大概堂跡地

大概堂跡地

かつてサッカーとかサンホラに嵌っていた頃のブログ跡地

ホグワーツレガシー(switch版)、スリザリン男子→ハッフルパフ女子でそれぞれクリアしました

(蛇男子は寮杯まで、穴熊女子はランロク撃破まで)。

ストーリーはPS5版やPC版をプレイしていた方から見聞していたので大筋は分かっていましたが、

プレイしてみてわかった事も多いです。

 

 

・これからやる人へ。左利き仕様は罠です。組み分け後に慌てて普通に変えました。

 

・ロード画面がちょっと長い。特にホグズミードは店とかに出入りする度にロード挟むので

デミガイズ探しとか億劫に感じる人いるかも

 

・蜘蛛恐怖症モード、自分はいらないかなと思っていたけど

一部のサイドクエストとか古代魔術の集中点とかに蜘蛛がドアップで湧くステージがあるので

深夜にやる際は欲しいときある。亡者もなかなかグロいが

 

・トロールやダグボッグはストーリーモードでもアバダないとめんどい

 

・ストーリーモードだと敵の攻撃でまず死ぬことはないですが、高い所から落ちると死にます(レジェアルと同じ)

 

・魔法薬は作るのめんどい

(材料はあちこちに落ちてるけど必要の部屋と魔法薬学教室でしか作れない+時間かかる)

ので課題以外ではほぼ使わない。その代わり魔法植物はめっちゃ使う

 

・ナティ想像以上にいい子。でもハーロウとの最終決戦の後のあれは

ホグミスプレイヤーにとってはマジトラウマだからやめてほしかった(真顔)

 

・ポピーちゃんもいい子。ポケモンのポピーちゃんと同じぐらい可愛い。…両親主人公が殺してそうだけど

 

・セバスチャン…わかってはいたけどさあ…『アンの呪いは解けない』『叔父さんアバダ』『アンから絶交される』

の3つがどの選択肢でも確定事項なのは流石にきついっす…

後穴熊女子で選択肢ミスってオミニスにインペリオかけてしまってガチで凹んだ

 

・何でレイブンクローの友達クエストないのーーーー!!!!????

ってPS5版発売時に発狂していたレイブンクロー推しですが、

5年生のレイブンクロー組、どいつもこいつもエキセントリック過ぎてちょっと仲良く出来なさそう

(アミットだけはマシだけど冒険タイプの子じゃないし)そりゃ深い友情は築けんわ

JKR御大も未だにレイブンクロー主役の話書いてないの、

レイブンクロー自体が主人公にしづらいタイプの人しか集まらないからなのか?

 

・フィグ先生も生存ルートなしなの地味にショック。

1周目は(アバダ使いまくりだったし)闇堕ちエンドにしようかと思ったのですが、フィグ先生との絆を優先しました

 

・闇魔術と古代魔術で闇堕ちフラグ別なのジワる。

 

・原作にも(肖像画として)出てくるブラック校長が期待を裏切らないカスで笑う。

でもクイディッチ系のクエストあったら死んでたのでそこだけはGJ

 

・ブラック校長のカスさを中和する役割のウィーズリー先生、安心と信頼のウィーズリー。

 

・コガワ先生の過去きっつ…アスカちゃんはきっと結婚引退したんだろうけど、

調合師とかマホウトコロで魔法薬学の先生とかになってないかな

 

・宝物庫やパズル系がかなり豊富なので1つのデータで長く遊べます。

逆に言うとセーブデータ4寮分あるけど周回しづらい

 

ハリポタやホグワーツというより、『ウィザーディングワールド』そのものが好きな方の為のゲームです。

ハリポタオタクほど面白いゲームなので、やって損はないです。

逆に原作キャラがブラック校長ぐらいしか出てこないので、

原作キャラが好きでもハリポタの世界観にあまり興味がない人にはちょっときついかもしれないです。

 

…ポケモンSVが一段落したら今度はレイブンクロー男子→グリフィンドール男子でやります。

(DLC後編もボリュームありそうなのでいつになるかわかりませんが)

最後に映画館で映画を見たのは『名探偵ピカチュウ』の時でした。

コロナ式の、しかも花粉の時期に映画館に行くのは心配でしたが、特に何事もなく。

心配していた尿意も、ロキソ〇ンで抑えました(真似しないように)

(映画館の方、キャラメルポップコーンと爽健美茶を大量に残してすみませんでした)

 

以下スクロール。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・麒麟ちゃんが……

 

・クリーデンスもといアウレリウス、長髪にするとスネイプにも見える

 

・3は1932年なの…?

