何でしょうね、私は極力冷房を使わないようにしています。

その為に、外の風をうまく家の中に取り込んだり(突然の集中豪雨で酷い目に会う事もありますが)どうしても熱い時はシャワーを浴びたり。私の住処は水道代定額ですし。洪水になるくらい毎度毎度雨が降ってる地域に住んでますから少しくらい良いじゃないのとか言う感じで。



まあ何が言いたいって、突然テロみたいに雨が降ってくるの止めてくれって話です。でなきゃもっと節電してやるっての。
$羅月 ~月影の島~

のっけから高校時代の(参年時ですね)思い出をリスペクトしております。何かこの描写は外せなくて。
体調不良だろうが何だろうが休んだのは自分の責任が無いでも無い、そんな中で普通に来たら誰だって良い気持ちはしません。まずは何か言葉が欲しいです。それに対して私は最大限の譲歩をすると思いますが、他の人はどうするでしょうね。

折角なので営業のテーマでも聴きながらお楽しみください。
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  『あ、おはよ……』
  『何しに来たの? 体育祭明日だよ、今まで何の準備もせずに何の練習もせずに本番だけ出るって言うの?』 
  『そんな、それは本当にごめんなさいって思ってるけど……』
  『けど何なの!? あんたが抜けた穴埋めるために私らがどれだけ徹夜してがんばったと思ってるの!!?』
  『邪魔なんだよ。集団演技、お前無しの人数で作ったから』
  『また炎天下で動いてちゃ倒れるだろ。無理せず、ずっとテントの中にいたっていいんだから』


  「あ……え、ええっ!!!!?」
  「あ、良かったぁ……気が付いたんだね、ほむらちゃん」

 昼休み、暁美ほむらは保健室のベッドの上で過去の残像から回帰し現実に引き戻された。

 ほむらの前にはピンクの髪を二つにまとめたあどけない少女の笑顔がある。その両手はほむらの右手を優しく握っていた。

 「あ……貴方は……」
 「鹿目まどか、ほむらちゃんのクラスメイトだよ」
 「私、また倒れて……迷惑かけて、本当にごめんなさい」
 「あ、いいよいいよ。私保健係だし。こんな事でもないと仕事なくて暇だからね」

 まどかの気遣いにほむらはふうと息を付く。まどかは窓をもう一つ開け風を入れた。澄んだ爽やかな風が入ってくる。

 「それに……ね」

 まどかはほむらの方をみないで、窓の外に話しかけるように背中の向く方へ話しかけた。

 「私がこの学校で、ほむらちゃんの最初の友達だから、嬉しくって」
 「鹿目さん……」
 「まどかでいいよ、私もいきなり名前で呼んじゃってるし。迷惑かな?」
 「うっ、ううんっ!!! そ、そんなこと、無いです……まど、か……」
 「じゃあ決まりだね、ほむらちゃんっ」

 ほむらの返答にまどかは向きなおり、満点の笑顔でほむらに笑いかける。先程の夢は忘れられていた。

 「ねぇ、ほむらちゃん……私たち、前に何処かであったことあるかな?」
 「え……多分、無いと思いますが」
 「だよね。何かね、ほむらちゃんに似た女の子と昔会った気がするんだよね~」
 「そんなこともあるんですね」

 やはりあの後ほむらがゲートをくぐってきたわけではないようだ。カマをかけてみたがどうやらそう言うことらしい。

 だが別に何の問題もなかった。このまま戦いのない日々の中を生きていける、まどかは一抹の幸せを噛みしめていた。

 ガラガラガラ……保健室の立て付けの悪い扉がうるさく喚き散らしながら開く。美樹さやかだった。

 「おっ、暁美さん……だっけ。元気そうで何より何より」
 「さやかちゃん、何しに来たの?」
 「つれないなぁまどっち。今日の放課後、恭介の見舞いに行こうと思ってるんだけど。一緒に行かない? 暁美さんもさ」

 まどかが恭介の存在をそっと耳打ちする。ほむらは顔を明るくしたが、すぐに暗くなった。

 「でも、私二人の邪魔しちゃうかも……」
 「大丈夫だって。さやかちゃんみたいなうるさい女の子一人じゃ上条君も迷惑だろうからさ」
 「だれがうるさい女の子だ……ま、そう言うことだけどね。それに、この流れだと私が暁美さんの二番目の友達……ってとこかな?」

 にひひと笑うさやか。ほむらにとっては二人がとても似ていて且つ温かく映った。

 「じゃ、放課後また招集かけるから」
 「うん、ほむらちゃんは次の授業どうする?」
 「あ、受けます……もう元気ですので」
 「真面目だな~暁美さ……ほむらちゃんはさ。私だったら絶対サボるけどな」
 「あははは……」

 苦笑するまどかに釣られて、ほむらもくすくすと笑った。



 しかし、クラスに戻ったほむらは感じた悪寒を拭えなかった。

 『(どうしよう、全然分からないよ……)』
 『眼鏡っ子で頭いいと思ってたのに、あんな問題も分からないの……?』
 『ずっと入院してたって、勉強する暇くらいあったんじゃないの……?』
 『ただの不登校だったりして……』

 問題が分からないつらさ、答えられない自分に向けられるねっとりした視線や陰口。動悸が激しくなり倒れそうになる、だがここでまた倒れたらいろんな人に迷惑をかけてしまう……

 そんな中、チャイムが鳴った。へなへなとほむらは机に伏す。

 「はぁ……」
 「仕方ないよ、私だって真面目に授業受けてるけど全くわかんないし」
 「それはそれでどうなんだよまどか。ま、私も似たようなもん……」
 「そんなことでいいのですか?」
 「うげっ……」

 緑の髪をゆるやかにまとめたおっとりした女の子、仁美だ。クラス、いやたぶん学校全体でも一二を争う学力の持ち主で、彼女の作ったノートは非常に見やすいと評判なのである。

 そしてさやかの幼なじみ、こんなにも違うのかとまどかは毎回驚いている。

 「全く……そういえば暁美さん、休学はいつからされていたの?」
 「一年の秋くらいからです……」
 「こんど私のノートお貸ししますわ。さやかさんも、ちゃんと勉強してくださいね」

 うえ~い……さやかがだらしない声で返事する。まどかはよかったね、とほむらに笑いかけ、お前もだよとさやかにたしなめられる。

 「うんじゃ、後一時間がんばるか。どうせ自習だし~……わ、分かったよ」

 仁美の視線には勝てず、しぶしぶ机から教材を取り出して勉強を始めるのだった。

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BD一巻の特典CDを内容をかなり踏襲しています。と言うかこれ聞いたからこの話を書こうと思ったのですが。
聞いた事のない方は聞く事をお勧めします。勿論3巻の特典CDも聞くと良いと思うのです。

やっぱり私は何か頭の中で妄想を貼りめぐらせている方が落ち着きます。決められたレールの上をなぞるのも新しい世界を見る上で大事ですが、自分が見て回った経験は必ずどこかで生かされるべきなのです。

本当は病院編まで行きたかったのですが、今日はこの辺で。病院では例のあの子が出てきます。
$羅月 ~月影の島~


↑漫画版のQBは表情豊かです。

暑いです、こう言う日には酒でも飲みながら柿の種を口に流し込みたい所ですが、とりあえず部活なのでそちらに意識を専念致します。

つーわけで導入部分。感覚的にはまどか☆マギカ10話をスケールアップした感じでしょうか。

どうしてもこう言う設定上メタ発言が入ってしまうのですが、出来るだけギャグっぽくならないよう真剣な部分は詰めて行くつもりです。

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 ピピピピピ、ピピピピピ……

 「ん~、うう~ん……さやかちゃぁん……」
 「いいから……起きなさいってのっ!!!!!」

 晴れた日の朝、まどかは母に起こされていた。母にとっては自慢の娘だが、朝起きれないのが玉にキズ。

 「うう~ん、おかあさん、おはよ~……うわぁあぁあああっ!!!!!!」
 「早く着替えて準備してきなさい、さやかちゃんもう下で朝食食べてるよ」
 「なっ、ホントにっ!!!??」

 右手に持ったお玉で左手に持ったフライパンをガンガンガンガンと叩く某必殺技を受け昏倒しかかりながらもまどかは目を覚まし、その危機的状況に完全に覚醒した。

 こうしてはいられない。うちの食卓があの暴食娘に武力介入されては自分の食事が取れないのは必然、まどかはさっさとパジャマから着替えて学校へ行く準備をし(これは昨日のうちにやっておいたのが功を奏した)下に降りる。

