$羅月 ~月影の島~

本当は阪本さんとゆっこが出会ってしまったらどれだけカオスになるのかと言う論点からぶち込んでみようと思ったのですが、もっとほんわかあまあまな話が書きたくてこうしました。
あきら様、もといはかせは殆ど台詞もありませんが、それがアクセントになっております。

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 俺様は猫である。名前はまだない。

 と言う路線で孤高に生きようと決めていた俺様だったが、最近阪本と言う名前を勝手につけられて非常に迷惑している。

 降ってわいたような段ボールに書いていたからって安易な考えが通用するほどこの世の中は甘くない。

 しかも俺様は人間で言えば成人の域にまで達している。たかだか八歳児と一歳児にどうのこうの言われる筋合いは毛頭ないのである。

 『あっ、阪本さ~n……あ痛っ!!!』

 陽の光に程良く温められたコンクリートの上をずんずん歩いていると、東雲研究所で作られたどうやらロボらしい世話役娘、東雲なのに出会う。今日も歩きにくそうな下駄を履いてやっぱり俺の目の前で転んだ。右足の鼻緒が切れている。転んだ原因は道端に素朴に落ちていた石ころらしい。

 おいおいと思いながら俺はなのに駆け寄る。ロボのくせに無駄に人間性を追求されたこの娘は見ていて本当にひやひやする。あううと呻きながら足をさすっている。

 そんな中でも買い物の手提げを一番に庇っているのだから流石だ。きっとあの中にはガキの好物であるプリンや、夕食でいつもガキが催促するオムライスの為の卵やケチャップ、俺の最近のトレンドであるネコ缶等々が入っているのだろう。

 とあっては放っておく訳にもいかない。

 『お前も大変だな~……』
 『ううう、すみません……』
 『ガキに言ってバランスを鍛えてもらったり力仕事を楽にこなせるように改造して貰うとか出来ないのか?』
 『それはちょっと……あっ、はかせっ!!!』

 ダボダボの白衣に身を包んだ八歳児、なのは『はかせ』と呼んでいるガキが前方からやって来た。口元にクリームがくっついている。また勝手に冷蔵庫の中身をつまみ食いしやがったなこのガキは。

 『なの、どうしたの?』
 『あ、ちょっとまた転んでしまって……』
 『あうう、痛そう……あっ、何買ったか見せて~』

 表情のころころ変わるやつだ。さっきまでこいつを心配するそぶりを見せていたのに次にはもう別の所に興味が変わっていやがる。

 だが……ガキは別段喜ぶでも無くかごの中身をまさぐる。そしてそれを一通りやり終えると、恐らく8歳のガキにはかなり重いだろうかごを両手で持ち上げた。

 『これはわたしがセキニンを持って家までもちかえるんだけど』
 『あっ、はかせっ……あうう、痛いですぅ……』
 『ま、プリンがぬるくなるからな……』

 別に俺は食べた事は無いが、冷蔵庫でしっかり冷やしたのがあいつ的には美味いらしい。それがこの陽気に当てられ酷い事になるのは確かに避けたい所ではあるのだが……

 『はかせ……』
 『ん、どした?』
 『また、私は迷惑をかけてしまったみたいです』

 悩ましげな表情は日常茶飯事だが、悲しげな表情は普段はあまり見ない。まあ悲しみにくれている暇なんぞ無いのだろうが。

 『迷惑って……あのガキは冷蔵庫に余ったケーキを平らげて、まだ足りないからってわざわざやって来たんだろ』
 『いいえ、違いますよ。私、実は買おうと思ってた物が売り切れだったんで普段は行かない所に買い物に行ってたんですよ。そのせいで遅れてしまって……心配してくれたんです、はかせは』

 心配、ね……嘯く口元に風が吹き抜ける。こんな所で何を話しているんだか。

 『だから、かごの中見て、自分が持てるか確かめてたんですよ。プリンよりも私を大事に思ってくれているから、何も言わずに、喜ぶより先に……』
 『考えすぎじゃないのかねぇ。ま、自分の作ったロボだしな……大事にするのも分かる気がするが』
 『そう、ですよね……私ははかせに創っていただいたんですから。もっと頑張らないと、はかせが素晴らしいって事が霞んでしまいます』

 顔を赤くしてほほ笑む(どうやってそんな機能を搭載したのやら)なのは何だかとても生き生きとしていた。

 『仕方ない……ほら、俺のスカーフ使って鼻緒の代わりにしろ』
 『え、でも……』
 『あのガキならまた作れるだろ。それに……俺らに言葉なんて要らない、じゃないか?』
 『阪本さん……』

 俺の言葉が人の言葉として発せられる(一体どうやって作ったかは知らないが)赤いスカーフを外し、下駄の鼻緒の代わりにしてやる。ふう、大分軽くなった。あれはスカーフじゃ無いな、よくよく考えたらただの布であるわけが無いのだ。何か機械が組み込まれてるのだろう。

 『あっ、うまく行きましたよ阪本さんっ』
 『そうか、良かったじゃねぇか。さて、そろそろ帰るとするか』
 『はい、そうですね……』


 『『あれ????』』

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ほんわかしすぎてオチまでほんわか。この作品ははんなりの皮をかぶった野獣だと思うのですけれど。ぬかしおる。
と言う事で、名作の舞台を借りた独自の解釈はやはりやりやすいです。この程度30分もあればかけるわわっしょい。
その意味ではきっとカプモンもエクストリームも元ネタが素晴らしいだけに色々やりやすかったんだろうな。それ+作曲者の卓越した技量も多分にあるのだろうけれど。
日常短編:東雲なの×阪本さん(東雲パートが素敵過ぎて作りました、一応4話まで見た時に作ってます)☆
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10873525633.html

魔法少女さや☆マギカ(まどマギ二次創作です)☆
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I am a TrickStar(トリックスター短編です。羊の先輩と龍の後輩のまったり図書室トーク)☆
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天麟山生存ゲーム(阿曽山から熊大まで歩く行事中に妄想したバトロワ風短編)★
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夏の夜に咲く虹の華(過去に書いた小説のキャラを集めて作った夏の恋愛小説)☆
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ICONO-C-LA『S』MEシリーズ短編(ポケモン ドリームスターにて連載中の同名小説の短編集です)
Frozen Machinery ~君が居てくれるなら~(不良とお嬢様との恋路です)☆
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Crystal Birthday ~君が居てくれたから~(上の続編です、明るい話)☆
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http://ameblo.jp/snowjack/entry-10888084459.html

Despair Night ~君が居なければ~(上の続編です、バッドエンド)
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10890866045.html

暇なので作った短編(暇な生徒会執行部がしりとりする話、茶番です)★
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10863735962.html

珪×希・神が与えた仮初めの幸せ(ダブル主人公が主役のクリスマス短編、こっちはTrueEnd)★
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10744848669.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10746011376.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10747131837.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10747257335.html
BADEND(上のクリスマス短編で珪が希と結ばれてしまうと移行するルート、グロさとエロさを兼ね備えていて危険です)★★★
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10776577530.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10778894780.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10785155469.html
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http://ameblo.jp/snowjack/entry-10807659999.html

無題(主人公達が再試験になってしまったヒロインと勉強をがんばる話です)★
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10817656136.html

クーデレって何なのさ?(バレンタインに向けて書いた短編です)☆
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10800878932.html
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10801524870.html
ツンデレって何なのさ?(そのまんまです)☆
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10509460198.html
ツンデレAnother(別のヒロインとの絡み、上は女王様に対しこっちは真面目ないいんちょって感じですかね)☆
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10547674772.html
ヤンデレって何なのさ?(タイトルそのまんま、どんなんがヤンデレかを説明する為に作った小説です)★★
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10502527410.html

To date with a sly little girl(ロシアから来たお嬢様の面倒を主人公が見る話です)☆
http://ameblo.jp/snowjack/entry-10548783038.html

☆特に何の危険性も無い普通な話です。
★下ネタとか色々含む可能性があります。
★★少しグロいかな~とも思います。
★★★某後輩にトラウマを植え付けたレベルのかなり酷いレベル。俺は何も悪くないパートX。
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アメーバのURLなのはこれをアメーバにも貼るからです。
こう言う目次的な物を作っておこうと思ったのもひとえに読みやすさなどを追及した故なのですが、そう言う諸々の小細工ではなく本来の文才を磨けよとも思う訳でううむ。

これは短編のみを集めた物なので、長編を含むとこの限りでは無いと思うと私は本当に沢山の小説を書いて来たんだな~と思います。中々上手くならないね。
$羅月 ~月影の島~