そもそもマグゴナガル先生って初期設定では1935年だから生まれてすらいないのでは…?

 

・ラリー先生まじ推せる

 

・ホグワーツは今日もグリフィンドール生が元気にスニッチを追っています

 

・魔法界の選挙民度低くね?

 

・リウって!フォーゲルって!!

 

・ごめんなさい、サントス女史が賢明なお方なのはわかるのですが某マドリード州知事に見えてもががががが

 

・サントスしか聞こえなかった気がするけど、ブラジル人と中国人だと前者の方が賑やかだからか?

 

・今回ティナが割と蚊帳の外な分、バンティが切ない

 

・うーん時代が時代だからどうしてもドイツは悪役(というかヘタレ役)になるのね…

 

・リタ…でもユスフからすればどっちかつーとマイナスのイメージ強そうだったしなあ

…どうにでもなるやつだったのか

 

・中盤、一瞬ですが芋虫の山盛りシーンがあるので注意

 

・(ホグミスプレイヤー)俺の知っているマンティコアじゃない

 

・そして甲殻類マンティコア→ロブスターへの流れに笑う

 

・音楽系屋敷しもべ妖精

 

・どうやったらマグルが魔法使いを暗殺できるんだよ!!!!ぼけ!!!!

 

・グリフィンドールの子と仲良くする一方で、ジェイコブには意地悪してくるスリザリン生がわかりみ深い

 

・グリンデルバルド、お前選挙とかに立候補するようなキャラだったんかーい

 

・『麒麟が決める』って聞いた時に十二国記を思い出した方が多かったようなんですが、

私はむしろ神明裁判的なものを想起した。そして神明裁判はインチキができる

 

・極右勢力を公的な制度でつぶそうとして失敗…世界史でいっぱい見た光景

 

・中の人がやらかしたせいで(ただでさえ寿命がやばい)アウレリウス、FB4冒頭で

「翌日ホッグズヘッドで冷たくなっているアウレリウスが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った」になってそう

 

・てかダンブルドアの秘密ってそっちかーい。『山羊』ってまさかマグル娘の隠語だったりしない…?

一部の純血主義者にとっては『マグル=動物』らしいし

 

・アリアナの話は、金カムの鶴見中尉のあれみたいな話だ。あっちはマグルだから誰が撃ったかわかるけど

 

・パンがバイバイン状態

 

・どうでもいいけどブータンみたいな高地でアクションしまくってお前ら酸欠にならんの?

 

・サントス女史、ジェイコブを助けた時点で勝負あったな。4でもお願いします

 

・「この先誰が君を愛する?」

…ファンタビ見るまでこの2人はアルバスのプラトニック片思いと思ってましたよ、ええ。

 

・ジェイクイおめでとう!!ラパポート法の廃止はもっとずっと先のはずだけど幸せそうだからまあいっか!!

 

 

今回は前作程暗い話ではなかったけれど、出てきた魔法生物が

二フラー、ボウトラックル、不死鳥、ワイバーン、マンティコア、麒麟…少なすぎね?

魔法生物とは名ばかりのダンブルドアの過去話になってない??

 

あと、ブラジル・ドイツ・中国がメインと聞いていたけど

まともに魔法界描写あったのはドイツぐらいでは?

中国は冒頭だけだし、ブラジルに至ってはサントス女史だけで土地は出てないし

(カステロブルーシューと思われていたのはブータンだったし)

サントス女史が今後出てくる可能性のあるブラジルはともかく、

中国のファン肩透かし食らってない?大丈夫??