 「よー、まどか~」
 「さやかちゃんそこ私の席っ!!!! そしてそれ明らかに私の分だから!!!!!」

 一枚残ったピザトーストを口に運ぼうとしていた親友の手をぴしっと叩いて奪還し急いで貪る。全く油断も隙もありゃしない。

 美樹さやか、蒼い短髪に男勝りな性格、運動は出来るけど勉強は苦手な典型的元気っ子。上条恭介と言う素敵な幼なじみが居る。

 「お前が起きるのが遅いからだろ? 迎えに来てくれたのにずっと待たせるわけにもいかないしな」
 「どうせコンビニでなんか買って食いながら学校行く予定だから助かったよ、鹿目おばさんの美味しい朝食も食べられて満足だ」
 「おばさんは余計だがな」

 にしししと笑いさやかは牛乳を一気飲みする。スタイルをよくしようと毎日コンビニで買って朝飲んでいる牛乳だったが、肉体の強化以外にはあまり役にたっていないようだ。

 「さてと、そろそろ行こっ、まどか」
 「うんっ、それじゃ、行ってきま~す」


 「しっかし、羨ましいよな~まどかは。あんな綺麗で料理も美味い人が母親でさ」
 「えへへ、そうかな?」

 草木萌ゆる道を二人は歩いていく。ここはまどか達の通う中学校の生徒だけでなく近くの小学校や高校に通う生徒も通る、言わば学生ロードだ。

 「うちの両親は朝早くから仕事に出てるからさ~、自分で作る気にもならないし」
 「さやかちゃんがそういうって事は、ホントに早いんだね」
 「でもまあ、恭介の為に花嫁修業も兼ねて料理しないとな~なんて思ってるんだけどね」

 さやかの朝はかなり早い。その彼女が早いというのだから深夜帯ではないかとまどかは類推する。

 それにしても恭介の話をするときの彼女は生き生きしている。傍目には誰でも付き合っていると推測される二人だった……が、まどかは二人が付き合っていないこともさやかの一方的な片思いであることも、恭介の気持ちが少しもさやかに向いていないことも知っている。

 知らない自分は彼女を助けてやれなかった。だったら今度は……助けてやりたいと強く願う。

 「う~ん、どこかにかっこいい男子居ないかなぁ……」
 「ん~……まどかはとりあえず色気がないっ」
 「そんな親指立てられても……あっ!!!!」

 まどかは急に走り出した。横断歩道の真ん中に黒猫が居る。その意味をさやかは分かりかねた、何の変哲もない猫だしまどかはそんなに超が付くほど猫好きでも無いことは知っている。

 「こっちだよ、エイミー!!!!」
 「エイ、ミー……??」

 猫はまどかの呼び掛けに答えてゆっくり歩き出す。その時だった。

 「フニャッ!!!!!」
 「ふう、危なかったな……まどか、お手柄じゃん」
 「えへへ……危なかったね、道路の真ん中に座ってちゃダメだよ、エイミー」

 赤信号だったからだが、急にトラックが突っ込んできたのだった。歩道側にだいぶん寄っていたのと立って歩いていたのが幸いし、猫は即座に反応して歩道に逃げることができた。

 猫は首を傾げる。この時間軸ではまだまどかと猫は会っていないはずなのだから。

 「あ、そっか……エイミー、貴方の名前だよ」
 「何か思い入れでもあんの? 昔猫飼ってたとか言う話は聞いてないけど」
 「うん、ちょっとね……じゃあエイミー、またねっ!!」

 あの猫は自分が魔法少女になるきっかけになった猫。目の前でトラックに跳ねられて重傷を負った猫を助けるためにまどかは魔法少女になったのだった。

 でも、奇跡も魔法も無くたって、守れる命がある。まどかはそれが分かっただけでも嬉しかった。

 「みんな、みんな私が守ってあげるから……」
 「ん、何か言った?」
 「うっ、ううんっ!!!! ただの独り言」


 「……さて、ここで本日の朝の会を始めたいところですが、その前にっ。皆さんはプリンを食べるときはどうやって食べますかっ!!!!??」

 また始まったよ……クラス中がどんよりなる。朝のけだるい雰囲気が加速した。次の授業は何だっけ、うわ数学だよ……

 「え、え~と……普通にふた開けて食べますけど」
 「そう、その通りですっ!!! わざわざ皿の上に落としてカラメル崩しながら食べるなんて洗い物が増える上に上品ぶった食べ方など言語道断、もし彼氏がそんなことでいちいち文句を言うようなら開口一番に別れてしまいなさいそして男子諸君はどうせ後片付けもしないくせに余計なところに拘って彼女に迷惑をかけないようにっ!!!!!」

 大体最前列で生け贄になる男子は決まっている。ここで先生の期待する答えを出さないものなら、その場でチョークに類するものが飛んでくるのは避けられない。

 実はこのトーク、今日に入って最初ではなく三つ目なのだが、酷いときにはこのせいで移動教室が遅れたりする(当然SHRの連絡事項は連絡されない)

 「……と、今日はこの辺にして。転校生を紹介します。アケミさん、入ってきて」

 ざわつく教室内。女の子か、やけに古めかしい名前だな、てか何でこの時期?……色々な感想が飛び交い多少の動揺こそあったが、むしろそれ以上に先生の長話のせいで廊下に立ちっぱなしだったと言う方に同情が集まる。

 教室の扉が開き、一人の女生徒が入ってきた。眼鏡をかけた大人しそうな女の子、衝動物的な愛玩性に満ちた子だ。

 彼女は黒板に綺麗な字で名前を書く。『暁美ほむら』、珍しい名字に名前だとみんながまたざわついていく。

 「あけみ、って名字なのかよ……」
 「字、綺麗……」
 「何か優等生って感じ?」
 「何か付き合いにくそう……」
 「はいはい、静かに」

 勝手な話を始める生徒達を教師は一喝する。何だかんだ言っても、この先生は生徒に信頼されていた。

 彼女は少し顔色が悪そうだった。まあ初めての教室では気後れする事もあるだろう。頬は上気し息も少し荒い。

 「暁美さんは体が弱くて長い間入院してたから、色々分からないこともあると思いますので。しっかりサポートしてあげてくださいね」
 「暁美、ほむらです……よろしく、お願いしま、す……」

 「ほむらちゃんっ!!!!!!!」

 とっさにまどかはほむらの前に進み出、倒れこむ彼女をしっかりと抱きかかえた。通常なら何か打ち合わせをしていたのかと勘繰るほど良いタイミングだったのだが、彼女の真剣さは演技などでは無い事がありありと見て取れた。

 「先生、彼女は私が保健室へ連れて行きますっ!!!!」

 教師の有無も確かめず、まどかは教室の扉を開けて保健室へと彼女を連れて行った。

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個人的にはまだ此処までは行けそうな気がしています。ラストをどう詰めるか、未だに悩んでおりますが多分タイトに終わらせた方が良いんだろうな~、さやかには幸せになってほしいしな~。

ミールカードを忘れたので家に帰ってきました羅月っつぁんです。今さぬきうどんを茹でています。

今回は予告通り(?)まどマギ短編です。きっと同じ事を考えた事がある人が一杯いるはず、と言う割とベタな展開で物語が進行していきます。


今回は導入部分だけです。長くなるか短く締めるかはまだ全然決めていないのですが、とりあえずやって行こうと思います。


登場人物の紹介でもしておきましょうか。気になったら本編も見てね~(これが目的)

鹿目まどか(カナメマドカ)
主人公。特に何の取り柄もないが友達思いな女の子。

暁美ほむら(アケミホムラ)
まどかの親友。まどかを絶望の輪廻から救うために魔法少女になった。気丈に振る舞っているが本当はとても引っ込み思案で臆病。

美樹さやか(ミキサヤカ)
まどかの親友。上条恭介と言う幼馴染に恋心を寄せている。彼は有望なヴァイオリニストだったが事故で指が動かなくなり、入院している。

キュゥべえ(本名:インキュベーター)
二次性徴期の少女の願いをかなえる代わりに魔法少女として魔女と戦う使命を与える契約仲介者。とある理由の為ファンの半分以上を間違いなくを敵に回しているのにグッズは色々と出ている。こいつのグッズだすなら杏子を出せとあれほd(ry

魔法少女(マホウショウジョ)
魔女と戦う使命を与えられた少女たち。キュゥべえに願った願いの種類に応じて特殊能力が色々変化する。

魔女(マジョ)
人々に絶望をまき散らす存在。
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 それは世界の終わりの日。瓦礫の敷き詰められた視界の中、漆黒の長髪に紫の瞳を細めた少女、暁美ほむらは巨大な悪と対峙していた。

 何度も繰り返し敗北を重ねては時を戻しどうにか対策を練ってきた相手、最強の魔女ワルプルギスの夜。

 鹿目まどかに固執して他の魔法少女の協力を仰がなかった反省から、今回は非情ながら三人の魔法少女を捨て駒に扱い体力を極限まで削って貰った。

 しかし既に三人は倒れ瓦礫の中に死体を埋めている。

 自分にも武器はもうほとんど残っていない、この魔女は不死身なのではないか。いや、まどかがこの魔女を滅ぼしたところを見ている。絶望的な末路が待っていたとはいえ、この魔女でも倒せることはわかっているのだ。