↑最近ぬこ成分が足りなくなってきた所にふっと現れた我らが狩りの宿敵メラルーほにゃほにゃ。何だろう、メラルーもケルビみたいに剥ぎ取り出来て良い気がするんだ。

と言う事で、昨日は体を休めるために帰ってからすぐ寝たので昨日の話かるぅううぁああああ。



~春の祭典~
演奏会です。小規模の団体にも大人数で演奏する喜びをきっと知ってほしいと言う意味合いを私は強く感じるのですが、実際どうでしょう。
まず各団体ごとに演奏し、最後は参加団体の連合による合同バンドで課題曲1と4を演奏しました。音楽をやるのに別にJCわ~いだのJKわっしょいだのは一切関係ないのです、いたって真面目に取り組ませていただきました。
とりあえず県劇響きすぎでしょ。長崎市○会堂なんてもう。今年はあそこで吹コンあるんだけど、五高は人数少ないし不利だよなぁ、去年アルカスで金賞とれなかったのが残念だったのもあるけど。やっぱりカルミナはねぇ、一筋縄じゃいかないよ。最終局面のクラソロは死ぬほど上手かったしその先の狂おしいほどのテーマもばっちり決まってたんだけどなぁ。てかEちゃん彼女に底は無いのか。大学でもクラを続けてくれてたら良いな。おっと話がそれた。
バスクラの子達は割と初心者の子が多かったのですが、お前ら経歴詐称してね? ってくらい上手い。一月であそこまで変わるんだよねぇ。皆表情豊かで凄くかわゆい。もっと練習以外でお話ししたかった。
中央の子が事あるごとに色んな質問(演奏の事ですよ)をしてきてくれて、何かいいな~と思いました。ああいう子はどんどん上手くなるよ。此方も最大限に対応しましたとも。まあ私が質問しやすいオーラだったのもあるかもしれませんけど。そう言うのも大事ですよね、厳格に締めるのも必要だけど。
此処で関係を終わりにしたくないな~と言うのはありますよやっぱり。また会えるかな。

終わってから流石にそろそろ役職のお仕事もせにゃあならんだろと言う事もあって飲み会お休みして(他の所の先生方とご一緒して元が取れるだけ喰って飲めるかなと言うのもあったのですが)ナフコにお買い物……

『何、8:30~8:00までだと!!!?』
ついた時八時二分くらいでした。おい貴様。と言うっ事でショボーン。とぼとぼ帰りながらもサンリブで酒を幾つか買って帰る。てか親父よ、夏場やってきてうちの冷蔵庫にビール入れてくのは嬉しいんだけどあれ高かったんだな。ホントにビールだったんだね。発泡酒じゃ無く。
そこから帰る途中部室に立ち寄って某先輩と諸々お話を。期待されるのと心配されるのは違います、と。
そこで飲み会の二次会があるよ~と言う話を聴き正直『やっぱりね』とは思ったのですが、これは家でやけ酒ってる場合じゃないぞと言う事で行ってきました。追加されたメンツがキラ様とSみよしさんと私で完全に私要らない子だったのですが、岡本先生とお話したい事も沢山あったので其処は攻めました。
テーマはもっぱら愛と死について。つーか愛について。『バーチャルでも何でも良いから愛と言う物を知るべきだ』といい話をされてる最中にこっちを見るのやめなさいキラさん。
ただそう考えると、三次元がもっとも充実していないのが私ではありますがそれ以外を含むと私は割と充実しているんじゃないかと思うのです。愛も死も現実でなければ本当にちょいちょい考えています。最近リアルに感じた事もあるのですけどね。最近の短編は全部その気がある気がする。愛し合いたいのに事情があってくっつけないは王道パターンだけどね。
よくよく考えたらいた時間4時間くらい。その間休みなく酒を飲んでいた私は一体何杯飲んだんだろうね。数えてもいないわ。私も確実に酒乱だね。
ただ酒に強い人と変態な人って全員と言っていいほど楽器上手なので、きっと何か因果があるに違いない。いや俺は飲むぜぇ。
そして私の持ち味はそれだけ飲んで二時過ぎに帰宅して寝て七時に起きると言う所。ぶれない生活リズムです。ただ念のために寝る前と起きてからウコンドリンク(ウコンの力よりちょっと安くてクルクミンが三倍はいってたから買いました)を飲みましたけど。ウコンの力とそんな味も変わらないし今度からこれにしよう。

今日の練習~。とりあえずコントラバスのあの子は最終兵器彼女認定。やばいあの子素敵過ぎる。五高にも可愛くて真面目で一途な後輩はいましたけど多分それすら凌駕する何かがある。あの子にだけは罵倒されたくないわ。いやでもそれであの子が幸せになれるなら私はどれだけ傷ついても良いのですが。これだから俺はMから脱却できないんだよね。
低音パートの女子二人は両方とも品行方正でとても大好きです。そしてちっちゃい。俺なんかが一応これだけ上手くなったんだからすぐ戦力になれるよ。此処で書いても伝わらないけどさ。



おまけ。私はミルフィオーレと言うとリボーンが最初に浮かびます。ちなみにリボーンと言うとレジェンズが最初に浮かびます。ちなみにレジェンズと言うと伝説超人が浮かんだりします。ちな(ry
てかこの曲神曲認定ですよ。こんなにも同じ曲を連続でループして聴いたのは初めてなんだ。今はまだ上がってないけど、CD買ってない人にもフルで聞いてほしい。てかCD買おうぜ。777円と言うお手頃価格。
シューベルトはかなり太っていたらしく、ダイエットと言う事で作曲をしてあれだけの名曲を残したらしいです。空腹を紛らわすためとはいえ流石です。ただ彼が太っていなかったら名曲が生まれなかったのかと思うと何だか不思議な感じ。

ヴェルトはドイツ語で『世界』の意です。ただシューの中にクリームが入ってると誰が言った。ただあのシューを作るのも結構技術がいるんだぜ。とりあえずオーブンが無いと無理なのです。あうあう。レンジは温度の調節がね……


と言う事で、体調不良があるなら精神不良があっても良いじゃないと思ったり思わなかったりな羅月さんです。いや休まないけどね。ドクターストップがかからない限り私は部活を休んだりなど致しませんよ。こんな私でも必要なのですから。まあバスクラ吹きと言う観点はさておき私と言う人間が必要かどうかは別として。

と言う感じで私も夜な夜な生理的欲求(食欲と睡眠欲な)を文学に転化し生きておる訳ですが。フルートのM氏(♂)がどうにも私の事を相当残念な感じに思っているらしくお前は一体アメーバの何を観たと言うんだい訳が分からないよと言う話だ。この年になって何か同人活動如何のベクトルが大概同じ方向を向く理由も何となく分かって来た次第なのですが、それはまあ別の話と言う事で。

ちなみに何の前触れもなく見せた某Deckの仕業なので。何のために見たくない人は見るなと注意書きをしてたと思ってるのさ。あれだよね、18禁と一緒だよね。別に18歳未満でも見れるけど、見ない方が良いよ~と完全に見る側に選択を委ねている。


話がそれました。今後もそれまくるのですが。私の今まで生きてきた中で尊敬序列が10本の指に入る国語の先生がいるのですが、その先生が言った言葉を最近思い出しまして。

『お前ら受験に一番大切な物は分かっとるや?』と。勉強、では無いのです。勉強は誰でもするから。

一番大事なのは体調、その次にサポーター、だそうです。そうだよな~と思いながらも……

ああそうか、体の弱かった私がこれだけ強靭に毎日何とか生きているのはサポーターが居なくても心が生きて行けるようにと形質変化したいわゆる進化と言う事なのかと。日頃から私を鍛えて下さる方々には心底感謝しておりますが、癒しのスポットは私には今いるこの城のみなので。最近45代の態度はよりより険しくなってきたし。私は生きて見せますよ。例え情宣専任で楽譜と兼任になったとしても。

まあ、受験に限らず何時だって必要な事ですよね。必要性の序列がこうなってるのも分かる気がします。体調さえ無事ならサポーターの有無などどうにでもなる。サポートしてくれる人間がたくさんいるにもかかわらず体調が悪いとどうにもならない。

後者は甘えるなと言いたいのですが。妬みも多少入っていますけどねそれはもう。頑張ってるのにうだつが上がらない人間に失礼だ。そんな先輩が居て、どんなに頑張ってもその先輩より上手くなれないなんて事があったら私は辛いしその先輩を尊敬なんて出来るわけがない。まあ今は尊敬できる先輩ばかりで非常に助かっておりますが。こんな私ですが、目標は天高い所にあるので何時までも弛まず頑張ります。