 

4か5で日本舞台になるかもしれないけど、時代が時代なのでめっさ怖い。

えー。

去年の8月に更新ストップした筈のブログにまたこうして文章を書くレベルの衝撃を受けましたよ。

 

私が新選組、特に土方歳三ファンの母と共に読み始めた当時、既に8巻まで出ていたんですよ。

時系列としては禁門の変の直後まで、私は小学生でした。

 

これとポケスペで男装女子が性癖になりました。

『作品のすばらしさと作者の人格は分けて考えるべき』という教えを知ったのもこれです(苦笑)。

 

成人してからもずっとコミックス買っていましたが、最終回は早く読みたくてフラワーズ買いました。

 

で。

 

 

私って案外セイちゃんと沖田さんに夢見ていたんだな!!

未だに咀嚼もできねーよ!!

 

 

 

 

 

『どうして時期的に沖田さんの子ではありえないのに、あの子は沖田さん似なのか』

DNA上の父親(と推測される人物)には欠片も似てないんですよ、ええ。

テレゴニーも一瞬考えたんだけど、wikiの説明読む限りだとセイちゃんと沖田さんでは難しそう。

 

マジで沖田さん転生したのでは?

『父が土方さん、母が神谷さん』って多分沖田さんの理想だよな、うん。

 

『あなたは武士(セイちゃん)の子よ』ってことでFA?

 

そもそもセイちゃんが産んだとは限らないし。

セイちゃん、別に子供いなくたって後追いせずに生きてける子だと思っていたけど、公式と解釈違い?

 

 

あと本筋から外れるけど原田さんがマジで死んでるっぽい描写があったのが地味にショック。

日露戦争であの子と再会…でもよかったじゃん。

(『ゴールデンカムイ』に原田さんが出てくるのを楽しみにしていた勢)

 

 

あー。コレを土方クラスタの母がこれから読むと思うと気が重いわ。

 

ホグミスのマルフォイクエストは明日からやります。

えー。

 

『天京の聖杯』、何とか書き終えました。

『Last Myth』本編をも超える100話超、最後の方はもう執念で書いていました。

 

ストーリーが清末期に突入した4月頃から急に仕事が是までになく忙しくなり、

平日の執筆が不可能になっていました。ちょっとずつ書き溜めていた頃はまだモチベもあったのですが、

週1回になった事で逆にモチベが上がらなくなったんです。

 

年のせいか、平日の深夜は脳味噌が働かなくなってくるんですよ。

なので、今後はSS(特に長編)の執筆は厳しいです。

 

ゲームとか漫画の感想も、体力的にブログに置くレベルの量は書けなくなってきました。

これぐらいならTwitterで十分だろ、的な。

 

あと、もうすぐブログ開始10周年なんですけど。

もう、そろそろアメブロはいいかなって。

SSをUPする場所は何も自分のブログである必要性はないですし。

 

開設当時のブログ名は『Soccer Horizon』である事を覚えていらっしゃるお客様はいらっしゃいますか?

サンホラの事は書かなくなって久しいし、正直今年に入ってからサッカーに対する興味が退潮気味なんです。

 

暫くは、過去のSSに加筆修正して『なろう』や『Pixiv』にUPするだけの活動(と言えるのか?)になります。

気が向いたら、Twitterのハリポタ・ホグミス垢の方にハリポタ系の二次創作ぐらいなら置くかも知れません。

 

ブログは消さないで、残しておきます。

もしかしたら、忘れた頃にゲームや漫画の感想を書きに来る事もあるでしょう。

でも、もうここにはSSを置く可能性は限りなく低いです。

 

ブックマークされている方も、外して結構です。

 

それでは、またどこかでお会いいたしましょう。

 

2019年8月12日

イヌワシ

その窮鳥は、日本政府の高官と組んで清国を打倒したが、王朝の伝統までも消し去った。

 

最早、自分は何のために生きているのかわからなくなった。

手元にあるのは、自分の体内を流れる、不完全な『死を奪う毒薬』と、異国の地で営む旅館で或る。

 