 しかし、これだけの攻撃を加えて何故倒れようとしないのk……

 「ほむらちゃんっ!!!!!」

 無垢な声にほむらはびくっと猫のように振動する。鹿目まどか、桃色の髪と瞳をした、だれにでも優しいほむらの最高の友達……瓦礫のフィールドを乗り越えて、魔法少女でも何でもない彼女はやってきたのだ。

 まどかがワルプルギスの夜に対して絡んだ世界はどれも絶望で終わっている。ほむらの顔は親友を失う恐怖でひきつった。

 「私ね、決めたの……魔法少女になるって」
 「まどか……どうして……」
 「やっと決心してくれたんだね、鹿目まどか」
 「キュゥべえ……っ!!!!!」

 キュゥべえ、本名インキュベーター。全身が白い毛で覆われた、赤い瞳に大きな尻尾の小動物。二次性徴期にある少女達の願いを何でも叶える代わりに魔法少女として魔女と戦う使命を与える契約仲介者。

 彼がどこから現れたか知らないが、この機会をずっと狙っていたのだろう。

 「まどか……止めてぇ……」
 「さあ、君の願いを聞かせてよ。どんな願いで、君はソウルジェムを輝かせるんだい?」
 「……ほむらちゃん、前に言ったよね。ほむらちゃんの力で過去に戻ることが出来るって」
 「え、ええ……」
 「過去へのゲート、開いててくれるかな?」

 契約の魔法陣がまどかの周囲に展開される。真剣な面もちのまどかに、ほむらは虚を突かれた様子で答え、過去へ戻るゲートを開いた。今ここで最も力無く弱いはずの彼女が最も落ち着いているこの状況にほむらは動揺を隠せないでいた。

 「私の願い……それはキュゥべえ、いえこの地球に介入してきたインキュベーター全ての消滅」
 「なっ……」
 「そ、そんなこと出来るわけないだろう。しかもそれは君の偽善……」
 「そうか……無駄よキュゥべえ、以前私が契約を止めるために貴方を殺した際、それでも契約が止まることはなかった……貴方が一旦契約を始めてしまえば貴方がどうなろうと契約は止まらない、契約至上の貴方の能力が仇になったわね」
 「そんな、馬鹿な……何故だ、こんな願いが叶うわけが……これが鹿目まどかの潜在能力……」

 白い悪魔は尻尾の先端、足の先から石化していく。今まで銃撃で蜂の巣にされても動じなかった彼が初めて狼狽した。恐らく殺されないと再生できないのだろう。キュゥべえ本体の生命が保たれたまま凍結すれば、彼とて抵抗は出来ない。

 ほむらの姿が私服に戻る。周囲に倒れていた魔法少女達の服装も元に戻っていく。最初から契約を迫るインキュベーターが居なかったことにされたから、全てが無かったことにされているのだ。

 「こんな事をして……言わなかったかい鹿目まどか、君達下等な人間に生きる術を与えてきたのは僕らインキュベーターだって事を。文明レベルを極限まで落として、裸で洞穴で暮らしながら生きるか死ぬかの狩りをしながら生きていきたいのかい??」
 「人間はそんなに弱くないよ……貴方達なしでも、きっと強く生きていけるから」
 「くっ、絶対に、そんな、事っ……」

 時のゲートも次第に閉じていく。ほむらが開いたゲートはほむらの生死に関わらず開いていてくれるが、ほむらが魔法少女であった事実そのものも時の波に巻き込まれて消えかかっている為だった。

 ワルプルギスの夜も消えていく。始元の魔女は魔法少女より生まれた。ならばその魔法少女の存在がかき消されれば魔女も生きてはいない。

 「ほむらちゃん……幸せな世界で、待ってるからね」
 「まどか……」

 たった一人で、弱い未熟な少女はゲートをくぐる。

 門の中でまどかは今まで繰り返してきた世界の記憶を脳に刻み込まれていた。最初の世界で自分が猫を助けるために魔法少女になったこと、ほむらが自分を救う為に魔法少女になったこと、他にも色々な世界が見える。

 その奔流の中、まどかは光の注ぐ方へと吐き出されて……


 魔法少女まどか☆マギカ
     ~If it were not for QB~


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仮定法ですがこれ合ってるかな、どうにも昔の記憶があいまいで。

とこんな感じです。導入部は作っておりますが割と面白くなりそうな予感がしております。さあ来い来い過剰なアクセス数。

 『はぁ、はぁ、はぁ……すっ、すみませんっ!!!』
 『君、三島ハルちゃん? ちゃんと時間通りに来ないと駄目だよ……』
 『す、すみません……』

 案内人のお兄さんに頭を下げると、彼はしぶしぶながらも通してくれた。出番はすぐ次らしく、来なかったら飛ばすつもりだったらしい。

 待ち合い室の静寂の中自分の出番を待ち続ける。長い、どれほど長い時間が経過したかわからない。本当に時間ぎりぎりだったのだろうかと不安になる。

 会場内でオーディションを受けていた最後の受験者が荷物を取りに入ってきた。髪の毛にくるくるとウェーブをかけた高飛車な印象を受ける女の子だった自分とはえらい違いだが、歌はそんなこととはきっと関係ない。

 そう言い聞かせ、ハルは会場へ堂々と入っていく。

 入って……彼女は萎縮してしまった。彼女の前に座っていた審査員は背の高い痩せた男と……

 三島裕次郎、三島グループを統べるトップだった。

 『三島ハルさんですね……こちらにお座りください』
 『……はい』

 とりとめのない質問が続く。こんなにも緊張するはずでは無かったのに。裕次郎に対峙しただけでこんなにも自分は無力なのか。

 『……それでは、貴方の好きな歌を一曲だけ歌ってくれますか?』
 『……………』

 ハルは立ち上がる。母が教えてくれた歌、元々は子供を持つ母が、自分も昔子供だった頃に歌を教えてくれた母を思い返すそう言う歌だ。

 何時でもそばで見守ってあげると言い残し死んだ母の魂のこもった唄を彼女は思いのたけを込めて歌う。

 澄んだ旋律が流れる。静かな曲調の中にも確かな力強さがあった。華奢な女の子から出るなどとは到底思えない重厚な響き、裕次郎の眉がぴくりと動く。

 ドヴォルザーク作曲【我が母の教えたまひし唄】、文字通り今は亡き母が娘に託した最後の贈り物。ハルの為だけに一部書き換えられた曲だった。

 ……静かに終わる。沈黙が流れた。普通の人間なら口にするあらゆる言葉の安っぽさに卒倒してしまうそんな唄だった。

 三島裕次郎は、彼女の父親は全員の審査が終わったこともあって無言で立ち去ろうとする。

 それを、ハルは引き止めた。

 『お願いします、一言感想をお聞かせくださいっ!!!!!!』
 『ゆ、裕次郎さん……そうですよ、何と言っていいのかは私もわかりませんが、無言というのは……』
 『お願いします、お願いしm』
 『向き合ってみろよ!!!!!!』

 抜群のタイミングだろうか。抜群すぎて嫌になる。俺は全く動じていなかった。権力など今はどうでもいい、大事なのはハルの気持ちだけだった。

 『血は繋がっていないとしても……そいつはあんたの娘だろ!!!! あんたの目当ては遙(はるか)おばさんだけだったのかよ、そうじゃないなら……名だたる産業の頂点に上り詰めたトップの気概ってのを見せてみろ!!!!!!!』
 『え……娘って、え……???』
 『よく吼えるな、雷神の血族、子鬼ふぜいよ。その無鉄砲な行動、まるであいつと同じだ』



 『そうね、ほんっとに馬鹿みたい』



 隣に座っていた男の声色が変わり、煙玉を床に放る。煙はすぐ晴れ、そこからはアリアが出現した。

 『え……えええぇええええっ!!!!!!!???』
 『なっ……何で、そんな所に!!?』
 『あれくらいで私を倒したとか甘い甘い』

 ですよね~、とアリアは裕次郎の方を向き直る。彼女は静かにハルの元に歩み寄ると、膝をついた。

 『ごめんね、心配かけて……君の思いは、お父さんに伝わった?』
 『……伝えました。お父様……お父さん、私は貴方に認めてほしかった、血のつながりは無くても、私はあのお母さんとお父さんの娘だって事を……』
 『……遙に似て、大きく強くなったな』

