地味でも意味のある一文 国の事業で「テレワークでの業務が可能」になる、が実現するまで。 | 若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog

地味でも意味のある一文 国の事業で「テレワークでの業務が可能」になる、が実現するまで。

 

とても地味で、誰にも気が付かれないことかもしれません。しかし、僕はこの一文を仕様書に入れるに至った経緯と、それを実現してくださった方々に敬意と、一緒に取り組んだ育て上げネットの仲間に感謝をしたいです。

 

いまや企業において、いや、NPOであっても「テレワーク」として自宅やメインの職場以外で働くのが当たり前になってきています。下部に来年度の人材募集してますが、少なからず育て上げネットでも必要に応じて「テレワーク」を選択できる仕事が増えました。

 

子どもが調子悪いとか、介護があるとか、台風が近づいているなんていうとき、自宅からも仕事ができる環境(もちろん業務範囲に依存します)があるのは、安心感や働きやすさにもつながると考えています。

 

ことの発端は、職員からこんな話があったからです。受託している業務に置いて、仕様書に「やってはダメとは書いていない」ので、業務の一部をテレワークで職員がこなしていました。それは子育て中であったり、車いすでさまざまな場所に移動する負担がある職員です。彼らは適切に業務を行っていましたが、彼らがその業務で担った部分として支払った給与を返還するよう指導があった、というものでした。

 

そもそも、その業務は特定の場所に行かなければならないとか、テレワーク禁止とあればやりません。でも、ダメと書いてないので適切に担える人材がこなしていました。それをなぜか返還せよ、と言うわけです。

 

(ここからは想像です)

僕は行政の方々で、仕事がしづらいように仕向けるようなひとはいないと考えています。実際、本件も想像ですが「実際に業務をそこで行ったことが明確にしづらい」という理由で、特定の場所に不在であった人間の人件費は執行しづらいので出せないと判断、その結果としての返還要請だったと考えています。

 

しかし、そう言われても「はいそうですか」というわけにはいきません。そもそもダメと書いてなく、適切に業務を遂行していたからです。それを後から返還と言われても納得できません。支払ったお金を返すだけの資金だってありません。何より、テレワークで一生懸命働いた職員に伝えることばもありませんし、働き方の多様性は法人のみならず、日本社会のものであるためです。

 

また、行政の事業で難しいのは、よくなれば全体に影響するとともに、悪く変われば同じく全体に影響してしまうためです。そこで、さまざまなひとたちに相談しました。名前は出しませんが、僕はちょっと感情的になっていたところを、理性と理屈で説明してくれました。どうしたらいいかも一緒に考えてくれました。

 

そして、実際に「これはおかしい」ということを段階を踏んでコミュニケーションを取って、そのときは「返還なし」となりました。しかしながら、「ダメと書いてない」から何でもやっていいわけでは当然ありませんし、本当に「ダメ」と書かれるもの困ります。そのため必要なのは、「それをしてよい」としっかり記述していただくことです。

 

記述してほしい旨を伝えるまでは僕らでもできますが、その先は関係各所の調整など、僕らでは手が届きません。担当者に祈るような気持ちで託すしかありません。もちろん、なぜテレワークという業務が認められるべきなのかは伝えました。ダメと書かれればやりませんとも伝えました(実際は、本当にそうなるとかなり困ることはあります)。

 

そして先日、新たな仕様書を眺めていたところ、写真にある一文が入っていました。これで国の当該委託事業においては「テレワークで仕事をする」ことが可能になりました。

 

これはこれで地味ですがとても意味のある一文だと思います。そして、ここから先は行政分野の事業を担うことがある方々とともに、さまざまな行政の事業において、それは行政そのものが行う事業においても、「テレワーク」で仕事をすることを選択できるようにしていく必要があるということです。既にテレワークでやれるよ、やっていいって書いてあるよという事業があるのかもしれません(あれば教えてください)が、そうでない場合は、このような一文を入れることで、特定の場に行けなくても業務を担えるスキルなどがあれば一緒に働けるようになるということです。

 

当たり前にできることを、社会全体で当たり前にしていくにはひと手間、ふた手間かかりますが、その積み重ねによってこれまで働きづらい環境にあって、働くことをあきらめていたひとにも道が拓けていくと思います。

 

※本件に関して、感情的になった僕に適切な助言をくださった方々、希望を実現してくださった方々、そして言われたままにやるのではなく、変えることにチャレンジしてくれた育て上げネットの仲間に感謝します。

 

さて、育て上げネットでは来年度(すぐというのもあります)から一緒に若者、子どもたちを支えてくださる仲間を募集しています!事業が少し広がることもあり、多様な分野・職種で仲間を募っております!!

 

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