革命後の混乱下に喘ぐ同胞らを甘言で誘い、実験体にする。

『薬』の量や質を変え、どのような生を生きて終えるかを観察する。

 

しかし、自分と完全に同一のもの、そして、完全な『薬』を持つ者には三百年出会っていない。

それがなければ、この実験と称した悪趣味な、倫理観のない行動は何の進展もない。

 

―――『完全』を手にすれば、あるいは。

 

今やそれだけが、自分の魂を殺さぬようにするよすがであった。

 

―――例えば、誰かが人であった頃の私の名を呼んでくれるなら。

―――その時こそ、私は安らかに、燃え盛る炎の中で眠れるだろうに。

 

そんな人間は、もうこの世に存在しない。

 

ふとTV画面に目を戻すと、そこにはフォーゲルスの選手が大写しになっていた。

右下のテロップには、『三村 敦宏』と表示されていた。

 

―――なるほど、こいつが件の『アツ先輩』か。

―――こいつの様な人間が、私の『薬』を口にしたら、どんな生き物になってくれるだろうな。

 

言っては悪いが、今回の合併を回避できる可能性は果てしなく低い。

既に企業間や協会で合意がついているであろうものが、そうそう簡単に覆るものか。

 

そして、そういう現実を目の当たりにした人間が。

自分の『薬』を口にした後の行動が、今の張嫣にとっては重大な関心事項であった。

 

「面白そうな男だ」

張はそう呟くと、TVを消して、従業員を招集するためにホールへ向かった。

 

 

***

 

Servatis a periculum!    我らを危難から救い給え!

Servatis a maleficum!    我らを邪悪から救い給え!

 

 

《終》

「――-私たちの署名が、合併撤回への一助となればいいな」

 

***

 

タオが店に戻った後、張は応接間のTVをつけた。

すると、丁度サッカーの試合を中継していた。

 

しかも、試合をしている一方のチームこそが件の横浜フォーゲルスだった。

 

五年前のJリーグ誕生直後、サッカー界には遅すぎたバブル景気がやって来た。

そのバブルが弾けた今となってはサッカー地上波生中継を行う民放は多くない。

だからこそ、今度の合併騒ぎは起こったのだ。

 

今回の中継も、『渦中のクラブの試合』だから中継したのであろう。

何事もなかったら中継していないに違いない。

 

張は試合の光景に見入りながら、自分が天京を出た後の回想をしていた。

 

あの日、自分は天地会の全てを投げ出して身一つで脱出した。

其処から海路で香港に入り、太平天国の動静を伺っていた。

 

自分達が作っていた『天兄の血』はあそこで全て失われたのかどうか、定かではない。

『天京の聖杯』が、誰かに持ち出されて、利用された可能性は否めない。

 

ただ、天兄の弟を称した男は結局飲まずに死んだことだけは確かである。

彼もまた、誰かを実験台にして、神にはなれぬ事を悟ってしまったのだろう。

 

『神通力』を失った太平天国は見る間に衰弱していった。

最早万策尽きたかと思ったその時、丁度日本が西洋諸国に港を開いた。

開かれた五つの港の一つである横浜に移って、もう百五十年近い。

 

僅かな漁民しかいなかった寒村が、よくもまあここまで育ったものである。

 

その後、旅館事業を始めると見る間に商売がはかどり、

日本と清との間で戦争が始まると、恐れをなして帰国する者とそうでない者に分かれたが、

そうでない者の内自分の言うことを聞く者を集め、程なくして天地会を再結成できた。

 

ある日、明確に自分を頼った上で一羽の窮鳥が懐に飛び込んできた。

 

《続く》

「ん…」

部屋のソファに横たえ、タオルを被せてあったタオが意識を取り戻したようだ。

 

「大丈夫かね?」

「あ、あー…ちょっと貧血気味かもしれませんが、大丈夫です。…ってなんで俺は上半身裸なんですか!?」

「呼吸が苦しそうだったので、とりあえず上は全部脱がした。寒かったかね?」

 

タオは急に寒さを感じたので、慌てて傍に在った自分の服を着た。

「すみませんでした!!ホテルの方に迷惑かけてしまって…きっとウチの店長にも怒られますね」

 

