気をつけなければ呼吸を忘れてしまうような90分を過ごした先に、僕たちの求めていた結果は待っていなかった。

折れてしまうほどに奥歯を噛み締めないと立ち上がることができなかった試合後。

「こんなに自然に涙って出てくるんだな」それが感想だった。

 

 

指先くらいは触れた気がしたのに、掴むことはできなかった。

僕たちは、負けていない敗者になった。

そして、決まった事実は変わらない。僕たちはJ1に昇格できなかった。

 

 

今日再び、今年のモンテディオ山形の対戦スケジュールを見返してみた。

あの試合に負けて、あの試合にも負けて、またあの試合にも負けたなと少しだけ苦笑いをこぼしながら、全ての試合にそれぞれの思い出があって、なぜか鼻の奥がツンとした。

 

足の小指を扉の角にぶつけた時は、これでモンテが勝てるならと歯を食いしばった。

お金の入った財布を落とした時も、これでモンテが勝てるならと前向きに考えることにした。

 

そして今、もうあのチームが闘う姿を見ることができないのかと思うと、

またまたそんなご冗談を、なんて現実から目を背けている自分がいたり

受け止めることから始まるのだと、優秀なサポーターぶってみたりする自分がいる。

 

 

 

8連敗のどん底。

プレーオフ進出の歓喜。

歯痒さが上塗られた敗退。

円相場なんて可愛いくらいの乱高下を繰り返した僕たちの感情だけど、これだけは言えることがある。

 

「2023年という年はモンテディオ山形のおかげでとっても楽しかった」

 

笑っちまうくらいに。

そして、少し涙が出ちまうくらいに。

 

もちろん寂しい。悔しい。

 

全身から守護神オーラが溢れ出ている、ごっちゃんが守るゴールがあって

チームを救い続ける鉄壁を築いてくれる野田ちゃんが気を吐いて

レンタルで来たチームなのにモンテのエンブレムを握りしめながらゴールを守ってくれる西村さんがいて

ユースから育ったチームを羽ばたく先にモンテを選んでくれた小野ちゃんがいて

飄々と相手をいなす川井さんに

説明不要のバンディエラに

そのままでいればJ1に上がれる環境を蹴ってまでこのチームを選んでくれたレオがいて

モンテの頭脳の No18は今年も憎いくらいにかっこよくて

誰も気づかないうちに裏を取ってる優介さんがいて

何度も右サイドを抉りながら決定的な仕事をしてくれたゼインがいて

こっちが敬礼したいです、と思うくらいのチアゴさんがいて

大怪我から帰ってきた姿はさらに頼もしくなったYOSHIKIがいて

ベンチ入りのメンバーも、それ以外のメンバーも、全員がいてモンテディオで、全員が大好きだった。

全員を応援している時間が大好きだった。

そしてその時間はとってもとっても楽しかった。

 

 

 

これは宿命だから、きっと、そうだ。

いや、絶対にだ。

来年のチームはまた違う顔ぶれになっている。

 

来年のチームに建哉さんはいない。

その他にも、モンテのユニフォームを脱ぐ選択をする選手はきっといる。

だけど、僕たちの時間は続く。

 

この事実にはいつまで経っても慣れないけれど、しかし変わらないことは

きっと来年も青白の侍たちは、全ての試合の中で1秒も勝利から目を背けない。

 

 

 

雨が降った日もあった。

風が強かった日もあった。

暑い日、凍えた日。

色々なことがあった。

そして、来年もきっと色々なことがある。

 

時に苦しいことがある。

時に嬉しいことがある。

だけど、どんな時も、僕たちはモンテディオ山形が大好きだ。

 

 

僕たちの指揮官はきっと、最後のページを白紙のまま残したわけではないと思う。

 

「この物語を、来年の昇格につなげる」

 

この1文が書き込まれたページの先に新しい物語は続くはずだ。

 

唯一決まっていることは、最後の2ページに付き合ってほしいと僕たちに語りかけてくれた指揮官が、来年用のまだ何の書き込みもない新しいノートの準備をしてくれたことだ。

彼が、そのノートにどんな物語を書いてくれるのかを期待しようじゃないか。

 

 

今年のチームが大好きだった。

やっぱりこの文章を書いていると、溢れでる涙を抑えることが本当に難しい。

 

もう、応援ができない。

なぜなら、モンテは次に進めなかった。

明日、試合をするのは僕たちではない。

 

だけど、応援の代わりにできることもある。

それは、やっぱり感謝だと思う。

 

もう大人になってから長い時間が経ったのに、

こんなに誰かの勝利を願えることも、

こんなに誰かの敗戦を悔しがれることも、きっと幸せなことなんだから。

 

 

来年のモンテディオが進む旅路はどんな旅路か。

また今年みたいに、急斜面を好んで走るかもしれない。

もしかしたらなだらかな道を進んでくれたりするかもしれない。

いや、なだらかな道を進むことはないな。それだと個性が死んでしまう。

要するに、どんな道を突き進もうとも僕たちの並走は続く。

 

 

最後にもう一度。

「2023年という年はモンテディオ山形のおかげでとっても楽しかった」

この感情を僕に与えてくれたチームに改めて感謝する。

 

IA Iの地で、あの日僕たちは、声を枯らし、祈り、下唇を噛み締め、涙を流した。あの日見た景色を忘れる必要はない。

あの日からもう始まっているんだ。

僕たちの新しい旅路。

必ず全員で辿り着こうじゃないか。

今年見えなかった旅のゴールへ。

 

来年の今ごろ、僕たちは上のステージで闘うために刀を磨いているはずだ。

 

青白の侍たちよ

どん底の時も、いつでも決戦の地に響いた歌声を忘れないでほしい

 

「青白の侍よ 来年も共に戦おう」

 

 

 

僕は今日も、明日も、そして来年も、やっぱりモンテディオ山形が大好きだ。

 

向かい風が吹けば飛べば良い。追い風が吹けば走れば良い。一番怖い事は風をかんじないこと。

さぁ掴むぞ。来年こそ。

 

 

 

今年も読んでいただきました皆様本当にありがとうございました。感謝の言葉と共に筆を置きます。
来年も共に響かせましょう!天童の空に勝利の歌を!

 

 

白橋昌磨