そうだ、米国で医者やろう~♬ -15ページ目

そうだ、米国で医者やろう~♬

米国ボストンで循環器内科フェローをしています。心臓集中治療の分野と美味しいご飯処を世界に広めるのが目標です。

 

 

コロナパンデミックがようやく落ち着いたと思ったら、今度はニューヨーク市の治安が悪化しています

 

はぁ・・・

 

警官が黒人を死に至らしめたということで全米各地で抗議運動が始まりました

 

NY Timesの記事をみて「へぇー」くらいにのん気に構えていたら

 

抗議活動をしているのがうちから徒歩5分

 

 

気づけば最寄り駅でパトカーが燃えてました

 

 

通勤途中に警官がずらりと待機

 

近所の携帯屋さんは破壊されてました

 

 

よく行ってたTargetは跡形もなく 





うちの病院前のお店は破壊行為対策でなにやら板を窓に設置し始めました

 

外出制限も始まりましたが、例のごとく医療関係者は例外扱い

 

危険な中、仕事に行かないといけません

 

仕事中はコロナに感染するリスク

 

仕事終わりは暴動に巻き込まれるリスク

 

やってられません

 

そもそも店を荒らしたりすることと黒人差別がどう関連しているのかは全く意味が分からないし

 

コロナの規制でみんなのストレスが溜まってるのもわかるが


密になってコロナの第二波が来ると嫌だから、いっそ抗議はZoomとかでやってくれないものか・・・

 

 

まぁ、実際、米国の差別は医療現場でもひどいもんで

 

例えば、保険

 

保険によって使える薬が違ったり、同じ薬でも負担額が違ったり

 

いい保険がないと健康リスクが高くなるという研究データもあるくらい深刻な問題1

 

あとは人種差別

 

もちろん露骨に差別するようなことはしないし、自分自身差別されるような言葉を浴びせられるようなことはないけれど、確実に存在するのは確かなわけで、医者の世界でも偉くなれるのは白人ばかり・・・

 

そんな中でも逆境に負けず偉くなってる海外の先生とかみると、本当にすごいなと思うし憧れる

 

7月からの職場は海外からの医師が少なくて、人種の壁を感じる機会も増えるだろうけれども、圧倒的なスタミナと頑張りで成果を出せたらいいなとおもいます

 

参考文献:

1.            Bittoni MA, Wexler R, Spees CK, Clinton SK, Taylor CA. Lack of private health insurance is associated with higher mortality from cancer and other chronic diseases, poor diet quality, and inflammatory biomarkers in the United States. Prev Med 2015;81:420-6.

米国至上主義にはなりたくないのであれですが、米国から学べることもあります。

 

おそらく要因として一番大きいのがかかりつけ医制度です。

 

米国では、かかりつけ医が主導して、高齢な方・基礎疾患のある方は定期的に受診いただいて、ご家族も交えて、患者の価値観、社会的状況、死生観、病状を全員で共有して、時間をかけて人生会議を行っていきます13,14

 

常に家族やかかりつけ医師と万が一の想定を話し合っているので、いざその状況に陥った際に対応しやすいのかもしれません。備えあれば憂いなしです。

 

日本だと残念ながら、「人生会議」を外来で話し合うという文化が浸透していません。ある研究によると、かかりつけ医がいる患者で「人生会議」をした割合はたったの16%という結果でした15

 

全国的にかかりつけ医が人生会議を積極的に取り組んでいけるといいと思います。

 

そして、その活動を支えるのが法律です。

 

米国には人生会議で決定した事柄を実現するための法律があります。NY州では「MOLST Form(Medical Orders for Life-Sustaining Treatment Form)」と呼ばれる蘇生に関する書類があります16

 

法的拘束力があるので、書類を記入しておけば、万が一、自分が病気になって意思決定ができなくなった際も希望した治療を受けることができるわけです。

 

日本では蘇生に関する法律がありません。なので、人生会議で決めた事柄を実現できない可能性があります。

 

例えば、2016年に日本で行われた研究によると、DNR(蘇生処置拒否指示)の意思表示をしている患者に対しても場合によっては最大4分の1の患者で蘇生処置をする可能性があることを報告しています17

 

この結果は米国で働いているものとしては衝撃です。もし米国でDNRの患者を蘇生したらそれこそ訴訟ものです。

 

やはり、しっかりと法制化しないと効力をもたないし、普及もしないのと思います。できるだけ早く法制化の動きが進むことを願います。

 

(続く)

 

参考文献:

1.            Amid Ongoing COVID-19 Pandemic, Governor Cuomo Announces Results of Completed Antibody Testing Study of 15,000 People Showing 12.3 Percent of Population Has COVID-19 Antibodies. NY.org. https://www.governor.ny.gov/news/amid-ongoing-covid-19-pandemic-governor-cuomo-announces-results-completed-antibody-testing. Last accessed on 5/29/20.

2.            「人生会議」してみませんか. 厚生労働省ホームページ. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html. Last Accessed on 5/29/20. .

3.            Curtis JR, Kross EK, Stapleton RD. The Importance of Addressing Advance Care Planning and Decisions About Do-Not-Resuscitate Orders During Novel Coronavirus 2019 (COVID-19). JAMA 2020.

4.            Onder G, Rezza G, Brusaferro S. Case-Fatality Rate and Characteristics of Patients Dying in Relation to COVID-19 in Italy. JAMA 2020.

