先月のエントリー「TPP 問題点」の中で、TPPを取り巻く問題点について、ほぼ概観した気になっていたのですが、実は真っ先に記さなければならないとんでもない問題を、完全に取りこぼしていることに、後から気づかされました。それは遺伝子組み換え食品の問題です。
現在、日本の法律では、多くの食品で「遺伝子組み換え」の記載が義務付けられ、「不使用」の表示も許可されています。しかし、アメリカではそうではありません。では、なぜ消費者の意向に反して、アメリカでは「遺伝子組み換え食品を使用しておりません」の表示が認められていないのでしょうか。
ひとつにはバイオテクノロジーの先進国であるアメリカが、国策としてバイオ技術の推進のために、内外の規制緩和を進めていることがあります。そして食の安全を心配する国民も良心的な研究者たちも、政府・企業一体の圧力に屈している現状があります。
バイオ推進企業の中心は、かつてベトナム戦争の時に、枯葉剤を開発・生産した複合企業モンサントです。このロックフェラー系の巨大企業が開発した、前代未聞の化学合成物質がダイオキシンです。なにしろ、耳かき一杯のダイオキシンを水道に混入させたら、東京都民を全滅させられると言われる、まさに史上最強最悪の毒物です。
モンサントはこのダイオキシンを利用して、世界最大の農薬メーカーにのし上がりました。ところが、この会社の農薬は、害虫や雑草を寄せ付けないばかりか、農作物自体も枯らしてしまいます。それでモンサントは、自社の農薬でも枯れない農作物の種子を、遺伝子組み換え技術によって開発しました。この「種子と農薬をセットで販売する」のがモンサントの手法です。
モンサントの農薬を使用する以上、モンサントの「遺伝子組み換え」種子を使用せざるを得ないわけで、この手法によって、現在モンサントは世界最大の種子メーカーとして、遺伝子組み換え作物市場の90%を占有しています。
またモンサントは、その占有率を維持するため、種子の特許の防衛に全力を傾けています。例えばアメリカの農家は、翌年モンサントの種子を、自分の生産物から転用することが許されていません。そのためにモンサントは、わざわざ種子に致死遺伝子を組み込んで、自家受粉した種子は育たないように細工する技術も持っています。
一方モンサントは1999年以来この技術は封印していると公言しています。しかし、初年度の生産性などの効果は自家受粉した種子からは期待出来ないとも言われます。ですから農家は、結局は毎年新たにモンサント社から種子を購入しなければならないシステムになっています。しかも一度除草剤をまいてしまった土地では、このモンサント社の種子しか育ちません。いったんモンサントを選んでしまったら、もはや後戻りは出来ないのです。
これは非常に巧妙な支配方法で、現在モンサントはアメリカ政府の後ろ盾の元、この手法で種子の占有率で世界制覇を目指しています。そして、例えばインドでは、従来の種子の4倍もするモンサント社製の綿花の種子の購入が出来ないために、自殺に追い込まれる農家が続出しています。
バイオ推進派は、種子の研究開発には多大なコストがかかっており、それを取り戻すためには農家に毎年種子を買ってもらわなければ成り立たないと主張します。しかし本来農家というものは、自分で収穫した種子を翌年まくというサイクルを当然と考えています。もう何千年もそうしてやってきたのですから、それが許されないということは納得しにくいでしょう。
また、例えばもし、自家受粉した二年目からはその生命力が格段に衰えるイネが国内で栽培されるようになったら、日本の消費者はその米を喜んで食べるでしょうか?
