こんばんは、福岡市長の高島宗一郎です。


 春という季節は徐々に暖かくなって桜も咲き、日本人が心待ちにする季節でした。
 ところが最近では春になると花粉や越境汚染物質の影響で、くしゃみをしてマスクをする人が増えています。
 春が憂鬱だという人が増えているのは、とても悲しいことです。


 特に今、全国的に問題になっているPM2.5(2.5μm(マイクロメートル)以下の微小粒子状物質)については以前から憂慮していて、福岡市では平成23年度から全国に先駆けて、越境汚染物質に関する有識者会議「福岡市黄砂影響検討委員会」を開き議論を続けています。
 その一環として去年の3月からは市のホームページや防災メールで黄砂の飛来情報も提供しています。
 またPM2.5については去年からすでに市内の6か所で計測しており、その濃度だけでなく含まれる成分の分析もしています。
 国に対しても、黄砂や光化学オキシダント、煙霧などについて、日本の福岡以外の地域や、大陸で観測された成分を広域的に比較し、発生地域の特定や経路の予測につなげる取り組みを進めるように要望しています。


 私たちが今一番不安に感じているのは健康被害に関する国の基準がはっきりしていないことです。
 国のPM2.5の環境基準は一日平均で35μg(マイクログラム)/㎥以下です。
 直接比較できるものではありませんが福岡市内にある測定地点の年間平均濃度は20μg/㎥です。
 ところが福岡市内で先月1月31日に観測された52.6μg/㎥は、国の基準のおよそ1.5倍という非常に高い濃度でした。
 私は大変憂慮したのですが、この数値を環境省がどう評価するかというと、「すぐに人体に影響を及ぼすものではないが、望ましいものではない」というあいまいな評価になります。
 結局市民にとっては大丈夫なのかどうか分かりません。ではどれくらいの数値であれば逆に必ず対策を講じる必要があるのか。


 私としては福岡市として「暫定基準値」でもいいので、何らかの対策を取るべき基準値を福岡市の有識者会議で検討してもらい、一定の数値以上の時は幼稚園、保育園に通う幼児や小学校中学校の生徒に対して外での活動を控えるよう要請することも場合によっては必要だと考えています。
 特に小さなお子さんをお持ちの親御さんはわが子を外で遊ばせていいのか非常に不安だと思います。
 粒子が2.5μm以下という、マスクをしても肺の奥まで入ってしまうかもしれない細かい粒子は、目やのどが痛くなるという直接的な症状はもちろんのこと、長期的にどのような影響が出るのか分からず、非常に不安になります。
 子どもたちの健康を守るためには、数値によっては行政が外出制限、行動制限などをした方がいいのではないかとも考えています。
 これまでの傾向を考えると、朝に数値が高かった日は、概ね一日高い数値で推移するという傾向がありますので、朝のある段階で一定の数値以上の時は、もし予測が外れたとしても健康被害を防ぐために、市民への情報提供や外出を控えるような具体的な呼びかけをすることも必要かもしれないと考えています。


 一方で根本的な問題を解決しなければこうした状況は解消できません。
 やはり発生源を特定し、当事者がきちんとした対策を取ることが大切です。
 越境汚染の発生源といわれる中国では発展を最優先するために環境を保護する基準や対策が後回しになっています。
 中国に当事者意識があるか分かりませんが、自国だけでなく周辺の国にも被害を与えているということについて、日本政府としても厳しく抗議をすべきです。
 また被害が多国間に渡る事を鑑みても、国際機関などと連携をしながら、強力な環境対策措置をとらせる事も必要だと思います。
 福岡市としても環境省や外務省に対してさらに強く現状を訴え、早急に全国的なPM2.5に関する基準や行動指針、予測システムを構築し、国民が安心して暮らしていけるよう要望したいと考えています。
 これから3~5月になると花粉との相乗効果で人体への影響が大きくなるかもしれません。
 また春は風の流れがゆっくりになるために、PM2.5が長時間滞留する恐れもありますので、暫定でも早急な対策を今シーズン取ることが必要と考えています。