社会的企業と「行政」②
いつも、記事に載せたいと思うテーマが移ろいがちで、「①」とつけたタイトルのあと、なかなか「②」を載せられずにいます…。いつかすべて必ず載せます。
今回は、先日の「社会的企業と「行政」①」に呼応する記事です。
前回、
「「社会的企業」を、「公共に資する活動を政府以外が行う」、という意味でみれば、「第三セクター」や「独立行政法人」のような、行政法上の分類に位置付けることも可能かもしれない」
と記しました。
今回は、その2つの組織を中心として、NPOや営利企業についても言及しながら、国や地方公共団体と社会的企業との関わり方について見てみたいと思います。
まず、「第三セクター」は、厳密には行政法上で明記されている用語ではない。
国または地方公共団体を第一セクター、民間企業を第二セクターと位置づけ、両者が共同出資によって設立した第三の法人、といった意味である。ただ、国や地方公共団体は、いうまでもなく行政法上の概念であり、それが民間の企業と協働するという意味では、行政にまたがるものと捉えることができる。
第三セクターは、「官ではないが、営利企業である民とも違う」という意味で、NPOらを指すこともあるが、日本ではこのような意味で使われることよりも前述の使われ方のほうが多いようである。
具体的には、JRなどの赤字のローカル線を引き受ける鉄道第三セクターは地方を中心に数多く誕生している。その他、観光、農林水産、地域開発などの事業を行っているところもある。
一方、後者の「独立行政法人」は、行政法上の行政主体として明記されている。
「その事務・事業が公共上の見地から確実に実施されるべきものであり、国自らが直接実施する必要はないが、民間に委ねることが適切ではないものなどを効率的、効果的に行わせることを目的とするもの」(今村成和著・畠山武道補訂「行政法入門[第8版]」有斐閣双書、2005年、27頁)を指す。
国は、個別法によって各独立行政法人の役割や目的について定めるとともに、人事、財務、組織、業務内容について関与権を有する。そのため、前者の「第三セクター」よりも、国との関わり方が強い。ただし、役員・職員については、国家公務員の身分を有する者のみとするもの(特定独立行政法人)と、公務員の身分を有さないものとがある。
具体的には、統計センター、国立印刷局、造幣局のほか、事業仕訳で話題になった製品評価技術基盤機構など日本では8つある。
上記の性質について、社会的企業との比較を行うことを前提に、簡潔に示すと、
「第三セクター」…「公共性が高く半官半民で設立」=その地方において公共性が高く必要と判断される事業で、行政上の観点からも支援することは妥当であるが、民間による活性化が求められるもの。
「独立行政法人」…「極めて公共性が高く官による設立」=極めて公共性の高い事業で、多くは行政が主導すべきものであるが、効率性を考慮すれば民間の形式を採用する必要のあるもの。
といったところであろう。
一方、
「社会的企業」…「公共性は高いが民間で設立」=特定の公共性の高い事業を行うが、国や地方公共団体が従来提供してきた事業とは異なっており、民間で独自に対応して強化していくべきもの。
であるから、国や地方公共団体との関わりでみると、
「独立行政法人」>「第三セクター」>「社会的企業」
という公式は容易に想像がつく。
ここに、NPOと、一般の営利企業を加えると、
「独立行政法人」>「第三セクター」>「NPO」>「社会的企業」>「営利企業」
となることも想像に難くない。
NPOは、その名のとおり「非営利」の組織、すなわち「公共に資する活動をする組織」であり、NPO法によって法的にもその立場が明記されている。認定NPOは、政府によってその活動が公共性が高いと認定されているということでもあり、第三セクターのように政府が設立から支援するものとは違うが、助成金や寄付金控除などの形で間接的支援を受けている。
他方、営利企業の事業内容は自由であり、様々な業種が含まれる。公共性はもとより、純粋に営利を追求することができ、内部留保も可能である。そのため、国や地方公共団体が支援すべきものとは、性質の異なるものもある。
社会的企業は、NPOのように「公共に資する活動」を行いつつ、一般の営利企業のように自ら事業を行うことで持続的に活動を遂行することを意図しており、寄付金などによる活動は目指さない。反面、その事業は純粋な営利目的ではなく、公共に資するミッションを達成するために必要な範囲のものであり、利益の内部留保も多くは適切とはみなされない。まさに、NPOと営利企業の中間、というところであろう。
このように、社会的企業について、「第三セクター」や「独立行政法人」と比較すると、両者のように公共性が高いことは共通しているが、その度合いは同一視され得ない。行政法上の「独立行政法人」の定義をみれば、社会的企業と性質を同じくしてもおかしくはないが、具体的な日本の「独立行政法人」の実態からすると、事業収入を得られそうなものではない。その点、「第三セクター」のほうが、社会的企業の解釈の仕方と共通点が多い。ただし、社会的企業は政府や地方自治体との共同出資となると、自由闊達な民間活動ではなくなる恐れがあり、やはり同一視することは困難である。
