かつてそこは戸井町という町だった。
平成の大合併により、そこは函館市になった。
平成16年のことである……
もうあれから10年が経つ……
国道278号線は太平洋に面している、海が望める美しい道路である。
函館市釜谷町
その道路から見上げる高台に、その古い朽ちた建物がある。
戸井町立汐首小学校
「といちょうりつしおくび」と読む。
前述の通り、現在は函館市になる。
その学校は戸井町であるうちに閉校となった。
建物は二次利用されていないようだが、校舎、体育館はしっかり残されていた。
大きな木造建築である。
増改築もされたのだろう……
古い校舎と新しい部分が入り交じっている。
海岸沿いにあることもあり、潮風を受け続けた金属部分は殆ど赤茶けていた……
煙突は金属疲労で脱落し地面で朽ちていた……
ところどころ窓ガラスが割れていた。
割られたというよりは「割れてしまった」という感じだ……
ここが正門玄関。
今はその名残は少なくなっている……
その脇に創立百周年記念の碑がある。
「飛翔二世紀」と書かれた、その石碑には当時の戸井町長の名前が刻まれている。
この石碑を目にする人は今は皆無だろう……
創立百周年……
二世紀に跨がる夢は今は潰えてしまった……
体育館の脇の坂道を上がると太平洋がよく見える……
この海に夕陽は沈む……
この日は雲が多く、夕陽が望めそうになかったが、空気の澄んだ晴れの日は、本物の感動に出逢えることだろう……
その美しい景色は……
学校帰りの子供たちの胸に深く刻まれたことだろう……
真っ赤な夕陽を浴びた感動を……
ただ、今の古い校舎には明日という希望も未来も何もない……
日本の片隅で一つの学校が消えていった……
平成10年
戸井町立汐首小学校廃校