それから私達は、



「あ!この魚、玲奈ちゃんに似てる!」



「って、フグじゃん!」



とか、はしゃぎながら水族館を見て回った。



イルカのショーでは、浩介に水しぶきがかかって、



「も~、サイアクだぁ~!」



と嘆く浩介に、



「水も滴るイイ男じゃん!」



と、私。
さっきの仕返しかな?フグって言われた…。



でも、



「ハイ、これ使っていいよ」



と、ちゃんとハンカチ貸してあげたからね。



「いいの?ごめんね…ありがとね。あ、ちゃんと洗って返すからね!」



「いいよ、気にしなくていいって」



「いや、よくない!今度返すから!」



浩介ってば律儀だなぁ。



とか思いつつショースタジアムを出て、私達はショップでお土産を見て回る。



「あ!これ、店のみんなに買っていこうっと」



と浩介が選んだのは、海の動物たちのカタチをしたクッキー。



なんか笑っちゃうよね。



でも、そんなところが可愛いよね。



母性本能をくすぐられる。


私は何を買おうかな…



ん!



「あ…可愛い!これ見て!イルカの形のマグカップだよ!」



こうゆーのに弱いんだよね、私…



でも…



もうこの年齢でこんなの買っても、実際使わないよね?お金の無駄じゃない?



でも…



欲しい…



悩む…



「あれ?買わないの?気に入ったんでしょ?」



うん、そうだよ、そうなんだけどねぇ~



「やっぱ要らない!」



「えぇ~、なんでぇ~!?」



「いいの、いいの、それより私も家族に何か買っていこうっと」



結局私も食べ物コーナーをグルッと一周。



甘いものがあまり好きじゃない父のために、お煎餅にした。



お会計を済ませると、あれ?



浩介がいない。



しょうがないからウロウロしてると、



「悪い!トイレ行ってた!」



と浩介登場。



ヨカッタ、はぐれたのかと思ったよ。



ドキッとした。










体が固まった。




















私にとって、「手を繋ぐ」というのは、重要なこと。


















もし、街頭インタビューとかで、「浮気って、どこからが浮気?」










と尋ねられたとしたら、










「手を繋ぐ」と答えると思う。










キスとか、それ以上のこととかはもちろん嫌だけど、










それのほうがまだ「浮気」で済ませられる。「手を繋ぐ」は、絶対に許せない。







もし彼氏が他の女の子と手を繋いで歩いていたら、










すごく嫉妬する。
















何故だろう?










きっと、それは、










その相手をとてもとても大事にしてるという証拠だと思うから。










お母さん、お父さんと子供が手を繋ぐように、










手を繋ぐということは、大切な人を守るということだから。










だから、好きな人には、自分以外と手を繋いでほしくない。
















と、いうのが私の持論だから、










だから、手を繋いでみる?って言われた時に










「うん」なんて言えなかったんだ。




















うまく言葉も返せずにいた私に、










浩介は










「冗談だって!」










と言って笑った。










だから、やっとそこで










「あ!からかったなっ!!」










って私も笑えたんだ。










心の動揺を悟られないようにね。

その日は、めちゃくちゃいい天気で。





デート日和。





浩介との初めてのデート。





てか、2人きりで会ったことは何回もあるけど。





探偵ゴッコで遠出したこともあるけど。





なんつーか・・・





デートらしいデートは初めて。





何故か緊張してみたり。





何故かスカートはいてみたり。










実は、この水族館、隆史とも来たことがある。






ずーーーーっと昔。






でも、最近は全然デートらしいデートしてない。






だから、今日はちょっと新鮮。










水族館って癒される。





海をイメージさせるからかな?





生命の母、海。





とにかく、今日は仕事のこと、すっかり忘れられそうだよ。





ありがとね、浩介。










「あ!みてみて!ペンギン!」






「あ、かわいいなぁ」






「私、ペンギン好きなんだよね」






「そうなの?初めて知ったよ」





「うん、ペンギンのぬいぐるみもいっぱい持ってるしね・・・って、


あ!ちょっと、あそこのペンギン見て!


なんか、手繋いでるみたいじゃない!?」






岩場の陰に、2羽のペンギン。






ペンギンが手を繋ぐわけないけど、そう見えたんだ。






2羽くっついて寝ていたから、そう見えただけなんだけど。






そしたら、浩介も見て、そして、こう言ったの。







「うちらも、手、繋いでみる?」






って・・・。