 それだけ言い残して、世界に名だたる彼は暗闇の中へと消えて行った……


 『じゃあ何か? 親父さんが見に来る事知ってたのか?』
 『うん……』

 近くの喫茶店に俺とハル、アリアは来ていた。妙な構図だ。アリアが特大パフェをむしゃこらしている間俺はアイスコーヒーを、ハルはミルクココアを静かに飲んでいた。

 『一応ね~、遙おばさんから依頼事があってさ。癌で死ぬ前だったけど、『ハルの願いをかなえてやってほしい』って言う抽象的なお願いされてね、あの子ほとんど莫迦兄と一緒で、奴隷のような扱いを受けてたからさ……』
 『自由を与えてやった、そう言う事か?』
 『ううん……アリアお姉ちゃんじゃ無くて、別の知らない人が何か願いは無いか聞いて来たんだけど。私ね、沢山の願い事したんだ。ラウルに会いたい、ラウルとまた遊びたい、そして何より、お父さんに会って私の歌を聴いてほしいって』
 『ま、その別の人が私だったんだけど。あんたがハルの事を思い出すかはどうでも良いとして、とりあえず兄の監視から離れた所で事を運ばないといけなかったし。あんたあの日の事件の事、情報だけ残して思い出は私に封印してくれって我儘な事言ってたからね、当然ハルの事も忘れてたんだろうけど』

 食べながら明瞭な言葉を発するこの姉貴も中々だと思うが、そんな事を画策していたのか。だがそれはまあ俺の落ち度だろう。

 『色々と働いてる中で三島の暗部とも繋がりがあってね。馬鹿御曹司からハルを助けて、ついでに願いもかなえてもらえば一石二鳥じゃん』
 『でも、兄様の言う事聞いてた……』
 『私だってプロだからね。やると決めた仕事はちゃんとやるよ。ただ……『三島ハルを見つけ出し引き渡す』までしか依頼は受けて無いからさ……はむっ。その後どうするかなんて私の自由なわけよ。今頃きつくお仕置きされてるだろうし、はむっ、ざまぁ』
 『……本当に言いたい事はそう言う事じゃないんだろ?』

 ふん……アリアは気に入らないと言った様子でスプーンを置く。彼女はハルの方を向いた。

 『裕次郎さん、貴方を避けていたのは別に貴方が嫌いなわけじゃないよ。あまりにも遙おばさんに似てたから、死んだおばさんの影を貴方に見てしまうから……だって』
 『そんな事で……いや、だったら教えてくれても良かっただろ?』
 『実はあの二人知り合いでね、おばさんが離婚した時に真っ先に心配してくれて、ハルちゃんもろとも引き取ったんだけどね……正妻のババァはそんな事許しはしなかった、ハルにも会うたび辛く当たってたよ。実はあの人、一夫多妻だって色んな人が言ってるけどそんな事ないんだよね』
 『事実無根か……それを実の息子が信じてるんだから世話ないよな』
 『私も裕次郎さんと繋がりあって、ハルの面倒もちょいちょい見てたから色々話されたよ。自分はどうしたらいいか、分からなくなる時がある……不安そうだったよ』

 スプーンをまさぐり、パフェをごちゃ混ぜにするアリア。俺もガムシロップをもう一つ追加してしまっていた。

 けだるく過ぎて行く午後。雨が降ってきた。傘も無いのに……面倒な事になったものだ。

 『あのさ……あの曲もう一度歌って』
 『え……でも、そんな、急に……』
 『良いから良いから、私がピアノ弾くし。ラウルがチェロ弾くし。はい譜面』
 『おい、この曲初見で弾けると思ってんのか』
 『行ける行ける』

 この喫茶店は色々な楽器が置いてあり、名のある音楽家がチップ代わりに弾いて行ってくれる時もあるのだ。

 アリアはピアノ椅子に座り冒頭部の旋律を奏で始める。同じ旋律を何度も執拗にリピートするので俺も仕方ないからチェロを取り出し弓に松脂を塗る。そして椅子に座り調弦し、楽譜に合わせて弾き始めた。

 ハルは歌う。伴奏により何倍にも引き上げられたその実力はその場にいた者たちに呼吸すら忘れさせた。

 ドイツ語で歌われている曲だが、今だけ和訳しよう。

 『昔、年老いた母が私に歌を教えてくれた時、
     その目に涙を浮かべていた。
        今、私も親となり、その歌を子供に教えようとしているが、
            日焼けした頬に、いつのまにか同じように涙が流れる


  願わくは、私の娘もそうあるように。そしてその涙が、喜びで満たされているように』

 誰も知らない彼らだけの歌姫がそこにいた。それは万人が認めた訳ではない偽りの歌姫だけれど、その歌だけは紛れもない本物だった……





 数日後、ラウルの元に一通の手紙が届いた。写真付きの手紙で、送り主の名前は至極適当な偽名だったが。

 『成程ね……どこまで人をコケにすれば気が済むんだあのバカ姉は』

 写真には、アリアともう二人映っていた。他でもない、忘れるはずの無い二人。




 俺の、かけがえのない両親だった……


 『HAPPY BIRTHDAY:RAOUL』
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両親生きてました。何で死んだ事にしないといけなかったかはちゃんと理由があるのですが、特にどうでも良いので割愛させていただきます(キリッ

やっと終わったと言う感じです。実は割と伏線を回収できていないせいで台詞が山のようにある気がするのですが、最後のもう一度ハルが歌うシーンは気に入ってます(自己満足)

やっぱりこう言う話を描いていて、大事だと思うのは教養ですよ。ドヴォルザークのこの曲はG線でものんちゃんがフィギュアスケートのフリープログラムに使った曲ですが、フィクションの世界に実際のクラシックや神話を織り込む事で一気に現実との距離感が縮まる感じと言いましょうか、その感じが何かこう何ともいえず好きなのです。


普段のように初めと終わりだけ大まかに作って描いてきた割にかなりカオスな出来になってしまいました、人の土俵で相撲を取るのはやっぱり難しい事よ。私の二次創作が割かし上手くいくのはその作品を愛し抜くからだと思うのですが、だとしたら愛が少し足りなかったのか……などと邪推してしまいます。


と言う事で、早くも次回作に取り掛かっております。期待して見ていて下さってた方には申し訳ありませんが、次はオリジナル(まあこれがオリジナルかと言うと微妙なんですけど)ではありません。某作品の二次創作です。

それを読んで元の作品に興味が湧いてくれたなら、それはとっても嬉しいなって。と言う訳で、まあ期待せずにお待ち下さいな。一応信頼と実績のある作品を選んでいますので大コケはしない……はず。

明日上がったりはきっとしません。バイトもありますし。
長いです、いやホントに。ただもう完結自体はしていて、一通り見ていただいたら最終話を上げられるかと思います。
ポップスコンサートから始まった一つの物語は意外と長く続いてきましたが、もうすぐ幕切れです。今回はバトル多めにお送りしております。やっぱりバトルって難しい。

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 『ぬ……俺の方が早く着いてしまったか……ん?』

 この世のものとは思えない美しい歌声が聞こえる。日本語では無い、一体何語かも分からない唄だったが、その旋律は一人の音楽家の心を捕えて瞬く間に引きつけた。

 『何て綺麗な歌声だろう……』
 『誰……誰かいるの?』
 『その声は……』

 上で妨害工作が行われている間にファントムは先にハルの元へたどり着いていた。

 携帯の明かりで彼女の存在を確認すると(急に明るくなってまぶしかったのか、ファントムの待ち受けがあまりに痛かったのかは知らないが彼女は両手で目を覆った)、彼女の置かれている状況にファントムは憤慨した。

 『君は保護されているって聞いたぞ……』
 『保護……うん、間違いじゃないけど……ねえ、此処から出して』
 『……………』
 
 普通に考えるなら彼女をあの詐欺師崩れから守るのが先決、そのためなら彼女を此処に置いたまま防衛するのが一番楽だ。

 だが本当にそれでいいのか。いたいけな少女をこんな暗闇に幽閉することを肯定していいのだろうか。

 『今日オーディションがあって……私、それに参加するつもりなの。こんな服じゃみっともないかもしれないけど、歌って見た目じゃないと思うの』
 『何だって……君はラウルに拉致り殺されそうになってると聞いたぞ』
 『違うの……ラウルは私を助けてくれた、私の夢を叶えるためにいろいろしてくれたの』
 『……………』
 『……えっと、どうしt』

 彼女の問いかけを遮るように彼は拳で南京錠を破壊した。扉はいとも簡単に開く。

 『行こう、きっと今なら間に合う』
 『でも……いや、私がそうお願いしておいてあれなんですけども』
 『君がもし次世代の歌姫になる可能性を秘めているのなら……僕にはそれを助ける義務がある』

 それは偉大なる勇猛なる一人の紳士の一声。暗闇すら払いのける希望の叫び。

 『……ありがとう、ございます』
 『ああ、それじゃあこっちに……ぬ、エレベーターが使えない……だと……』

 確実にラウルを邪魔するために止められたと見える。どうしようか……と思っているとラウルが階段を下ってやってきた。


 『お前……一人だけまた楽をしたと見えるが後で頭冷やそうか』
 『そんな事を言っている場合じゃないだろう? 今はすぐに此処を脱出し……この子が世界に羽ばたく助けをするんじゃないのか?』
 『そうだ……だが、この先にはアリア・ヴォルティカルがいる。俺の知る最強の掃討者だ、まともにぶつかっても勝ち目はない』
 『ほう……それは、この僕よりも強いのか?』
 『……さあな、試してみろよ』

