グループホームに入居している義父母。
月一の通院は家族が連れだす。
内科のほかに、義母だけ精神科へも行く。
5月の通院日は、義母の80歳の誕生日の翌日だった。
「お父さんと🐶(義姉)はどうしたの?」
「内科が終わって、先に帰った」
「私、カバンは持ってきた?」
「義母のカバンと財布は🐶が持ってるよ」
「私はなにも持ってなくていいのね。
これ(紙袋)は?あら、私の80歳のお祝い?」
この会話を、10分おき。
嫁が渡したプレゼントの存在も、忘れちゃうのね。
診察室では、
「アタマが壊れちゃってる以外は、元気です」
今日の医師は違う先生だったので、
躁鬱のこと、入所前後のこと、嫁が説明する。
「えー、ワタシそんなの全然知らない」
「そうだったのよ。でも、まあ覚えてなくても大丈夫。
どこも痛いところもないんでしょ?なにか困ってることはある?」
「そうね、痛いのは嫌だけど、どこも痛くないから、いいわ。
困ってることも何もないし」
帰りの車では、
「通院じゃないと外出できなくてね。
おいしいものでも食べに行けたらいいんだけど」
「大丈夫よ、あそこで良くしてもらってるし。何も不自由してないから」
「それは良かった。義母さん、もう80だけど、まだ80だよ」
「そうね、うちの家系はみな長生きで、みんな90過ぎたから、まだまだね」
「そうそう、まだまだこれからだ」
通院を終え、義母を施設に送り届けた。
職員さんに、お祝いボードを見せて、
「うちの孫、女の子が4人なのよ~」
「あら、いいわね!お部屋に飾りましょう」
「今日はありがとうね、気を付けて帰ってね」
「うん、また来月の通院でね」
義父と一緒にリビングの窓から手を振って、車が敷地を出るまで見送ってくれた。
80歳になった義母。
物忘れは進んで、数分前も忘れちゃうけど、すごく穏やかだった。
認知症になり、
いつもネガティブで、しかめっ面で、
怒りっぽかったり、話が通じなかったり、こだわりが強かったり…
振り回されて忘れていたけど、
本来の良い人だった義母を思い出して、
帰りの車で、なぜかひとり泣けてしまった
義母がこんなイイ子だと
義母を施設に置いてきて、
自分だけ家に帰ること、一緒に住めないこと、
またちょっとだけ、申し訳なくなるじゃんか~
でも、義母が元気になったのも、
嫁がちょっと感傷的になれたのも、グループホームに入居したおかげだ。
こんな素直な義母なら、また会いたいと思えた。
80歳、おめでとう。