社会的企業研究 -Research of Social Enterprise- -2ページ目

社会的企業と「ヨーロッパ」

一般に、社会的企業の発生や認識のされ方において日本は他国と比べれば後発的である。よく言われる比較論として、ヨーロッパ諸国とアメリカにおける社会的企業の性質的違いが挙げられる。日本はそのどちらとも異なっており、日本を加えた三者間比較もされている。


今回はそれらのうち、まずヨーロッパの社会的企業について概観したい。

ヨーロッパの社会的企業を概観する前提として、ヨーロッパでは古くから市民による協同組合(日本でいう生協/coop)が発展しており、特にイギリスで「ゆりかごから墓場まで」(生まれてから生涯を終えるまで、市民同士で助け合って生きていこう、といった意味のスローガン)の精神が根付いていることは特徴的である。


そのため、政府、(一般の営利を目的とする)企業とは一線を画しながら、社会福祉分野を中心に市民の自助努力による各種活動が展開されてきた。

社会的企業もそのような中で育まれてきた側面が強く、経済協力開発機構(OECD)は、「社会的目的を有する協同組合への関心が高まったことで、ヨーロッパの社会的企業に関する議論は大きく発展した」(OECD編著、連合総合生活開発研究所訳:「社会的企業の主流化―「新しい公共」の担い手として」30頁)としている。

ヨーロッパの社会的企業の起源はこのような協同組合であると捉えることが一般的であろう。


一方アメリカでは、古くからボランタリーな活動が市民の間で盛んに行われてきた背景から、企業・個人ともに寄付文化が醸成されてきた。政府にも企業にも埋めにくい社会保障の穴を、ボランティア活動で埋めようという動きが活発であったことから、NPO団体の活動が進展した。そのためアメリカの社会的企業はNPO活動の発展が起源であると考えられる。(詳細は別の記事で。)

その点、日本では古くから、社会保障は「お上の政策」と考える風潮が強く、市民の自助努力で社会を向上させようという動き自体が起こりにくい環境であったとされる。日本の社会的企業の動きが後発的であるのはこのような点に起因している。

話をヨーロッパに戻すと、EU諸国と一口にいっても、各国によって当然差異はある。
前述のOECDによる2009年の研究では、OECD加盟国のヨーロッパ諸国における社会的企業を組織モデル別に分類すると、

①「協同組合モデル」:イタリア、ポルトガル、フランス、ポーランド

②「会社モデル」:ベルギー、イギリス

③「「自由選択形態」モデル」:フィンランド、イタリア


であるとしている。
上記の各国にはそれぞれ単一のモデルしか存在しないわけではなく、そのためイタリアは①③2つの形態が存立している。

それらの組織を概説すると、

①「協同組合モデル」は、「社会的企業が、社会的目的によって特徴づけられる特定の協同組合事業体として、法的に規制されているもの」。

②「会社モデル」は、「活動の社会的成果と利益分配に対する厳しい制約に特徴づけられて、営利企業形態から抜きだされているもの」。

③「自由選択形態モデル」は、「特定の法的形態は選ばれていないが、社会的な成果にかかわって法的に定義されているもの」。

とされている(OECD、前掲書、36頁)。
前述より引用しているOECDの編著書には、「OECD企業家・中小企業・地域開発センター局」により広く欧米諸国の社会的企業について概説されているが、日本では比較的、EUの大国イギリスを研究対象とされるケースが多い。


そのため次の記事では、ヨーロッパ全域からイギリスに特化した場合の社会的企業の動きを扱いたいと思います。

「かものはしプロジェクト」共同代表・村田早耶香さんの著書を読んで

社会的企業や途上国支援に関心のある人であれば、

「NPO法人 かものはしプロジェクト」の名前をご存知であろうと思う。


先日、「かものはしプロジェクト」共同代表の村田早耶香さんの著書、「いくつもの壁にぶつかりながら 19歳、児童買春撲滅への挑戦」を読ませていただいた。


私は、社会的企業の政策的・制度的支援に携わることを目指し、研究者になることを志しているので、論文の執筆準備をするに当たって、基本的には学術書を参考文献としている。

また、社会的企業は実務が先行している分野であるだけに、学術書のほとんどに事例紹介としてあらゆる社会的企業の実態や起業家の方のインタビューが掲載されている。

そのため、実務家の方の体験記や自伝にはあまり手をつけていなかったのが実情であった。


上記は90%程の理由である。

残りの10%の理由は、これは私の偏見であればよいのだが、実務家の方が書かれた本は、単なる自分の経歴の自慢であったり、既存の体制への批判が書かれているだけかな、と思ってしまう部分があった。私の周りにいた「起業をしたい!」という人が、どちらかというと自分の考えや経験にかなりの自信を持っていて、成功体験を語るのが好きな方が多かったからだ。