前回まで書いてた短編はpixivとかでも上げてみたのですが、タイトルホイホイと言う事で今までに上げた小説のどれよりも数字が出ております。本当はキャラ考察と私の出した答えと公式の相違とかやりたかったのですが、まああれ完結させて以来足あとほぼ無いので私も空気を読んで。まあやりますけど。一応出すとこに出さないといけないので。それ出した記事をそこだけにするのも勿体ないし。
 「ごめんっ、サヤ数学の宿題見せてっ!!!!」
 「自分でやりなさいよ、そんなんだと受験で苦労するんだからね」

 彼女の名前は野中杏子(のなかあんず)、男勝りでスポーツ万能、ただ頭は少し弱い、いわゆる『アホの子』だ。

 かつての自分を見ているようで、沙弥は少し寒気を覚える。彼女の世界を壊さないためにも、彼女と仲良くしてはまずい。の、だが……

 「そっか~、そうだよなぁ。悪い、自分でもう少し考えてみるわ」

 再び自分の問題プリントに目を向け計算をし出す杏子。彼女はほとんど自分でやっていて、いくつか分からない部分を見たかったらしい。

 思えば、最初から全部写す気満々だった自分とは大違いだ。

 「……ほら、ちゃんと解き方も読んでおいて」
 「さっすがサヤっ、オレに出来ないことを平然とやってのけるっ!!!!!」

 満面の笑みを漏らす杏子。思えば巴マユも、こんな事を思いながらも楽しく自分と居てくれたのだろうかと考えてしまう。

 なんやかんやで自分も、彼女を突き放せないでいた。

 「てか何なのさっきの台詞。どっかで聞いたことあるんだけど」
 「母ちゃんの部屋にあった漫画に書いてた」
 「母ちゃんって……勝手に読んでいいもんなの?」
 「いいさ……母ちゃん、居ないし」

 彼女の母親は彼女を産んですぐになくなったらしい。野中杏子(のなかきょうこ)、旧姓佐倉杏子は死ぬ前に自分の名前から漢字だけを取り出し娘に託したのだとか。

 佐倉杏子……どこかで聞いたことのある名前だとも思いながら、それは思い出すことが出来なかった。

 「あ、ここ間違ってるぜ」
 「え、嘘っ!!!!??」


 「あれ、今帰りか?」
 「ああ、うん……部活終わったし」
 「じゃあオレも一緒に帰るっ」

 もう大分日も落ちていた夜時、玄関のげた箱で沙弥は杏子に出会った。別段用事はなかったのだが、自分も相手も互いの家がどこかなど知らないはずだし、自分だって教えていなければ聞いてもいない。

 「部活やって腹減ったしさ、おごるからコンビニ飯付き合ってくれよ。今朝のお礼もかねて」
 「コンビニ飯……別に良いけど」

 よっしゃっ、と胸の前で小さくガッツポーズをする杏子。沙弥もかなり腹が減っていたのでコンビニには立ち寄るつもりだったが彼女と同席とは思いも寄らなかった。

 何だか自分はとても無理をしているのではないかと感じる。彼女を突き放そうとも出来ず、かといって心を開いて歩み寄ることも出来ないでいたのだから。

 近くのコンビニで行われていた『春の祭典フェア』に便乗し、杏子は明太子のおにぎり、沙弥はツナマヨのおにぎりを選んだ。

 「あっ、おにぎり温めて下さい」
 「おにぎりって温めるもんなの?」
 「だってあっためたほうが美味いじゃん」

 ただそれだけの理由だった。別に店員も静かにレンジに放り込んでチンしてくれる。

 杏子はお金を払って袋を受け取り、少しまだ肌寒いコンビニの外に出て、薄暗い夕闇の中沙弥におにぎりを手渡す。

 「はむっ……うん、うまいっ!!!!」
 「ほんとだ……美味しい」
 「なっ??」

 ご飯粒をつけた口元、八重歯をこぼして微笑む彼女が妙に愛くるしかった。

 「いや、素直に参りました杏子さん」
 「いやいや、よいのだよサヤ……」
 「久しぶりだね、上条沙弥」

 空気が緊縛する。それは沙弥だけが感じているのか特に杏子が何かを感じている様子はない。

 「キュゥ、べえ……」
 「なんだ、こいつ。妙に可愛いかっこして……」
 「そいつに触らないで!!!!」
 「久々あったっていうのに、つれないね上条沙弥」
 「お、こいつ喋るのか。おおそうかそうか、よく人間の言葉を覚えたな~」

 いまいち状況の読めていない杏子に一から説明するのはこの場では難しかった。

 「時にそこの赤い髪をポニーテールにまとめた彼女、名前は?」
 「あ、オレは野中杏子。上条沙弥のお友達です」
 「そうか、じゃあ野中杏子……君は何か叶えたい願い事はないかい?」
 

 キュゥべえの目がぎらりと輝いたような気がした。彼の言わんとするところは沙弥には痛いほどよく分かる。

 「願い事か? そりゃあ色々あるけどなぁ……とりあえず、もっとスタイルのいい女の子になりたいぜ」
 「杏子……そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目」
 「何をそんなに動じているんだい上条沙弥」
 「そうだぜ、折角こんな可愛い小動物がオレに質問してくれてるってのに……」
 「杏子」

 沙弥は杏子の両肩を手でがしっと掴む。しっかり相手の目を見て……強く言い放った。

 「答えて杏子。理由は今はちゃんと言えないけど……私と、この動物と、片方だけ信じるなら、どっちを信じる?」
 「決まってんじゃん、サヤを信じるさ……っくしゅい!!!」
 
 くしゃみでのけぞる杏子、彼女が強く自分の方をとってくれたことが沙弥にとってはとても喜ばしいことだった。

 「ありがとう……これから先、こいつが何を言ってきても、一切耳にしちゃ駄目だからね」
 「あ、ああ……分かったよ」
 「へぇ……野中杏子、また近いうちに来るよ」

 キュゥべえはきびすを返すと夜の茂みの中へ消えていった。沙弥の緊張が解ける。

 「さて……帰るか。サヤんちどっち?」
 「ああ、こっから右」
 「オレんち左ってか、すぐそこのあの白い家なんだよね、そいじゃまた」

 沙弥にばいばいと手を振りそのまま駆けだしていく。いつだって彼女は元気で、その元気を周りにもくれる。

 (ごめんね、杏子……)

 胸の奥では大事に思っていても、魔法や戦いから遠ざけるためには有無を言わせぬ断定的な発言が必要になってくる。それが、少しだけ申し訳なかった。


 沙弥は家に帰ると地下に降り、完全防音の部屋でヴァイオリンを弾いていた。

 沙弥の父、上条恭介は非凡なヴァイオリンの才能を持ちながらも数年前の事故により楽器を弾けない腕になってしまった。

 それまでは娘にも音楽の素晴らしさを教えようとヴァイオリンを習わせていたのに、自分が弾けなくなった途端に沙弥に辛く当たるようになった。

 『そんな音で恥ずかしくないのか』『僕が弾けないのを知っててそんな風に弾いて満足か』家の地下以外で弾いていてはそんな矮小さが露呈するようなことばかり言われるので、ここを使って気分転換に演奏していたのだ。

 だが、完全に四方を防壁に囲まれたこの場所はまるで牢獄のようであまり好きではなかったし、自分の声の響きが普段と全然違って気持ちが悪い。

 さっきまで弾いていた曲はハチャトゥリアン作曲『仮面舞踏会』の二楽章・ノクターンだった。譜面があったので弾いてみたがあまり面白くなかったので、一通り音を鳴らしてから楽器を片づける。使えば劣化するのは仕方ないのだが、使い込んでこそ出てくる味もあるのだった。


 「よっと、お久しぶり、かな野中杏子」
 「てめぇは、さっきの……」

 杏子のお部屋。窓をこんこんとノックする音が聞こえたのでカーテンをがらがらとあけると、そこにはさっきの白い小動物、キュゥべえがいた。

 「お前の話なんか聞かないからな、サヤがあんだけまじめにオレの方見て言ってくれたんだ、守らなきゃ友達じゃない」
 「そうか、君は上条沙弥の友達なんだね……彼女のこと、話してくれないかい? それに外は寒くてね……」
 「ん~、まあいいか。話を聞くなとは言ったけど、聞かせるなとは言ってないしな」