この国は、完全無農薬の〝奇跡のリンゴ〟を生み出した国民の国です。遺伝子組み換え種子がいかに生産性が高かろうと、強力な農薬で枯れない唯一の種子を有り難がる農民は皆無でしょう。生産コストと利潤しか考えないアメリカの企業農家とは違います。
さらに恐ろしいのはモンサントによる農家に対する恫喝的な訴訟の数々です。例えば風で隣の農家の土地から飛んできた種子が芽吹いたときには、直ぐに引っこ抜かないとモンサント社に訴えられます。カナダではとばっちりをくった農家が、裁判でモンサント社に敗訴しています。
この農家シュマイザー氏について、モンサント社は「シュマイザー氏は嘘をついており、実際には無断で栽培したのだ」と述べています。「だから彼は裁判で負けたのだ」と。そうかもしれません。しかし、モンサント社が、多くの栽培農家を訴訟で訴え続けていることは確かな事実です。
また、研究者が遺伝子組み換え作物の安全性を研究しようとする場合には、モンサント社による検閲を受け入れなければ、種子の使用許可がおりません。さもなければ種子の使用料を請求されます。
同時にモンサント社は世界各国の主要な研究機関に莫大な寄付をして手なずけています。そのため遺伝子組み換え作物の危険性を警告する研究者に対する学会からのバッシングはとても激しいそうです。
それにしても、これほど短期間の間に世界的な脅威の的となっているモンサント社に対して、一般の認知度が低いのはなぜでしょう?なぜ報道されないのでしょう?
モンサント社は主要メディアへの支配力も強力で、ワシントンポストやニューヨークタイムスが、モンサントのこうした所業に対して批判的な記事を載せることはほとんどありません。また、CNNなどの主要テレビ局もほとんど遺伝子組み換え批判ニュースは報道しません。ほんのごく一部の独立系メディアのみが、インドやカナダや欧州での反モンサント運動を報道しています。
これは、政府機関からモンサントへの天下りが多いこと、またモンサント配下の研究機関が研究者を厚遇することなどから、大学などの研究機関と政府と産業界のバイオ推進トライアングルが生まれていることによります。蜜に群がる虫たちのように、利益と権力に人々は群がり、その一方で、何か大切なものが失われていくのです。
我が国でも、農林水産省と大企業はバイオ産業を推進しています。特に経団連会長米倉氏が会長を務める住友化学は、日本最大の農薬メーカーですが、2010年にモンサント社と提携を結んでいます。
米倉氏が「日本の農業を守るのに協力する」と述べた真意は、はなはだ怪しいものです。誰が考えても「日本の農家がモンサントの遺伝子組み換え種子に、速やかに依存するように、全面的に協力を惜しまない」という意味にしかとれません。おそらく、それによって生産性があがり、コストを削減できると言いたいのでしょう。「モンサント社と住友化学が日本の農業を発展させる!」と。
しかし、アメリカの研究者の中には、「アメリカ国産の大豆は食用としては危険なので、豆乳を作る時は日本産の大豆を使用するように」とアドバイスする人もいます。と言うのも、今日アメリカの農作物の80%以上(大豆94%、トウモロコシ88%)は遺伝子組み換え作物だからです。その安全性はまったく確かめられていないのです。
また、アメリカ産トウモロコシの中には、国内では食べた人が強烈なアレルギーを引き起こしたために、販売を禁じられているにもかかわらず、日本へは飼料用として輸出されているものもあります。
さらに現在食用に流通している組み換え大豆を妊娠中のネズミに食べさせ続けたところ、胎児の56%が死亡したロシア科学アカデミーのイリーナさんの有名な実験があります。この種の実験は、モンサントもやっていたのですが、実験結果は長い間公開されず、ドイツ最高裁まで争われた後に、ようやく公表されました。その結果、ネズミの内臓に現れた異常は明らかでした。
生の大豆にはもともと毒性があるんだ、という主張もあります。しかし、だったら推進側と反対側が共同で、遺伝子操作していない大豆との比較実験をしたらいいんです。
いずれにしても現在世界の大豆の80%は遺伝子組み換え大豆であり、その割合は年々高まっています。これはもう放射能汚染どころのレベルではありません。人類は生命科学と生命倫理の極限を迎えようとしています。そして地球上の生態系の大部分が、今や遺伝子組み換え種子に汚染されつつあります。
さらに言えば、世界の中でも特に大豆を主要な食物としている第一の国は日本です。味噌、醤油、豆腐、納豆、おから、サラダ油、マーガリンなど、みな大豆ではありませんか!