 こいつの発言は何の根拠も無ければまるで安心できない。ただ……進まなければ道はない。

 俺達は階段をかけあがり、オーディション会場を目指し……

 『どこへ行くんだボクの妹』
 『……にい、さま……』
 『またてめぇか……』

 スーツに身を包んだ、下卑た笑みを浮かべる男が立っていた。ハルが明らかに怯えるこの相手は彼女のことを妹と言った。

 『ボクは三島恭介、三島グループの御曹司さ』
 『三島……いや、桐島ハルに兄貴は居ないはずだがな』
 『ラウル……』
 『ああ、そうさ。あの三島社長レベルになると正妻以外にも女は大量にいるし、それだけ子供もいるんだよ。ボクは正妻の子だけどね』
 『関係ないね……ハルをどうするつもりだ』

 恭介はクククッと笑い声を詰まらせ、下々を見下したように喋ってくる。

 『どうしたって……ボクの物をどうしようとボクの勝手だろう?』
 『……あ?』
 『社長の愛人は社長の所有物(モノ)、だって言うならそれはボクのモノだって良いはずだろ? ぼろぼろになるまで働かせたり、死んだ方がましと思えるくらい犯しt』
 『ファントム、オーディションにこいつを連れていけ』
 『……お前はどうする』
 『すぐに行く』

 先程受けた傷が癒えていないので角の力は使えないはずだったが、腹の底から沸き上がる力は止められなかった。

 この男が許せなかった。私的な遊び、しかも彼女の人権などまるっきり無視した思考感覚で彼女の夢を奪うなどあってはいけないことだった。

 『おいおい、そんなことボクが許すとでも思ってるわけ? そんな甘い真似……んぐっ!!!!!』

 俺は優男の顔を思い切り殴り倒した。ファントムはその隙をついて通路を駆け抜ける。

 『あいつは……お前の所有物なんかじゃない!!!!!!!』
 『下衆が……お前らに勝ち目なんてないんだよ、アリア・ヴォルティカルが居るかぎりなぁ……っ!!!!!!??』

 ふらつきながらも立ち上がり俺の方を向いた彼は戦慄する。その眼前を覆い尽くしていたのは無数のエネルギー弾。それらは全て対象を向いて放たれるのを待ちかまえている。

 『ファントム、お前の分は後だ……三島のボンボン、まずはてめぇが頭を冷やせ』

 【Divine Buster】

 ドガァアアアアアアン……粉塵があがり、それが晴れたときにはぼろぼろで崩れ落ちる恭介の姿があった。

 『おい……俺の言ってること、何か間違ってるか?』
 『……………』
 『……待ってろ、姉さん……』

 『だいぶん走ったよね……』
 『ああ、もうすぐ一階に出る……』

 かなり長い距離を走ってきた二人。あれだけやせ細った彼女は意外にも体力が長続きしており普段からマイナー拳法を取得しており体力には自信があるファントムにも劣っていなかった。

 『君は……一体何者なんだ?』
 『私は……三島グループの社長の娘だよ』
 『……そうか』

 ファントムは口をつぐむ。ラウルが何故彼女を守ろうとしたのかわかる気がしたからだ。だが彼を慕っているらしい彼女に彼の素性を明かすのは躊躇われたし、第一どうして自分に彼女を預けて下に居残ったのかわからない。

 『ラウルは……君の何だ?』
 『ラウルはね、私の大切な人。何年経っても、私のことを忘れていたって、私にとって大事な人なんd……ったっ!!!』

 角を曲がった際に転んでしまったハル。鈍い音と共に彼女は顔をしかめ、立ち上がろうとしてまた座り込む。

 ファントムは彼女を黙って抱き抱えた。

 『ちょっ……』
 『後少しだ……早く行こう』



 『はい裏切り者発見~』




 にやついた楽しげな声が長い回廊に響く。最後の長い直線の回廊で、ファントムはアリアと相対した。アリアは長い夜天の青髪をかき分け、後ろで結ぶ。

 『減俸なんてもんじゃないんだけど……もうクビかな』
 『クビで結構。美しい音楽の芽を潰させたりはしな……うぎゃああぁああっ、目が、眼がぁあああっ!!!!!』

 ファントムの腕の中に抱かれていたハルは彼に手痛い目潰しを食らわせその腕から脱出する。

 『さっそく目(芽)ぇ潰されてるし……』
 『どうして、どうしてこんなことするのっ!!!!?』
 『一応仕事だし……そりゃあ、私だってムギちゃんを傷つけたくはないんだけどね』

 嘘だ。ハルは半歩後ずさる。このタイミングで昔のあだ名をいわれたからといって信じてなるものか。

 昔にはもう戻れない。なら自分は今を生きていく。

 『お願い……今日一日だけでいいの』
 『言いたいことはそれだけ? だったら……また独房行き……』

 『やあ、待ったかいハニー』

 最高に甘いフレーズ感を持って皮肉を言い放ってやる。俺は彼女と向き合う。そして彼の方すら見ず右足でファントムを蹴り起こした。

 『バカ息子に制裁は加えてくれたみたいだけど。ラウルにも制裁が必要かな?』
 『そこは通してもらう……』
 『……却下』

 両肩、両肘、両膝から肉を皮を突き破り黒い角が生えてくる。圧倒的な力量差、それだけ負担も大きいらしいが、それがアリア・ヴォルティカルの覚悟と言うことか。

 『どんな馬鹿の依頼でも、謝礼貰ってる以上遂行するのがプロってもんでしょ』
 『そのプロはかつての友達も手に掛けるのか?』
 『それがプロだって……分かんないかな』

 猛き獣も尻尾を巻いて逃げ失せる圧倒的な殺気。生きとしい生ける生命すべてが畏怖するそのオーラに俺は半歩後ずさる。

 『……ハル』
 『え……?』
 『先へ進みたいか? オーディションを受けて、結果はどうあれ自分の運命を切り開く最大限の努力をしたいか?』

 俺は振り返らずハルに問いかける。背中は震えていた。しかしそれでも……ハルは矮小で弱いこんな男を信じてくれた。

 『私は……行きたい、行きたいよ!!!!』
 『よく言った……来い、『夜天の魔神』(エル・ディアブロス)』

 震えが止まる。彼は懐から短剣『紫片』(シヘン)を抜いた。かつてはクリスを手に掛けようとした短い刃、しかしその正体は悪鬼を切り裂いた神剣の欠片から作られた究極の短剣だ。

 俺は地面を蹴り一気に距離を詰める。そのまま袈裟掛けに刃を切り込む。間一髪でアリアは間合いを離し、俺が切り上げ返そうとした刃を鋼の左拳で受け止める。

 『ぬるいっ……!!!!』
 『だったら……っ!!!』

 完全フリーだった右拳が俺の眼前で急に肥大化して見える程のスピードで打ち込まれる。とっさに『紫片』で防御するが打ち上げるように放たれた拳の砲撃は俺の軽いからだを簡単に跳ね上げる。

 途端にアリアの周囲に無数の魔法陣が展開する。迎撃用の防御システム程度の役割だが、術者が違えばその威力は殺人級にも変貌する。

 【Dance dans Vent】(風の舞)

 竜巻を凝縮した魔法弾が無数に乱れ飛ぶ。俺は全てをかき消し再び切り込んだ。アリアは後退し、両手に気を集中した。

 『食らえっ!!!!!』
 『くっ……食らうかっ!!!』

 気弾をかいくぐり、回避不能な距離から刃を心臓へ突き刺す。とっさに横に回避した彼女は回避できずに左肩に刃が突き込まれる。

 ガキッ……あまりの堅さに右手に受けた反動が酷くあまりの痛さに剣を落としてしまう。拾おうとしたが風の気弾が迎撃してきたためやむなく後退する。

 『そのナイフ、私があんたにあげたものだよね……所詮その程度ってことかな』
 『ハル、何してる……早くお前だけでも行け』
 『でっ、でも……どうやって先に進んだらいいか……』
 『……5秒だ、それだけやるから駆け抜けろ』

 柄じゃない、本当に柄じゃない。一気に走り込み、迎撃してきた衝撃弾をはじき返してアリアに拳をつきだした。軽くあしらわれ投げ飛ばされるが、その刹那に腕を振り払い蹴りを入れる。いっさい彼女を動かそうとしない気概に気圧されたのか一瞬隙が出来た。

 『くっ……』
 『戦いの最中に余所見かよ』
 『別にあんたなんか見ててもおもしろくないし……っ』
 『黙ってこっちだけ見てろよ……意地ってもんがあるんだからよ!!!!!!!』

