これで長かったこのお話も終わりです。13話だと縁起が悪いので最後はFinaleで締めています。

 書いて行く上であんまり好きじゃなかったまほまほをより愛せるようになった、それだけで私は十分なのです。それで私の駄文を楽しみにしていると言ってくれる人が居る、それが世辞でも何であっても、私はとても嬉しいのです。

 では、本編へ。
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 「おお、すばるんじゃないか。おっつかれ~」

 それはある日ある場所のバスケットスタジアム。長谷川昴が一試合終わって昼食を食べに出ていこうとしたときだった。

 「ほら、誰がすばるんだ」
 「え~、すばるんはすばるんだろ、す・ば・る・んっ!」
 「あ~もうはいはい分かった……わざわざ来てくれたのか?」
 「うんっ、うまいとんこつラーメンのついでになっ!!」
 「まったく……どこの食いキャラだよ」
 「まったくだ……」

 今ではその卓越した眼力で『陽出づる地の知帥』『神の頭脳』の名をほしいままにし、日本代表を何度も世界一位に輝かせている名コーチ長谷川昴。

 百年に一人の逸材ともてはやされている彼だが、別にそんなこと、今に始まったことじゃない。

 「真奈(マナ)、もう少しおとーさまをいたわってやれ」
 「分かったよ……お疲れさま、パパ」
 「……俺に何をしてほしいんだ?」
 「とゆーわけでだ。パパ、私の言うことを聞きなさいっ!」
 「やかましい」
 「んがふっ!!!」

 私はすばるんの代行でげんこつを食らわせ、かつての私そっくりに育ってしまった愛娘に制裁を加える。

 「何か、まなと一緒にいるとスゴく若返った気分になるな」
 「だろだろ、だから私の言うことをんあべしっ!」
 「ま、客席でマナと見てるからさ……見せてよ、未だ現役の愛娘に、すばるんが求めたバスケってやつを」


 私のバスケ熱は夫と娘にほだされて、まだまだ休まりそうにない。


 ~Fin~
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今回この物語を書くにあたり、色々描きたかったものがあります。
それは『大人になる事を求めていたかつての子供が今大人になって何を思うのか』『自分にとって一番大切な物は何か、大切な人は何か』、この二つは絶対に描きたい命題でした。

今私は中学生のころから続けて来た吹奏楽を続けています。毎日が格闘の日々です、後輩たち一人一人が可愛くてしょうがない(男もね)一方で、適当にやっててはすぐ下に抜かれてしまうわけで、それで無くとも偉大な先輩を何人も失いバンドの質が著しく低下した状況で頑張らないで良い訳も無く、恥もプライドも捨てて皆で一致団結して頑張っております。

もし、大学入学と共に吹奏楽をやめていたら。私も真帆と同じように腐っていたかもしれんわけです。学生生活の大半を捧げた私がある日ふとそれを投げ出して、その空虚な間をどうやって埋めたら良いのでしょう。真帆をがっつり部活に打ち込んでいる女の子では無くゆる~いサークルに入ってゆる~く活動している設定にしたのは、私が選ばなかった道を選んだ彼女を見たかったからです。そして且つ、そんな道を選んだとしても幸せになれるんだと言う事を描きたかったのです。

大切な物、大切な人。真帆にとってそれはバスケであり、すばるんでした。しかし真帆は過去の失敗と大切な人の消失、高校で親友が離ればなれになりしかもバスケに真剣に打ち込めなくなってしまう、それはとても哀しい事でした。それでも彼女は過去と向き合い、大切な物ともう一度向き合い、大切な人と正面から向き合ったのでした。

真帆の勇気が無かったら、すばるんは恐らくもっかんとくっついていたでしょう。ただこの世界ではすばるんは真帆を選んだ、それは真帆の最大限の努力のたまものなのです。


この話を通じて、馬鹿で無茶苦茶で、でも友達想いで繊細で。ちょっと空回りもするけど何にでも一生懸命な彼女を少しでも好きになって頂けたら幸いです。

最終話がこんな遅くになってしまいましたが、結果としてパパ聞きネタが使えたので結果オーライwww


では、ありがとうございました。
後はEDを残すのみです。今までお付き合い下さった皆様、もう少しお付き合い下さいませ。
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ロウきゅーぶ! 真帆アフター ~Shiny-Frappe・真夏に咲く大輪の花~(Twelve・Till The Day Can See Again)


 「……またみんなに言うよ。もう、黙っていなくなるのは悪いから」
 「……っと、ついたみたいだぜ」
 「あっ、兄ぃ達だ。兄ぃ~っ!!!」
 「気分はどうだお兄ちゃん? まああいつはあいつでナツヒの彼女に身を堕としたがな」
 「気分も何もあるかよ……葵、これはそのあの……」
 「今更知ったこっちゃ無いわよ」
 「……ぬう」

 むすくれるあおいっちに最大限の配慮をし(すばるんも罪な男よ)、二人はみんなの元へ寄っていく。

 そこにはいつものバスケメンバーと前述の通りあおいっちと、みーたん。すばるんの母親の七夕(ナユ)さん(流石に『なゆっち』とは呼びづらい)、そして……うげぇ羽多野先生だよ何で来やがった。

 ちなみにみんなの中心にあったのはあったのは特大の……パフェ、か?

 「あっ、昴君に真帆ちゃん。遅かったわね~」
 「おうおう、これは何だい一体全体?」
 「マホ、落ち着きなさい。私達の為に七夕さんが作ってくれたフラッペ、私達全員を表してるんだってさ」

 サキが説明してくれた。確かに、パフェの器に贅沢に盛られたフラッペは色とりどりの細工がされていた。

 「そう、底の地盤を固めるのはブルーハワイのかき氷、これは常に広い視野で私らを根本から支える『氷の絶対女王政』(アイス・エイジ)、永塚紗季よっ」
 「その上はボクが作った。桃のゼリーに食紅を少し混ぜて、見た目も味も桃色と言うわけだ」
 「桃色の甘美な誘惑、『無垢なる魔性』(イノセント・チャーム)、袴田ひなたっ!!!」
 「先生」
 「どうしたのマホちゃんっ!?」
 「うっせぇ」
 「……はい」

 先生を冷淡に黙らせると、また皿の上に視線を移す。

 「えへへ、『七色彩蕾』(プリズマティックバド)の名にふさわしい、極彩色のゼリーを散りばめてみました」
 「アイリーン、先生のノリに無理に合わせること無いぞ?」
 「べっ、別に羽多野先生は関係ないもん!!」
 「それで……次は私だよ」

 『雨上がりに咲く花(シャイニー・ギフト)』、誰が呼んだかその二つ名(注:羽多野先生に決まってるけど)、その名に相応しい完熟パインの輝くステージ。あまりの熟具合に果汁が弾けんばかりにキラキラと輝いている。

