いろんなシナやキャラがいる中、




誰が何て言おうと




やっぱりユウマが一番好きなのです。




今回もイベ頑張ります!






結局7回目のりテイクにしてようやくOKが出て、休憩となった。


(ふぅ…流石にちょっと疲れた。気分転換しよう…。ん?)


外に出ると、ベンチに座って空を見上げているユウマがいた。


(あ、ユウマだ。声をかけようかな? でも何か考え事とかしてたりして)


(どうしようかな?)


(いいや、隣に座っちゃえ)


私はユウマに近づくと、隣に座った。


「ユウマ、お疲れ様。」


ユウマ「…ああ。お疲れ。」


「こんな所でどうしたの?」


ユウマ「別に、ただ空をみてただけ。」


「何か考え事してたとか?」


ユウマ「いや、あの雲がミニチュアダックスに似てるなって…。」


(ここでも犬…! まぁ、ユウマらしいけど)


私はユウマにバレないように、こっそりと苦笑いをする。


「それにしても…今回の撮影は大変だね。」


「咲乃先生のこだわりっぷり…凄いよ。」


ユウマ「指示は細かいけど、特に大変じゃない…。」


ユウマ「その作品を良くしようとするのは当然だから。」


ユウマは空に流れて行く雲を見つめたまま淡々と口にする。


その横顔に柔らかい午後の陽射しがあたって、綺麗な瞳が凛と揺れていた。


(ユウマ…興味ないとか言ってたけど、仕事に対する意識はプロだなぁ)


ユウマ「あ…でも、一個だけ大変なのがある。」


長い睫をスッと頬に落として、ユウマは僅かに表情を曇らせる。


「え? 何が大変なの?」


ユウマ「いつもニコニコとか…いつも優しくとか…よく分からない。」


(あ…そっか。ユウマが演じる課長って、いつも笑顔を崩さない人なんだよね)


(ユウマとは間逆というか、先生に一番注意されるポイントもそこの部分…)


「ユウマ、練習しよう! 私が相手になるから。」


ユウマ「………。」


「さっきは私の練習に付き合ってもらったから、今度はユウマの番!」


ユウマは少しの間考えるそぶりを見せた後、口を開いた。


ユウマ「まぁ、良いか。…やろう。」


「うん! じゃあまずは笑顔の練習からね。」


ユウマ「は?」


ポカンと首を傾げるユウマに私はにっこり笑ってみせる。


ユウマ「………。」


「はい、マネして?」


ユウマ「…、こ、こう…?」 笑顔が引きつってますよぉ( ̄∇ ̄+)


ユウマはニッと、顔に無理矢理はりつけたような笑みを向けてくる。


「全然だめ! 硬いよ。」


(うーん…いきなり笑えって言っても難しいか。そうだ…)


「ウチの事務所の速水さんね、この前ユウマの載ってる雑誌見て…。」




速水「ユウマってほんと綺麗な肌してるなー。白くてスベスベ、ツヤツヤだ。」


速水「俺もアレやるか…最近さぼってたからな。」




「…って言ってたんだけど、昨日の夜事務所のドアを開けた瞬間、顔一面に白いパック張り付けた速水さんが現れてびっくりしちゃった。」


ユウマ「………。」 そりゃ無理ないわ(>_<)ユウマにはちょっと笑えないかも…


ユウマ「……………。」


「そこ笑うところだよー!」


ユウマ「…! は、今のが…?」


ユウマ「…わ、わからん………。」ちょっとしょんぼり顔してます(´・ω・`)


私のツッコミに、ユウマは思いつめた表情で考え込む。


その様子にクスッと笑みが零れてしまう。


ユウマ「…なに笑ってんだよ。」


「ごめん、何でもない。」


ユウマ「何でもなくないだろ。」


「あ! ほら、そろそろ休憩終わるよ。」


私はそそくさと立ち上がるとその場から歩き出した。




(あぶないあぶない…ユウマの前で笑ったらどんな仕返しされるか…)


(でも、さっきの一生懸命なユウマ、可愛かったな…)


私はユウマの様子を思い出して緩む頬を手で押さえ、撮影に戻ったのだった。






――それから数日後。撮影はいよいよクライマックスに突入した。


(相変わらず咲乃先生は厳しいけど、だいぶいい感じになってきたな…)