 勝手な理屈を自分で組み立て、杏子は白い悪魔を家に招き入れる。杏子は先週の休みにまとめ買いして備蓄していたクッキーをキュゥべえに与えた。

 かりかりかりかりとクッキーをかじるキュゥべえを見て、杏子は微笑む。この獣が腹の底では何を考えているかも知らずに。

 「お前可愛いな~、思わずもふもふしたくなるぜ」
 「ふう、美味しかったよ野中杏子。さて、夜の徒然に聞かせてくれるかい?」
 「ああ、サヤは今年になってであったんだけどな……」


 「お、杏子は休みか」

 次の日、朝のホームルームの時間。軽く朝の陽気に身を任せまどろんでいた沙弥は先生の声に驚いて目が覚めた。彼女が休むなど珍しい。風邪でも何やかんやで学校に来るというのに。

 確かに昨日くしゃみもしてたし……だがそれくらいしか心当たりがない。まあバカは風邪を引かないと言うし……そう考えると余計に心配になる。

 そんな心配をしていると、前からプリントが配られてくる。沙弥は前から受け取った分はとりあえず自分の分だけ取って後ろに回し、杏子に回ってきた分は彼女の分をのこしてあげて後ろに回す。

 折角なので机の中に入れてやろうとするが、色々紙屑で散らかっていて入らない。仕方ないなと思いながらもまだ次の授業までは時間があったので、ゴミを取り出して……

 「何、これ……」

 今の紙屑の文字、誰かに見られなかっただろうか。そんな下らないことを考えながら沙弥は紙屑を取り出す。

 『死ね』『バカ』『もう学校来るな』『邪魔』などのボキャブラリーの欠片もないような決まり文句が書かれた紙屑がそこには散乱していた。ふとやたら紙を破っているノートがあったので開いてみると、彼女の不器用だが丁寧さの感じる板書の上からマジックで大きく汚い言葉が並べ立てられていた。

 思えば(彼女を極力避けていたからかは知らないが)彼女が他の人と話しているのを聞いたことがなかった。体育の時間あれだけ活躍していても、どんな競技中だって彼女は一人だった。プレーの上手さに目がいってしまうが、彼女は敵からも味方からも歓迎されていなかったのだろう。

 沙弥はそれを全部思い切って捨てた。彼女が今までどんなことをされてきてこれからどんなことをされるのか、そしてこの行動をとったことでクラス内でどういう目に遭うのかなんてどうでもよかった。

 彼女がどんなに冷たくあしらっても沙弥に寄り添ってきてくれたのは、沙弥だけが彼女の事を考えているという想いが無意識のうちに伝わっていたからかもしれない。

 紙屑の上に涙がポロポロとこぼれ落ち水性のマジックで書かれた文字が滲む。それでも完全に文字が消えることはない。受けた言葉の傷が癒えることはないように。

 「ごめん、ごめんね、杏子……」

 彼女に会いたい。彼女が休むくらいだからよっぽどひどいのだろうがそれでも。自分の気持ちをすべて伝えたい、彼女に伝わっていない自分のすべてを。


 放課後、彼女は走った。学校は途中で抜けられないし部活もあってもう夜だったが、杏子の家まで自慢の足でもうすぐ……

 「何処へ行くんだい?」

 キュゥべえだった。こんな時まで……沙弥は足を止める。そして地面を睨みつけた。

 「こんな時に……何の用よ!!!!!!?」
 「気がつかないのかい、この圧倒的な妖気に……」

 キュゥべえが淡々と告げる。その刹那、凄まじい気が全身を突き抜けた。同時に大気が歪んでいくのが目でも肌でも感じられる。

 「野中杏子は……魔女に乗っ取られた。契約して魔法少女になっておけば避けられたのに」
 「……何が言いたいの!!?」
 「倒すんだ。それが、魔法少女である君の使命なんだから」

 杏子が魔女に……同時に沙弥は周囲の様子がおかしい事に気がつく。道行く人はみなふらふらと同じ方向を目指して歩いている。その方向は杏子の家だった。

 「『魔女の口づけ』だね。魔女の烙印を押された人間は精神が狂ってしまうけど……あれは異常だ、此処ら一帯の人間全員を食うつもりだよ」
 「そんなの……私が許さない、杏子は、私が救ってみせる……」


 『ドウシテ、ミンナワタシヲキョゼツスルノ……』『ドウシタラミンナハワタシヲウケイレテクレルノ』『ワタシガナニヲシタノ』『ダレカタスケテ』
 「杏子っ!!!!!!!!!」

 彼女の家は巨大な大木に蹂躙されていた。そしてその木の中心には杏子の姿があった。木に飲み込まれ絶望の涙を流しながら周囲を見つめている。

 『神滅の魔女』、別名シュヴァルツシルトの闇。何処までも深く人間を喰らい成長する恐ろしい魔女。

 生まれてから今まで杏子に巣食っていた果てしない絶望がこの魔女を呼んだのだ。ワルプルギスの夜亡き今、最強と呼べるにふさわしい存在であった。

 「私の声が聞こえる!!!?? 私よ、沙弥よ!!!!!!」
 『サ、ヤ……』
 「ごめん、私魔法少女なの。私と関わるとロクな事にならないから今までずっと避けてたけど……私、貴方の事が大好き、何時だって一緒に居たかった、友達で居たかったの!!!!!!!」
 『サ、ヤ……ワタシ、ワタシ……』
 「もう杏子は一人じゃないよ。何時まででも私が傍にいるから。独りぼっちは……寂しいもんね」

 『ウグゥッァアァアアアアアアアアアァアアアアアーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!」

 魔女が咆哮する。枝を覆う無数の葉が宙を舞い、沙弥に襲いかかった。すでにコントロールは杏子から離れている。

 「くそっ……はぁあああっ!!!!!!!」

 連接剣を抜く。鞭のように暴れまわる刀身が木の葉の刃を切り裂き道を作る。沙弥は剣を元の長さに戻し、大樹に接近した。

 「杏子を……返せぇええええぇッ!!!!!!!!!!!!!」

 渾身の力で幹に斬撃を叩きこむ。しかし巨大なそれはびくともしない。その間にも地中から飛び出した根と上空から降り注ぐ葉を彼女は回避しながら切り刻んでいく。

 何十回腕を振っただろうか。沙弥の剣がついに杏子と木の結びついた部分を切り離した。しかし安堵した瞬間に地中の根が彼女の足に絡みつき地上へ引きずり下ろす。

 そのまま触手のように絡みつく無数の根。沙弥はそれを自分ごと切り裂いた。そして魔力を用いて肉体を修復する。治癒の能力に関して、彼女は天才的な才能があった。彼女の願いの根幹にあるのは『復讐』だったが、治癒の力に特化したのは別の理由があるらしかった。

 「杏子の事を思えば……痛みなんて感じないっ、まだまだぁぁあああっ!!!!!!!!」

 魔力を全開放し、連接剣を巨大化させるとともに最長の長さにまで伸ばす。そのまま幹に捲きつかせ、思い切り引いた。

 表皮に無数の傷が入る、だがそれでも簡単にやられてはくれなかった。流石は最強の魔女、簡単に死んではくれないらしい。

 沙弥は地に落ちて行く杏子を空中で抱きかかえ、安全な場所に寝かせる。その衝撃からか彼女は目を覚ました。

 「さ、沙弥……オレ、何て事を……」
 「聞いて、杏子。私はあの魔女を倒す……だから、普通の生活に戻るって約束して。決して魔法少女になったりとかしないで……」
 「……分かった。だったら約束してよ、絶対に死なないで戻ってくるって」
 「勿論……また一緒に、おにぎり食べよ」

 二人はにっと笑う。沙弥は空を蹴り上空を取り、連接剣を構える。横の攻撃が効かないなら縦、重力による加速も利用して一気に決める。

 「負けてたまるか、私にだって、誰かを守れるんだから……杏子はこれからもずっと友達なんだ、死ぬなんて、そんなの、あたしが許さない!!!!!!!!!!!!」

 巴マユの笑顔が頭に浮かんでは消えて行く。沙弥は剣先を真下に向け、剣を伸ばした。葉の密集した枝を貫き、魔女の核にそれは命中する。弱点を発見した沙弥は再び剣の長さを元に戻し、至近距離から核を砕いた。