 すげぇ……私が目をキラキラさせながらその造形物に目を奪われていると、右手にひんやりとした感覚が。視線を移すと、その手には半分に切られた、真っ赤に熟したグレープフルーツが。

 「これ、『打ち上げ花火』(ファイアーワークス)だよ。マホっ」
 「もっかん……うん、ありがとなっ!!!」
 「そして……ほら、お前の分だロリコン」
 「ミホ姉……ああ、任せろ」

 すばるんは袋に入った物をフラッペにぱらぱらとふりかけていく。色とりどりのカラースプレー、それは夜天の空からこぼれ落ちた星くずの欠片達のようだ。

 「いつだって君は、あの子達をいつも輝かせてくれた……そんな貴方に、『輝ける壱番星』(トゥインクルスター)の称号を送らせてもらうわ」
 「先生……みんな……」

 何の誇張もない。私達全員が集まって一つの作品でチームなんだ。


 「どうしたんだ、こんな所に呼び出して」

 時間は九時前。神社の御前に私はすばるんを呼び出した。

 「用があったんならさっきでも……」
 「いや、ほらあれじゃん。さっきはいつ他の奴らが来るか分からなかったし。何つーの、何か勢い任せでって言うかさ……」

 う~ん、客観的に自分を見たら相当滑稽に違いない。無理してる、ダイブン。

 顔から火が噴きだしてもおかしくないし、逆に青ざめて昇天するのも致し方無いことだ。

 それでも、自分のけじめだ。別にこれで何が変わるわけでもない。

 「また、この町を離れて、私らなんかが想像もつかないような辛い思いをいっぱいして、それでも大好きなバスケに打ち込んで、いつかそのプレーを観てくれるみんなを幸せにするんだろ? だからさ……言わせてよ」




 「すばるん、大好きだよ」



 言えた。客観的に見ても全然問題ないはずだ、練習した饒舌な台詞がちゃんと出せたかな……

 私はすばるんに背を向け、あははと乾いた笑いを漏らす。

 「わざわざ呼び出してごめんな、でも次言えるのはいつか分かんないし。ああでも別にそんな深く考えなくても良いからさ、別にそんなんじゃ……」
 「真帆」

 何だよすばるん、行かせてくれよ。別に大した話、じゃ……

 振り返った瞬間、私の視界は遮られ優しい温もりに包まれた。

 「すぐ戻ってくるから……絶対に、もう悲しませたりしないから」
 「だっ、だからいってんじゃん! そんな意味でいっだんじゃ、な゛いっで……んぅっ、んぐっ……」

 大人になりたかった。子供の自分が嫌だった。だから必死で強くなろうとしていたんだ。

 だけど、彼の前でなら。

 少しの間、子供の自分を愛せる気がしたんだ。

 「うぅううぅうあぁああぁぁぁああああぁああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 笑顔で送り出そうと思っていたけど、全部台無しだ。でもまあ良いか。

 泣くだけ泣いてすっきりさせると、居直り強盗のように身を引き歯をにまっと見せる。

 「べっ、別に悲しくなんかないんだからねっ!!!!」
 「あーはいはい、分かりましたとも」
 「信じてない、信じてないよこの人はっ。……頑張って来いよ、いつだって待ってるから。んで、活躍の噂をこの町まで届かせてくれ」
 「……任せろ」

 ヒューーーー……………パァァアアン!!!

 花火だ。祭りの最大の目玉にしてその終演を告げる華やかで儚い、黒いキャンバスを飾る大輪の花。

 あの花のように、私も咲き誇れるかな……

 「出来るさ」
 「……っと、口に出してた?」
 「どうせ、あの花みたいに、とか思ってたんだろ。『打ち上げ花火』(ファイアーワークス)、三沢真帆」
 「……うっせえ」

 やられっぱなしは癪なので、私は切れ味鋭いスティールを決めるがごとく入り込み、少しばかり背伸びをして……

 ……………

 「いただきっ!!」
 「ちょ、おまえな……」
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8話が一番の出来だと思っていましたが、今回も結構気に入っております。真帆をどれだけ真帆らしく且つしおらしく可愛らしく描くかに全精力を使いました。
当初予定していた展開と違う為、すばるんとまほまほの距離が縮まっていく過程があまり描かれていないのですが、この二人は元々深い仲で故あって疎遠になっていただけなので、意外とすんなり行ったという感じで補完して下さいww
気合いと元気があれば合宿先から帰った後でも更新出来るんだと言う事を証明したかったのさw
ちょっぴりいじらしいまほまほを意識してみました。
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 「お、すばるんじゃないか」
 「真帆……意外だな」

 町の中心にそびえ立ちその加護により町中を守護する神の社。慣れない浴衣にパカパカ音のする下駄を履きならし、暗闇を裂くほどに急いでこの待ち合わせの場所に来てみれば、そこに待ち受けていたのは我らが名コーチ、長谷川昴。男用の浴衣を粋に着こなし、爽やかな汗が髪を濡らしていた。

 今日はこの神社一帯を中心に行われる慧心の祭りの日。硯谷のメンバーも誘ったが、彼女らはそちらの祭りに参加しており来られないとのことだった。

 少し遅れての到着だったのだが、目を丸くして驚いているすばるん。何というか、これは怒るべきところなのだろうか。

 「意外ってなんだよ、私がもっと遅れると思ったってことか?」
 「いやいや……真帆が待ち合わせの10分も前に来るなんて、柄じゃないなと思って」

 10分前っ!? と驚くと同時に携帯を見る。メールに記されていた時間はやはり18:45(ちなみにこれを回したのは几帳面なサキである。6;45はもう昼の時点では遙か過去だっての)だった。

 「もしかしてすばるん、七時集合って言われてた?」
 「ん、違うのか? だから15分前に着くように来たんだけど」

 これはどういうことなのか。考えられるのは自分にだけ早い時間を伝えてたのか……うん、それだろうな。何か私が遅れること前提で話が進んでたのがむかつくけど。

 日が落ちて間もない丘に涼しい風が吹く。ほのかトウモロコシの香ばしい香りと綿菓子の甘ったるい匂いが共に駆け抜け、祭りの中であることを強く印象づけられる。

 「そっか、じゃあ七時まで暇だな~」
 「ははっ、そうだな……真帆」
 「んっ?」
 「その……浴衣、似合ってる」

 少し恥ずかしそうに言うすばるんが何だか不自然で、気恥ずかしさよりも先に笑みがこぼれる。

 「んだよ、今更恥ずかしがるなっての。あの頃は自覚なしにあおいっちやナツヒが唖然とする言葉吐きまくってたくせに」
 「い、いやあれは無自覚だからであって……何というか、その……」
 「ま、それくらい私が可愛く魅力的になったということで」
 「それは無いな」
 「即答かよっ!!?」

