宙組公演「神々の土地」に登場する女性たちはみなアクが強いのですが、一番強烈なのは、凛城きらさん演じる「アレクサンドラ皇后陛下」だと思っています。
難しいお役で、しかも初の娘役をこれでもかと演じておられる様は感情移入したこともあって涙なしには見られません(何度目??)
ニコライ二世の妻であり皇后であり、彼が戦争全然大本営に赴いたときには政治を仕切らねばならず、そして内気なためと周りからの(特に姑)冷たい視線の中での孤軍奮闘、やってられっかー!ってところを踏んばらないといけない、厳しい立場です。
ニコライ二世に一目ぼれされ、ロシアに嫁いできたアレクサンドラ、あなたは本当にニコライ二世を愛していたの?
義父である前皇帝が病気で亡くなった次の週に結婚式。喪服を白服に着替えただけだといい、そのあとすぐに戴冠式。
姑のマリア皇太后が皇太子妃時代が長く、宮廷での位置も確立してから皇后になったのに対し、結婚と同時に皇后になりその立場も勤めもはたさなければならなかった余裕の無さ。
そして次々娘ばかり産まれ、4女のアナスタシア誕生の時はニコライは気を落ち着けるために散歩してから来てくれた。やっと産まれた長男は血友病(当時は奇病で当然治療法なんかない)。
たよりのニコライはよくできる臣下に嫉妬して左遷してしまい、自分で舵をとるも迷走。
頼れる人は、息子の病気を祈祷でなおしてくれるはずのラスプーチンだけ(ものすごく賛辞を送っているのが新聞にすっぱ抜かれるってどうなの?)
アレクサンドラはニコライを愛していたの?
劇中でオリガ姫に向かって「これからはお母様があなたたちを守ってあげます」と涙を絞らせるセリフがあります。
史実では銃殺されてしまうのですが、レーニンから命を受けた秘密警察が来たとき、「子供たちを撃たないで!」と4人の前に立ちふさがって盾になろうとしたことを、実際に撃った兵士が学生たちに語ったそうです(すごい授業もあったもんだ)
実際は想像以上にむごくて、子供たちみんな隠し持ったたくさんの宝石を下着に縫い付けていたので(8キロぐらいあったそうな)銃剣でついても致命傷がつけられず、苦しんだ挙句最後は頭部を撃たれたのだそうです。
アレクサンドラは子供たちを守りたかったのだろうと思うと、その(事実らしい)記述を見つけたときは気持ちが暗くなりました。
アレクサンドラ、あなたはロシア皇后になって幸せだったの?
ニコライを愛していた?
1908年6月に皇室ヨット『スタンダルト』号にて。アレクサンドラ皇后とニコライ2世
それもあって、図書館でロマノフ関連の本を探してきました。
これがまた重い(実感として)。
マーリヤ大公女の本は上田先生が今回のお芝居の下敷きとして使われたもので、ロシア革命を貴族側の視点が珍しい逸品です(今読んでる)
で、ロマノフの大地は取りあえずロマノフ王朝の最初から最後までを社会的背景の事実の羅列です(まだ全部読んでない)
もう一冊のロマーノフ王朝の滅亡、これはニコライ2世とアレクサンドラ皇后の往復書簡が詳しく載っていました(まだ全部読めてない!読みにくいなんてもんじゃなくかなりのこだわり書物!)
この夫婦は史実では本当に愛し合っていたのですね。相手を舐めるように愛していた。
ラスプーチンが暗殺された後にアレクサンドラがニコライに送ったラブレターには、クセニアの娘の「人非人のご亭主」とフェリックス・ユスポフをののしっています。
ドミトリーとフェリックスがラスプーチンを殺さなければならないくらい、ロシアは大変なことになっていた、なんて微塵も思っていないお手紙です。
そしてアレクサンドラは死ぬまで(きっと死んでからも)ニコライ二世を愛していたのですね。
お芝居の最後に、元気なりずちゃんアレクセイを筆頭に楽しげに登場するまっぷーニコライ二世一家。腕を組んでにこやかでうれしそうなりんきらアレクサンドラ皇后。
天国ではあんな風に楽しく過ごしていればいいなあと、思うだけで涙が出ます。
※言うまでもなく個人による個人的で勝手な感想の羅列です。
上田先生創作の女性なので、本当のところは先生の頭の中を覗かないとわからないのですけどね。