咲乃先生「ユウマ君、今のところとても良かったわ。その調子で続けて下さいね。」


ユウマ「はい。分かりました。」


(…ユウマの課長姿もすっかり板について笑顔も自然になったし)


(この調子で最後のシーンも…)


オフィスに佇むユウマを見つめながら、意気込んだその時。


咲乃先生「○○さん、ユウマ君、今から撮る最後のシーンですが…。」


咲乃先生が私たちを交互に見つめ、真剣な表情で口を開いた。


咲乃先生「…撮ってみてクオリティが十分なものに満たなかった場合は、そのままシーンカットすることも考えてます。」


「え…シーンまるごとカットですか?」


咲乃先生「そうです。では、スタンバイしてください。」




「ユウマ、このシーンって一番の見せ場だよね…。」


私は少し不安になってユウマに話しかける。


ユウマ「…そうだな。」


(妥協は許されない、か…今まで以上に頑張らないと)


覚えた台詞を頭で反復し、ぐっと手を握りしめていると――、


――ユウマの手がそっと優しく私の頬を触れた。


「? …ユウマ、どうかした?」


ユウマ「…落ち着いてるじゃん。」


(どういう意味だろう。…あ)




*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


ユウマ「○○はまず、その動揺するところから直さないと。」


ユウマ「セクシーな女は基本落ち着いてる。」


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆




(ちょっとは成長できたってことかな…)


ユウマの眼差しがいつになく優しくて、肩の力がスッと抜けていく。


「ありがとう。自信出てきた。」


私はユウマに微笑み返すと、リラックスして指示された配置についた。




咲乃先生「シーン27、アクション!」


誰もいない夜のオフィスで、私は課長のデスクにゆっくり近づく。


欲しい情報のデータはデスクの上。手を伸ばせば届く距離で立ち止まる。


「…これを、手にすれば全てが終わるのね…。」


(データを取ればスパイとしての任務は完了…でも課長との関係も終わる)


小さな声で呟いたその時、背後で人の気配がし、私は台本通り振り返った。


「…! 課長…、どうして――。」


ユウマ「君が呟いた通りだよ。そろそろ全部、終わりにしよう…。」


「…やっぱり、気付いていたのね。何故バラさなかったの?」


(ここは感情的にならず、悲しそうに切なげに…)


ユウマは静かに、私に向かって近づいてくる。


ユウマ「俺が止めたかったんだ。こんな事に手を染めるのはもうやめよう。」


ユウマ「全部終わりにして、最初からやり直すんだ。」


ユウマの迫真の演技に、私の感情が自然と役にシンクロしていく。


「そんな事、今更できないわ…私はスパイとしてしか生きられないの。」


ユウマ「君の不安も、事情も、俺が全部受け止めるよ。」


ユウマ「君のことは、これから俺が…守るから。」


ユウマは私の手を引き寄せて――、


ユウマ「………。」


――私の唇に、すこし熱をはらんだ唇を重ね合わせた。


(………)


目を閉じて全てを委ねる私に、ユウマは優しいキスを続ける。


撮影現場は静寂に包まれ、2人きりの世界だと錯覚しそうになったその瞬間。


咲乃先生「カット――!」


私はハッと我に返って咲乃先生を見つめた。表情からはOKなのか分からない。


(今のシーン…どうだったんだろう…)











続きです。行ってみよー!






私は桜庭さんから渡されたスーツに、袖を通す。


そのスーツは、ジャケットのウエスト部分に、


リボンがあしらわれた、シンプルながら洗練されたものだった。


(わぁ…素敵。着心地もすごくいい)


私はスーツを着て、皆の前に立った。


「どうですか?」


桜庭綾人「………!」


「…? あの…?」


(あれ?…似合わなかったのかな)


スタッフ「~~~~~!」


白川梓「桜庭君。皆さんにからかわれてますよ。」


桜庭綾人「…こいつが思っていた以上に似合うから。驚いて。」


「本当ですか?」


(そんな風にいってもらえると…嬉しいな)


周りを囲むスタッフたちが、何故か桜庭さんを突いたりして騒がしくしている。


「?」


千葉「もっと、くっつけってよ。」


千葉さんが、ニヤリと笑ってみせる。


桜庭綾人「………!」


「え! いや、それは…ちょっと。」


(こんな皆の前でなんて…恥ずかしい)