 グォオオーーーーーッと言う断末魔の叫びと共に葉が枯れ枝が折れ巨木が崩れて行く。これで終わる、沙弥がそう確信した時だった。

 「えっ、嘘っ……うぐっ、んぁあああっ!!!!!!!!」

 砕けた核が自動修復した。まさか、ここが弱点じゃ無かったのか……根が無数に枝分かれし沙弥を襲う。肉体を修復できると言っても、再生が新たに出来る傷に追いつけない。

 「サヤァアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!」
 「……私が死ねば、こいつはまた杏子を絶望に堕とす、私が勝っても、多分私は魔女になってしまう……だったら、私がこいつと相打てばっ!!!!!!!!」

 残りの魔力全てを込め、力を利き手である左手に託した。そう……

 後悔なんて、ある訳ない。

 『天誅』

 核が修復不能なレベルまで粉々に砕け散る。それと共に、沙弥の肉体も粉々に砕け消え失せた。

 悪夢は終わったのだ。そして杏子にもたらされたのは……何よりも辛い現実。沙弥の居ない世界、何の希望もない世界。




 それでも、彼女は歩き出す。

 「交わした約束、忘れないよ……」

 目を閉じ確かめる。押し寄せた闇も振り払って進む。

 いつになったらなくした未来を見る事が出来るかは分からないけれど。

 空は綺麗な青さでいつも待っててくれる。丁度沙弥の髪のように深い青さで。

 だから怖くない。もう何があっても、挫けない……



 暁美ほむらと鹿目まどかの功績により始原の魔女とインキュベーターもろとも時空のかなたに自らを凍結させた事で、世界は滅びの未来から一時的に逃れる事が出来た。しかし、インキュベーターは次元の凍結から脱出し、再び絶望の種をまいたのだった。

 「全く、魔女を倒した魔法少女が魔女になって、その魔女をまた別の魔法少女が倒す、絶望の輪廻を断ち切るなんて……くそがき共が余計な事を」

 白い悪魔は闇夜に消える。再び次の絶望の種をまき散らすために……


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完結です。ふう疲れた。ストーリー自体は会心の出来です。と同時に単純な実力不足を深く痛感する所ではありますが。
全体を通して本編の名言が数多く出てきていますが、それはやはり原作に対する最大級の敬意の表れでしょうか。最後のフレーズはコネクトの引用ですが、本来ほむらとまどかの心情を歌った歌詞を杏子(きょうこじゃないよあんずだよ)が頭に浮かべながら歩いて行く感じが良い感じではないかと思います。
今回の主人公は沙弥でした、マユに守られる存在から杏子を守る存在になるまでを描いています。丁度ほむらのような立ち位置の彼女が守られていた状態から別の誰かを守ろうとする過程がテーマでしょうか。マユに守られるだけで終わっていたらエピソードはそこで終わっていましたし、絶望が続くのならそれもありでしたが、もう少し救いのある話にしたかったのでこうなりました。
杏子良い子やな、ちなみに名字は中の人から取ってます。リアル俺っ子は私一人しか知らないのですが、彼女は私の事が熱烈に嫌いらしいのでもうどうでもいいや。

後書きとか更に書きたくなったら書くかもしれません。とりあえず俺の仕事は終わりです。
いやもう一言でもいいので感想待ってます。それが次の作品を作る糧になりますので。
$羅月 ~月影の島~
↑まあ、たまにはこういうのも。

っつー訳で公式ですがまどかED。これ歌いたいけどヒトカラ専用だろうな。後確実に練習が要る。
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 『止めて』
 「……え?」
 「どうしたんだい、上条沙弥」

 「やめなさいっ!!!!!」

 天から現れた巴真由はあの夜出会った時と同じ魔法少女の衣装に身を包んでいた。白い獣の首根っこを掴み投げ飛ばす。激しく鉄のフェンスにぶつかったキュゥべえはそれでも表情一つ変えずに静かに言う。

 「巴マユ、君はこんな所で油を売っていていいのかい? この町に魔法少女は君だけなのに」
 「っ……サヤ、こいつの言う事聞いちゃ駄目。こいつの言う事はとても優しく魅力的に聞こえるかもしれないけど、それはただの幻想なの」
 「幻想……?」
 「だから、絶対に契約しちゃ駄目……魔女は皆私が倒すから、貴方は普通に生活して普通に大人になりなさい」

 そう言って諭そうとする彼女は妙に大人びて見えるとともに、何か突き放されるような物を感じた。彼女はまた青空の中へと消えて行った。

 「魔女……?」
 「全く……そう言えば、何も説明していなかったね。契約って事が先行してたけど、魔法少女になると上条沙弥、君の願いを何でも一つだけかなえる代わりに、魔女と戦う使命を与えられるんだ」
 「それって、何なの? この前夜道で人形に襲われたけど、あれが魔女なの?」
 「それは最近巴マユが追ってる魔女、『人形の魔女』リーゼロッテの使い魔だよ。使い魔は魔女を倒さない限り無限にわいてくるんだ」

 キュゥべえは淡々と喋りながらも表情を変えない。何を考えているのか分からなかった。確かに動物の表情を読み取るのは人間のそれよりも難しいが、人語を普通に喋っているからこそそれが奇妙に見えるのかもしれない。

 「……少し、待ってもらえるかな?」
 「……良いよ、契約は君が同意しなければ完遂しない。本当にどんな願いもかなえるから、願いが決まったら意識の中でボクを呼ぶと良い。それから……」

 キミガハヤクマホウショウジョニナッテクレレバ、巴マユダッテタスカルンダヨ……それだけ言って、キュゥべえはフェンスを飛び越えどこかへ消えて行った。

 「マユちゃん……そうだよね、大変だよね。でも、私の願いって何だろう……」

 何でも持っている満たされた自分。沢山の物を奪われてそれでも生きている巴真由とは対極にあった。自分の他にも魔法少女になるべき人間は沢山いるのではないか。
 
 同時に、それは魔女との戦いに対する逃げではないかとも思った。あの日の恐怖をまだ沙弥は覚えている。だが、力があれば怖さも無くなるのだろうか……

 「いけない、次の授業はじまっちゃう……」

 時計を見てもうあまり時間が無い事に気がつく。結論が出ないもやもやした状況の中、彼女は次の授業へ向かった。


 「はぁ、はぁ、はぁ……」
 「お疲れ様、巴マユ」
 「キュゥべえ、また、あんたか……」
 「君が大変そうだから、君の親友を魔法少女に誘ったのに。強情だよ、君は」

 夕方。廃屋の中、巴マユは息を荒げて立っていた。何百体もの使い魔を虐殺しても、魔女には届かない。

 胸に下げた魔法少女の証、ソウルジェムを見つめる。金色に輝いていたはずの宝玉は随分と色あせていた。

 「こんな辛い事、背負うのは私だけで良いの……あんたは、大人しくしてて」
 「分かったよ……でも、早く魔女を倒さないと」
 「黙っててって言ってるでしょ!!!!!! ……消えなさい」

 過労とソウルジェムの穢れにより真由の精神は壊れかけていた。キュゥべえはそれを分かっているためか別段声を荒げるでもなく言葉を紡ぎ続ける。

 「仕事が上手く進まないのは君の過失だよ。全く、ボクに八つ当たりしないでほしいな。やっぱり、上条沙弥の力を借りるしか……」
 「ふざけるなぁあああああっ!!!!!!」

 真由の周囲に8本の杖が出現し、キュゥべえの周囲を取り囲んだ。先端からは光の矢が突き抜け、キュゥべえは回避しようとした物のいくつか掠ってしまう。

 「痛いなぁ、巴マユ。君の相手はボクじゃない……っ?」
 「この気配……今までの比じゃない、これだっ!!!!!」

 真由は誰に言うでもなく自分に言い聞かせて、廃屋を出て空へ消える。キュゥべえは焼けて焦げた表皮を見つめて静かにため息をつく。

 「さて、上条沙弥の所へ……」


 「ちょっ、どうしたのキュゥべえ!!?」

 家で勉強をしていた沙弥の目の前の窓の外に現れたキュゥべえ。ためらいもせず沙弥は死神を家に招き入れる。

 「大変だ、巴マユが魔女の所へ向かった」
 「どうしたの、その怪我!!!?? まさか、その魔女に……」
 「巴マユだけじゃ危険だ、君の力を貸してほしい」
 「その事なんだけど……お願いごと、何も決まって無いの」
 「……ついて来て、魔女の居る場所、徒歩だとかなり遠いんだ。その間に考えると良い」

 怪我の内容をキュゥべえは伝えない。それは『聞かれなかった』からだ。聞かれていない事にまで答える必要は彼には無い。勝手に沙弥の中で解決してくれるならそれはそれで都合が良かった。