 右拳を素手で受け止め、激痛に襲われながらもアリアを投げ落とし床に制する。ハルが駆け抜けたところを見ると俺は安堵したが、その隙を突かれて顔を殴り飛ばされる。

 歯が何本か折れた。俺は口の中の宙ぶらりんな歯を全て口外に吐き捨てる。

 『ああもうめんどくさい……相手見えてないのかな』
 『関係ないな、別にお前を倒せなくたって……』
 『ストップだ、ラウル』

 ファントムが後ろから俺の肩をたたく。事情はわからないが倒れてたくせに勝手なことを言う。

 『勝ってあの子を見届けてやれ……あのこの大切な人なんだろ?』
 『ファントム……くっ、そんなに言うなら仕方がない。おまえの力、見せて見ろ』
 『ふん……お前こそ足手まといになるなよな』
 『残念……此処でお別れだね』

 アリアの周囲に魔法陣が展開する。彼女の身体能力だけでも十分に異常なのだが彼女が得意とするのは遅延魔法、あらかじめ詠唱の必要な大魔法のコストを払っておく技能だ。

 これの体得により、通常なら何十人もの人員を割いて何時間にもわたって詠唱する技でも数分でチャージしてぶちかませる。

 『全力全開!!!!!』
 『雷光一閃!!!!!』
 『響け、終焉の笛!!!!!』

 【Starlight Breaker】
 【Plasma Zamber Breaker】
 【Ragnarok Breaker】

 俺の右手から放たれる紫片の刀身の色にもにた紫のエネルギー砲と金色に輝く極太の刃が三点の白銀に輝き集束する光の波と激しくぶつかり合う。激しいエネルギーの奔流が拮抗し弾ける。それでも一歩も引かない。だが徐々に二人は押されてきていた。それだけアリアが心血を注いで練り上げてきた術式なのだろう。

 『無駄だって言ってるのにさ……さっさと落ちろっ!!!!!!』
 『負けてたまるか……音楽を愛するもの同士、ここは絶対に引いてはいけないんだっ!!!!!!』
 『てめぇと一緒にすんじゃねぇ……だが、俺だってもう間違いたくないんだよ!!!!!!』

 ハルの為……二つの想いが重なる。それでも力が拮抗することはなく二人は押され追いつめられる……

 バキッ……鈍い音が響いた。

 その瞬間、アリアの力全てが掻き消え俺とファントムの攻撃が空間中を埋め尽くした。

 左側の角が折れたのだ。バランスを失い力の拠り所を失った攻撃はキャンセルされたと言うことだった。

 すでにハルは会場へと向かっている。かなり疲弊はしているが、行かなければならない。

 『アリアがまた復活しないとも限らない……お前一人でいけ』
 『ああ……わかった』

 俺は走り出した。ハルを見守るために、結果なんてどうでもいい、彼女の理想を叶えるために。

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なのはA’sをちょっとだけ踏襲だよ。どうせラウルとファントムの二人でアリアを倒すって言う筋書きだったからどうやって倒しても良いじゃない。
風の舞はフランス語で表記してみました。ギリギリで可を取った科目なので間違ってるかもです、間違ってたら突っ込んでおくれ。
三島ぼっちゃまは久々書いた嫌なキャラです。私が描くキャラって皆良い子達なのですが(良い子だからこそ悩んで暴走してしまったりする)、こう言うガチに悪い奴と言うのは久々です。だから私の名前を充てました。まあG線主人公(浅井京介、CV:福山潤)の名前と被らせてみたのですけどね。
ちなみに彼のモデルは紅の竜士兄様(CV:岡本信彦)です。原作では戦闘屋を雇って戦わせるだけの矮小な虎の威を借る狐なのですが、アニメではそこそこ強かったりします。

おまけです。VSアリアはこの挿入歌なイメージがそこはかとなくします。アニメ映像は自分でこの歌名入れてYoutubeとかで見てくれると嬉しいな。
羅月 ~月影の島~
羅月 ~月影の島~


もりぞう先輩(部活の先輩)、誕生日おめでとうございますっ!!!!

ってな訳で、目一杯自慢したいので画像とか載せちゃいました。ミルフィーユです、オーブンも無いうちの環境では死ぬほど難しいスイーツなのですが(パイ生地を定温で加熱できないため温度調節が難しい)、何とか作ってお渡しする事が出来ました。

これまでチョコケーキ、チーズケーキ、ホットケーキと作ってきて(最後のはきっと猿でも作れるので作りたいってんなら遠慮なく教えてあげるよ)割とケーキは良く作ってる私です。ただ私の心の師匠はザッハトルテとか作っちゃう人なので(これもオーブンじゃないと厳しい、170℃で一時間加熱なので。レンジでやると間違いなく外が焦げて中が焼けない)私もまだまだ頑張らねば。

ちなみに今回の経験でカスタードケーキのレシピをマスターしレンジの不便さを実感しました。オーブン買おう、四か月分の給料です。

そういやまだスポンジケーキ作って無いな~。今度は何を作ろうか。実は決まっていたりします。



……吹奏楽コンクールで素敵な音楽を作る、その為に何度だって失敗しても良いから練習重ねて本番までに納得のいく美味しい音を奏でるのです。

キモいとか思ったやつ、思う壺だと言う事を忘れるなかれ。


結構恥ずかしいんだよこれ。何と言って食べてもらおうとか色々考えるんだからね。美味しくなかったらどうしようとか考えるんだから。無理して食べてもらう訳にもいかないしよう。

ちなみに昨日カスタードの布石として投じたカスタードINホットケーキは46代の後輩にも食べてもらいました。日頃頑張ってる君達にサービスさ。マイミクでもアメンバーでもないからこんな事も此処で言えたりする。

あの二人ミクシィに誘いたいけどな~……アメーバは携帯からだとめんどいイメージがあって誘いにくい。
ファイナルが長すぎたので二つに分けます。てか疲れたバイトから帰ってきてぇの必要物資のお買い物。ただ私は一日1音でも楽器を吹くと言うポリシーがありますのでもう少ししたら自主連へゴー。

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 『……………』

 自分以外に何者も存在しない静寂に包まれた深淵の闇。

 三島ハルはそこにいた。石造りのその空間は閉鎖的な冷たさに覆われ時間の概念すら流れていなかった。

 彼女は掠れた声で歌う。歌声は誰にも届かないかのように、壁にぶつかり跳ね返る。

 『ラウ、ル……』

 彼の名を呼ぶ。彼の名、それは彼女にとって……


 『……くっ』

 一晩寝たが気分は晴れなかった。俺は何を迷っている。

 所詮俺には不必要なことだったのだ、金は手に入ったし、恐らく余計な後腐れも無いはずだ。望ましい事じゃないか。

 『そうさ、何を迷うことがある。こんだけの金だ、これを使ってまた女共から金を搾り取ってやる。ククククッ、ハハハハッ……』

 ……気分が晴れない。視界がぬるい液体で遮られる。俺は顔を洗い歯を磨き、ずっと昔に読んだ本を棚から取り出す。

 棚ごと昔住んでいた家から持ち込んだものだったが、こちらに引っ越して以来一度も触れていなかった本だ。その時だった。

 取りだした本と本の間から、一枚の写真が落ちる。またこんな物を……俺はそれを拾い上げる。

 写っていたのは俺の家族ともう二人、知り合いの家族だった。かつての苦い思い出がそれを捨てさせようとする。この頃にはもう戻れない、父も母も死んでしまった。

 だが捨てることができなかったのは、その写真に写っていた人物のせいだった。
 
 優しそうな笑みを浮かべた俺の母と同じくらいの年齢の女性、そして……

 白い髪の、痩せぎすな少女。

 『ハル……いや、そんなはずは……』

 忘れていたのかもしれない。だがこいつの名前はハルなんかじゃなかったはず……

 写真を裏返す。そこには『With桐島家』と……

 『私、桐島ハル。宜しくね』
 『何だよその白い髪、ハルってか春雨じゃねぇか』
 『むっ……春雨じゃないもん』
 『じゃあ何がいいんだ、くずきりかビーフンか冷や麦か』
 『あっ、冷や麦好きっ!!!』
 『じゃあお前『ムギ』な』
 『ほう……そう来るか。ところで貴方は?』
 『ま、ここまで話しといて名乗らないってのも……』