千葉さんとスタッフはニヤけた顔で私たちを囲んでいて、落ち着く気配がない。


(ど、どうしよう…この場をどう切り抜けよう…)


白川梓「さあ…そろそろヴィクター君の写真撮影の様子を見に行かないと。」


梓さんが時計を見ながら、ナイスタイミングで声をかける。


「あ! そ、そうですよね!」


(よし!私達も梓さんの状況に乗せてもらおう)


「私もこのスーツ、ヴィクターに見せたいですし。一緒に行きます!」


白川梓「そうですか。ヴィクター君も、2人が来れば喜ぶでしょう。」


「はい!」


(良かった! これでこの状況から逃げれる…)


私は桜庭さんと目配せして、ホッと胸を撫で下ろした。


白川梓「本当に、今回はお世話になりました。」


桜庭綾人「…お世話になりました。」


千葉「いや、こちらこそ。黒木さんにもよろしく伝えてください。」


白川梓「はい。承知いたしました。」


「千葉さん、ありがとうございました。」


千葉「○○さん、スーツ似合ってるぜ。2人とも、仲良くやれよ。元気でな!」


桜庭綾人「…はい。」


私たちはこうして、お世話になったMistyの工房を後にした。




ヴィクター「………。」


撮影スタジオでは、すでにヴィクターがモデルの顔で写真撮影を始めていた。


(普段の明るいヴィクターから、想像出来ない大人っぽい表情だな…)


(すごい…やっぱりヴィクターって一流のモデルなんだ)


私は息を飲んで、撮影を見守っていた。


ヴィクター「Wow! 皆サンきてくれたんだね!」


ヴィクター「ボクのお仕事、どうだった?」


ヴィクターは、撮影の時の表情とは打って変わって、いつもの明るい笑顔で、私たちのそばにやってくる。


白川梓「とてもいい感じでしたよ。修行の成果は、きちんと出ているようですね。


「うん! すごく素敵だった。」


ヴィクター「○○さんたちに褒められるとトッテモ嬉しいよ~!」


ヴィクターは両手で、私の手を取ってブンブン振る。


「うわっ…ちょ、ちょっとヴィクター。」


桜庭綾人「…もうここに用ないなら、帰るよ。」


ヴィクター「No! アヤト、今来たばっかりじゃない! もうちょっといてよー!」


ヴィクターが桜庭さんに近づこうとしたその時――、


スタッフ「~~~~~!」


「?」


男性スタッフの大声と共に、急にスタジオ内がざわつき始める。」


(どうしたんだろう?)


ヴィクター「Oh…どうやら人気子役の男の子が、ドタバタキャンセルしたらしいよ。」


「え…。」


(ドタバタ…って、ドタキャン? それは大変そう…)


するとヴィクターがスタッフに呼ばれ、何かを話始めた。


「何、話してるんですかね?」


私は桜庭さんの横へ行き、小さい声で話しかける。


桜庭綾人「…さあ。ヴィクターのページでも増やそうってんじゃないの?」


白川梓「どうやら…そういう事ではないようですよ。」


「え…?」


ヴィクター「大変だよー!」


ヴィクター「スタッフさんが、アヤトと○○さんの写真を、撮らせて欲しいって、言ってるよ!」


桜庭綾人「…は?」


「私たちが…?」


私たちは驚いて、顔を見合わせる。


白川梓「桜庭君、○○さん、ここは引きうけてもらえませんか?」


白川梓「ROSEの良い宣伝にもなると思いますし。」


「え…でも…。」


(そんな、急に言われても…)


(それに桜庭さん、こういうの嫌なんじゃないかな)


私は横で、固まっている桜庭さんに目を向ける。


桜庭綾人「…絶対、無理です。」


白川梓「写真だけですから、なんとか我慢してください。」


桜庭綾人「…俺がこういうこと苦手だって、白川さんも知ってますよね。」


白川梓「でもせっかくロンドンにまで来て、あなたの作った服が紙面に載るんですよ?」


白川梓「しかも、その服を着た○○さんと。」


白川梓「ROSEにとって、これほど嬉しい事はありません。」


桜庭綾人「…でも、俺は…。」


白川梓「困りましたねぇ。では桜庭君が写らないとなると――、」


梓さんが、小さく頭を振りながら溜め息をつく。


「?」


白川梓「○○さんと撮るの、誰になるんでしょうね?」


桜庭綾人「…?」


白川梓「外国の撮影ですからね。結構密着したりも、あるんじゃないかと…。」


(え? そうなの?)