 彼女が傷を見たくらいで躊躇しないと言うのはキュゥべえも分かっていたので、あえて身体を修復しなかったのだ。

 少女は走る。その先に何が待つかも分からずに……


 「こいつが……やっぱり、一筋縄じゃいかないか」

 ファンシーな装飾で彩られた不思議な異空間。今まで倒して来た使い魔と同じような奴らに前衛を防備させた小さな蒼い頭巾の人形。これが探していた魔女リーゼロッテである事は容易に分かった。

 「雑魚ばっか並べても無駄だっての……『陽の終局』(シャイン・フィナーレ)!!!!!!」

 上空に16本の杖を投げ飛ばし、それが天高く上り太陽のように先端を外側に向け回転する。回転の速度は急激に速まり、橙赤の光が降り注ぐ。

 人形は光に焼かれ次々に散っていく。その間にも無傷の人形は真由の元へと攻め込んできた。それを残りの16本の杖で迎撃する。杖で殴り光の矢で貫き接近を一切許さない。数分で使い魔の数が激減した。魔女への道が出来る。真由は天高く跳び、杖を回収する。

 「これで終わらせる……」
 「マユちゃんっ!!!!!!!」
 「サヤっ!!!!!?」
 「私も、戦うから……マユちゃんばっかり背負おうとしないで!!!!!」
 「くっ……」

 真由は後ろから現れた沙弥に驚きの色を隠せないでいたが、このチャンスを逃すわけにもいかなかった。

 32本の杖を一斉に束ねる。巨大な大砲が彼女の目の前に出現した。真由は力を込める、エネルギーが高密度に集束された。

 「『最後の銃撃』(ティロ・フィナーレ)!!!!!!!!!!!」

 巴マユは知っているだろうか。その技をかつて誰か別の魔法少女が使っていた事を。そして……

 太い砲身の大砲から圧縮され放たれた光の槍がリーゼロッテを貫き弾ける。倒した、沙弥はそう思った。だが、貫かれた穴から巨大な化け物が姿を現す。それは凄まじいスピードで真由の眼前に迫り……

 真由の頭の奥底に、頭を食いちぎられ死んだ魔法少女の姿がよぎった。顔は既に喰われており確認できなかったが、それのお陰で身体が唐突な現実について行かせた。

 「ぐっ、ああぁあああっ!!!!!!!」
 「マユちゃんっ!!!!!!」
 「まずい、早く契約を」
 「しちゃ駄目っ!!!!!!! 倒してやる、こんな奴私一人でぇええええっ!!!!!!」

 噛みつかれようとした刹那に大砲を杖の形状に戻し口の中に放り込み顎を下ろさせない真由。だが32本の杖を持ってしてもその口は強烈に異物を噛み砕こうとする。

 真由は一旦引き、杖を回収する。思いっきり空を噛み砕き悶絶する化け物、だが次の瞬間には杖の先端が化け物に突き刺さっていた。

 「死ねぇええええぇえええええっ!!!!!!!!!!!」

 光の矢が全身を至る所から貫き、人形の魔女は粉々に炸裂した。その瞬間に使い魔も空気の抜けた風船のようにしぼむ。

 「やった、やったねマユちゃんっ!!!!!」
 「逃げて……」
 「……え?」
 「あぐっ、うぁああぁあああああああーーーーーっ!!!!!!!!!!」

 真由の胸の宝玉が真っ黒に染まる。苦痛に喘ぐ真由、キュゥべえがそれを静かに説明した。

 「巴マユは助からない、君がボクと契約して魔法少女になって、魔女に止めを」
 「サ、ヤ……逃げて、貴方は、幸せに生きる、権、り、がぁ……」
 「……どう言う事なの? 訳が分からないっ!!!!!!」
 「魔法、少女に、なるって……こう言う事なの。魔女を倒、して、ソウルジェムの穢れを払わないと、魔女に堕ちてしまう……私は、それを、最近、知った、か、ら……」
 「キュゥべえ、どう言う事なのっ!!!!!!???」
 「聞かれなかったからだよ。ボクは『魔女と戦う使命を与えられる』とは言ったけど、詳しい事は聞かれなかったし。君達はいつもそうだ、都合の悪い事があるとそうやって憤慨するんだから」

 『ァアアアアァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ』

 一人の勇敢な少女の末路、彼女は32本の黒い翼を背中に宿した堕天使の姿を取る。表情は悲しみに沈んだ表情のまま固定され、両目から流れ出る涙が蝋のように固まっている。

 「ボクと契約をっ!!!!!!!」
 「嫌ぁ……キュゥべえ、マユちゃんを助けて!!!!!!」
 「それは偽善だね」
 「何よそれ!!!!!??」
 「自分の為に願うんだ、君のやってる事は何の願いでも無い」

 この状況で彼だけが冷静に言葉を紡いでいく。この時分かった、真由が止めようとした理由、この獣に感じた不気味な違和感も。

 この獣は……敵だ。

 「……す」
 「ん、何だって?」
 「マユちゃんの無念を晴らす……私は、マユちゃんを傷つけた奴らを絶対に許さない!!!!!!!!!!!!」
 「復讐か……面白い、君の願いは強い、その願いならエントロピーを凌駕出来るよ」

 光が満ち、沙弥の胸元に紫のソウルジェムが宿る。最初からかなり濁っていたが、それは願いの質の問題なのだろう。真由のソウルジェムは彼女の髪の色にも負けない金色の輝きを放っていたのに。

 沙弥の衣服は魔法少女の物に変化し、右手には剣が握られていた。自分はこの使い方を知っている、沙弥は高く跳びあがった。

 「はぁああああああっ!!!!!!!!」

 上条沙弥の武器は連接剣、通常時は普通の剣だが、振り回す事で刃が外れ鞭のようになる。鞭でありながらそれは沙弥の意思に従い自在に暴れる。

 『孤高の魔女』は周囲に黒いステッキを展開して放つ。それを沙弥は連接剣で弾き斬り裂き道を作った。伸びきった剣を再び元の形状に戻し至近距離で斜めに斬り裂く。そしてその距離から剣を伸ばし全身を縛り上げた。

 「マユちゃん、敵は取るよ……散れっ!!!!!!!!」

 刃が食い込み全身を細切れにする。覚醒前だったのもあるが、此処までたやすく倒せたのは沙弥の天性のセンスによるところが大きかった。

 魔女がいた場所には二つの黒い宝玉が落ちていた。片方はリーゼロッテの、もう片方は孤高の魔女が落としたものだった。

 「それはグリーフシード、それに自分のソウルジェムの穢れを移す事でまた戦えるようになるんだ」
 「これが……マユちゃん、ありがとね」

 沙弥は自分のソウルジェムをその宝玉に当て、穢れを移す。キュゥべえは完全に穢れたグリーフシードを渡させると、そのまま食べてしまった。

 「よくやったね上条沙弥、この調子でこれからm」

 ガシュッ……白い獣が縦半分に切り裂かれた。だが中には何も入っていない。それどころか紙きれのように破れ、風に乗って沙弥の懐を抜け飛んでいく。

 「まだ力を制御出来ていないんだね、『敵でないはずの』ボクを『誤って』攻撃するんだから」

 ぞっとした、キュゥべえは沙弥の背後にいたのだ。彼は今までキュゥべえだった自分の皮を喰らい、何事も無かったかのようにけろりとした表情をしている。

 「さて、元の世界へ戻ろうか……」


 こうして、巴真由はこの世から抹消された。彼女が自分を遠ざけたのはこのためだったと沙弥は解釈する。

 今日は三年の始業式。クラス替えも行われクラスの顔触れも大分変わった。前のクラスで中の良かった人間は皆別のクラスで、割と新たな生活が始まったのだった。

 彼女は誓う。もう誰にも頼らないと。誰ともかかわりを持たないようにと。





 誓って、いたのに……






 「今日から同じクラスだね、よろしく」
 「あ、うん……」


 ……絶望は、再び輪廻する。

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此処で終わっても良いような気がしますが、一応自分の中にもテーマ性があるのでもう一つだけ続きます。
この作品の二次創作の肝は『どれだけQBを性悪に描けるか』『願いをどれだけ自然に描けるか』に尽きる気がするのですがどうでしょう。
ちなみにティロ・フィナーレの日本語訳は『最後の射撃』(イタリア語だよ)なのですが、大砲で射撃ってどうなのよとは思いますよ。
沙弥の武器は片手で扱う物なのですが、とりあえずさやかと酷似していながらも別の武器(マミが銃に対しマユがビームの出る杖であるように)が使わせたくて。
連接剣と言うとなじみが無いかもしれませんが、BLEACHの恋次が使ってるあれとかなのはA’sのヴォルケンリッターのリーダー、シグナムが使っていたデバイス『レヴァンティン』などを想像していただけると問題無いかと。今回一番難しかったのが連接剣の描写なのですが、やっぱり相手が知らない物の描写って難しいですよね。実際に存在しない武器だしさ。
リーゼロッテはシャルロッテの亜種です。赤が青に変わっただけで基本的に変わりません。ちなみにマミの記憶が何故マユに継承されているかはご想像にお任せします。それがあったから彼女は死なず、代わりに力を使いはたして魔女になってしまいます。しかし、これが最善の選択だったのでしょうね。

