創造と変革の志士たちへ 堀 義人 | So-Hot-Books (So-Hotな読書記録)

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書評と読書感想文の中間の読書日記。最近は中国で仕事をしているので、中国関連本とビジネス関連本が主体。

こちらも以前から読みたいと思っていながら読んでいなかった本。


<Memo>


●グロービスが育成しようとする3つの要素(P15)


1.能力開発
開発を目指す3つの能力
(1)知識・ビジネスフレームワーク (経営という知的ゲームに勝つための「定石」)
(2)考える力 (いま、何をすべきかを認識する能力)
(3)人間関係能力 (人を巻き込み、引っ張る力)


2.志 
※著者が尊敬している野田一夫氏が考える、「志」を構成する3つの要素。
(1)壮大なものであること
(2)多くの人に感動を与えられるものであること
(3)「成し遂げる」ことを前提に意思決定すること


斑目氏によるグロービス卒業生に向けたスピーチから見るグロービス流「志」(P116)
「クラーク博士は、ボーイズ・ビー・アンビシャスと言いました。これは「少年よ。大志を抱け」と訳され、多少誤解を招いている面があります。このあとには、すぐに続く言葉があります。”Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement”です。つまり、富とか名声のために大志を抱くのではなくて、自らがやりたいことを実行するために大志を抱いてほしいということです。」


3.人的ネットワーク
将来にわたって付き合える利害関係のない友人や、一緒に創造と変革を担う仲間を指す。そうした友人や仲間は、同じ信念を共有化し、それらが伝播することによって作られる。単なる飲み友達や遊び仲間とは異なる。


以上3つの要素を育成することでグロービスは「創造と変革の志士」を輩出しようとしている。「志士」とは、武士道精神に則り、高い倫理観と使命感を兼ね備えたリーダーを指す。


●著者がHBSで学んだ3つの能力(P24)


1.定石
定石とは、先人たちが過去の長い戦いの歴史の中で、成功するパターンから共通項を見出し、最善の型を体系化したものだ。いわば知識がパッケージ化されたものである。定石を学ばずして、試行錯誤を繰り返して実戦だけを重ねるよりも、定石を学んで実戦と組み合わせながら効率よく学ぶほうが、学習速度が速く、効率的に強くなる。


2.本質を見極める方法 (※これは安岡正篤氏の主張とのこと)
(1)短期でものをみるのではなく長期で考えるということ
(2)枝葉末節ではなくて、大枠を見るということ
(3)多面的にものごとを見るということ


3.効果的に伝える力
リーダーに不可欠な人的資質は、「伝える」力に集約されよう。ゼロから始まったベンチャーの場合には、自らのビジョンを伝えて、多くの人を集める必要がある。人にやる気になってもらうために、仕事の意義を伝える必要がある。対外的には、常に自らの立場を説明して(交渉をして)良い条件を得る必要がある。組織を束ねるには、多くの人々にビジョンや戦略を伝えて、リーダーシップを発揮する必要がある。


<My Opinion>
著者がHBSで学んだと言っている3つのスキルの内、「効果的に伝える力」を挙げていることが興味深い。伝える力について私が思い出すのは、杉田敏氏の話である。杉田氏は国際的なプロのコミュニケーターとして有名である。私は、2007年に「ビジネスリーダーに必要なコミュニケーション力」というテーマの講演を会社で聞いた。彼が講演の冒頭で引用した言葉が印象的だ。


Nothing is more important than the ability to communicate effectively. by Gerald R Ford (第38代米国大統領)


大統領はリーダーの最たるものであると思うが、その大統領と堀氏の主張が重なっている。杉田氏は講演における1番の主張として「コミュニケーションとは受け手にアクションを取らせること、人を動かすことである。」と述べている。つまり、アクションにつながらないコミュニケーションは本来的な意味でのコミュニケーションではないとうことだ。この考え方は仕事を進める上でとても参考になる。


●創造と変革のアイデアを得るヒント(P165)


創造と変革のチャンスは、実はどこにでも転がっている。ただ、誰もそれに気がついていないだけなのだ。だからこそ、チャンスが生まれるものでもある。世の中には、数多くの変化がある。参考までに、いくつかの変化について、発想のヒントとして列挙することにする。