 キリッ、と言う擬音がもっともしっくり来る程のドヤ顔に、オトナゲなく詰め寄ってしまう。結構詰め寄って……途中で止めた。

 「そういやすばるんってさぁ……」
 「ん、どした?」
 「絶対的ロリコンなのか? それとも相対的なロリコンなのか?」
 「ちょっと待て、ロリコン前提で話が進んでないか?」
 「だってそうだろうよ。ナツヒが常日頃から言ってたぞその辺。ただまあ、さっきのリアクションからして……さてはすばるん、絶対的ロリコンだな!!?」
 「だから違うって!!!」

 必死に弁明するすばるんが妙に可愛らしい。だからみーたんはあんなにも執拗にすばるんを虐げるんだな~……

 「……なあ、すばるん」
 「ん、どうした?」
 「あの時さ……小学生と高校生ってすっごい遠く感じたんだ。だけど……4歳差って、こんなにも近い」
 「……考えたこともなかったけど、そうだな」

 別に特別すばるんが幼いのでもないし、私が急速に大人になったのでも無い。ただ同じ時を刻んだだけ。

 結局社会の枠に縛られて勝手に距離を作っていただけだったけれど、そんな物は今となっては些細なこと。別にすばるんをロリコンだの何だのと批判するつもりはさらさら無いし、世間もそのような目で見ることはないだろう。

 今は先生と教え子が結婚する時代だしな~……と、話が逸れた。

 「すばるん、アメリカ行ってどうだった?」
 「いや、もう全然。ステータス的にはまるで歯が立たないし、試合の組み立て方とかも俺が知らない引き出しをたくさんみんな持っててさ。改めて自分の未熟さを思い知らされたよ」
 「彼女とか出来た?」
 「そう言うの、スゴくガキっぽい質問な気がするんだが……」
 「バカだな~すばるん、ちゃんと統計も出てんだぜ。『知人の恋愛事情に敏感な女性100人に聞きました、かつての男友達に彼女が出来てるか気になる?』の質問にはほぼ100%の回答率で気になるってのg」
 「ただの出来レースじゃねぇか!!!」

 にゃはは、とみーたんぽく笑う(すばるんが青ざめて拒否反応を示したのを見逃さなかった、いつもお疲れ様です)と、山の頂より荘厳な鐘の音が鳴り響いた。七時か……みんな遅いな、サキなんかはとっくに来てそうなもんだけど。

 「にしても遅いな……っと、ごめんめっちゃ電話来てた」
 「あ、私もだ」

 これは非常にまずい。二人の代表としてすばるんがサキに電話をかけてくれた。

 「あ、もしもしサキ? ごめんっ着信気付かなくて……」
 『いえ、少し予定に変更がありまして……マホもそちらですか?』
 「ああ、うん……俺達はどうすればいい?」
 『長谷川さんのお母さんが営業してる屋台にみんな居ますので、そこに来ていただけますか?』
 「わかった、場所もだいたいわかってるし……すぐいく」

 会話の内容を傍から聞いていた私は、すばるんが色々回りくどく説明する前に『さっさと行こうぜ』で切り捨て、草を刈り込んだだけのあぜ道を歩いていく。

 下駄の音がかっぽかっぽと響き小気味良く、独特のリズムに歩くのも楽しくなる。

 「……あんまり聞きたくないけどさ、いつ頃アメリカに帰るんだ?」
 「……ごめん、明日の朝に飛行機で帰らなきゃいけないんだ」
 「そっか……忙しいんだな、日本代表は」
 「まあ俺はまだまだ下っ端だからな、色々やらないといけないことも多くて」
 「まあいいさ……また、ちゃんと戻ってきてくれるなら。私はいつまでも待ってるよ」

 今回は自然と言えた。淋しさは以前よりも大きいが、それよりも次また会える喜びを考えて妥協することにしたのだ。
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4歳差って、こんなにも近い……この台詞は個人的に気に入ってます。すばるんとまほまほってそんなに年離れてないんだよな、と彼らを成長させると気付くのですよ。
絶対やるまいと思っていましたがやっちゃいました試合パート。てかやらざるを得なかった。ポジションどころかルールすら微妙に分かっていない私ですが温かく見守って下さい。いやホント、クオリティの低さは致し方ないんで許して下さい。
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 それから二週間後、御盆の日に決行された慧心学園と硯谷女学園の親善試合は最後のフリースローで慧心の勝利に終わった。

 結局一度もまともにコーチング出来なかったが、結奈のフットワークは異常だった。最後の勝利を決めたフリースローのフォームもさる事ながら、全てにおいて何段階も成長していた。しっかり自分が言ったことを遂行したのだろう。最初は反発したかもしれないが、彼女にはプライドよりも大事なものがあったという事だ。

 硯谷の麻奈佳コーチも彼女の動きには釘付けだった。今回の親善試合はいろんな人が見に来ていたようだし、もしかしたら彼女には方々からスカウトが来るかもしれない。

 あの日の、もっかんみたいに……

 「……っとっと」

 両頬をパチパチと叩く。感傷に浸っている場合ではない。次は自分たちの番なのだから。

 慧心OGのメンバーは全員が赤い試合着に身を包んでいた。『RO-KYU-BU!』のロゴが眩しい。

 相手方のメンバーも試合着に身を包みコートに現れた。先陣を切るのはかつての最強のライバル、藍田未有(アイダミユ)だ。恐らく今でも現役で、第一線で活躍しているのだろう。

 最後にあったときよりもなお背が伸びている。チャームポイントのリボンは変わらず彼女の後頭部に花を添える。

 「よぉ、久しぶりだなちびリボン。今はでかリボンか?」
 「……そうね、ちゃんと全員集まってくれて嬉しい。あの日の礼、しっかりさせてもらわないといけないから」

 全身を流れるオーラがけた違いだった。紛れもない、比類なき達人。月日はこのプレイヤーを死角無き魔物に育ててしまったらしい。

 だが、それでも負けない。最高のコーチに調整してもらったんだ、五人の個性を融和した最強のチームが負けるわけがない。

 そうだろ、すばるん。日本のエース、最強のポイントフォワード、究極のユーティリティープレイヤーさんよ。

 「よっし、それじゃあ試合を始めます。……二人とも、本気でぶつかりなさい」

 本来ならジャンプボールはアイリーンに任せるのが適任だ。しかし、相手方のジャンプボールには未有が出てきた。他にもっと背が高い人もいるというのに。

 これは彼女からの挑戦状。受けない方が勝率は上がる。だが、それは出来ない。かつての自分なら売られた喧嘩は買う精神で一も二もなく受けていた話、だが今は違う。

 全力でぶつかりたがっている元ライバルの申し出を、突っぱねるなど無礼千万。

 「それでは……試合、スタート!!!!」
 「「はぁぁああああぁああっ!!!!!」」

 同時に飛翔。同時にボールに手が当たる。そして同時に二人の手が弾かれた。ボールはセンターラインの上に落ちた。まずは互角、ボールは相手チームの手に渡る。

 「行くよミユっ!!!」
 「当然っ……っ!?」
 「へへっ、別に個人的に恨みがあるわけじゃないけどさ、アンタはとりあえず封じないといけないでしょうに」

 このチームが現役の頃と同じやり方で行くなら間違いなく攻守の主軸はでかリボンだ。だったら、こいつを押さえられるのは私しかいない……っ!!!!