今回は大分書きやすいです。すらすらと物語が頭の中に湧いてくる。と言う事で、11話12話が解禁されるまでにティロ・フィナーレしたいところです。


$羅月 ~月影の島~
おまけ。花咲くいろは2話より。確かにこの場面『下衆が』と言ってるように聞こえます。『ですが』って言ってるんですがね、何も間違ってはいない。
 「いっ、嫌ぁあっ……」

 それは中学二年の12月、唐突にやってきた。

 上条沙弥(かみじょうさや)は夜も遅くの塾からの帰り、不気味な人形に襲われていた。靴のサイズくらいしかない小さなぬいぐるみから足一本分くらいの長さの西洋人形と様々だったが、それぞれ手には刃物や注射器などを持って執拗に彼女を追い回していた。

 そして彼女はついに追いつめられ、その鈍く光る刃が月を照り返した刹那……

 「『月の終局』(ブライト・フィナーレ)っ!!!!!!!」

 恐怖に目を瞑って俯いていた彼女は、前から聞こえる澄んだ曇りのない声に引かれ顔を上げる。

 そこにいたのは金髪を二つ結びに束ねた女生徒。2年3組の出席番号32番、沙弥が知らないはずはない親友だった。

 「ま、マユちゃんっ!!!!!?」
 「まさか沙弥だったとはね~、とりあえず……皆には内緒だからねっ!!!!」

 何本もの杖が彼女の周りを浮遊し、先端から光が突き進む。人形たちを焼き払い、闇夜の彼方へ消滅させた。

 巴真由(ともえマユ)、両親が離婚して母親に引き取られ、その母も心労がたたって入院してからずっと一人で強く生きてきた女の子。

 いつだって優しくて面倒見が良くて、とても同い年には思えないけれど、いつだって自分のそばで笑っていてくれたそんな彼女は沙弥のヒーローだった。

 そしてそれは今もこうして……









 『魔法少女さや☆マギカ』











 「ごめん、マユちゃん宿題見せてっ!!!」

 また何気ない日々が始まるけれど、沙弥の世界をみる認識は少し変わっていた。

 だがそんなキレイゴトを言っている暇は無いわけで、後十分でやることをやらねばならない。

 「またか……私だって忙しいんだよ、そんな中でやってるんだからもうちょっと頑張りなさ」
 「昨日のことバラすもん」
 「恩知らず……分かったから、ちゃちゃっと写しなさい」
 「後でお昼ご飯のおかずあげる」
 「当然」

 真由に机を隣接し必死で宿題を写す沙弥とそれを微笑ましく見つめる真由。ドジで要領の悪い前者と万能で要領のいい後者、二人は対局にあったが、とても仲が良かった。

 「にしても、昨日塾の帰りだったじゃない、塾で何やってたの?」
 「あれ、マユちゃんもしかして忘れてる? 先週出てた英語の宿題」
 「……………」
 「仕方ない、見せてしんぜよう。そのかわり、マユちゃんのおかずも頂戴ね」
 「ううっ……恩に着ます」

 たま~にこう言うこともある。そんなとき沙弥は盛大に偉そうにして、真由は渋々ながらもそれに甘んじるのだ。

 「それにしても、もうすぐ冬休みだね~」
 「私は多分バイトかな~」
 「バイトって、禁止じゃないの?」
 「正義の味方のアルバイト」
 「あ、そゆこと」

 真由はにまっと笑う。普段品行方正な彼女が垣間見せる笑顔が沙弥は大好きだった。

 「私は部活だな、この時期の陸上って最初は辛いんだよね~。すぐ暖かくなるんだけど」
 「部活の時って、あの練習着よね。あのぶかぶかの」
 「うっ……べ、別に中1の時に大きなサイズ買っただけだもん」
 「私も体操服や制服は大きめ買ったけど……そろそろ一つ上のサイズ買わないと」
 「私はマユちゃんみたくスタイル良くないもんっ」
 「……まあ、別に大丈夫だって。成長期なんだし」

 スタイルの良さも対局にある二人。小4の頃から大きくなりだした胸は順調に成長を続け今では大層なことになっている。そんな光景を隣で見てきた沙弥は自分の下を向いて、足下の視界を遮る物が何もないことにげんなりする。


 そんな彼女が、冬休みあけて以来めっきり学校に来なくなってしまったのだった。


 「今日も休み……か」

 隣を見て閑散とした机の上をぼんやりと見つめる。始業式には来ていた。だがそれからも朝遅刻してきたり早退したり、一日中来なかったりを繰り返していたのだ。

 特に最近では一日中の休みが増えた。さすがに心配にもなる。特に彼女は一人暮らしだし、体調を崩したのだとしたら心配だ。

 「もう、宿題ちゃんとやる癖ついちゃったじゃないか……あ、マユちゃんっ!!!」

 ぎりぎり朝のホームルームには間に合ったが、明らかに顔色が悪かった。目つきがとても悪い。顔がやつれている。

 「ま、マユちゃん……久しぶりっ」
 「ああ、サヤ……久しぶり」
 「大丈夫だった? 私すごく心配して……」
 「しん、ぱい……?」

 真由は座ろうとした腰を持ち上げ、座っている沙弥を見据える。何か言おうとして……彼女は踏みとどまった。

 「……貴方達みたいに……」
 「え……??」
 「いや、何でもない……ほら、先生は入ってきた」

 すぐさま席に着く真由。沙弥は詮索しなかった、してはいけない気がしたのだ。


 「ねえ、マユちゃん……一緒にお昼食べ……」
 「ごめん、もう帰る」
 
 その日の午後、沙弥は机を動かし真由の机とくっつけて待っていた。だが、彼女からの返事は実に素っ気ないものだった。

 前までは自然とご飯を食べていた二人だったのに。確かに彼女が辛そうなのは見て取れるが、そこまで言わなくても……と沙弥は食い下がる。

 「でも、折角だし……」
 「うるさいっ!!!!」
 「マユちゃん……」
 「あんた達のせいで……あんた達のせいで私らがどれだけ迷惑してると思ってるの!!!!!!??」

 教室が静まり返る。真由は特に悪びれる様子もなく、ただ決まりが悪そうに鞄に物を詰めてすたすたと教室を出ていく。

 「何あの子……」
 「沙弥、何かした?」
 「……ううん」

 わけが分からないよ……沙弥は淋しげな真由の背中をぼーっと見つめて……

 『巴マユを助けたいかい?』

 それは死神の囁き。頭の中に、沙弥の頭にだけ響いた声。

 『貴方は……誰? どこにいるの?』
 『ボクは、キュウべえ。直接話がしたいから、屋上に来てよ』

 沙弥は処刑台への一歩を踏み出す。その先に何が待つかを彼女は知らない。

 屋上、今日は特に誰もいない。念のため、鍵はかけておいた。

 蒼天の元、彼女の目の前に現れたのは白い体に赤いくりくりした目の小動物。無表情で不思議な威圧感があった。

 「話って……何?」
 「単刀直入に言うよ。巴マユは疲れてる、君にもその助けになってほしいんだ」
 「助ける……って、どうやるの? 私なんかで出来るのかな??」
 「出来るよ、いや……君にしかできないことだ」

 それは悪魔の囁き、禁じられた咎の果実。



 「ボクと契約して、魔法少女になってよ」



 友を救う事が出来るのなら……沙弥は、彼の言うままに契約を……


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割と急ピッチで作ったのですが、どんなもんでしょ。
短編として短くまとめるにあたり、本編を知ってる前提で書いてる部分が多くあるので、分からない人は本編を見る事を強くお勧めします(布教モード)