 『そんな、事が……俺は……』

 彼女は無知でも愚かでもなかった。自分の世界から逃げ出して。誰でもいいから頼っていたのではなかったのだ。

 他でもない俺だったから。たとえ名字が変わっていようとあだ名以外を呼んだことがなくても俺が覚えていなくても。

 最高にくだらない。言ってくれれば対処のしようもあったろうに、此処まで自力でやってくるなどと。

 思い出したくない記憶をまさぐり、あの日見た景色を呼び起こす。そこにいたのは紛れもなく桐島ハル、そして今の三島ハルだった。

 貧しかったが快活で歌うことが好きだった彼女、普通の子供が望むようなことも望まず自分の運命を受け入れて生きていた。

 思えばあいつには父親がいなかった。何をどう間違ってあのおばさんが三島グループの社長と結ばれたのかは理解に苦しむが、そう言うことなのだろう。

 大変なことを言ってしまった。『親の友達の子供だ』と言う事にしておくなんて事をあの日の俺に言われて。彼女にはどれほど辛い台詞だったか。

 携帯が鳴る。メールだった。文面は非常に簡潔明瞭、知らないアドレスだったが、こんなふざけたことをしてくる相手を俺はあいつ以外に知らない。

 『クマモト県立劇場、最下層』とだけ書かれたメールはほぼ間違いなく姉から来たものだろう。罠であっても構わない、俺は此処で行かなければならないのだ。

 あいつの遊びに付き合うのではない。あいつの理想を叶えるために。


 『ふんふふんふふ~ん……みんな、抱きしめて!!!!! 銀河の、果てまd』
 『お邪魔しま~す』

 県劇の音響担当として派遣されてきたファントムの元にアリアが訪ねてきた。明らかに汚物を見るような目で一瞥をくれてやると、彼女は続けた。

 『少し厄介なことになってね……以前うちの看板スター、クリスを拉致り殺そうとした詐欺師からの果たし状が届いたんだけど』
 『何だって……あの口先のもとい天才詐欺師が……!?』
 『貴方にはある少女を護衛して欲しいのだけど、頼めます?』

 アリアはハルの写真をファントムに手渡す。その写真を見て彼の顔色が変わる。ちなみにマスクは現在鋭意い制作中で現在すっぴんである。

 『この女の子は……あの男、やはりまた不届きな真似をっ!!!!』
 『あれ、知ってるんだ……だったらすっごい話は早いんだけど県劇地下最下層で保護してるから、お願いね』

 アリアはきびすを返す。一刻も早く此処から立ち去らんとする足の速さで。

 ……と。途中で足を止め吐き捨てる。

 『勤務時間帯でのDVD鑑賞は厳禁』
 『ふっ、残念だったな。これはBDなのだよ』
 『それじゃ、減俸で』
 『ぐはっ!!!!』

 鮮烈な(いや当然だが)台詞を浴びせ再びアリアは歩き出す。

 『さて、どうなることやら……』


 『それにしても……』

 ファントムは自販機で購入したパンをもさもさと食べていた。

 あの男、全然懲りていないと見える。やってくるならやってきてみろ、悪即かめはめ波動砲だ。

 そう言えば今日はオーディションが行われるとか。新たな歌姫がこの劇場から羽ばたいていくのはこちらとしても嬉しい。

 『ま、ランカちゃんには勝てんがな』

 携帯をぱかっと開けて待ち受けを愛でまたすぐに携帯を閉じる。

 にしても自販機で手軽に買えるくせにこのパンは美味い。食事が経費で落とせるのは非常にありがたかった……

 『くせ者っ!!!!!』
 『ちっ、余計な奴に出会ったもんだ……』


 俺とファントムは再び対峙する。因果という物は本当に厄介で、会いたくない奴には何度も遭遇してしまう。何これ、物欲センサー?

 『大体こんなところで何してんだお前、仕事しろ仕事』
 『生憎だが今日は仕事があってな……しかも、お前を粛清するという』
 『何だって……あ、そう言えばこの劇場の最下層ってどう行くの?』
 『あ、それはこの先を曲がって階段下りて、非常ドア開けて先に進んで階段をひたすら下りれば。まあ近道もあr……しまった!!!!』

 ファントムが熱弁を振るっている間に俺は逃亡していた。余計な情報を聞く必要なんてない。

 『くそっ、何という奴……まあいい、近道を通った方が何倍も早いんだからねっ』

 ……チン。

 エレベーターに乗り、ファントムは急速に地下へと降りていった。


 『くっ、やっぱり一筋縄じゃ行かないか』

 ファントムから聞き出した(笑)情報の先にはやはり敵が待ちかまえていた。どいつもこいつもスーツにサングラスをかけた筋骨隆々な典型的なガードマン、だが俺の相手ではない。

 殴りかかってくる相手は交わして裏拳、銃撃は手で受け止め弾き飛ばす。人が何人も通れるわけではない狭い通路だったのが幸いし、囲まれることもなく一人ずつ相手が出来た。後方支援も仲間が前方にいては銃撃も出来なかったろうし。

 『ひっ……く、来るなっ!!!!!』
 『ぐっ……っと、効くかよっ!!!!!』

 流石に零距離からの一撃は痛かったが、右手で銃弾をたたき落とし左手で首に衝撃を加え昏倒させる。

 力なく横たわるスーツの屈強な男たち。それを歯牙にもかけず俺は再び前へ……

 『ぐっ……っ!!!!?』
 『惜しいな、気付かなければ楽に死ねた物を』

 背後から打ち込まれる拳を間一髪で受け止める。間近に接近されるまで気が付かなかった、俺よりも頭一つ飛び出てでかいこの男がこれほどまでに自分の気配を消して近づける物なのか。

 サングラスをかけてはいたが、こいつはあの日俺に一撃くれてやった男だというのはその力強さで容易に分かった。

 動くたびにがちゃがちゃと物騒な音が鳴るあたり、体を改造しているのは明らかだった。恐らく戦いにおいて事前に準備できることは全てやっている、そんなタイプの人間だ。人として生きることを半ば放棄している。

 『あんた、意外と卑怯なやり方が好きみたいだな』
 『標的の掃討は芸術だと思っている、ぐだぐだ長引いても美しくないし、対象にむやみやたらと暴れられながら制圧するのも醜い』
 『美学ね……舐められたもんだ。まさか……お前が俺より強いと思ってんの??』

 俺は集中する。血が沸き立つ感覚に陶酔しながらも自身が高揚し肉体が膨れ上がる錯覚、いや実際にそうなっているのだが、久々の感覚に頭が変になりそうだった。

 その場にいた人間全てが、意識のある者無い者に関わらず戦慄した。一人の男の異形の力に。

 俺の両肩からは純白の鋭い月角が生える。これがうちの家系を継ぐものの力、常軌を逸脱した身体能力を二本の角で制御する。

 『勘違いすんなよ、あの時見逃してやったのはハルが居たからだ。この力、俺でもコントロール出来ないんだよね……ぼろ布にされたくなけりゃ、消えろ』
 『くっ……ぁああああああっ!!!!!!』

 特殊な合金で作られた右腕の義手が俺の頬をとらえる。俺はその場を一歩も動かず、首を少しも捻ることはなかった。

 俺はふるえる右腕を掴みもう片方の手でサングラスをはずす。その顔は絶望で歪んでいた。

 『土下座して謝れ』
 『むごがっ!!!!!』

 頭を掴み、そのまま地面に思い切り叩きつける。顎が砕けるほどの衝撃を受け彼は昏倒した。

 これほどの衝撃を与えても壊れないあたりこの劇場は素晴らしい。地震が起こっても地盤が変化しない限り大丈夫だろう。

 『さて、行こうk……っ』

 不意に力が抜ける。そして、急激な痛みに襲われた。体が焼け付くように痛い。あまりの痛みに意識もはっきりと突きつけられる。

 『『魔弾詠唱破棄』、掠っただけでも人殺せる銃弾を直接食らっちゃあ、立派な角も折れるよね~』
 『ア、リア……』

 完全に不意を突かれた。この能力の弱点は生えてくる角にあるのだが、通常なら鋼よりも堅いこの角がダメージを負うことはないしむしろ肉体を狙った方がダメージの通りが良いはずなのだ。

 『やっぱり来てくれたんだ。パンくわえて路地裏に待機してた女の子の気分だったよ』
 『……どけよ』
 『その見返りに何をくれる?』

 そう、いつだってそうだ。人は何かを得るために何か同等かそれ以上の対価を払って初めてその何かを施される。だが世の中には同じだけ少ない元手でがっぽり儲ける人間もいるわけで、その主導権を握ることが出来るのは何にしても力ある人間である事は間違いない。