さらに、「NPO」と「営利企業」と「社会的企業」の間の差を打ち消すこともできない。
厳しく言及すると、社会的企業の世界では、NPOのように寄付金のみでの事業展開は無能とみなされる。営利企業のように、営利の純粋な追及を行えば、詐欺と揶揄される。
しかしこのことは、社会的企業は寄付金を利用したり募ったりしてはいけないとか、営利事業を行ってはいけないといったことを意味するのではないと思われる。
そのため、それぞれの性質的境界線が時にあいまいであることが否めないのである。
ただし、前述の議論ではっきりといえるのは、
国や地方公共団体との関わりでみた場合、そのミッションや事業内容に着目すると、
「NPO」>「社会的企業」>「営利企業」
となる、ということである。
このことは、社会的企業の定義の問題と深く関わってくることであるし、また今後も継続してアップする予定です。
社会的企業と「行政」①
「社会的企業」は、自ら事業を行い収益を獲得する組織であり、社会貢献たるミッションを達成することを目的とする組織である。そのため、「企業」と位置づけられることもあれば、「非営利組織」と位置づけられることもある。
「企業」と「非営利組織」のどちらに位置付けるのが適当か、という議論は、「社会的企業」の位置づけを語る上で比較的よくみられる議論である。以前にこのブログのどこかの記事でも、そうしたことを書いたことがあるかと思う。
これらに共通しているのは、いずれも「民間」の立場からの位置づけである、ということである。
今回は、少し見方を変えて、「行政」の立場からの位置づけについて見てみたい。
というのも、そもそも私は、今年度から大学院で「社会的企業」について研究を始める学生であるが、
私が所属する早稲田大学大学院公共経営研究科は、高度専門職業人を養成する専門職大学院である。
(専門職大学院についてはこちら:http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senmonshoku/gaiyou.htm )
専門職大学院は、実務家出身の教員の割合が高いことや、インターンシップや事例調査など実務的な研究に力を入れていることなど、研究職の大学院との違いはいくつかある。課程の呼び方も、「修士課程」ではなく「専門職学位課程」という。
しかし、一般にはまだ、専門職大学院、といっても肩書きが「○○修士(専門職)」となるだけで、卒業したからといって特別に「実務の専門家」とみなされるわけではなく、普通の修士卒と同じような印象がある。実際の実務経験が合わさって、初めて真の「実務の専門家」となるのであろう。
また、当研究科には博士課程もあるが、そちらは研究職の大学院である。
ちなみに私は、将来的には研究職を目指しているが、「社会的企業」は極めて実務的な分野であり、実務に根差した研究が不可欠だと思っている。そのため専門職大学院への進学は選択肢としてはある程度適切かと思っている。
前置きが長くなってしまったが、日本では一般に、Public Managementに関する大学院は、特に専門職の場合、「行政」を主体とする。Public Managementは文字通り、「公共」を「マネージメント」するのであり、その主導的役割は従来の日本ではまぎれもなく「官」であった。公に資する活動はすべて、政府によって管理されるべきとの考えが一般的であった。そのため、「公共政策」「公共経営」といった「公に資する活動」を研究する分野では、「行政」が主体であり、専門職大学院の場合、「行政官」を養成しようという傾向がある。
もっとも近年は、「官」だけでは担いきれない数多くの事象が起こっている。たとえば、高齢化による福祉・医療分野の政策拡張の必要性や、女性の社会進出の広がりによる少子化、それによる乳幼児を含む教育のあり方の変貌などである。財源上の問題や、人員やノウハウの蓄積の問題からして、それらのすべてを「官」で賄いきるのは実質的に不可能であるし、非効率である。
そのため、「社会的企業」を含む、各種企業や非営利組織は、それに対応する事業やボランティアを提供する必要に迫られている。政府は今や、そうした政策を「主導する」というよりは、民間と「協働する」という形式を取ることが望ましいとされている。「新しい公共」政策は、よく言われる「官民一体の政策」の1つである。
よって、「社会的企業」を、「公共に資する活動を政府以外が行う」、という意味でみれば、「第三セクター」や「独立行政法人」のような、行政法上の分類に位置付けることも可能かもしれない。
次回は社会的企業と行政の在り方について、もう少し踏み込んだ記事を載せていこうと思います。
「社会的企業」を中心に研究するKNのブログ
キーワード:社会的企業、ソーシャルエンタープライズ、NPO、CSR、「新しい公共」、途上国支援
