こんにちは、福岡市長の高島宗一郎です。


 スペインのビルバオで開催された「世界都市サミット市長フォーラム」に参加してきました。

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 シンガポール、バルセロナ(スペイン)、パース(オーストラリア)、ヒューストン(アメリカ)、カサブランカ(モロッコ)、釜山、蘇州(中国)、サンタマリア(ブラジル)などなど、世界50都市の市長が集まって、住みやすく持続可能な都市作りのための解決策を話し合う会議です。

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 この中で選ばれた5つの都市、開催都市ビルバオ、カイロ(エジプト)、ケープタウン(南アフリカ)、グアダラハラ(メキシコ)、そして本命「アジアのリーダー都市・福岡」の市長だけが、先進的にチャレンジしている都市としてプレゼンの機会をいただきました。

 10分間にわたり、世界各地の都市の市長にしっかりと福岡市のまちづくりについてプレゼンさせて頂きました。

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 ずっと福岡に住んでいらっしゃる方の中には、なぜ福岡市が世界の都市の中から選ばれたのか、不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし福岡市は、一昨年、国連ハビタットからアジアの未来都市におけるモデルだと報告書で高く評価されましたし、これまでもNewsWeekやイギリスの雑誌MONOCLEなど複数の外国誌から「日本で最も住みやすい都市」「アツイ街」などと取り上げられています。

 また最近のアンケート調査では、福岡市民のみなさんの9割以上の方に「住みやすい」と評価していただいています。


 なぜ、福岡市は住みやすく、活気があるのでしょうか?プレゼンではその理由と今後のビジョンを説明しました。


 50年前に福岡市で作った都市作りの基本方針となるマスタープランは時代の一歩先を行くものでした。

 当時の日本では、大都市がこぞって都市化を進め工業を振興していましたが、福岡市では、逆に都市化を制限し、緑や水を大切にした住みやすく持続的発展が可能な都市づくりを目指しました。

 国際空港や港湾、中心駅は、全て都心から約10分の距離に集積し、公共交通ネットワークでつなぎました。
 また市民に身近な自然を守るために平地以外の開発を制限し、その結果、今でも都心近くにも豊かな自然が残っています。

 福岡市には大きな工場は建ちませんでしたが、代わりに、自然豊かで、都市機能の高い、人が行き交い、商業が発達した、活気のある都市になりました。


 さらに25年前にはマスタープランを改正し、積極的な国際交流の促進に力を入れることになりました。

 当時の日本では、地方の自治体が市民の国際的な交流を進めることはとても珍しいことでした。

 福岡市は、まず市民が国際交流を身近に感じ、知る機会を作るためにアジア太平洋博覧会「よかトピア」を開催し、その後、アジアの国々とのつながりを強くするために、アジアの文化に功績のあった方を顕彰するアジア文化賞を創設したり、アジアの近現代美術を系統的に収集する世界で唯一のアジア美術館も作りました。

 こうした国際交流を進められたのも、福岡には古くから日本とアジア各地を結ぶ拠点として発展してきた2000年の歴史があったからこそだと思います。

 その結果、福岡市は、首都から離れているにも関わらず、日本の中でいち早く、多文化性や国際性を手に入れ、観光客や、貿易、留学生、外国企業が増え続け、人やモノが集まる拠点として成長を続けているのです。


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 そして昨年マスタープランを25年ぶりに改正しました。この25年間で、世界では地球環境問題が深刻化し、サスティナブル(=持続可能)な都市のあり方が問われています。

 私はこれまでの福岡市の強みを活かし、未来に向けて世界に誇れるサスティナブルでクリエイティブな都市を作っていくことが大事だと考えました。

 そのため「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」という都市像をより具体的で明確なものにするために、一万人以上の市民のみなさんから一年間にわたってご意見を頂きながら、マスタープランの改定に取り組みました。

 ちなみに、市民のみなさんの力を借りながらと作成したのは、そのやり方が新しいリーダーシップだと考えているからです。
 まち作りにはリーダーシップが必要ですが、市民の価値観が多様化している今の時代において、独裁的なリーダーシップは通用しません。

 このマスタープランでは、都市の価値は都市規模だけはなく、住みやすさ、都市経済活力、環境との共存など、様々な要素で評価するものだということを明確に示しました。


 ところで「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」の人と環境と都市活力とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

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 「人」について一例を挙げると「ユニバーサルデザインのまちづくり」もその一つです。

 例えば福岡市の地下鉄では車両とホームの隙間を数センチにまで縮めていますが、同じように市内全域を完璧にハード整備するには限界があります。

 そこでソフト面にも力を入れ、福岡市では「ユニバーサル都市福岡」と銘打って、誰もがお互いに、優しく助け合えるような都市も目指しています。


 「環境」については、福岡市がこれまで克服してきた代表的チャレンジであるゴミや水問題があります。

 福岡市が大学と共同で開発したサスティナブルなゴミの埋め立て技術である福岡方式は、短期間で土地が再利用できることが特徴です。

 通常、ゴミの埋め立て場は、土壌が安定するまである程度の年数が必要ですが、福岡方式を活用すれば、それほど難しい技術を使うことなく、短期間で埋め立て場を公園などに再利用することができます。

 この福岡方式は世界各地で採用されており、福岡市も国際機関と連携し普及に協力しています。

 ちなみに今回の会議でも私のプレゼンが終わるとルワンダのキガリ市の市長が、福岡方式でキガリ市のごみ処理が見違えるように改善されたと握手を求めて来られました。

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 また、福岡市は、水を大切にしたサスティナブルな都市づくりも進めており、再生水の利用や海水淡水化施設、漏水率の低さ、節水率は日本の先頭を走っています。

 ちなみに先日記者会見した、今年の福岡アジア文化賞の大賞を受賞される中村哲氏のアフガニスタンなどでの灌漑技術は日本の江戸時代の技術で、安価でシンプルで効果の高い、発展途上国には最適な方法なのです。

 日本の先人の知恵は今でも素晴らしく、色褪せないものなのです。


 「都市活力」については、サスティナブルな開発としてシーサイドももち地区を紹介しました。シーサイドももち地区は、都心近くの海岸を138ヘクタール埋め立てて開発されました。

 住宅エリアだけでなく、IT産業を中心とした産業エリアや、博物館・総合図書館などの文化施設、日本唯一の開閉式ドーム球場などスポーツ施設があるほか、美しい海浜も再現しました。

 この地区のこのサスティナブルな開発と景観に対して、アジアハビタットなどからもアジア都市景観賞をいただいており、福岡市は都市デザインが美しいことでも高い評価を得ています。



 福岡市のこういった取組みを各都市の気付きのきっかけにすべく、福岡市はハビタットなどと協力してきたゴミや水だけではなく、高齢者介護や、都市デザインなどについても、海外からの視察や研修の受入を積極的に行ってきました。

 福岡市がこういったプログラムを積極的に行っているのは、サスティナブルな都市づくりを世界に提案することが先駆都市として大切な役割だと考えているからです。

 地球環境は、国境を越えた課題です。かといって極端に環境保護に傾き、住みづらく、発展しない都市は、衰退するだけです。

 衰退すれば生活水準を維持することも、環境を守っていくこともできなくなってしまいます。
人と環境と都市活力が3つ揃ってこそ、「福岡の提案するサスティナブル」が実現できると考えています。



 福岡市は単なる日本の地方都市ではなく、アジアの中で先駆的に新しい価値にチャレンジし、それを発信していくことができる都市を目指しています。

 今回のフォーラムでは、国境を越えた都市のモデルとして、その価値観を世界へ伝えるためにプレゼンしてきたのです。


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