こんな悲しい蕎麦屋があるのか そのⅣ
この親父は蕎麦を出すと 又奥に行ってしまいました。何も言わず 笑顔も当然ありません・・二度と厨房から出て来ないのです。食べ終わると問題は一枚の蕎麦のお代をいかにして払うのか?ですが・・。五百円札と千円札が何枚かあるその箱に、先客が言っていたあの箱に・・・一枚の蕎麦になにがしかの代金を・・・払わなきゃと思い千円札を入れて帰ることにしました。ごちそうさまでした・・・小声で言ってその場を去りました。暖簾はもとより屋号も表札もなにもない蕎麦屋ただ黙って座っていると絶品の蕎麦が出てくる・・・確かにどこよりも旨い味と香り・・あのむせぶような感じは明日にでも又行きたくなる軒先にあった赤い実をつけた山査子の花が・・・何も言わない、親父のせめてもの心づかいのように思えた・・・続く