白川梓「まぁ、本業のヴィクターに頼んでもいいんですけど…。」


白川梓「やはり、ここは桜庭君がいくべきかと、思ったんですけどね。」


桜庭綾人「………!」


(密着は私も聞いてないですよ…梓さん!)


私が思わず桜庭さんの顔を見ると、桜庭さんと目が合う。


桜庭綾人「………。」


(桜庭さん…断るんだろうな)


(ROSEのためだし、仕方ない。私だけでもやらないと…!)


私は他の人との撮影を覚悟した、その時――。


桜庭綾人「…わかりました。やります。」


「え?」


(うそ? 桜庭さん、いいの?)


白川梓「そう言っていただけて、良かったです。」


「あ、あの桜庭さん、本当いいんですか?」


(私は、すごく嬉しいけど…嫌がってたのに)


桜庭綾人「…いい。○○も早く用意してきて。」


「はい…!」


私はメイク室に向かう前に、梓さんを振り返ると、梓さんはいつもの穏やかそうな笑顔で、私に手を振っていた。




メイクを終えて、スタジオに戻ってくると、


カメラの前では、既にスーツの男性が立っていた。


(あれって…? え、誰?)


もう少し近づくと、ようやく男性が見知ったあの人だと気付く。


(え、桜庭さん?)



総ちゃんと隼斗の時は、




いちゃいちゃしてるのに、




ユウマは違うんだ。




ふんだ(ノ_-。)






では続きをどうぞ






咲乃先生「…それでは、これで以上になります。」


一通り配役の発表と内容の説明が終わって、咲乃先生が締めくくる――と。


ユウマ「なんで、受けた役と違う配役になったんですか?」


――ユウマが真面目な顔で、珍しく質問を投げかけた。


咲乃先生「そうね、皆さんそれぞれにあった役を受けに来てくださいましたが、オーディションを見ていたら違う顔が見てみたくなったんです。」


咲乃先生の顔にニッコリ笑みが零れる。


(…なるほど。それでオーディションの時、考え込んでたんだ…)


咲乃先生「良い作品に仕上げていくためにも、皆さんにご協力をお願いします。」


眞田恭介「違う顔、か。 確かに面白そうな試みではあるね。」


ユウマ「………。」






――数日後。メインキャストが集まってリハーサルが始まった。


と、すかさず咲乃先生のチェックが入る。


咲乃先生「隼斗君、そこはもっとクールに接して欲しいわね。」


斎藤隼斗「あ、はい…クールッスね。この役、オレと間逆なんだよなー…。」


咲乃先生「それから紗綾さん。アナタは初々しさを出して下さい。」


紗綾「え…初々しさ?」 おっと紗綾ポニテにジャージ姿、可愛いΣ(・ω・ノ)ノ!


咲乃先生「今のアナタの演技だと、新人OLというよりお局さんです。」


(うわ…咲乃先生、笑顔だけどハッキリ言うなぁ)


咲乃先生「レオ君…その台詞は感情を一切出さないで、もう一度頭から。」


レオ「は、はい。 …抑えたんですけど一切ですか…。」


咲乃先生「眞田さん、さっきのところは左手でレオ君の腕を掴んで下さい。」


眞田恭介「右手じゃダメなんですか…?」


咲乃先生「左手でつかむ動作の方が、より自然で堂々とした感じになるのよ。」


(ええっ…そんな細かいところまで…)


咲乃先生は笑顔のまま、細部にわたった指示を次々と出していく。


私は、隣で座って出番を待つユウマにチラリと視線を向ける。


「…ユウマ、咲乃先生ってかなりスパルタだね。」


ユウマ「妥協できないタイプなんだろ。」


小声で言うと、ユウマは手にしていた台本から顔を上げた。


(確かに先生がこだわったところ、最初よりぐっと良くなってる…)


(…先生もだけど、それについていくみんなも凄いなぁ)