しかもこれらの食品は、ほとんど遺伝子組み換え表示対象外ですので、消費者には見分けるすべがないのです。また、表示が義務付けられている食品でも日本政府は5%までの混入は「不使用」表示ができるというサギを許しています。
世界で生産されている大豆の八割が生命に重大な危険をもたらす可能性があるのに、その潜在危険性をもつ食品を、国民が見分けることさえ出来ないという事実は、日本民族の存亡に関わると言っても過言ではありません。そのようなことを許している政府もまた亡国政府と言ってよいのではないでしょうか?
今のところ「国産の大豆」に関しては、組み換え率は非常に低いとは思われます。しかし、もっとも心配なことのひとつは、輸入されている種子によって起こる交雑汚染の広まりです。飼料や食用として入ってきている遺伝子組み換え種子が、国内で交雑によって広まっているとしても、その実態研究はモンサント社によって妨害されています。そして、たとえ交雑が判明したとしても、モンサント社は一切の賠償請求に応じないばかりか、無断で種子を使用したと罰金を請求してきます。ですから現在、国内での遺伝子組み換え植物汚染がどの程度のものかは、まったく知るすべがなく不明のままです。
こうした問題は実はTPP以前の問題です。
長年にわたって日本は、アメリカの農作物の最大の輸入国です。そして日本の商社は、アメリカの農家にわざわざ高い値段で遺伝子組み換えでない大豆を栽培してもらい、それを購入しているのです。それでも現在、日本が輸入している外国産農産物のおよそ半分が遺伝子組み換え農産物と推定されています。はっきり断定できないのは、アメリカ側に遺伝子組み換えの表示義務がないからです。
ところが日本政府は、遺伝子組み換え農作物の国際的表示義務や規制強化に関して非常に消極的です。そしてこれからはさらに、TPPによって国内の規制もアメリカ並みに緩むことが予想されます。実際日本国内にも、新潟の研究所のように、イネの遺伝子組み換え種子の実用化を目論む人々もいるのです。
最終的には、モンサント社(とその手先となった住友化学や国内推進派)が国内の農作物の種子供給を一手に引き受けるようになり、我が国の食糧安全保障の首根っこを捕まえ、「遺伝子組み換え種子」によって日本国民の生命を脅かすようになるかもしれません。つまり、高濃度最強力農薬使用の遺伝子組み換え食品で我慢するか、さもなくば餓死を余儀なくされるか、選択を迫られるということです。
結論として言えば、モンサント社と手を組む米倉会長も、モンサント社に都合の良いTPPを推進しようとしている野田内閣も、この国の国益(と言うより国民の命)を守る気があるとはとても思えないのです。
農業の大規模企業経営によるコスト削減と生産性の向上、それによる国際競争力の強化と規制緩和によるグローバル化の進展は、「遺伝子組み換え種子」の作付け面積を必然的に増大させます。その利益に目を付けている人々が、バイオ推進派でありTPP推進派なのです。
OECDは「遺伝子組み換え農作物は、従来の種子並の安全な農作物である」としています。推進派としては、政界・学界・産業界を牛耳っている以上、このOECDの宣言を覆すような決定的な反論は出てこないとたかをくくっているのかもしれません。そして今のところ彼らの目論見どおり、バイオ推進は順調なように見えます。
ちょうど反格差デモをウォール街から厄介払いした時のように、何もかも簡単にいくと考えているのでしょう。