1.技術革新のトレンド
 インターネットの方向性、バイオテクノロジー、ナノテク等・・・・


2.社会人口動態的変化


3.消費構造のトレンド


4.規制緩和の方向性-省庁の数だけビッグビジネスは、眠っている
規制緩和は常に大きなビジネスチャンスを生み出す。常に政府の動きを把握して、どの分野において規制緩和がなされて、その結果どのようにビジネス構造が変化するのかを把握することは非常に重要である。


5.グローバル化のトレンド


6.経営スタイルの変化


●「AQ」の高い人が成功する(P187)


2007年に京都で行われた国際的な経営者向けセミナーで、ポール・G・ストルツ博士のワークショップに2回参加する機会を得た。ストルツ博士は、「AQ」を提唱している方である。「AQ」は「Adversity Quotient」の略で、「逆境指数」と訳されている。IQが知能指数で、EQが感情指数であるのに対して、AQは精神の強靭さを計る指数なのだという。


AQが一番低い人は試練に直面すると逃避(Escape)する。二番目がやっとのことで生存(Survive)するが、それではまったくだめなのだそうだ。三番目はただ単に対処(Cope)するのみであり、四番目、つまり高いほうから二番目のAQの人は、しっかりと管理(Manage)する。しかしそれでも不十分だという。一番AQが高い人は、試練にあたって滋養(Harness)する。つまり、試練というものをきっかけととらえてどんどん成長していくのだという。そしてAQを伸ばす方法は小さい頃から試練を与え続けるしかないが、豊かな親は往々にして、子供に楽をさせようとしてしまう。そうさせないで、試練を与え続けることが重要という話だった。


<My Opinion>


ストルツ博士がAQとして体系化した理論について詳細は知らないが、基本的な考えには共感できる。以前、会社の研修で大先輩から「真に人を成長させるのは高質の原体験のみである。そして高質の原体験をする為には常に火中の栗を自ら拾いにいく姿勢が重要である。」という訓示を受けた。卑近な話しで恥ずかしいが、高校時代にクラス全員が受験勉強に向かう中、ブラジルに留学した経験や大学時代に全身全霊をかけて打ち込んだサークル活動、又社会人になってからの、リーマンショックにおける仕事での失敗は自身の中で「高質の原体験」となっている。高質の原体験はそれまでの自分ではない自分へと人生のステージ引き上げてくれる、とても貴重なものだ。


この、「高質の原体験」については「宇宙からの帰還 立花隆」に興味深いことが書かれている。立花氏は宇宙飛行士が初の宇宙体験後、人生観や精神的なものがとてつもなく大きく変化すること整理して下記のように述べている。


宇宙体験に限ったことではないが、体験はすべて時間とともに成熟していくものである。とりわけそれが重要で劇的な体験であればあるほど、それを体験している正にその瞬間においては、体験の流れの中に身をゆだねる以外に時間的余裕も意識的余裕もないから、その体験の内的含意をつかむことができるのは、事後の反省と反芻を経てからになる。」


高質の原体験はその体験をしている間は振り返ることが難しく、終わった後にその体験の意味を自身の中で整理できるようなものということだ。私自身は今、中国に滞在して、日々様々な刺激を受けているがこれも一種の高質な原体験と言えるだろう。自身の人生を充実させたり、自身を大きく成長させるものは自分自身が行動することで経験したことである。限りある人生の中でいかにこの多くの高質の原体験を重ねることができるかということが、人生の充実度を決めるのではないだろうか。


又、少し実践的な話をさせてもらえば「効率が10倍アップする新・知的生産術 勝間和代」で勝間氏は「勝間流インプット力を高める6つの技術」として、


「マスメディア情報を減らし、実体験、他者体験、良書を3大情報源とする」


という趣旨のことを述べている。この「3大情報源」のうち、人を成長させるという観点からは実体験が紛れもなく最も重要な要素である。他者体験や良書から気付きや行動のヒントを得てそれを実践してみる。このサイクルが自身を成長させるKeyであることは間違いない。「人生で最も高リターンの投資は自己投資である」という件は良く聞くが、経験が「複利」のように価値が増加していく性質のモノと考えると、とにかく人生の早い段階で様々な経験への投資を開始することが、最も合理的な意志決定となる。「若い頃の苦労は買ってでもせよ」とはこのことかと実感した。


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