 「ちっ、友香(ユカ)パスっ!!!」
 「させないよ!!!」
 「なっ……っ!!!」
 
 パスが決まって進軍しようとした刹那にヒナのスティールが決まる。その今もなお低い身長と類稀なるバランス感覚から繰り出される低空ドリブルに相手方はとても1対1では止められない。

 「くっ……センター前出て!! 私が止めるっ!!!」
 「くっ……真打ち登場かい?」
 「強敵だって認定してあげる、でもこの牙城は崩させない!!!」

 でかリボンはゴールしたまで進軍したヒナの前に立ちはだかる。私にはわかる、これは別に彼女のワンマンプレーなどではない事を。

 でかリボンはそこまで身長が低いわけではないが、チーム内で相対的に見ればかなり小柄である。小柄でないと勢いの乗ったヒナは止められないのだ。

 「それなら……行くよ!!!」
 「無駄っ……そして温いっ!!!!」
 「くっ……!!」
 「ヒナ、あがって!!! 私が止めるっ!!」
 「だから無駄って……っ、パス!」

 サキの進軍にもっかんが後衛としてつく形で二人がかりで持っていこうとした策が即座に読まれ、別の人間にパスが渡る。

 サキと同等の視野を持ち、且つそれが個人内で処理されず周囲の仲間と共有できるだけのセルフコントロールが利くようになった彼女の能力が此処まで恐ろしいとは。

 正確で奪い取りがたいパスの押収ですぐに硯谷は上がってくる。そして再びでかリボンにボールは回った。

 ゴール前、守りはアイリーンだけしか物理的に間に合わない。そこを突破されれば間違いなく先制点を許してしまう。

 「久しぶりだね、雑誌越しにいつも見せてもらってるけど……コートの中で会うのはホントに久しぶり」
 「……………」
 「どれくらい変わったか……見せてみてよっ!!!!!」
 「ひっ……」

 かなり乱暴なオフェンスで、でかリボンはアイリーンを抜こうとした。アイリーンの体が横に逸れる。だが次の瞬間……

 「……なんて、いつまでも子供じゃ無いですから!!!」
 「おっしゃ、やったぜアイリーン!!!!」
 「智花っちゃん、パスっ!!!!」

 群を抜いて高い身長の名センターから繰り出されるパスは誰にもカットできない。前進したもっかんが難なく受け取り……

 リミッターを、外すっ……

 「行くよ、硯谷さんっ……!!」

 静かに、しかし煌々と燃える蒼い闘志。かつて県屈指のスピードを誇ったその小さなエースの潜在能力が炸裂した。

 その神速はもっかんのマークについていたディフェンスを完全に置き去りにして、私とサキのマークも動員して尚振り切られる。

 あっと言う間にゴール前、しかし相手のセンターもでかい。正直言って、飛べば余裕でネットに掴まれるくらいの身長を持っている。

 かといって迷っている暇はない、恐らくこのシチュエーションでもっかんの潜在能力を見せつけられた今なら彼女一人を止めるのに人材の投入は惜しまないはず。

 「さあ、どうするエース!?」
 「逃げませんよ……私のコーチも、逃げませんでしたからっ!!!」

 高く弧を描くシュート。圧倒的に命中精度の悪い一撃だったが、普通に打っても弾かれるのだからしょうがない。

 「くっ……入れさせない!!!!」
 「それなら、入るまで攻めるだけです!!!」
 「よっしゃ、任せろッ!!!!」

 もっかんが打ったのは多少右寄り、入るか微妙だが守る側としてはカットせざるを得ない微妙な位置に打ち込んだのだ。

 それをカットすれば必然的にボールは右寄りで弾かれる。それを私は受け取った。

 「ぶちかませっ、打ち上げ花火(ファイアー・ワークス)!!!!」

 「おうっ、任せろ!!!!」

 みーたんの声を聞いても気恥ずかしさなど微塵もない。足も軽い。意識もはっきりしている。そしてその瞳はゴールを捉えて離さない。

 今なら飛べる。あの日の失態を断ち切るために……

 (決めてみせる、すばるんが教えてくれたこと、此処でっ……)

 (全て出し切るんだっ!!!!)
 「いぃいっけぇええぇええーーーっ!!!!!」

 ボールはネットに吸い込まれ……

 ピピィイイーーーーッ!!!!! ホイッスルが高々と鳴り響いた。

 「よっしゃぁあぁああああっ!!!!!」
 「ふう、まあやったんじゃないの!!?」
 「お疲れ、マホ」

 近くにいたサキとヒナが冷淡ながらも暖かく祝してくれた。やっと……本当の意味で全てが繋がった気がする。

 やっと戻れた。自分が居たかった場所に。

 「よぉし、まだ二点差しかないんだ。まだまだ突き放すぞっ!!!」
 「「「「おおっ!!!!!」」」」


 「はぁっ、はぁっ……っ、そぉおおおっ!!!!!!」

 結論、負けました。いや、本来一言で言い表すべきではないのだけれども。色々なドラマがあったのであるけれど、それはまた次の機会に。

 私はコート内に寝っころがり叫ぶ。だが……これだけ充実した試合も無かった。もしかしたら中学最後の試合が終わって以来のことかもしれない。

 「はぁ、はぁ……ほら、マホ立って」
 「最後に並んで挨拶するまでが試合って前に教わらなかったのかい?」
 「あーもう、うっせぇな二人とも。ったく、昔はヒナはこっち寄りだと思ってたのに」
 「「あはは……」」

 苦笑するもっかんとアイリーン。すっかり真面目キャラに身を堕としてしまった(いてっ←当然サキさんのせいです本当に(ry)ヒナに悪態をつき、つきつつも迅速に跳ね起き並ぶ。