ユウマ「…お前、台詞ちゃんと頭に入ってる?」


「え…あ、次私たちの番だね…ええっと。」


ユウマに覗きこまれて急に不安になってくる。


慌てて台本を確認しようとしたその時――、


斎藤隼斗「ふぅ~。久々にみっちりしごかれたな―。」


斎藤隼斗「ほら、次は○○とユウマの番だぜ!」


――隼斗に声をかけられて、私は台本を読み返す間もなくリハーサルに入った。




咲乃先生「――カット。○○さん、全然セクシーさがないわ。それにスパイらしさにも欠ける。あと全体的に表情が硬い!」


(う…予想はしてたけど、見事な言われよう…)


咲乃先生は、私からすっと目線を外すとユウマに向かってニッコリほほ笑む。


(ユウマは上手く課長を演じてたもんね…)


咲乃先生「ユウマ君は優しい雰囲気が足りない、もっと笑顔で、それから――。」


(! …うそ…ユウマにもダメ出し…)


ユウマ「…はい。いえ、大丈夫です。やってみます。」


先生から出される沢山の指摘に、ユウマは顔色ひとつ変えず真剣に答えている。


(ユウマのこういうところ、プロ意識高くてさすがだなぁ…)






――翌日。私はみんなより早めに現場に来ていた。


台本を片手に一人イメージトレーニングをしてみる。


(昨日咲乃先生にダメ出しされた一番の課題は、セクシーさ…)


(顔の角度とかかなぁ…視線の使い方とか? 声の出し方も大事かな…)


首を傾けて、上目遣いに宙を見つめてみた、その時――。


ユウマ「…何してんの?」


――ユウマが不思議そうな顔で近づいてくる。


「見ての通り練習だけど…。」


ユウマ「何の?」


「何のって…セクシーさの研究を…。」


少し恥ずかしくなってもごもご答える私に、ユウマはふっと笑みを浮かべた。


ユウマ「それ、相手がいないとイメージしにくいんじゃない?」


「それは…。」


(確かにそうなんだけど、なんて答えたらいいんだろう…?)


(実はユウマでイメージしてました…なんて恥ずかしくて言えない!)


私は何と答えるべきか迷い、思わず黙ってしまう。


ユウマ「…なんなら俺が相手になってもいいけど?」


「へ…?」


ユウマ「だから、練習相手。嫌なら良いけど。」


「え、あ、いや! そんな事は…!」


(…それじゃせっかくだから…)


「ユウマ、練習相手になってくれる?」


ユウマ「うん。」


その時――。


ユウマ「………。」


ユウマはスッと私の前に歩み寄ると、片手で腰を軽く抱き寄せ、


もう片方の手で私の頬を包み込んでくる。


「! …何してるの!? 最初のシーンではこんなこと――…。」


ユウマ「………。」


焦る私におかまいなく、ユウマは腰を抱く手に更に力を込めて密着する。


「ちょ、ちょっと…ユウマ?」


ユウマ「…それ。」


「へ…?」


ユウマ「○○はまず、その動揺するところから直さないと。」


ユウマ「セクシーな女は基本落ち着いてる。」


(あ…それはそうかも…)


ユウマの綺麗な瞳に映る自分を見て納得していると、むにっと頬をつねられた。


ユウマ「分かった?」


「ふぁい。」


指先でつねられたまま返事をする私に、ユウマは小さく笑って手を離す。


ユウマ「じゃあ、軽く練習するか。」


ユウマ「…10ページ目の台詞からやってみて。」


ユウマはイスに座ると台本を広げ、お茶の入ったペットボトルに口付けた。


(えっと…課長に初めて色仕掛けを使うシーンか…)


(よし…セクシーな女性には落ち着きが大事…)


私はユウマから二歩ほど離れて立つと、


シャツのボタンをひとつ、ふたつと外していく。


「――課長、こんなに遅くまで残業ですか?」


わずかにシャツをはだけさせ、ゆっくりと首筋をなぞりユウマを見つめる。


「…お手伝いしましょうか?それとも…もっと、他のコト、とか…。」


ユウマ「…!! ごほっ…!」


飲んでいたお茶をふいたのか、ユウマは口元に手を当て咳こんでいる。


「大丈夫!?」


慌てて駆け寄ると、ユウマは濡れた唇を手の甲で拭って顔を上げた。


ユウマ「………大丈夫。」


「びっくりした。…それじゃあ、もう一回今のところやり直すね。」


ユウマ「はぁ…俺が落ち着きなくしてどうするんだよ。」(照) 照れてる~(///∇//)




