友人のネパール人がこう言った。
ぼくの国は、おそらく古代には素晴らしい国だったんだろう。だって、ブッダが生まれたんだからね。でも、今のネパールは…。
それにしても、ぼくら外国人の間では、いつも意見が一致するところなんだけど、この日本と言う国は、現在の地上に存在する、本当の天国だよ。
ぼくはね、ネパールに帰るたびに、戸惑う事が多過ぎるんだ。
しょっ中頭を下げて「サンキュウ」って言ってしまうもんだから、みんな呆れるんだ。何に感謝してるんだ?って。日本じゃあたりまえに無意識にやっている事が、他の国じゃ全然通じない。
日本にくる前は、気にならなかったんだけど、ぼくの国はあまりに汚ない。今じゃ我慢できないから、外に出る時にはマスクをしてるんだ。バスのなかで、みかんの皮を平気で捨てるもんだから、やめろって言って皮を拾ってカバンに入れたら、「お前は日本に行って、おかしくなったな。こじきみたいだ。」って、友達に言われたよ。
日本じゃあたりまえだって、言っても誰も信じない。何を話しても「冗談だろ」って返ってくるんだ。
例えば、「日本じゃいたるところに自動販売機があって、深夜でも温かい飲み物や冷たい飲み物がどこでも飲める」って教えてあげても、絶対に信じない。
「そんなの嘘だ。だって、中にはお金が入っているんだろ。夜中に誰も見ていなかったら、すぐ壊されて取られちゃうじゃないか!」
「いや、そりゃ、ネパールならね。」
「何言ってる。ネパールだけじゃないよ。インドだって、中国だって、世界中どこ行ったっておんなじだよ。」
「そうだね。日本以外ならね。」
「あり得ないよ。そんな国があるもんか。泥棒がいない国なんて、この世にある訳無い。あったら、そこは天国さ。」
「いや、本当なんだが…。」
ぼくら、日本に来た事があって、この国を実際に知っている外国人の間でよく話し合う事なんだけど、この地上に存在する本当の天国だよ、日本は。

その話を聴いて、ナルホドって思ったのは、石原慎太郎が、「自動販売機がこんなに至る所にある国は日本ぐらいだ」って言っていたけど、他の国じゃあ、そもそも自動販売機を外に設置できないんだね。つまり、自動販売機をこれほど設置できるほどに、治安がいいとも言える訳だ。
日本にやってくる留学生仲間のイベントについて、前に聞いた事がある。
古株の留学生たちが新入りの留学生たちを、ちょっとした実験に誘うのだ。その実験は学食で、千円ぐらい入れた財布をテーブルに置いて、離れた場所からその財布がどうなるか観察するというものだ。古株は新入りにあの財布はどうなると思う?と尋ねる。新入りは、当然盗まれるだろう、と答える。古株は嬉しそうに、いやいやそうはならないんだな、と返す。
その財布が、レジ係りに届けられるのを目にして、驚かない新入りはいないという。世界中のどこの国からの留学生だろうと、みな一様にひどく驚くのだそうだ。
それを聞いて、こっちの方が驚いてしまうのだが…。
ともかく、ニッポンの常識は世界の驚きの的らしいのだ。