 「それでは、硯谷女学園OGと慧心学園OGの試合を終了する」
 「ありがとうございましたっ!!!!!!」

 終わってみれば懐かしの戦友同士、清々しいものだった。慧心学園OGのメンバーは実際に大会で結果を出していることなどは別に何の関係もないのだろうが、あの時のような居心地の悪さはない。お互いがお互いを最大最強の好敵手と思っているからこそ、最大限の力でぶつかり合えたのだ。

 「むかつくけど、やるじゃない……真帆」
 「あんたもな……未有」
 「……ふふっ」
 「……ははっ」

 「「はぁぁああああああぁあああっ!!!!!!」」

がっしりと握手を交わした。相手が痛がるくらい強く握りしめようとしたのだが、それはお互いに同じことだった。汗で互いの手が滲むが、二人の熱気でそれはすぐに蒸発する。

 「はぁ……」

 幾重にも連なる溜息が小綺麗な体育館を埋め尽くしていった……
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最後の握手をする二人は気に入ってます。個人的にはネギまでのネギVSラカンのラストでラカンが手を差し伸べた所にクロスカウンターをぶち込む両者みたいな感じを出せたらなと。

余談ですがちょっと雰囲気つかむために『真帆のそうだんごと「すぺしゃるさーびすっ!」』を聞いてみました。うん、とりあえず脚本書いた奴出て来い。そしてこの脚本を読んでいるゆかちの様子を想像すると何か哀しくなる。

……ん~、載せてもセーフラインな真帆さんの画像が無いぜ。
 「あんた、マホ……??」

 その日の夜、みーたんの厚意で初等部の体育館を借りて練習していたバスケメンバーの元へ私は単身乗り込んでいた。

 コーチかぶれのみーたんが必死に指示を送り練習が行われている。もっかんとサキとヒナとアイリーン、あの日夢に向かって突き進んでいたチームメイトの姿がそこにはあった。みんな特注品の赤い試合着に身を包んで玉のような汗を流しながら練習に打ち込んでいる。

 「ちょっと、サキの話だと絶望的だって……」
 「みほし、少し黙ってると良い」
 「ひなたってそんなだっけ……?」
 「みんな、練習止めちゃって申し訳ない!!! その場所で良いから聞いてくれ!!!!!!」

 いつだってバカみたいに騒ぐことしか脳がない自分だった。だからこそ敢えてその愚をまたおかそう。

 「ずっと連絡してなくてすみませんでしたっ!!!!! 今からでももしよろしければ、チームに入れてもらえませんかっ!!!!!???」
 「「「「「……………」」」」」

 体育館中のガラスを振動させるほどの大声を張り上げ、頭を下げたまま微動だにしない。一瞬流れる沈黙、その後に五人はどっと自分の元へ押し寄せた。

 「お帰りっ、お帰りだよマホっ!!!」
 「アンタってばもう、心配ばっかりかけるんだからぁ……」
 「やれやれ……ま、これで全員集合だね」
 「マホちゃん、やっと一緒だねっ!!!」

 もっかんが、サキが、ヒナが、アイリーンが、笑顔でやってきてくれた。それを一歩離れた場所から日和見する我らが恩師。

 「ほら、先生もっ!!」
 「うわっととととっ……だから私は生徒の自主性を重んじてだな……」
 「と言いつつ本当は?」
 「うわーん会いたかったよぉおぉおおおーーーっ!!!!!!」

 自分の胸の中にもすっぽり収まってしまうくらいに小さくなってしまった先生を抱きしめ、胸元を伝う滴の温かさに私自身も涙を流した。

 何だろうこの感じ、何というかこそばゆい。

 「ただいま~……っ」
 「昴……お前少しは空気を……」
 「みーたん、いいんだ……すばるん」

 大量の買い物袋を抱えて戻ってきたすばるんの元へ私は駆け寄った。

 「……半分持つよ」
 「え……あ、ああ」

 重い。半分だけでも重いなこの荷物。これを片手で一つずつ、両手に持ってきたのだ。

 すごいなぁ……私らが心底心酔した最高のスターは。

 何とか必死でサキ達の居たところまで涼しい顔を取り繕い持ってくる。

 中に入っていたのは飲み物や冷却スプレー、栄養価の高い固形食だった。それらを取りやすいように並べておき、すばるんの方に向き直る。

 「すばるん……」……もう目をそらさない。ちゃんと見るんだ。かつての業に、身勝手な自分に。

 「今まで、本当にごめんなさい。すばるんの気持ちも考えずひどいことばっかり言って……許してもらえるとは思ってない、だけど……もしそれが叶うなら、償わせてほs」
 「真帆」
 「っ……はいっ!!!!」

 もう逃げないと決めた。すばるんの強い瞳を見つめ返す。もう、目は逸らさない。

 「ずっと……言えずにいた。いなくなってごめん、ずっと音沙汰もなく放置してごめん……」


 「約束、ずっとバスケ教えるって約束……破って、本当にごめんなさい」
 「すばるん……っ、ううっ……ぁぁああぁああああああああーーーーーーっ!!!!!!!!!」

 同じ事を思っていたのか、自分もすばるんも。お互いがお互いから目を背けて距離が遠ざかるままになっていた状況を打開したくてそれでも動けずにいたのか。

 そこには恥も外聞もなかった。ただただ幼い少女のように、大きな胸の中で涙を落として喚き散らした。

 「ほん、どにぃっ……ごめ゛ん、なざい゛ぃぃっ……んぐっ、えぐっ、ひぃんっ、んふっ……」
 「……………」

 静かに慟哭だけが反響する。閑散とした体育館に、ぐずる音と嗚咽が寂しく鳴るだけ。

 そう言えば、前に硯谷女学園に遠征に行ったときも。私がショックで逃げ出した時もすばるんは私を散々追い回して見つけてくれた。私が悪いのに謝ってくれた。全てはバスケを知らない私達が絶望しないで、バスケを精一杯楽しめるように気を使ってくれたからだったのに。

 「俺のせいで、バスケ……嫌いになったんじゃないかって」
 「……バスケ、楽しーもん。やめるわけ、ないじゃん」

 あの時と同じ言葉をぶつけた。認めたくなかったが、自分はどんなに腐っても、根源に根付いたバスケを愛する気持ちだけには嘘がつけなかったらしい。

 「……良かった。すごく、嬉しい」
 「だから……みんなっ!!! もう一度、お願いしますっ!!!!!!」

 「うんっ!!!」
 「……しゃーない」
 「やるかっ……!」
 「勿論だよっ!!」
 「にゅふふ、まとまったみたいだね!?」
 「ああ、それじゃあ、行くぜっ!!!!」