しかし、どんな研究をするにも実務に関わらなければ見えてこないことは多いと思う。

これからもっと、積極的に実務家の方の話を聞きたい。


そこで、わずかながら以前に寄付をさせてもらったことのある「かものはしプロジェクト」の代表である、村田さんの著書を真っ先に読ませていただいたのである。


そこでいくつか感銘を受けた箇所があったのだが、最も大きかったのは、村田さんも社会貢献について私と同じような考えを持たれていたことだ。


具体的には、私が以前、

「社会的企業に関する私見」http://ameblo.jp/socialenterprise/entry-10805664511.html

の7段落目で触れていたようなことである。


端的にいうと、村田さんは、「社会貢献といえば、「学生か、現役をリタイヤしたシニア層が趣味でやるもの」というイメージが出来上がっている」(96頁)ことを危惧しており、その原因は、社会貢献を行う組織の活動が寄付や助成金だけで賄われているケースが多く、スタッフが無給か低い賃金で働かねばならず、長期間は働きにくいためであると考えている。村田さん自身、若くして社会貢献を仕事にするための事業を立ち上げることに当初は不安を感じており、もともとは「国際機関で働くなどしていずれ40歳くらいになったらそれまでに稼いだ資金を利用してNGOを立ち上げよう」、と考えていたそうだ。


しかし、他のメンバーの方から、「村田が40歳になるまでの20年間に、児童買春はますます悪化するだけだ。」と言われ、それに納得をしたことから、現役大学生という若さでの起業を決断したそうである。


今や日本の社会起業家の代表であり、「Woman of the Year 2006」(日経WOMAN)にも最年少にして選出されているとおり、働く女性のトップランナーでもある村田さんと、書籍を通じてではあるが考えを共有することができたことは、非常に励まされた。

これからも、実務家の方の実態や考えを、積極的に見て、聞いて、読んで、研究を深化させたいと思う。

社会的企業と「経営」①

ブログの更新が少し滞ってしまいましたあせる

2月は小さい記事ながら、コンスタントに更新できたのですが。

もっとも、TOEFLの直前は少し滞っていました。

日頃時間があっても、直前は気持ちが追い込まれてしまいます。。


今回滞ってしまったのも似た理由で、実は先月末に日商簿記2級を受験していました。

今日合格発表があり、無事に合格することができました。


銀行員時代に、経済市況を把握する観点から、財務諸表や貸借対照表(バランスシート)については多少研修で教わりました。

まだ右も左もわからないまま、ただ電卓をたたいていたことを覚えています。


もともと根っからの文系なので、多少のベースがあっても簿記は私にとって掴みにくい分野でした。

最初は、問題集を見ただけではそもそも何の話をしているのかがわからない(おそらく用語の意味をきちんと捉えていなかったから)箇所も多かったので、素人でもわかりやすいように基礎の基礎から解説してくれている方のブログなどを参考にしたものです。いろんな事と並行しながらですが、トータル4ヶ月程は勉強期間に充てた形で、ようやく合格できました。


私がなぜ簿記を受験しようと思ったかというと、企業経営について考察するための知識をより深めたかったからです。

一言で「経営状況が良い・悪い」と言っても、経営を評価するという捉え方は様々です。


たとえば、社会的企業を営利企業と捉えると、NPOから端緒して考えるのであれば、従業員の給与やオフィスに関する経費を賄える程度の利益を上げていれば十分に成功ということになりうる。

しかし、一般的な営利企業においては、利益を株主(出資者)に分配することを目指すのであるから、社会的企業でいう「経営状況が良い」という意味に達しただけでは、到底「経営状況が良い」とはいえない。経費を払えるというだけでは「黒字」ではなく、評価は上がらない。「自転車操業」といわれ批判されることさえある。


加えて現在、社会的企業に経営状況を含む評価基準を設けて、格付けをしようという動きもアメリカを中心に起こっている。社会的責任投資(SRI)はさることながら、さらに進んで社会的企業へ投資するファンドもあり、NASDAQやTOPIXのように社会的企業を評価した指数を作る動きもある。


このような、社会的企業の経営評価に関する事柄を、企業やNPOと比較するなどして的確に捉えるために、簿記の勉強は少なからず役立つかな、と思った次第です。

社会起業家として社会的企業を経営されている方の経営に関する思いや状況を理解するうえでも、遠からず必要なことかと思います。


社会的企業の経営の側面は、引き続きアップしていこうと思います。