「その心配はない。君が失神している間に店長には話をつけておいた。

きっと君は連日のストレスで疲労をいつもの何倍も溜め込んでいたのだろう。暫くは無理しないで早めに寝なさい」

 

「そういえば…署名の件は」

「今から従業員全員に書いてもらって、後日店に届ける。

また、店のフロントにも用紙を置いて、お客様にも書いてもらう」

「ありがとうございます!」

 

「で、次の試合はいつかね?」

「今日は広島で4時からアウェー戦なんです。だから先輩たちは今横浜にいないんですよ

―――TVでもやっていると思いますけど」

 

「そうか。実をいうと私はサッカーの試合自体をまともに見たことがないので

これを機に一度フォーゲルスの試合を見ようと思っているんだ」

 

「そうですか。実をいうとですね、来週にはリーグ戦は終わってしまうんですが、

12月から『天皇杯』ってのがあるんですよ」

「天皇杯?」

 

「プロ・アマ問わず日本中のサッカーチームが1月1日の決勝戦を目指して戦うカップ戦です。

プロだけの『Jリーグカップ』というのもありますが、

こっちの方が昔からやっている、日本のサッカー界で権威ある賞なんですよ」

 

「それで優勝すれば、あるいは…か」

「そうですよ!リーグ優勝はもう無理ですけど、

天皇杯獲ったらもしかしたらいいスポンサーがつくかも知れないんです!!」

「98年では終わらない、その先へ続く為の天皇杯か」

「ええ、99年の元日、そしてその先へ、ずっとずっと!『最後の天皇杯』になんかしませんよ!!」

 

《続く》

楊秀清は死体には目もくれず、紅い液体の入った瓶を手に取った。

 

「確か、あいつは『あと一歩』とか言っていたな…奇跡を起こすには不完全かもしれないが、あるいは…」

瓶のふたを開け、飲み口を口に持っていこうとしたその瞬間―――

 

――― 一発の銃弾が、楊秀清の脳天を吹き飛ばした。

 

***

 

前述したように東王府では二万人が虐殺されたが、

その中に傅善祥のものらしき女性の遺体は発見されなかった。

 

傅善祥の名は太平天国の歴史から消えたのである。

 

***

 

楊秀清の死は太平天国の統治体制に大きな障害を齎した。

彼を直接攻撃した韋昌輝と秦日綱が石達開と対立し、

軍事的才能のあった石達開を宥める為に洪秀全は二人を殺害したが、石達開は二度と天京には戻らなかった。

 

洪秀全は独自に新たな指導部を再編したが、何れも楊秀清程の能力はなく、

太平天国は次第に軍を立て直した清軍に追い詰められていった。

 

味方だと思っていた西洋諸国は太平天国の本質がキリスト教とは全く違うと悟ると敵に回り、

同時進行していたアロー戦争が終結し、条約が結ばれると清軍と共闘を開始した。

 

アロー戦争の最中に清国の飛天研究機関が・血滴子が置かれていた円明園は

フランス軍の略奪に晒された後にイギリス軍によって灰燼と化した。

円明園を焼き払うイギリス軍の中に、張嫣に聖杯の話をした使節と似た男がいたという話があるが、確証はない。

 

円明園からの脱出に成功した血滴子の残党らは自ら清国政府を見限り、

西洋諸国の協力を得て尚も飛天を狩り続けることになる。

 

***

 

そして、金田での決起から十三年。

「甜露(旧約聖書に出てくる『マナ』の事らしい)」と称して雑草を食し続け、洪秀全が栄養失調で死亡すると、

清軍は遂に天京を陥とし、太平天国は滅びた。

 

一説に、この時に清軍が行った大虐殺が中国人の『南京大虐殺』のイメージだともいわれる。

 

《続く》

「―――では、東王が天父の意思を逸脱し、簒奪を企てているのはまことなのだな?」

「ええ。天父は最早あの者を見捨てました。今の東王は単なる野心の塊です!」

 