5.            Silveira MJ, Kim SY, Langa KM. Advance directives and outcomes of surrogate decision making before death. N Engl J Med 2010;362:1211-8.

6.            Teno JM, Gruneir A, Schwartz Z, Nanda A, Wetle T. Association between advance directives and quality of end-of-life care: a national study. J Am Geriatr Soc 2007;55:189-94.

7.            Sudore RL, Fried TR. Redefining the "planning" in advance care planning: preparing for end-of-life decision making. Ann Intern Med 2010;153:256-61.

8.            厚生労働省ホームページ. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html. Last accessed on 5/27/20.

9.            Miyashita J, Kohno A, Cheng SY, et al. Patients' preferences and factors influencing initial advance care planning discussions' timing: A cross-cultural mixed-methods study. Palliat Med 2020:269216320914791.

10.         Akabayashi A, Slingsby BT, Kai I. Perspectives on advance directives in Japanese society: A population-based questionnaire survey. BMC Med Ethics 2003;4:E5.

11.         Matsui M, Braun KL, Karel H. Comparison of end-of-life preferences between Japanese elders in the United States and Japan. J Transcult Nurs 2008;19:167-74.

12.         岩田健太郎. 総合診療外来におけるadvance directive取得の実態. 家庭医療 2008;14:18-24.

13.         Tran HT, Leonard SD. Geriatric Assessment for Primary Care Providers. Prim Care 2017;44:399-411.

14.         Palliative Care FAQs. https://www.mountsinai.org/care/palliative-care/faqs. Last accessed on 5/27/2020. .

15.         Aoki T, Miyashita J, Yamamoto Y, et al. Patient experience of primary care and advance care planning: a multicentre cross-sectional study in Japan. Fam Pract 2017;34:206-12.

16.         2020. MOfL-STMhwhngppprm.

17.         Hiraoka E, Homma Y, Norisue Y, et al. What is the true definition of a "Do-Not-Resuscitate" order? A Japanese perspective. Int J Gen Med 2016;9:213-20.

 

 

ようやくコロナが収束してきました。

 

NYの病院のコロナ患者はピーク時の10分の1以下になりました。

 

ふう。。。コロナが流行ってからというものの、スケジュールは全て変更。コロナ患者の対応に回されました。

 

パンデミックが去った後でも、コロナ患者を見るのは一苦労。

 

めちゃくちゃ熱がこもるPPE (個人用防具)を身につけて感染に注意しながら患者さんを診察。倫理的にも複雑な話し合いもしなければなりません。

 

医者としてのやり甲斐を強く感じる経験ではありますが、正直二度と経験したくありません。大変すぎる・・・

 

規制が解けたら真っ先にぱーっと外で飲みたいとずーーーっと思っています。

 

ただほかの人たちも考えることは間違いなく同じ。

 

密・密・密・密・密

 

まだ殆どの人は抗体を獲得してないし、そもそも抗体が再感染を予防するのかもわかりません1

 

なので、規制と共に市民の心が弛んだら、第二波の到来は避けては通れないでしょう。

 

それにしても日本はパンデミックにならなくて本当によかったです。

 

コロナが夏バテして消滅してくれることを祈っています。

 

しかし、もし夏休みの小学生並みに活動してしまうと、日本でも第二波が起きかねません。

 

それまでにできることはなにか。

 

それは「人生会議」です。

 

最期のときをどう過ごしたいか?

 

あらかじめ自分自身で考えて周囲の信頼する人と相談し共有しておくことです2

 

今回のコロナ・パンデミックでアメリカでは「人生会議」が鍵となりました3

 

コロナは歴史に残るレベルの殺人ウイルスです。

 

めちゃくちゃ感染しやすい上に、元気な人でも重症化して死に至るリスクが非常に高い4

 

他人事ではないのです!!

 

あらかじめ人生会議をしておくと良いことがたくさんあります。

 

過去の研究結果をまとめると・・・・

 

      患者が希望する最期を迎えられる可能性が上がる5

      最期の時を自分の望む場所で迎えることができる6

      苦痛を伴う侵襲的な治療を受けないで済む6

      患者家族の精神的苦痛が減る7

     

高齢な方や持病のある方はもちろんですが、健康な方もこれを機に「人生会議」をしてみるといいのかもしれません。

 

残念ながら日本では「人生会議」は広まっていません。米国では高齢者のおよそ70%が「人生会議」をしているのにも関わらず、日本ではわずか3%・・・・6,8

 

日本人は歴史的に死を穢れとして云々という説もありますが、研究によると、日本人の約8-9割の人は「人生会議」をあらかじめすることに賛成しています9,10

 

どれくらいの人が蘇生を望まないかはいまいち大規模な統計がないのであれですが、広島と宇部で実施された調査によると延命治療を望む割合は約10%11、千葉県で行われた調査では約8%12という報告があります。

 

もしものときに延命治療を望んでいる患者は実は少ないという現状があります。

 

しかし、人生会議をしていなければ、法律上すべての治療をせざるを得ないので、望まない過度な延命治療などを施される可能性は非常に高いのです。

 

この乖離を埋めるためにも「人生会議」は非常に大切です。

 

(後半へ続く)

 

図1. 人生会議まとめ (やけにクオリティの高い大阪府のホームページより引用)

 

参考文献:

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