 『……てやる……』
 『……え?』
 『……俺のプライドくれてやるよ!!!!!』

 下手な誇りよりもハルを選んだ俺は煙玉を床に投げつけ一気に彼女の脇をくぐり抜けた。捕まえようと思えば捕まえられただろうに、それを彼女はしない。

 アリアが何を思ったのかは分からない。ハルを奪還して帰ろうとするところを捕まえて絶望を味わわせるのが目的かどうかはさておき、俺は迷っている暇なんて無かった。

 『……ふ~ん』

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詠唱破棄弾はおまひまのくえす様より頂きました。掠っただけでも大ダメージだそうです。
ファントムはファントムらしさと言うより丸ちゃんらしさを変化球気味に加速させた感じです。
角が出るのは紅をモチーフにしているのですが、『敵の見境がなくなるからハルが居るあの場所で使えなかった』と言う理由づけになってたりして。
やはりバトルと言う物を文章で表すのは難しいです。特に1対複数、誰か上手い書き方教えてくれ。
ゼロ使では主人公は千の軍勢と戦っていたけれども。無茶です、そんなスケールのでかい事は私にはとてもとても。
クライマックスへの導入ですが割とツマラなかったりします。この辺はどっちかと言うと紅(ジャンプSQのあれ)をモチーフにしていたりします。
そもそもこの話自体が紅とG線上の魔王に多分な影響を受けておりますので、仕方ないっちゃあ仕方ない。G線要素は最後辺りで出てきますよ。
にしても、同じ出版社だから言わせてもらいますが、ドラクラと紅の一巻被りすぎだろ。『ヒロイン匿う→仲良くなる→さらわれる→助けに行く』この流れが寸分たがわず。まあ王道パターンですしね。

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 『割とすぐ着いたね』
 『そうだな、それにあのバカに付き合ったお陰であんまり待たずに見れそうだぞ』

 映画館。彼女たっての希望と言うことできたのだが、俺は映画なんて昨年になのは1stを見た位なので今何が放映されているかぜんぜん知らない。

 あの時行ったときよりも人が多いので、何か面白い映画でもあるのだろう。人混みはさっきと同じで相変わらずか。

 『何が見たいんだ?』
 『えっと……あれ』

 『君がいたから』か。まあ分からないでもないけれど。どうしようもない事情で幼いころ離ればなれになった男女が再会して結ばれるまでを描いた恋愛物らしいが、どうにもその手の話は好きじゃない。

 『じゃ、行くか……』
 『でも、ラウルってああ言うの好きじゃなさそう……いいの?』
 『心外なリアクションだな。まあ、たまにはこう言うのもいいかと思ってな』

 映画館名物のポップコーンとオレンジジュースを二人分購入し、暗闇の中に身を投じる。席は割と込んでいて少なかったが、ちゃんと二人分座るスペースがあったのでそこに座った。

 映画の内容自体は意外に面白かった。やはり前情報が凄かっただけはある。こんな時代は俺には無かったけれども。

 『……………』
 『……………』

 ハルは目に涙を浮かべながら見ていた。丁度彼氏が彼女と昔会っていた事に気が付く場面だ。こんな場面があるのかと思いながらも、やはり展開が上手い。

 しかし時既に遅く、彼女は日本を離れる事になる。場面は最後の空港、二人がもう一度出会う場面だ。

 『ううっ……』
 『(ふ~ん……)』

 隣から嗚咽が漏れる。まあ楽しんでくれたのなら此方としても悪い気はしない。あまり食の進んでいないハルのポップコーンを取ろうとしたらさっと器を引かれた。何と言う奴だ。

 終わってみれば短い物だったが、久々にこういう経験も悪くない。

 『ありがとう……凄く感動した』
 『なら良かった。昼飯どうする?』
 『ん~、あんまりお腹すいてないんだけど……とりあえず疲れたし、昼寝』
 『……そうするか。明日はオーディションだしな』

 全く、何を言っているのやら……まあ良いか。もうすぐ終わる、こんな遊びも。初めての試みだったが別に嫌じゃ無かったし、大分いい暇つぶしにはなった。

 映画館を出て、二人で歩きながら家に帰る。そして家の前についた時だった。

 『何だ、この車……』

 この寂れた居住区には好ましくないデザインの黒いワゴン車。またこんな所に止めやがって……

 不意に背後に寒気を感じる。感じた時にはもう遅かった。

 『やっ、放して……っ!!!!!』
 『会いたかったよ、ハル』

 屈強な男に腕を掴まれて引っ張られる彼女は今まで聞いた事も無いような大声で助けを求める。恐らくこいつの保護者だろうが……気に入らない。

 『お前……誰だよ』
 『黙れ誘拐犯。口のきき方がなっちゃいないねぇ……まあ下賤な庶民だ、許してやろう』
 『ぐふっ!!!!!』

 許してやるなど全くの出鱈目も甚だしい。自己陶酔する華奢な男の後ろに控えていた屈強な男は見かけによらない神足で俺との間合いを詰め、岩石のような拳で俺の腹を抉るように殴りつけた。

 痛くない訳ではない。だが驚きの方が強かった。恐怖したのはその力では無い、下賤な者はどうなろうと知った事ではないと言うその腐った根性だった。

 『……まあ良い、言い方を変えよう。よくうちの妹を保護してくれた、礼を言う』
 『保護……だと?』
 『目的は身代金か? まあそんな事は些細な問題だ……報酬くらいはくれてやるよ。おい、恵んでやれ』

 男の後ろに控えていた黒いフードで顔を隠した付き人がフードを外す。一陣の風がその髪をなびかせる。

 この世で最も憎むべき相手がそこにいた。

 『姉、さん……』
 『久しぶり、元気してる? ま、そんな質問は野暮って事で……どうせお金に困ってるんでしょ、はいこれ』

 常人が見たら気が遠くなるような大金が俺に手渡される。この金が意味するのは何だろうか。口止め、懐柔、だが何を?

 アリア・ヴォルティカル。実の姉でありながら家族を売り両親を死なせた悪魔の娘。その類稀なるスキルは世界でも滅多なことでは遅れを取りはしない。俺が認める世界一の犯罪者だ。

 『それじゃ、彼女は私らが責任を持って送り届けるんで』
 『じゃあね、貧乏人……』
 『っ……』

 言いようのない想いが胸の奥をかけ巡る。何だ、自分はこの期に及んで何を望むと言うのか。彼女の願いをかなえる事か、そんな事は気紛れに過ぎない。ただおもちゃを取られて憤慨するような子供の感覚なのか、良く分からなかった。

 恐らく慎ましく暮らせば一生食いつないでいける。いや、考えるのはよそう。この金も出来れば使わずに、昨日と今日の出来事は全て忘れてしまえば良い。

 俺は家に帰りつき、そのまま布団を敷いて寝た。
小説を書いている間は基本的に日記を書かない人なのですが、今日はあまりにも残念だったのでその思いのたけをぶつけたいなって。


後でツイッターからの呟きが流れてくると思いますが、今日は野暮用で早めに帰還させていただきました。

その用事という物が、自由曲のスコアを我らが45代の神姉さま(神のみ的な意味で)、ユキちゃんにお渡しすると言う物で。本当は楽譜の先輩方と色々お話したかったのですが、仕事を取らせていただきました。

別に練習終わって夜遅くに渡す必要性もそこまで無かったのですが、まあ先輩の為にスコアが必要だと言うなら私だって楽譜補佐の端くれとして黙ってはいられない訳で、家も近いので彼女を連れて家まで行ったのでした。


ちなみに私の家は2月の時よりも大幅に片付いてはいるのですが、台所の生ごみの臭いが少し怪しかったので家の外で待ってもらい、スコア置き場から折っただけで糊付けしていないスコアの束を持ってきてお渡しすると。そしてお疲れ様~なごく普通の流れなのでした。


そ れ だ け 聞くとね。


私の住んでいる住宅は自転車置き場が玄関から当然離れた所にあるのですが、そこに止めるより二度手間だろうと先にユキちゃんにスコアを渡してあげたいと言うのが俺の心理な訳で。

だから玄関前に自転車を止め鍵を空けて中に入りぶつを取り出して玄関から出てきて渡したのですよ。

当然その後自転車を自転車置き場まで押していかないといけない訳ですが、そうして自転車置き場まで持って行こうとした時彼女が一言、






『あ、自分で帰れるから送って行かなくても良いよ』




……いや、そんなつもりでは。そんなつもりではなかったのに何かハートが大打撃ですよ。自分の中で『彼女を送って行こうとしたのに断られた』と言う偽の記憶が刷り込まれそうですよ。

あの一件以来私はこの円環の理に導かれた女神様の笑顔を信用していないので(笑)別に良いのですが。何かもうやだ。

もしこれが46代の女の子だったとしよう。そしてついでだから火曜日だったとしよう(燃えるごみが無くなるので。月曜とか木曜はゴミがかなり多め)。何にしてもきっと家に上げる自信がありますよ。いやマジで。と言うか45代の男だろうと46代の男だろうと多分少しくらい上がってもらうと思いますけど。

そんな感じで貴重な凌辱劇(被害者私)の一部始終をお送りいたしました。もう死にたい。この先私が誰かを家に入れる機会なんて無いんじゃなかろうか。妹も『死んでも来たくない』って言ってたし。別に来たっていいんだよ、そん時は誰か別の友人の家にご厄介になってるから。日中はほとんど家に居ない訳だし。HDDの中身をクラッシュとかしないなら全然ゆっくりしていってもらっても。やの