TPP導入賛成派は、ほおっておいても日本の農業はジリ貧であり、企業化と合理化が今農業を救う唯一の道であると主張します。生産性とコストの問題を改善し、事業としての安定性を増すことで、企業の進出を促さなければ、国内の農業は遠からず消滅するだろうと言うのです。この意見はある意味正しいとわたしは思います。
農業にしても、職人的な物作りにしても、日本の伝統的な〝モノづくり〟の世界は、はなはだ経済的効率や合理性に欠ける職種です。仕事に要する膨大な時間に対して、収入がまったく割に合いません。一人前になるのに時間がかかり過ぎるのです。生活のことを考えると、若い人に担い手が少ないのは無理もありません。
特に農業は自然相手に生き物を育てる仕事です。普通に考えて、企業的効率性や合理的な採算が追求できるわけがないのです。それは、人間の子育てに効率や合理的な採算(コストパフォーマンス)が期待できないのと本質的には同じことです。生き物を育てるのは、どうしたって手間がかかるのです。
また、温暖化や異常気象、さらには水質や土壌の汚染など、一次産業を取り巻く環境は劣化を続けており、自然相手の商売はますます将来が未知数で不安定なものとなってきています。
もし、日本人みなが、そうした安定を欠く経済状態を嫌い、不合理な手間をかけることも嫌がるようになったなら、それはそれで仕方がありません。その場合は化学的な合成物を安価に作るような感覚で、企業的合理性を持って効率的に生産する以外にないでしょう。食品であろうと、子供であろうと。実際、それが今の世界の潮流なのかもしれません。みんなめんどくさいことは嫌いますものね。
しかし自然と向き合って命を育むためには、企業経営に必要とされる知恵とは、また別の種類の合理性に基づいた、忍耐や叡智が必要とされます。そういう意味では、未曾有の大災害に襲われた今年、あらためてわたしたちは、『命との向き合い方』を深く考えさせられている気がします。
3.11の時、陸の孤島と呼ばれた南三陸町の中でも、特に究極の陸の孤島として孤立しながら、地区で唯一残った公民館の建物の中で、行政の助けもなく200名が数週間をサバイバルし、今も自力でワカメ養殖事業再開にこぎつけた馬場中山地区に、昔から伝わる呼びかけ合いの言葉があります。それは『貧しくなる時も儲ける時もみんな一緒』です。
現在、日本の法律では、多くの食品で「遺伝子組み換え」の記載が義務付けられ、「不使用」の表示も許可されています。しかし、アメリカではそうではありません。では、なぜ消費者の意向に反して、アメリカでは「遺伝子組み換え食品を使用しておりません」の表示が認められていないのでしょうか。
ひとつにはバイオテクノロジーの先進国であるアメリカが、国策としてバイオ技術の推進のために、内外の規制緩和を進めていることがあります。そして食の安全を心配する国民も良心的な研究者たちも、政府・企業一体の圧力に屈している現状があります。
バイオ推進企業の中心は、かつてベトナム戦争の時に、枯葉剤を開発・生産した複合企業モンサントです。このロックフェラー系の巨大企業が開発した、前代未聞の化学合成物質がダイオキシンです。なにしろ、耳かき一杯のダイオキシンを水道に混入させたら、東京都民を全滅させられると言われる、まさに史上最強最悪の毒物です。
モンサントはこのダイオキシンを利用して、世界最大の農薬メーカーにのし上がりました。ところが、この会社の農薬は、害虫や雑草を寄せ付けないばかりか、農作物自体も枯らしてしまいます。それでモンサントは、自社の農薬でも枯れない農作物の種子を、遺伝子組み換え技術によって開発しました。この「種子と農薬をセットで販売する」のがモンサントの手法です。
