あるところに、英語と公民が苦手で、理科が得意っていう
中学生の男の子A君がいました。

わたしはその子に英語を教えている時に

「ここだけの話、ハッキリ言って 英語ができなくたって、
死にはしないよ。

A君は、理科が得意なんでしょ?

誰にでも得意不得意、向き不向きなんてあるんだから、
英語が苦手だからってそんなに気にすることないよ。

公民が苦手でも、大丈夫だよ。

A君がいつか就職して、彼女ができて、結婚して
お嫁さんに子どもを産んでもらって、
一生懸命働いて、税金を納めることができるようになったら、
それが公民のお勉強とおんなじ事だよ。」

そしたら、A君は

「俺、彼女なんてできないよ。
きっと、一生ひとりだよ。
前、オッサンクサイ顔、って言われたことがあるし…。」

「誰がオッサンクサイなんて言ったの!?
ヒドいねぇ~!全然カッコいいよ!
それに、若い時年上に見られる人は、
年取ってからも変わらないんだよ♪」

A君は、わたしの結婚指輪を見て
「先生、結婚してるの?」

「うん、二回目(#^.^#)。」

「俺の母ちゃんも!。だから父ちゃんは義理の父ちゃん。」

それからA君は色んなことをお話ししてくれました。

お母さんがうつ病になったので、起きれない時があるから、
お料理やお洗濯なんかの家事を、お姉ちゃんと手分けしてやっていること。
毎日、自分のお弁当を自分で作っていること。
自分の自由になる時間は、アニメを観たり、ゲームをしたりして
過ごしていること。

「二次元の世界は裏切らないから、大好きなんだ。
だからアニメとか、ゲームの新しい技のことで頭がいっぱいで、
英語の単語や文法なんて全然頭に入らないよ。」


「そっかぁ…。わたしは四次元とか五次元とか、
そういうお話が大好きで、そういうお話を始めると目がキラキラして止まらなくなっちゃうよ。でも、ここではそういうお話は禁止でクビになっちゃうから、やめとくね。」

「えー、先生、それってヤバくね?」

わたしはA君の頭に手を当てて、
A君の頭いっぱいに入って詰まっているものを吸い取るイメージをしました。

「英語ができても、お料理やお洗濯ができない人もいるんだよ。
だから、A君はすごいよ。」

「えー。ご飯炊いたりとか、洗濯って、みんなできるでしょ。
当たり前じゃないの?」

「そんなことないよ。英語話せるけど、お料理やお洗濯ができない人もいるよ。
A君は充分カッコいいよ!じゃあ、わたしを彼女にして!?」

「えー。だって、先生、俺の母ちゃんより歳上だし…
人妻だし…。」

そんなことをひととおり話したあと、
A君は急に英語の問題集を自主的にスラスラ解きはじめ、
横で話を聞いていたBちゃんも、苦手な社会科の問題集に取り組みはじめたのでした。

夫婦間の問題、家庭環境。
これは特別なことじゃない。
今の日本ではだれにでも起こりうるお話だと思う。

両親が喧嘩をしているのをみることほど
子どもにとって辛いことはないと思うし、

逆に家庭内別居みたいに冷たい環境にいるのも辛いことだと思う。

両親がいなくて施設や親類に預けられている子も、
辛い思いをしているかもしれない。

「あの子は片親だから。」とか「施設の子だから。」
って大人同士の噂話をきいた子どもたちが、
それを何か悪いことのように感じて、そういう子をのけものにしたり見下したり。

何か不満のある人は、いつも、誰か「共通の敵」を作って、
それを集団で叩くことによってスカッとしたり、
仲間意識を作って安心している。

そういう世界にうんざりした子達が、二次元の裏切らない世界に没頭する気持ちも
わからなくはないけど。

自分は一生誰にも愛されない。結婚なんてできない。あるいはしたくない。
わたしが子どもを産んでもいいんだろうか?産めるんだろうか?
育てていけるんだろうか…?

…って思っている人が、わたしのまわりにゴロゴロいるから
これから日本ってどうなっちゃうんだろう?って心配になったりして。

完璧じゃなければ愛されないわけでもないし、
誰かを愛してはいけないわけでもないし、

完璧じゃなければ幸せになれないわけでもないし、
誰かの幸せを願ってもいけないわけじゃない。

わたしの知っている世界は、ごく一部の小さな世界かもしれないけど
きっと似たような問題を抱えている人は、他にもいると思うから。

完璧じゃなくても、誰かを愛してもいいし、幸せになってもいいんだよ。
誰かに愛されたくても、きっとそんなの無理だろうな。って
自分からトゲトゲのウニみたいになっちゃわないで。

教科書のお勉強の前に、もっと大切なことがあるんじゃないかなぁ…。