にお腹が減っていれば一人でも食べられるでしょうが、二人で食べるのが無難です。このプレートをメインディッシュにすることもできます。
それに名物の特製オニオングラタンスープが10ユーロ(約1400円)です。上にチーズがたっぷりのっていて、大きな陶器のボールに入って出てきます。塩っ気がほとんどなく、オニオンとチーズと香辛料の風味とコクだけが感じられるシンプルな味わいのスープです。このスープだけでも、結構な軽食になります。上のプレートに、このスープで、美味しいディナーになります。
さらに、肉料理では、豚の頬肉の煮込みが名物料理です。大きなお肉はトロトロに柔らかく煮込まれていて、それにジャガイモや人参が付け合わせられた田舎風シチューです。豚の頬のお肉は、筋や油が多く、本来は噛みにくく、おそらく脂身がくどいのではないかと思われますが、沖縄のラフテーと同じく、脂は煮込みの過程で完全に落とされていて、スープも油分がなく、さらっとしています。味は、これも塩分がほとんどなく、香辛料とスープのコクだけという究極のシンプルな味付けです。わたしはコリアンダーが苦手なのですが、この料理に関してだけは、みじん切りのコリアンダーの風味が実によく合うのです。シンプルだけど旨味がある、上質の肉料理です。これで30ユーロ(約4200円)は安いと思います。あくまでも、パリ価格では、ですよ。
デザートでは、特製ティラミスがオススメです。これもシンプルな味わいですが、20cm四方の正方形のお皿いっぱいに詰まっていて、カップルなら2人で一皿が良いかと思います。お店の自慢のティラミスで、質量ともに満足できる一品です。これも9(1200円)ユーロぐらいだったかな。
食後のコーヒーも合わせて、食費は1人分50~70ユーロ(7000~1万円弱)ぐらいが目安になるかと思います。ただし、ワインはピンキリなので、飲みたい人は、その分は別に考えてください。パリでは、ごく普通のレストランで、たいした料理を頼まなくても、とりあえず食事をすれば、軽く1人最低30ユーロ(4200円)はします。ですから、ここプロコップは、パリの有名店としては決して高くはありません。
それでも、高額に感じるとしたら、それはパリの飲食店物価が高い(日本のおよそ3倍ぐらい)のであって、この店が特別に高いわけではないのです。まあ、世界中どこを探したって、日本みたいに安くて美味しい店が、これほどたくさんあるような国は、他にないってことです。はっきり言って、日本でなら、パリの三ツ星レストランより美味しい定食屋さんが、あちこちにありますからね。
今回、この店で、偶然隣同士で同席した同年輩の日本人夫妻と意気投合し、とても楽しい時間を過ごせました。しかも、同じホテルの同じ階に、しかもすぐ隣同士に部屋をとっていて、帰る日も一日違いということがわかって、その後も、ホテルの朝食などで会話が弾み、互いの連絡先を交換し合って別れましたが、日本に帰ってからも良い友達となりそうです。
このカフェは、意外と日本人の客が多く、中国人や韓国人はあまり入りません。店内が混雑していても、上品で気さくで物静かな客が多く、騒々しい客はほとんどいないのです。また、パリのカフェの例外にもれず、この店もテーブルは日本の基準からみると小さく、隣の椅子やテーブルとの間隔も狭いので、見知らぬ同士で気軽に親密な会話ができてしまいます。
そういう意味で、このカフェ・プロコップでは、予期せぬ不思議な良い出会いがあるかもしれません。