 円陣を組む。二度とほどけないくらい固く。私の反対側にはすばるんがいて。周りを見ればみんながいる。

 「「「「「「「おおおっ!!!!!!!!!」」」」」」」
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よく『なぜ小学生を描かなかったのか』と言われますが、あえて直接的に物語を描かないのが私のやり方なので。
原作を極限まで踏襲しつつも自分なりの独自の解釈の元に創っていくのが私のスタイルです。勿論完全に真似ろと言われれば地の文の構成なども模倣しますけれど。それでは何と言うか面白くない単純に。

単純に『あのセリフを此処で使うのか~』などなど思わせたい部分もあるのですがね。
 そんなことを考えながら街をぶらついて、ゲーセンで時間を潰したりして。気が付いたら遅いはずの日が暮れかかっていた。

 公園では子供達の喧噪が聞こえて……聞こえて……

 「……ん?」

 あれは確か……千早結奈、だったか。あんなに目を釣り上げて……

 「お前ら何すんだよ!!!!」
 「うるせぇよ、仕方ねぇだろ壊れたもんは」
 「壊したんだろうが!!!」
 「お前等みたいな低脳が此処を遊びのために使って良いと思ってんのかよ」

 中等部の連中か。見た感じ体育会系の奴らだろうが、何とも気に入らないもんだ。

 「ふざけんな……謝れよ!!!!」
 「はいはい、すみませんでしたー」

 下卑た笑いとともに彼らは帰っていく。残されたメンバー達も動揺を隠せないでいたが、次第に色々と理由を付けては散り散りになっていく。

 「お前ら、こんくらいで諦めんなよ!!!」
 「そんなこと言ってもどうするんだよ……」
 「そうだよ、またあの人達来るだろうし、私はもう此処で練習するの諦めた方が良いと重う」
 「そんなこと……悔しくないのかy」
 「悔しいに決まってるだろ!!!!!!」

 今の男バスのキャプテンだった。確かバスケ以外の何かで新聞に載っていたような気がする。夏陽とはまた違ったタイプの優等生という事か。

 「この件は大人に任せよう……俺達は、何も出来やしない」

 最後に残った彼が、そう言い残して去っていった。

 「……ううぅ……ううぁあぁああ……」

 「うわぁぁああああああぁああっ!!!!!!!!!」

 夕闇に響く少女の慟哭が耳に痛く突き刺さる。彼女の後ろには破壊されたバスケットゴール、何かを強くぶつけられ籠が外れて落ちている。

 「くそぉっ……折角、せっかく壊れてるのをみんなで直したのに……っ」

 確かに、よく見ればゴールは非常に不格好だった。ただ手作りなりに非常によく作り込まれている。

 どこかで拾ってきたらしいリングをパネルに固定しネットをまきつけて、棒を立て上部にがっちり結びつけていた。

 何というかまあ……懐かしいじゃないか。

 「……おい」
 「……ふぇ? あ、あんたは……」
 「直してやるよ、手伝え」
 「べっ、別にあんたの助けなんて……」
 「うるせぇよ。それにまあ……少し懐かしくなったんでな」
 「え……?」

 確かあれは合宿の時。ゴールがなかったため自分達でゴールを作ったことがあった。あのときはみんな、そうナツヒも一緒で、知恵を出し合い材料を探しあい、不格好ながらもちゃんと実用に足るバスケットリングを作り上げた。

 懐かしい話だ。そして、体も自然に動いていた。公園にある廃材、たとえばロープやベニヤ板、鉄パイプなどを組み合わせて修理していく。

 「ほら、こっち引っ張ってくれ」
 「あ、ああ……っ、しょっ!!!」
 「っ、なかなか力あるじゃねぇか」
 「当たり前だっ、鍛え方が違うんだよっ!」

 板にネットを固定し、とりあえずゴールは出来上がった。さて、これをどうやって取り付け……

 「ん、どうしたんだ真帆」
 「おおっナツヒっ!!!! こんな時にしか役にたたないっ!!」
 「何てひどいこという人だ……」

 全身をジャージに身を包みロードワーク中だった竹中夏陽が通りがかる。渡りに船とはまさにこのこと。

 結奈は若干引き気味だったが、この男は恐らく人間が出来てきているのでまあ大丈夫だろうと希望的観測で何とかやりきってみた。


 「竹中先輩、ありがとうございましたっ!! それから……三沢先輩も」
 「……ん」
 「この前はすみませんでした……私、あれからずっと走り込んで、飛んで、ボールを突き続けて、少しだけどわかった気がして……」
 「はいはい分かった分かった。やっと私の偉大さが分かったってんだな。まあ今日は帰れ、もう夜も遅いだろ?」

 彼女はぺこりとお辞儀をすると、夜の闇に消えていった。

 「なあナツヒ……」
 「……どうした?」
 「どうやってヒナをモノにしたんだ? そんなCV杉田みたいなダンディーな声して」
 「それ関係ないだろ……高2の時あいつの高校の文化祭に行ったとき、呼び出して単純に正面から告白した。そしたらあいつ、何て言ったと思う?」

 『たけなかがずっと幸せにしてくれるって言うなら、良いよ』だとさ、彼は笑いながらも頬を赤らめていた。少し羨ましい話だ。

 別に周りにいい男なんていないから彼氏なんて欲しいとは思ったことなど最近ないのだが、そう言う話を聞くと羨ましく思ってしまう。

 「それじゃ、俺は行くよ……なあ、バスケの件、まだ何も言ってないんだろ?」
 「当たり前だろ……私みたいな半端者はいらないんだ。半端に続けるなら、いっそ続けないですっぱり縁を切った方が良い」
 「そうか……頑張れよ、真帆」

 頑張れ、か……走り去っていく彼の背中はとても大きく見えて、あんな彼氏にベタ惚れしてもらえるヒナに少しだけ嫉妬する。

 そう言えば、こんな事を思い浮かべても嫉妬ってなんだ嫉妬はと思ったことだろう。だけれど今は違う、今ならナツヒの悪いところも良いところもまとめて全て受け入れられる。

 ……右のかかとに何かが当たる。それは誰かが忘れていたバスケットボールだった。

 いや、その誰かは、そこにボールがある事を忘れていた誰かは、もしかして……

 『一緒にバスケしようぜっ!!!!』
 「……………」

 まさか、昔のどうしようもなくバカでアホで無鉄砲で……

 
$羅月 ~月影の島~

 誰よりもバスケにたいし一生懸命だった小学生時代の自分に励まされるなんて。

 私はバスケットボールを手に取り(誰かから受け取ったような錯覚を受けた)、作ったばかりのゴールを見据える。

 膝を曲げる。大きく息を吸い、全身に血を巡らせる。

 「はい……れぇえっ!!!!!」

 ボールは緩やかな放物線を描き、ゆっくりとゴールに吸い込まれていく。

 決めた。もうこれで終わりだ。もう今後は止めてしまおう。惰性で続けても何の意味もない。


 だから、行くんだ。今度は全力で。もう一度あの舞台へ。

 『何かチョー楽しいっ!!!』
 『楽しいって事は、間違ってないって事だ!!! 自分の感覚ってもんを大事にしなくちゃな!!!』
 『ぜってーそう、そうに決まってる!!!!』
 「……ああ、そうだよ。まさかあんたみたいなどうしようもないアホに教わるなんてさ……」