モンサントの農薬を使用する以上、モンサントの「遺伝子組み換え」種子を使用せざるを得ないわけで、この手法によって、現在モンサントは世界最大の種子メーカーとして、遺伝子組み換え作物市場の90%を占有しています。
またモンサントは、その占有率を維持するため、種子の特許の防衛に全力を傾けています。例えばアメリカの農家は、翌年モンサントの種子を、自分の生産物から転用することが許されていません。そのためにモンサントは、わざわざ種子に致死遺伝子を組み込んで、自家受粉した種子は育たないように細工する技術も持っています。
一方モンサントは1999年以来この技術は封印していると公言しています。しかし、初年度の生産性などの効果は自家受粉した種子からは期待出来ないとも言われます。ですから農家は、結局は毎年新たにモンサント社から種子を購入しなければならないシステムになっています。しかも一度除草剤をまいてしまった土地では、このモンサント社の種子しか育ちません。いったんモンサントを選んでしまったら、もはや後戻りは出来ないのです。
これは非常に巧妙な支配方法で、現在モンサントはアメリカ政府の後ろ盾の元、この手法で種子の占有率で世界制覇を目指しています。そして、例えばインドでは、従来の種子の4倍もするモンサント社製の綿花の種子の購入が出来ないために、自殺に追い込まれる農家が続出しています。
バイオ推進派は、種子の研究開発には多大なコストがかかっており、それを取り戻すためには農家に毎年種子を買ってもらわなければ成り立たないと主張します。しかし本来農家というものは、自分で収穫した種子を翌年まくというサイクルを当然と考えています。もう何千年もそうしてやってきたのですから、それが許されないということは納得しにくいでしょう。
また、例えばもし、自家受粉した二年目からはその生命力が格段に衰えるイネが国内で栽培されるようになったら、日本の消費者はその米を喜んで食べるでしょうか?
この国は、完全無農薬の〝奇跡のリンゴ〟を生み出した国民の国です。遺伝子組み換え種子がいかに生産性が高かろうと、強力な農薬で枯れない唯一の種子を有り難がる農民は皆無でしょう。生産コストと利潤しか考えないアメリカの企業農家とは違います。
さらに恐ろしいのはモンサントによる農家に対する恫喝的な訴訟の数々です。例えば風で隣の農家の土地から飛んできた種子が芽吹いたときには、直ぐに引っこ抜かないとモンサント社に訴えられます。カナダではとばっちりをくった農家が、裁判でモンサント社に敗訴しています。
この農家シュマイザー氏について、モンサント社は「シュマイザー氏は嘘をついており、実際には無断で栽培したのだ」と述べています。「だから彼は裁判で負けたのだ」と。そうかもしれません。しかし、モンサント社が、多くの栽培農家を訴訟で訴え続けていることは確かな事実です。
また、研究者が遺伝子組み換え作物の安全性を研究しようとする場合には、モンサント社による検閲を受け入れなければ、種子の使用許可がおりません。さもなければ種子の使用料を請求されます。
同時にモンサント社は世界各国の主要な研究機関に莫大な寄付をして手なずけています。そのため遺伝子組み換え作物の危険性を警告する研究者に対する学会からのバッシングはとても激しいそうです。
それにしても、これほど短期間の間に世界的な脅威の的となっているモンサント社に対して、一般の認知度が低いのはなぜでしょう?なぜ報道されないのでしょう?