――数時間後。私とユウマは、区切りをつけて練習を切り上げた。


「ユウマ、練習付き合ってくれてありがとう。」


ユウマ「ああ。…産業スパイってどんな衣装なんだ?後で楽しみにしてる。」




(こんなタイトなスーツ着るのって初めて…ユウマ、どんな顔するかな)


ユウマの反応を楽しみに思いながら、私は早速着替えた。






(うわ…この服、思ってたより結構タイトかも)


衣裳のスーツに着替え終わり、鏡を見ながら思わず恥ずかしくなる。


(入らないなんて事にならなくて良かった…)


ほっと一安心しつつ、そろそろ時間だと現場へ向かう。


「おはようございます。」


挨拶をしながら撮影現場に入ると――、


――スーツ姿のユウマが、腕を組んで窓際にスラリと立っていた。スーツ姿のユウマもカッコイイ(●´ω`●)ゞ


(…! ユウマ、大人っぽい…こんな課長がいたら逆に誘惑されそう)


オフィスに佇むユウマから、大人の男の色気を感じて目を離せないでいると、


ふとユウマと視線が絡む。


ユウマ「………。」


(何だろう…すっごく見られてるけど…)


そのまま見つめていると、ユウマがこちらへ近づいてくる。


ユウマ「その格好…。」


「…な、何かおかしい?」


ユウマ「…ヘン。」


「え、うそ! どこどこ?」


ユウマが近づいてくるのを感じつつ、私は慌てて短めのスカートを引っ張った。


体にぴったりとフィットしたスーツは足と胸元を特に強調している。


ユウマ「…全部。」


(全部って、根本的に似合ってないってこと…?)


(そんなにダメなのか…)


と、その時。ユウマにぐいっと腕を引かれた。


ユウマ「…だからこっち来て。」


「…!?」


立っていた位置を交代するように、ユウマは私を壁際に押しやって、私の前にユウマが立つ。


「ん? なに?」


ユウマ「…別に、何でもない。これでいい。」


(…ユウマの体に隠れて周囲が見えないけど、これって…)


(もしかして、他の人から見られないように?)


「ねぇ、 そんなに似合ってない?」


ユウマ「…お前、鈍すぎる。」(照) (///∇//)


ぽそりと呟くと同時に、ユウマの頬がほんのり赤く染まった。




――数分後。私とユウマのオフィスシーンの撮影が始まる。


咲乃先生「ではカメラ回していきます。本番、アクション!」


ユウマ「…俺は君を信じているよ。みんなの言う事は気にしなくていい。」


「課長…、私…課長の下で働けて良かったです。」


ユウマ「それは嬉しいね。俺も、君みたいな優秀な人が側にいて心強いよ。」


(よし…ここで練習したみたいに課長を上目遣いに見て…)


「ほんとうに?」


ユウマ「ああ。何かあればいつでも相談にのるから頼って欲しいな。」


リハーサルの時よりも確実に手ごたえを掴めたと思ったその時――、


咲乃先生「カット。」


――溜め息混じりな咲乃先生の声に、私とユウマは顔を見わせる。


咲乃先生「…2人とも悪くないけど、まだまだ良くなるはずよ!」


それから咲乃先生の細かい指示がビシビシ跳んでくる。私はもちろんのこと、


咲乃先生はユウマに対しても容赦なく問題点を挙げて行く。


ユウマ「…もう一度お願いします。」




その後、咲乃先生のスパルタ撮影は延々続き――、


(今度こそ! ここで課長を誘惑するように見つめて…)


「ほんとうに?」


ユウマ「ああ。何かあればいつでも相談にのるから頼って欲しいな。」


咲乃先生「カット! ユウマ君、もっと雰囲気を柔らかくして。優しくて頼りがいのある男を意識して演じてちょうだい!」


――5回目のりテイクにもあえなくカットの声がかかる。


ユウマ「はい。」


(でもユウマ、少しも嫌な顔しないでこなしてる…私も頑張ろう)