隆史との旅行。



嬉しくないハズ無いじゃん!



でもこの心の中のモヤモヤは何だろう?



去年は確実に無かったもの。



去年のGWは泊まり掛けの旅行には行かなかったものの、帰省した隆史とほぼ毎日一緒にいて、ホントに幸せだった。



んだけど…。









次の日、昼休みに行ったコンビニで「じゃらん」を買った。



事務所に戻って、お昼ご飯食べながらページをめくる。



はぁ。



そういえば、去年の夏休みの旅行も結局私が決めたんだよなぁ。



なんでいつも私が決めなきゃなんないんだろう。



いつだって隆史は、



「玲奈の好きなことしよう」



「玲奈の食べたいもの食べよう」



「玲奈の行きたいトコ行こう」



優しい彼氏?



違うよ、



単に考えるの面倒くさいだけだよ。



最近わかってきた。



隆史がそんな性格だから、結婚とかそゆことも面倒くさいとか思ってるんだろうな…



はぁ。



思考が、旅行からだいぶズレてきちゃったよ。



気を取り直して雑誌に目を通す。



いくつかピックアップして、そのページの角を折る。


とりあえず今度隆史と会うときに持っていこう。
浩介との水族館デート以来、気づくと浩介のことばかり考えてる私がいた。



自分の部屋にいると、自然とイルカのマグカップを見つめてる。



だから、すっかり忘れていたんだ。



ゴールデンウィークのこと。



だから、隆史からの電話で、



「で、今年はどうする?」



って訊かれたときに、



思わず



「へっ?」



なんて間抜けな声を出しちゃった。



だから隆史はちょっとムスッとして



「だから、GWの話だよ。休みは取れそう?もし取れるなら旅行行こうって前に話したじゃん」



「あ…うん、たぶん2日間ぐらいなら休みは取れるよ」



隆史の会社はGWは毎年一週間ぐらい連休なんだよね。だから、大体私はそのうちの祝日じゃない日に休みを取る。



「玲奈はどこ行きたい?」


「う~んとね…」



しまった、全然考えてなかった!



慌てて考えて、とりあえず、



「温泉とか?箱根とか伊豆とか?かな」



「わかった。じゃあ今度会うときに宿とか決めよ。考えといてね」



「うん。調べとくね」



とかなんとかで電話が終わる。



考えといて、かぁ。。。



結局いつも旅行とかのプランは私が考えるんだよね。


はぁ。



て、何ため息ついてんの!?



隆史と旅行だよ?



嬉しくないの!?




そのあと、水族館近くのファミレスで




軽く晩御飯らしきものを済ませて、





私達は帰る方向の電車に乗った。





デートの帰りが一緒の方向って、なんか新鮮。





隆史とはこんなことないからな・・・。





あ、いかんいかん、また隆史と比べてしまった。





隆史と、というより、遠距離恋愛と、かな。





電車の中では、他愛もない会話をしつつ、





窓の外の流れる景色をぼーーーーっと見てた。





「あ、次だ」




と、浩介が呟く。




次の駅で降りて、私達はそれぞれの路線に乗り換える。




「今日は楽しかった。ありがとね。


じゃあ・・・またね」




と、歩き出そうとした私に、





「あ!ちょっと待って!」





と浩介がストップをかける。




「ん?」





「あのさ、コレ!」





と、紙袋から取り出したのは、小さな包み。





さっきの水族館のショップの包み紙。




私に差し出すから、




「何??」




びっくりしたんだけど、





「いいから、開けてみて」





と言われるがままに包み紙を開けると・・・





そこに・・・





ちょこんと、イルカのマグカップ。





私がさっき「ほしい」って言ったものだった。





2度目のびっくり。





「コレ・・・」





「ハンカチ貸してもらったお礼だよ」





「そんなのいいのに・・・」





「あ、もちろん、洗濯して返すけどね・・・




ひとまず、さっきは助かったから」





「あ・・・ありがと・・・でも悪いよ・・・」





「いいってことよ!」





「ホントに、ありがと・・・」





なんか・・・





胸がいっぱいで気の利いたことを言えず、





ただただ「ありがとう」って、私は繰り返した。