モンサント社は主要メディアへの支配力も強力で、ワシントンポストやニューヨークタイムスが、モンサントのこうした所業に対して批判的な記事を載せることはほとんどありません。また、CNNなどの主要テレビ局もほとんど遺伝子組み換え批判ニュースは報道しません。ほんのごく一部の独立系メディアのみが、インドやカナダや欧州での反モンサント運動を報道しています。
これは、政府機関からモンサントへの天下りが多いこと、またモンサント配下の研究機関が研究者を厚遇することなどから、大学などの研究機関と政府と産業界のバイオ推進トライアングルが生まれていることによります。蜜に群がる虫たちのように、利益と権力に人々は群がり、その一方で、何か大切なものが失われていくのです。
我が国でも、農林水産省と大企業はバイオ産業を推進しています。特に経団連会長米倉氏が会長を務める住友化学は、日本最大の農薬メーカーですが、2010年にモンサント社と提携を結んでいます。
米倉氏が「日本の農業を守るのに協力する」と述べた真意は、はなはだ怪しいものです。誰が考えても「日本の農家がモンサントの遺伝子組み換え種子に、速やかに依存するように、全面的に協力を惜しまない」という意味にしかとれません。おそらく、それによって生産性があがり、コストを削減できると言いたいのでしょう。「モンサント社と住友化学が日本の農業を発展させる!」と。
しかし、アメリカの研究者の中には、「アメリカ国産の大豆は食用としては危険なので、豆乳を作る時は日本産の大豆を使用するように」とアドバイスする人もいます。と言うのも、今日アメリカの農作物の80%以上(大豆94%、トウモロコシ88%)は遺伝子組み換え作物だからです。その安全性はまったく確かめられていないのです。
また、アメリカ産トウモロコシの中には、国内では食べた人が強烈なアレルギーを引き起こしたために、販売を禁じられているにもかかわらず、日本へは飼料用として輸出されているものもあります。
さらに現在食用に流通している組み換え大豆を妊娠中のネズミに食べさせ続けたところ、胎児の56%が死亡したロシア科学アカデミーのイリーナさんの有名な実験があります。この種の実験は、モンサントもやっていたのですが、実験結果は長い間公開されず、ドイツ最高裁まで争われた後に、ようやく公表されました。その結果、ネズミの内臓に現れた異常は明らかでした。
生の大豆にはもともと毒性があるんだ、という主張もあります。しかし、だったら推進側と反対側が共同で、遺伝子操作していない大豆との比較実験をしたらいいんです。
いずれにしても現在世界の大豆の80%は遺伝子組み換え大豆であり、その割合は年々高まっています。これはもう放射能汚染どころのレベルではありません。人類は生命科学と生命倫理の極限を迎えようとしています。そして地球上の生態系の大部分が、今や遺伝子組み換え種子に汚染されつつあります。
さらに言えば、世界の中でも特に大豆を主要な食物としている第一の国は日本です。味噌、醤油、豆腐、納豆、おから、サラダ油、マーガリンなど、みな大豆ではありませんか!
しかもこれらの食品は、ほとんど遺伝子組み換え表示対象外ですので、消費者には見分けるすべがないのです。また、表示が義務付けられている食品でも日本政府は5%までの混入は「不使用」表示ができるというサギを許しています。
世界で生産されている大豆の八割が生命に重大な危険をもたらす可能性があるのに、その潜在危険性をもつ食品を、国民が見分けることさえ出来ないという事実は、日本民族の存亡に関わると言っても過言ではありません。そのようなことを許している政府もまた亡国政府と言ってよいのではないでしょうか?
今のところ「国産の大豆」に関しては、組み換え率は非常に低いとは思われます。しかし、もっとも心配なことのひとつは、輸入されている種子によって起こる交雑汚染の広まりです。飼料や食用として入ってきている遺伝子組み換え種子が、国内で交雑によって広まっているとしても、その実態研究はモンサント社によって妨害されています。そして、たとえ交雑が判明したとしても、モンサント社は一切の賠償請求に応じないばかりか、無断で種子を使用したと罰金を請求してきます。ですから現在、国内での遺伝子組み換え植物汚染がどの程度のものかは、まったく知るすべがなく不明のままです。
こうした問題は実はTPP以前の問題です。