洪秀全は、以前楊秀清に棒叩きを食っていた部下から話を聞いていたのだ。

そこに、傅善祥からの手紙も届いたのである。

 

***

 

「盲人を癒した天兄の血を、東王が再現しようとして、自らの手で奇跡を起こそうとしている―――?」

それは、洪秀全にとって、楊秀清にも越えさせてはいけない一線だった。

 

楊秀清は、神の依り代には飽き足らず、自ら神になろうとしているのだ。

 

「太平天国に、肉体を持つ神は、朕一人でよい」

 

洪秀全は天京の防備を司る韋昌輝と秦日綱、征西軍の石達開に『東王・楊秀清を討て』と密詔を出した。

 

***

 

八月の終わりのある晩、楊秀清は傅善祥に声をかけた。

「おい、一体何処へ行くんだ?」

「研究所です。『天京の聖杯』が完成するまで、あと一歩なのです」

 

「そりゃ楽しみだな。完成品、最初に俺に見せてくれよ!」

 

***

 

「明朝、東王府を陛下の軍が急襲する。それまでに撤収の準備を!」

傅善祥―――張嫣の指示で、部下が実験体に止めをさしていく。

 

身動き取れない状態から首を落とされる者、まだ人のままなので単に絞殺されるもの。

 

実験体を全て始末した時点で、部下が張嫣に伺いを立てる。

「薬瓶はどうなさいますか?」

 

張嫣は、何事か考え付いたように笑った。

 

「残しておけ。―――あれを残しておいて、何が起こるか、私も知りたい」

 

***

 

翌朝、日の出と共に韋昌輝と秦日綱の軍が東王府を襲った。

 

突然の事に東王府の者達は抵抗らしい抵抗も出来ずに、二万もの人命が失われた。

 

「傅善祥!聖杯は何処だ!!」

楊秀清が、傅善祥に与えた研究所の中に逃げ込む。

 

其処には、人間や、人間の形に見えるモノの死体、そして、大量の紅い液体が入った瓶が遺されていた。

 

《続く》

構成員だけでは実験体が足りないので、天京にいる身寄りのない浮浪者や盲人に、

自らの血液から作成した『薬』を服用させた。

 

のだが。

その『薬』を服用した者は、悉く異形に変じて人の形を取り戻せず、始末せざるを得なかった。

人の形を保っていた者達も、人の血が必要になる身体になるのでは表に出す事は出来なかった。

 

伝え聞いた話によると、人の血を喰らう異形を排除するのは、西洋でも同じらしい。

 

―――- 私が作りたいのは、『化け物』ではなく、奇跡を創造する紅い液体だ。

――― 『天京の聖杯』をこの世に現出させるために、後は何が足りないと言うのだ!

 

***

 

ある日、また楊秀清の身に『天父が下った』。

 

急いで駆けつけた洪秀全に、『天父』はこう言った。

「秀全よ、我が依り代である楊秀清はそなたと共にこの太平天国にその身を捧げる身であると言うに、

何故楊秀清には『万歳』がないのか」

 

つまり、楊秀清も洪秀全と同様に『万歳』の対象となりたかったのである。

ある意味、『九千歳』で満足した魏忠賢を越えている。

 

「わかりました。臣民には楊に対しても『万歳』と声掛けするように指導します」

洪秀全は、震える声でその発言を肯定するしかなかった。

 

傅善祥も、その席にいた。

 

***

 

傅善祥―――張嫣は、研究室に帰り着くとげえげえ吐いた。

「あれは……許せぬ…!」

張嫣は部下に紙と硯を用意させ、密かに洪秀全向けの手紙を書いた。

 

「東王閣下は最早簒奪の意思を隠そうともしていない事は、お分かりかと思います。

つきましては、閣下が私に命じたある物質の作成を、お伝えしなければなりません」

 

張嫣は、『天京の聖杯』と名付けたその企画の全てを洪秀全へ知らせることにしたのである。

 

密かに張嫣に通じていた女官を通じて洪秀全に張嫣の密書が届けられた同日に、

洪秀全はある人物と会見していた。

 

《続く》