米国循環器内科〜重症心不全・心移植フェローシップのまとめ | そうだ、米国で医者やろう~♬

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米国ボストンで循環器内科フェローをしています。心臓集中治療の分野と美味しいご飯処を世界に広めるのが目標です。

はじめに


米国には心臓の病気を抱える患者がたくさんいます。2020年度の統計をみると米国での死因第1位は「心疾患」です(3位に新型コロナウイルスが入ってるのも驚きですがここでは触れません)。



米国では心疾患を抱える患者が多くいるため、必然的に心臓病に対する治療も目まぐるしい勢いで発展してきています。

もともと集中治療室に入院する患者の原因疾患としては心筋梗塞の患者が多かったのですが、治療の発展に伴って年々減少し、それに応じて心不全や心臓移植関連の患者層が増加しています。また、心不全の患者は様々な疾患を抱えてることが多く、治療が複雑化しています。

そのため、近年、心臓集中治療という分野が脚光を浴びはじめています。

心臓集中治療の専門になる為には様々なパスウェイがあります。私の場合、10年後の日本のニーズを考慮して、重症心不全・心臓移植フェローシップ(1年)をやった後に心臓集中治療フェローシップ(1年)をやる予定です。

現在、日本では心不全や心臓集中治療分野の専門医の需要はありません。したがって、しっかりとした教育システムもありません。

残念ながら、日本では心臓移植や人工心臓が殆ど行われておらず、日本全国の症例を集めても現在私が勤務しているタフツの年間症例数と大差ありません。そのため、日本のCCUの患者層は単純な心筋梗塞患者が多いのが現状です (多分)。

ですが、統計を見てみると、日本でも今後重症心不全や心臓移植を中心に心臓集中治療が重要となってくることが予想されます。というのも、日本でも米国ほどは多くありませんが、心疾患で亡くなる患者は全体の2番目ですし、年々、心臓移植・人工心臓の手術を受ける患者が増えてきています。その為、あと10年後には米国と同じように集中治療室の患者層は米国同様に変容していくと予想されます。



そんなときに必要となるのが重症心不全・心臓移植に精通した心臓集中治療医です。私は米国で先駆けてこの分野を学んで将来的に日本で還元できたらと思っています。そこで、私は重症心不全・心臓移植と心臓集中治療の2つの専門を学びます。この2つは別々のフェローシップなので今回は重症心不全・心臓移植フェローシップ(以下、心不全フェローシップ)について解説します。

重症心不全・心臓移植フェローシップの概要

心不全フェローシップは所謂サブスペシャリティと呼ばれるもので、米国の場合、一般内科(3年)→総合循環器内科(3年)→ 心不全フェローシップ(1年)となります。

就活は循環器内科3年目の夏に始まり、12月頃には結果が発表されます。マッチングシステムを採用している為、応募者と病院側がそれぞれの希望ランキングを作成して全体として最善の組み合わせが算出されるアルゴリズムになってます。

日本と異なり米国では総合循環器内科の需要が高く、およそ半分以上は総合循環器内科のフェローシップを終えたらそのまま独立してattending (指導医)として就職します(正確な統計なし)。

一方、心不全フェローシップに進む人はごく僅かです。理由は簡単。仕事が大変な割に給料がサブスペをしていない総合循環器内科上がりの医師と変わらないからです(およそ年収$250K - $500K)。米国はQOLと年収で競争率が露骨に決まります。

ということで、総合循環器内科フェローシップに進む医師およそ1000人に対して心不全フェローシップに応募する人はおよそ80人と少数です(2021年のデータより)。

80人の応募に対して枠は118あるのでプログラムを選ばなければ確実に就職が可能です。ですが、将来、日本の医療に貢献するような医師になるためには世界最高レベルのプログラムで学ぶ必要があります。

現在在籍しているタフツ大学は世界有数の心不全プログラムを有する病院なのですが、家庭の事情でニューヨークのプログラムを優先的に探すこととしました。



プログラムの探し方

心不全のプログラムを探すといっても全米に70プログラムしかありません。マンハッタン付近になると6プログラムあり、約12席のポジションがあります。ちなみに各プログラムのホームページを見てもポジションの数は記載がない事が多いのですが、FREIDAというサイトで各プログラムのポジション数の割り当てとマッチした人数などが細かく報告されています。



ニューヨークのプログラムはどこも良いプログラムなので競争率は高いと推測されます。また、各プログラムの募集人数は1-3人と少なく、内部進学を希望するフェローが優先されるため、年によってはそもそもマッチング前から席が埋まってしまっているプログラムも多々あります。

この数少ないポジションを獲得するために今からやっておかなければならないのがコネ作りです。面接で一番大切な事は「なんで、他のプログラムではなくうちのプログラムに行きたいのか?」という質問に対して説得力のある回答を用意することです。説得力のある回答をするにはコネが必須です。本当に興味があるプログラムであれば事前に色々調べて当然コネも作っているはず。

日本ではコネはズルいものというイメージがありますが、米国の就活ではちゃんとコネを作ることが出来るかというのも面接要項には書いていない必須項目となってます。なので、自分も今月から始動して手始めに行きたいプログラムのフェローの連絡先を手に入れてコネを作り始めています。ここから段々と上層部に侵入して最終的にはフェローシップの最高責任者であるプログラムディレクターと直接知り合うのがゴールです。いきなりプログラムディレクターに連絡しても無視されてしまうリスクが高いので、基本的には自分から直接連絡する事は避けて誰かに紹介してもらうのがベストです。レジデンシーもフェローシップもそうですが、大体半年〜1年前から始めるのが定石です。就活は十分な時間を確保して戦略を立てて用意周到に取り組むことが大切です。

心不全フェローシップの良し悪しを見るのに一つ参考となるのが心移植の件数です。当然、心移植件数が多ければ多いほど重症心不全患者数も多くなりますし、ECMO, LVAD, Impellaといった循環を補助する装置が必要な症例が増えてきます。つまり、心移植が多い施設であれば心不全の良いトレーニングが受けられる可能性が高いということです。心移植の統計はSRTRというサイトで一般公開されています(https://www.srtr.org/transplant-centers/?organ=heart)

次回は心臓集中治療フェローシップについて解説します