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この本を初めて読んだのは、もう忘れるくらい以前の事だ。自分の方向性が失われ怠惰な生活をだらだらと過ごしていた時期だった。
村上春樹の小説は、今までにない考え方と今までにない言葉の表現を感じ夢中になった。何度も読み返した。
努力とか汗をかくということが感じられないところが確実に新鮮だった。
その時代、僕は覚めた人間でもあったし、覚めた存在でもあった。
小説の途中でジェイズ・バーのジェイがこう言う……
「あんたにはなんていうか、どっかに悟り切ったような部分があるよ。」
これは僕の事だと思った。
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先程、久し振りに読み返してみた。
すらすらと台詞が空読み出来るところもあれば、改めて意味の解ったところもあった。
「本なんてものはスパゲティ―をゆでる間の時間つぶしにでも片手で読むもんさ。」
「私が死んで百年もたてば、誰も私の存在なんか覚えてないわね。」
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こんな場面がある……
……気がついた時、彼女は泣いていた。僕は彼女の涙で濡れた頬を指でたどってから肩を抱いた。……
感動的なのは……ラジオN・E・BのDJが3年間入院生活をしている17歳の少年の手紙を読み上げる場面。
最後にDJはこう言うんだ……
「急に涙が出てきた。泣いたのは本当に久し振りだった。でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。
僕は・君たちが・好きだ。」
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この本にどういう経緯で出会ったかは覚えていない……
だけど僕のバイブル。
何回読んでも、涙の出ない深い感動がある。
余談になるが……
僕は就職の際、履歴書の尊敬する人の欄に「村上春樹」と書いた。
ちょっとした想い出だ……
最後にこの言葉で終わる。
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あらゆるものは通りすぎる。
誰にもそれを捉えることはできない。
僕たちはそんな風にして生きている。
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