長年にわたって日本は、アメリカの農作物の最大の輸入国です。そして日本の商社は、アメリカの農家にわざわざ高い値段で遺伝子組み換えでない大豆を栽培してもらい、それを購入しているのです。それでも現在、日本が輸入している外国産農産物のおよそ半分が遺伝子組み換え農産物と推定されています。はっきり断定できないのは、アメリカ側に遺伝子組み換えの表示義務がないからです。
ところが日本政府は、遺伝子組み換え農作物の国際的表示義務や規制強化に関して非常に消極的です。そしてこれからはさらに、TPPによって国内の規制もアメリカ並みに緩むことが予想されます。実際日本国内にも、新潟の研究所のように、イネの遺伝子組み換え種子の実用化を目論む人々もいるのです。
最終的には、モンサント社(とその手先となった住友化学や国内推進派)が国内の農作物の種子供給を一手に引き受けるようになり、我が国の食糧安全保障の首根っこを捕まえ、「遺伝子組み換え種子」によって日本国民の生命を脅かすようになるかもしれません。つまり、高濃度最強力農薬使用の遺伝子組み換え食品で我慢するか、さもなくば餓死を余儀なくされるか、選択を迫られるということです。
結論として言えば、モンサント社と手を組む米倉会長も、モンサント社に都合の良いTPPを推進しようとしている野田内閣も、この国の国益(と言うより国民の命)を守る気があるとはとても思えないのです。
農業の大規模企業経営によるコスト削減と生産性の向上、それによる国際競争力の強化と規制緩和によるグローバル化の進展は、「遺伝子組み換え種子」の作付け面積を必然的に増大させます。その利益に目を付けている人々が、バイオ推進派でありTPP推進派なのです。
OECDは「遺伝子組み換え農作物は、従来の種子並の安全な農作物である」としています。推進派としては、政界・学界・産業界を牛耳っている以上、このOECDの宣言を覆すような決定的な反論は出てこないとたかをくくっているのかもしれません。そして今のところ彼らの目論見どおり、バイオ推進は順調なように見えます。
ちょうど反格差デモをウォール街から厄介払いした時のように、何もかも簡単にいくと考えているのでしょう。
TPP導入賛成派は、ほおっておいても日本の農業はジリ貧であり、企業化と合理化が今農業を救う唯一の道であると主張します。生産性とコストの問題を改善し、事業としての安定性を増すことで、企業の進出を促さなければ、国内の農業は遠からず消滅するだろうと言うのです。この意見はある意味正しいとわたしは思います。
農業にしても、職人的な物作りにしても、日本の伝統的な〝モノづくり〟の世界は、はなはだ経済的効率や合理性に欠ける職種です。仕事に要する膨大な時間に対して、収入がまったく割に合いません。一人前になるのに時間がかかり過ぎるのです。生活のことを考えると、若い人に担い手が少ないのは無理もありません。
特に農業は自然相手に生き物を育てる仕事です。普通に考えて、企業的効率性や合理的な採算が追求できるわけがないのです。それは、人間の子育てに効率や合理的な採算(コストパフォーマンス)が期待できないのと本質的には同じことです。生き物を育てるのは、どうしたって手間がかかるのです。
また、温暖化や異常気象、さらには水質や土壌の汚染など、一次産業を取り巻く環境は劣化を続けており、自然相手の商売はますます将来が未知数で不安定なものとなってきています。
もし、日本人みなが、そうした安定を欠く経済状態を嫌い、不合理な手間をかけることも嫌がるようになったなら、それはそれで仕方がありません。その場合は化学的な合成物を安価に作るような感覚で、企業的合理性を持って効率的に生産する以外にないでしょう。食品であろうと、子供であろうと。実際、それが今の世界の潮流なのかもしれません。みんなめんどくさいことは嫌いますものね。
しかし自然と向き合って命を育むためには、企業経営に必要とされる知恵とは、また別の種類の合理性に基づいた、忍耐や叡智が必要とされます。そういう意味では、未曾有の大災害に襲われた今年、あらためてわたしたちは、『命との向き合い方』を深く考えさせられている気がします。
3.11の時、陸の孤島と呼ばれた南三陸町の中でも、特に究極の陸の孤島として孤立しながら、地区で唯一残った公民館の建物の中で、行政の助けもなく200名が数週間をサバイバルし、今も自力でワカメ養殖事業再開にこぎつけた馬場中山地区に、昔から伝わる呼びかけ合いの言葉があります。それは『貧しくなる時も儲ける時もみんな一緒』です。