 ありがとう、マホ……
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私が一番描きたかった場面です。マホが救済されるきっかけ、嫌っていた過去の自分にもう一度大切な物を思い出させてもらう所です。
ナツヒとマホの絡みも、結奈との和解も全て予定していた事ではありましたが、かなり色々推敲しました。どう表現すればもっと想いが伝わるだろう、トーク下手な私ですがこうしてひたすら時間をかけて言葉を選べるのですから、その手間は惜しみませんでした。

イラストを描いて下さったneccom様にも厚くお礼申しあげます。本当に助かった。
よく考えたらこっちのブログの方で籠球短編の更新を待ってる人と言うのはいない感じもあるのですが、まあ他の板では私の紡ぐ稚拙な文章を待ってる人もいるので頑張ってます。
今回も少し短いのですが、一応伏線回収なので。まあさらっと読んでいただければ。
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 私は、中学校最後の県大会で大きな失敗をやらかした。

 最後のフリースローでいつものように笑顔をチームメイトに振りまいた自分は、今までの想像を絶する疲労を騙していたことに気づいていなかったのだ。

 その緊張を少しばかり緩めた。それが、体感していた重力を何倍にも引き上げた。

 疲れきった身体は重いボールをネットまで飛ばしきることができなかったのだ。途中で失速し、最高点がネットの縁にすら届かず落下していく。そして、その光景が見える前に私は崩れ落ちたのだ。糸の切れた操り人形のように。

 試合は負けだった。勝負は勝負、フリースローのやり直しなど認められるはずもない。あれだけ出しゃばってチームを鼓舞し盛り上げてきた自分が、最後の最後にチームメイトも応援に来てくれたみんなも裏切った。

 それから、かつての五人がいつまでも一緒に居られないことを知る。ヒナは看護科のある県内でも有名な進学校へ、もっかんはスポーツ特待で全寮制の高校へ。ヒナはバスケを高校進学と共にやめていたことは後になって知ったことだったけれど。

 そしてその年の末、すばるんが、長谷川昴がアメリカに行くことになった。彼が大学1年のことだった。長期の留学で、次に帰れるのは再来年の春と言うことだった。

 『なんでだよ……』
 『ごめんな、真帆……』
 『何でだよ、どうして黙って行っちまうって言うんだよ……っ!!!!!!』

私は憤慨した。すばるんには高校でもバスケを教えて欲しかったから。とても勝手な話だった。無邪気で身勝手でどうしようもなくお子様な意志だった。

 それでも……

 それでももっかんは待つと言った。私達の最高のコーチが次は自分のために幸せになれるように背中を後押しした。私達の中で一番会えなくて辛いのはもっかんだったのに。

 そんなもっかんを……

 『何でそんなこと言うんだよ!!! ずっと一緒にいるって約束したのに!!!!』

 自分は果てない那由他の時間を待てなかった。もっかんは待つと言った。そしてそんなもっかんを。

 パチン……

 叩いてしまった。それでももっかんは何も抵抗せず一心に私を見つめてきた。逃げたのは私の方だった。

 私はきっと誰よりも弱い。だからもしかしたら今も惰性でバスケを続けているのだろう。やめる勇気もなく、本気で続ける根性もなく。

 すばるんにも、もっかんにも。かつて本気で向き合っていた人達にも本気では向き合えないままに。
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当初の予定ではもっかんが正妻安定でした。今は誰とくっつけるか迷っています。
真帆アフターでお腹を大きくしたもっかんが登場してもあれだなとか思いながら色々思案しております。
別に帰省先で超絶に暇と言うわけではないのですが(むしろ日中は色々走り回ってます、さすがに家の車を乗り回すわけにもいきませんし、一応免許は持ってきましたが)、夜はやっぱり手持無沙汰になるのでポメラを使って書きまくってます。

今日はちょっと同年代の友人と共に(同学年でないのがミソ)カラオケの予定なのですが、自宅で牙をとぎながら(発声練習欠かさない)書きまくります。
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 「ちょっとアンタ、来てるなんて全然知らなかったんだけど!!!?」
 
 夏にも関わらず少しばかり肌寒い廊下に甲高い声が響く。

 長い髪を後ろで一本にまとめた、勝ち気な瞳を湛えた大人っぽさの中にも幼さを残す彼女は、薄く白い頬を桃色に染めながら膨らませ、きっ、と猫のように睨む。

 「ふう……まあ、ごめんな、葵」
 「ごめんなじゃないわよっ!!!! 美星さんが教えてくれなきゃ気づかなかったんだから、また私の事なんてほっぽってどっかいく……」

 昴は頭を掻く。上下共にバスケの試合着に着替え体も温まっている。

 「……ま、まあ良いけどさっ。折角なんだから格好いいとこ見せなさいよねっ!」
 「まあな、しっかり決めてやるさ」

 笑顔を返し、昴は控え室へとつま先を向け足を踏み出す。

 その時だった。

 「す……」
 「あ、マホちゃん」
 「あっ……」


 出会ったのだ。私とサキは、すばるんとあおいっちに。今のサキの一言は残念ながら聴き逃せなかった、聴き逃せなかった……!!

 「久しぶり、マホちゃんも試合見に来たんd」
 「こう言うことかよ、サキ」
 「マホ……」
 「久しぶりじゃんすばるん、元気そうで何よりだよ」

 血が下唇から滲んでいるような錯覚すら覚えた。顔の筋肉がうまく働かない。自分はものすごく変な顔をしているのではないだろうか。

 「今日の試合、すばるんも出るんだ? すげぇじゃん、ファン想いの立派なスターだ、最高のプレー期待してっかんね」
 「マホ……行きましょう」
 「……………」

 すばるんは何も言わないでいた。私も何も言わない。何も言わずにきびすを返す。

 「……すいません、長谷川さん」
 「……今日のところは、試合を楽しんでくれると嬉しい」

 サキは走っていく私を追いかけてきた。絶対に追いつかせまいと思っていたら、段差に足を引っかけバランスを崩し、左手を強く床に付く。それが決定的に二人の距離を縮めた。

 「あのさぁサキ、休養思い出したんだけど、帰っt」

 パチン、乾いた音が響く。眼鏡越しに滲む涙に自分は気づいていなかった。

 「何も言わないのは悪かったって思ってる、でもあんただって……っ!!!!」
 「そう熱くなるなって……もうあの時の私じゃない、私だって大人になった、世辞の一つくらい繕える」
 「……………」

