新型コロナウイルスについては、早く薬が開発されて欲しいとみんな願っていますが、その開発にはまだ時間が掛かるとも言われています。

 

一方、抗インフルエンザ薬のアビガンを投与すれば新型コロナウイルスの症状が改善することは報道などで聞いたことがある人も多いと思います。

それなら、現時点ではアビガンを早期から積極的に投与する方が新たに治療薬を開発するより早いと思いませんか?

もちろん同時並行で新型コロナウイルス専門の治療薬の開発は続けるとして。

 

先日の日本感染症学会でもアビガンを投与した患者について、軽症や中等症の患者の9割、重症患者の6割に症状の改善が認められたと報告されていますし、福岡市でも治験の適応外同意書を頂いて一部で使用例がありますが、多くの症例で改善がみとめられているそうです。

 

インフルエンザは、陽性と判定されればすぐにタミフルなどの薬を処方されます。同じように新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と判定され、医師の判断で早期にアビガンを処方してもらえばかなりのケースで重症化が防げることになると思われます。
 

もちろん副作用もすでに明らかになっているので、妊婦への投与は出来ませんし、投与する本人の同意が大前提です。

 

平時であればしっかりと治験をして、より安全性の確認をすべきです。でも今は有事です。ここまで世界中を大きく混乱させて、死者の増加や医療崩壊、また地域経済の崩壊をさせている新型コロナウイルスの超巨大なリスクを考えれば、理想的な完全さを求めるより、現実的に対応した方がいいと思うのです。

 

医療の世界には様々な規制があります。アビガンはインフルエンザでも新型など緊急時に限った使用に限定されていますし、保険適用外で、国内で一般に流通していないものです。どうやってこれらを乗り越えればいいのか。

 

福岡市には強みがあります。それは国家戦略特区に指定されていることです。私は医療分野は素人ですが、副市長には医師がいます。

 

医師である荒瀬副市長と福岡市医師会会長、福岡市薬剤師会会長にも内容についてご相談の上、この特区の規制緩和を活用することにしました。

 

そして今日、九州大学病院長、福岡大学病院長と連名で厚生労働大臣や特区の担当省庁である内閣府に要望書を提出しました。私から加藤大臣や内閣府の審議官にも直接陳情しました。

 

現在はアビガンを一人の患者に処方するごとに病院で毎回、外部の委員も入れた倫理審査委員会を開かなければならない決まり(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針/文部科学省・厚生労働省)があります。

 

迅速に投与するため、観察研究を行う医療機関に限定した上で、こうした手続きを省略して、PCR検査によって陽性となれば、感染症の専門医師が問診やCT検査、副作用などを考慮し、本人に説明して同意を得た上で、アビガン投与の判断を行えることにするのです。


さらに副作用などの懸念に対応するため、継続的に投与者の状況を把握する体制を構築して、この観察研究で得られた情報を適宜全国に共有します。

 

これが可能になれば今後はこのような流れが可能になります。


PCR検査で陽性が出る→観察研究を行う病院(九州大学病院、福岡大学病院、福岡市民病院など)で医師の診察の上、副作用等を考慮し、投与が適切と判断されれば、初期の軽症の段階からアビガン投与→自宅やホテルなど病床以外の隔離などで済む。重症化が減少。


もちろん医師の診断の結果、アビガン以外の治療が適切と判断されればそこから別の治療方法を行います。

 

国家戦略特区とは、岩盤規制を破るドリルの刃と表現されます。

地域を限定してうまくいけば、速やかに全国適用にする。

ただ、これまで福岡市が規制緩和の様々な議論を国としていく中で、いくつかは地域を限定せずに最初から全国適用にすることが決まった実績があります。


福岡市としては、これを福岡市限定ではなく、速やかに全国適用になることを期待している旨も要望書には書いています。


最終的には、いかに早くアビガンを新型コロナウイルス治療薬として保険適用で承認していただけるか。一般の病院やクリニックでも処方できるかです。

その議論の後押しになればと思いますし、加藤大臣からは治験の早期完了に向けて最大限努力をするという力強いお言葉もいただきました。薬ができれば局面は大きく変わります。

 

いずれにしても医療という専門分野なので、内容については今後とも大学や医師会、薬剤師会、病院、保健所などの専門家のご意見を十分に聞きながら、関係者と一緒になって進めていきます。

 

 

 

福岡市長 高島宗一郎