終わりに--どこから電気はきているか?

 

             275kvの信濃東信線(上田市にて)
 

 最初に、我が家までどこの発電所でできた電気がどこを通ってとどいているのだろう、と書きました。

 
 結局、分かったのは、長野県で使われている電力の大部分は県外からきているということでした。長野県は水力発電の宝庫といえる河川と谷、落差に恵まれていますが、おいしいところは大部分、東京電力と関西電力が発電水利権をおさえていて、県外で利用されています。
 その送電線系統の一つが、②③で紹介した東京電力黒部幹線です。
 
 長野県で消費される電力には、三つの入り口があります。一つが、新潟県の上越火力発電所から長野市の新北信変電所、上田市の東信変電所、松本市の北松本変電所をへて塩尻市の信濃変電所へとつながる275kvのルートです。第二が、岐阜県の高根第一発電所から野麦峠をこえて塩尻市の中信変電所へと入る275kvのルートです。第三が、愛知県豊根村の豊根開閉所から、駒ケ根市の南信変電所をへて塩尻市の信濃変電所に至る500kvのルートです。
 長野県内の基幹系統には500kvと275kvの二種類があり、信濃変電所でつながっています。信濃変電所と中信変電所も275kvでつながっています。信濃変電所は500kv系統と、275kv系統をつないでいるだけで、77kvの配電用系統への変電はしていません。
 500kvおよび275kvの基幹系統から、154kvと77kvの系統へ変電・給電しているのは、これまでふれた新北信、東信、北松本、中信、南信の各変電所および、佐久変電所です。
 
 県外とつながる三つのルートのうち、電力が入ってくるのは、上越火力発電所からと、高根第一発電所からの、二つのルートで、南信変電所から豊根開閉所へのルートは電力が愛知県側へ流れている場合が多いようです。
 
 こうして、私が関係のふかい上田市塩田(西より)には、上越発電所から東信変電所をへて配電変電所である塩田変電所から電力が供給されているということがわかりました。
 
 ところで、電力系統はいつでも同じ方向で電力が供給されているわけではありません。水力発電には渇水期があります。太陽光発電は昼間だけの発電ですし、天候で発電電力が変化します。各種の電源を組み合わせ、流れの向きも切り替えて系統運用がなされています。
 
 長野県と、とくに関係の深い東京電力との関係にもふれておきます。まず、もうお馴染みになった黒部幹線ですが、埼玉県の秩父に入ると、地元の荒川水系の水力発電所の電力とともに秩父市はじめ秩父盆地に電力を供給します(じつはその前に、群馬県上野村にも供給してから埼玉にはいるのですが)。そして、普通はさらに残った電力を中東京変電所へとおくり、首都圏の電源の一部を担っています。
 もう一系統の在来型系統は甲信幹線で、梓川、高瀬川、犀川などの水力発電の電力を塩尻送電所から山梨県に送っています。
 
 また長野との関係で目立つのは、東電が福島第一原発の津波事故を引き起こして以来、強化されている、60Hzの中電、北陸電、関西電力などから、50Hzの東京電力に電力を融通するための、周波数変換系統についてです。このため、東京電力は長野県内に、大規模な新信濃変電所(周波数変換施設、直流・交流変換施設をふくむ)、高瀬川と梓川の揚水発電所、さらにこれらを首都圏へ送る二系統の500kv送電線系統である安曇幹線(新信濃変電所から新秩父開閉所まで)をもっています。そして、最近できたのが、岐阜県の中部電力の交直変換所から、新信濃変電所にある東電の直交変換所を結ぶ直流送電線です。
  
 もう一つ東電の施設で興味深いのは、西群馬幹線に付随する揚水発電所である神流川発電所です。揚水発電所は、上下二つのダムの水を利用して、電力が余っているときに下のダムの水を上のダムに電力でくみ上げ、必要な時にその水を使って発電するという、電気の貯蔵システムです。神流川発電所がユニークなのは、下のダムは群馬の神流川にあり、上のダムは長野県南相木村の南相木川につくられた南相木ダムだということです。神流川は利根川水系、南相木川は千曲川水系です。揚水発電所で対になる上下のダムが違う県の違う水系の川にあるという点がユニークです。
 
 以上で、電力系統への興味について、ひとまず終わりたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

上田市塩田から見える送電線網

 

        中部電力275kv信濃東信線と東京電力154kv黒部幹線の交差

              中部電力東信変電所 送電線接続部分

 

 私にとって身近な上田市の塩田地域から見える送電線網について述べてみます。

 

 一番目立つのは山の稜線の一部の空に突き出して見える、中部電力275kvの基幹幹線である信濃東信線です。日本海岸にある上越火力発電所から長野市の新北信変電所をへて東信新北信線が東信変電所に入り、信濃東信線は、そこから塩尻市の信濃変電所へと至ります。

 そして、山すそを東信変電所から配電変電所に77kvで給電する配電用の送電線が見えます。

 

 それにくわえて、これまでにも紹介してきた東京電力の154kv黒部幹線が西からきて、信濃東信線の下をくぐり上田盆地に入り塩田平を横断しています。すこしわかりにくいですが、上の写真の左の二本の鉄塔の右下に、黒部幹線の矩形鉄塔が一つ見えています。

 塩田平には西部に塩田変電所、東部に東塩田変電所という二つの配電変電所があり、77kvの送電線から受電して6.6kvの配電用高圧線に降圧して電柱に架設して地域のすみずみまで届けます。そして、柱上変圧器で100v、200vに変圧して各家庭などに届けています。

 

 上田市街の北方の太郎山の山すそをはしる東信坂城連絡線には、77kv二回線に加えて、屋代変電所で変圧した33kv送電線二回線が同架され鉄道変電所や工場の高圧受電にむけて送電しています。

 

        

 千曲川を超える電線と鉄塔(上田市)

 

 

  千曲川右岸、上田橋下流の上田警察署ちかくに、鉄塔が立っています(上)。この鉄塔の対岸にも対になる鉄塔があります。(下)

 どちらも送電線に使われているような立派な鉄塔ですが、二本の鉄塔の間に張り渡されて、千曲川を横断している電線は、送電線ではなく、6.6kv二回線の配電線と電話線です。

 この二本の鉄塔の間隔は280mくらいあり、普通の配電線を川越しさせるために、立派な鉄塔で支えているのです。

 

 

   二本の鉄塔に支えられて千曲川を横断した電線は、陸側ではすぐに普通の電柱に引き下ろされて、見慣れた電線になっていきます。街並みに普通に張られている電線が、川を超えるために大きな鉄塔に支えられていることが、観察するとよくわかります。

 しかし、配電線の渡河のためにこんな立派な鉄塔が使われているのは、私はここではじめてお目にかかりました。

 

 先日、写真を撮ろうと思って現地に行ったら、左岸堤防の道の下流側に水天宮というお宮の前に駐車スペースがあり、よく観察できました。写真の撮り方は我ながら、鉄塔・電線撮影の初心者で、まだまだと言わざるを得ません。さらに工夫してみたいと思います。