 嫌な奴だった。こうして、下らないことばかり覚えて汚い大人になっていく。

 サキは何も答えなかった。私はサキに背を向け走っていく。追ってくるかこないかは知らないが、別にどうでもよかった。
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今この瞬間、シャナFinalのEDを聞いておりますが久々の神曲な気がします。ALTIMA、ちょっと興味の出たアーティストでした。
最後あたりの台詞回しは気に入っています。大人になった結果がこれだよと、嫌でもこの年代では感じる筈です。もちろん昔のように無垢なままではいられないのですが。
そんな私は割と童心を忘れず生きている気がします。
 何か久々の更新です。帰省するためにバスに乗ったり船に乗ったりしている間に書き上げました。
 久々更新しようとすると人称の不一致などのいろんな面で不具合が生じますね、パート日誌をまとめてつけようとしたりするとこうなりますご注意を。

 と自虐も入れたところで、長崎は五島よりお送りします。

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 「ん……」

 熱に浮かされ目を覚ます。そう言えば今日から8月だったか。

 気だるい体を起こし、冷蔵庫に入っていた麦茶を飲む。何だか苦い、この時期のお茶の日持ちの悪さは本当に何とかしてもらえないものか。

 愛莉がグラビア関係の撮影で南の島にロケに行っている間、私はひたすら自堕落に(バイトは行ってるし自主的にトレーニングも欠かしていない……ん、何でこんな事をしているのやら)生命を繋いでいた。

 今日も何度か電話が来ているが、大抵美星からなので完璧に無視し、身だしなみを整えその辺に折り畳んであった衣服から薄めのTシャツとショートパンツを引っ張りだしドレスアップ、物が散乱した1Rにさよならを告げ外出する。

 今日はこの前帰ってきたサキこと永塚紗季(ナガツカサキ)と会う手はずになっている。

 奈良の大学に行ってしまったため(お好み焼きは関係ないと信じたい)高校卒業とともに疎遠になってしまった訳だが、久々会えるのだからこの機会を逃す手はない。


 「ふう……危ない危ない」

 噴水の前で一息入れる。時間は9:54ジャスト。これなら文句を言われることも……

 「ふひゃっ!!!!」
 「ちゃんと五分前行動守れるようになったみたいね、マホ」
 「ちょっ、なにすんだよ!!?」

 妙ちくりんな声を上げて振り返った先には爽やかに頬を緩める蒼髪の幼なじみのすgべしっ。

 「とりあえずその幻想(微笑み)をぶち壊させてもらった」
 「その読ませ方無理矢理じゃないの!? 何はともあれ……久しぶり、マホ」
 「おう……久しいな」

 最後に出会った時と比べてもさほど何かが成長しているわけでも無かったのだが、一年半と言う時は彼女を確実に大人にしていた。

 先月の頭(7/1)に誕生日を迎え二十歳を迎えた彼女、その次の日に誕生日を迎えた自分だったが、一日とは思えない程遠く突き放された感覚をずっと拭えないでいた。それは今も変わらないまま、言いようのない感覚に支配されている。

 彼女がくれたのは、私とサキ両方が大好きな飲み物『メロンコーラ』、とりわけ振ってもいないのにプルタブを勢いよく引くと飛沫(しぶき)がスプリンクラーのように噴き上がり弾ける。

 「んくっ、んっ……っ、ぷはぁっ!!!!!」
 「ふう、折角暑いんだもの、こういう粋な飲み物で一息つきたいじゃない?」

 激しく同感だった。だがそれは此処まで走ってくるだろうと言うことを見越してのことだったのかと思うと少し腹が立つ。

 いやいや、彼女の行為には素直に甘えておこう。これが皮肉だったら皮肉と分かっているけど甘んじて受けています的な何かが必要だと思うんだ。

 「んで、動きやすい格好でって言うからそうしてきたけど、一体どうしたわけ?」
 「まあ、久々会ったわけだけど……ほら、これ」

 サキは水色のワンピースを着て、浅めのキャップを被っていた。ただそんな格好で走り回ったり跳ね回ったりしたら色々残念なものが見えると思うのだけれど。

 と思って何かのチケットを受け取る。バスケの試合か、うちの県と隣の県のバスケチームの試合、公式の試合でも結果を出している二チーム……

 「うおっとと、マホに預けると風で飛ばされるから私が持っておく」
 「信用ねぇな私……ま、いいか」

 今日は風が強い、責任はサキに全部押しつけるとしてだ。たまにはバスケを見る側に回るのもいいかもしれない。

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 何気に衣類の描写に困りました。私は高校まで全くおしゃれに気を使わなかったのもあるんでしょうが、女物の衣類の名称なんてわかんねぇよ!!!!
 失礼しました。と言う事で今回はちょっと短めですが、次回から徐々に修羅場になってきます。良い感じに展開を思いつくと私の勘は冴え渡りそうなので、頑張ります。
$羅月 ~月影の島~


そうだその手があったと言う事で。忙しいなら忙しいなりに手の抜き方があって、それで実際に宣伝の効果が出るなら何の問題も無いのだ~。

と言う事で我らが熊本大学体育会吹奏楽部、12月11日に第40回記念定期演奏会を熊本県立劇場にて行います。前売は500円、当日は一般700円、学生600円です。未就学児、60歳以上は無料だそうです。
これニートはどうなんだろう。未だ就学してない児、だからアウトだね。ニート割引とかは無いですが是非お越し下さい。
今回はゲストに航空自衛隊航空中央音楽隊ソリストのユーフォニアム奏者、外囿祥一郎氏をお招きしてお送りいたします。昨日初合わせでしたが本当に凄い方でした。飲みの席で酒トークが出来そうな予感です。機会あるかな……

私も恐らく人生で最もどぎついであろうソロをちょこっとだけ皇帝の中で担当します。基本的に開放のFから最低音までしか無いくせに散々休みの後にいきなりHighA♭からpで入らないといけないと言うこの責め苦に今週一週間でどこまで当てる確率を上げられいるかが勝負の分かれ目です。
練習の時は10回やって10回当てられるんですけどね~。此処の頭の入りだけもう何百回も練習したよ。


と言うか此処終わってもまたすぐ間髪いれずに弱奏部が数分続くと言うこの鬼畜さ、そりゃあ低音楽器ですから低音を鳴らさにゃどうしようもないのですがクラリネットはその広い音域が持ち味な訳で、高音もしっかり鳴らさないといけないのです。

今回は割とクラシックな風味が強いコンサートになるかと思いますが、格安で世界最高峰の音が聞けるこのコンサート、是非県内外を問わずお越し下さい。

前売りチケットが欲しいかたは私の方まで。