これは本編『魔法少女まどか☆マギカ』の二次創作になります。別にエロい同人的なものではなく純粋にこの話を知った上で自分なりの解釈を絡め再構成してみました。
マミさんとさやかの子供がそれぞれ出てきています。マユは名字を巴にして分かりやすくしたかったのと、沙弥はあえて名字を変える事で言葉にせずともどうなったかを暗示しています。

このストーリーが、ほむらが守りたかった未来なのかそれとも何らかの原因で戦乱の時代が未来にずれこんだのかは分かりませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

$羅月 ~月影の島~
アメーバならではのファンサービス、まあ俺が描いたものじゃないですけどね。ミクシィでこれを上げると俺は死滅するので。
車校の待合室で十分ちょいで作り上げた短編です。SSを少し意識しています。中身としては『生徒会の一存』っぽい感じがそこはかとなくするのです。
人を選ぶ作品です、特に年齢制限は無い内容ですが、面白くない場合は素直に逃げて下さい。

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それはとある放課後の黒生徒会室。

暴君江藤小夏様の傍若無人度を600%引き出した上でスタイルを+9999した(小夏は零なので倍加できない)黒生徒会会長代行の黒須夢香先輩、つるぺたにして下ネタと女子の凹凸の凸をこよなく愛する黒生徒会会計の生春美弥、そんな女たちに日々振り回されている私こと秋原珪。

そんな三人が生徒会室の机に突っ伏しても、きっとなにも始まらないのだったり。

『つーか、二人ともただぐったりするくらいなら寮帰るなり何なりすりゃいいでしょう。俺は仕事してますが』
『秋原の言うことも正論なんだがな、今故あって寮に入れないんだ。試験期間で教室も図書室も勉学に勤しむ人間が多い、そんな場所でぐったり出来るか?』
『何でぐったり前提なんですか』
『うるっさいよカイっちん、とりあえずうちら暇にゃわけよ』
『勉強しろよ!!!』
『私はそんなもの要らない』
『私もそんにゃもの』
『『要る』』
『……とりあえずだ、勉強では身に付かない脳の活性をしたい』
『何するんですか。てか地の文どこ行った』
『今回はSS形式でお送りにゃのだよ。つーわけで、しりとりしよ、しりとり』
『ほう、脳も活性化しそうだな。試験範囲内の単語を使えば試験勉強にもなる』
『じゃ、カイちんから夢香先輩、私にゃ』
『じゃ、しりとり』
『臨死』
『何で!!!!?』
『いや、だから試験に……』
『出ませんよ!!! それとも来年のはじめはその手のこと習ってみたり!?』
『まあ良いじゃにゃいか。んと、汁』
『突っ込んだら負けか……瑠璃』
『私刑(リンチ)』
『だから何の勉強!!!!!!!?』
『国語の小説の問題の範囲内の熟語をリストアップした』
『そんな熟語範囲内だとしても出ませんから!!!!!』
『じゃああたし~、チロル』
『悪質さが二巡しただけでにじみ出てるな……ルクセンブルク』
『口封じ』
『何か身の危険を感じるっ!!!!!!!!!』
『きっと戦争中の日本ではこういうことも』
『あったから何なんですかっ!!!!!!!』
『さあさあやってきたぁああっ、ジュエル』
『ジュエリーとかなら良かったのに……ルージュ』
『湯葉(豆乳温めると上に浮いてくる膜)』
『渋いですね』
『健康志向だ』
『バイブル』
『また『る』で終わるのか』
『あ、お望みにゃら『る』を抜いても』
『抜かんでいいっ!!!!!!!!』
『我が侭だな』
『ワガママにゃ男はモテないぜ???』
『多少俺も我を通していい気がするんだが……』

ガラガラガラ……と言う音がうちの生徒会室の扉を開くとなるようになっている。アットホームな雰囲気を出すためらしい。

『あ、秋原君……』
『のんちゃん来たあぁああっ!!!!! さあさあその豊かにゃ果実を我に捧げるのだァアアアアーッ!!!』
『急に何っ!!!!?』

巫上希、品行方正豊かでスタイル抜群、胸のサイズはF以上な彼女は最近もっぱら美弥の魔の手から逃亡を余儀なくされている。

ただ中学までやっていた柔術の腕前に異能を絡めることにより1対1の戦闘に於いては生徒会の一年の中でもトップクラスを誇る。

○イガー○スクのごとく切れ味鋭い人間ロケットで突っ込んできた美弥を受け流し背負い投げ、投げられた力と全体重の合計を左手一本で受け止めた美弥は跳ね馬の如く立ち上がり、体勢を立て直して汗を拭う。

『くっ、また、強くにゃったにゃ』
『強くなりたくないよ……』
『てか何か用事で来たんじゃないの?』
『あ……忙しいなら良いんですけど』
『……先輩、少し用事が』
『ああ、分かった。仕事は二人である程度やっておくさ』

助かります、そう告げて珪は希の手を引いた。


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……うん、ごめんなさい。まともに推敲もしてないけどこれホントに俺が書いたのか。
ちなみに全年齢版にするため(?)中途半端な終わり方をしていますが、巫上希はケイオスの異能が強大過ぎて放っておくと膨れ上がって暴走する為、定期的に珪に吸収して貰っている訳で。ケイオスを吸収するには放出させないといけない訳ですが、その放出のやり方が『性的接触による興奮作用』と言うのでまた面倒な事を。キスとかそれ以上の事をしてのぞみんを気持ち良くする事で吸収が出来るのですよハイ。

そんな数奇な運命に巻き込まれたい今日この頃。

CLANNADの挿入歌の中でもトップクラスに好きな『一万の軌跡』です。サビの後の掛け合いは時を刻む唄(CLANNADアフターOP)を思わせます。
と言う事で、今回ちょっと長いのでこれ聴きながら読んでもらえると嬉しいです。

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彼はふらふらと外へ歩き出した。何処へも行くあてが無かったし、別に貯えがある訳でも無かった。が、自分にはもはや居場所など無い事は分かっていた。

お金はないが、行くあても無く歩いていれば何時か力尽きて死ぬだろう。ならば、此処ではないどこかへ行って死にたかった。それは牧菜への贖罪、自分と言う世界のゴミを自ら除去してしまいたかったからだ。

曇天の空は港人に暗い影を落とす。気付けばそこは白兎川の橋の上だった。

かつてこの川はもっと広く橋もかかっていなかった。その川を兎が渡ろうとして、川に住む化け物をそそのかしてその上を渡って行ったのだそうだ。結局最後の化け物の上で騙した事を暴露し嘲笑った事で兎は逆襲を受けボロボロの状態で向こう岸へ投げ出されたのだとか。

あの時の兎は一人の優しい若神に水で体を洗われ蒲の穂で身体を乾かす事で再び生きながらえる事が出来た。しかし自分には手を差し伸べてくれる神も身体を癒す蒲の穂もありはしない。

もう此処で飛び込んで死んでしまおうか。その方が楽でいい、それに向こうでなら、牧菜にも会えるかもしれない。こんな自分が天国に行けるとは思っていないが、この世にいても誰の助けになるでも無いならそれでも……

『ミナト君』
『マキナっ!!!!!!!!!』

その声に港人は後ろを振り向く。そこには誰も居ない。だが淡く白い光と共に彼女の声が聞こえた気がした。

【凄いな、ミナト君は】
【まだやりたいってだけやけど……きっとやってみせるわ】
【信じてるからね、ミナト君がいつか多くの人間を、そして私を救ってくれるような凄い道具を作ってくれるって】
『マキナ……』

何時だって自分の自信満々なトークを聞いてくれて応援してくれた牧菜は、港人が多くの人を救ってくれる事を望んでいた。それなのに自分は……

『『機構の指』(マシーナリー)・『壱の陣』(ファーストギア)』

港人の両手の指全てが金色に発光し、周囲を光で満たした。激しい光に思わずのけぞる港人だったが、その手には一本のステッキが握られていた。

『これは……んっ、ああぁあああああっ!!!!!!!!!!』

凄まじい量の知識が頭からあふれ出す。全て理学工学薬学系統の知識だった。如何にして人を殺すか、どうすれば簡単なエネルギーで多くの人間を虐殺できるか。どうすれば相手に気付かれないような薬を生成できるか。

しかし、彼はそれを正しい事に使う事が出来た。彼女の支えが無ければその力で気にいらない人間全てを粛清していたかもしれなかった。

この何とも知れない力だったが、正しい事に使えるはずだ。その力で……





『機構の指』は材料さえあればどんな道具でも作り出す強力なコスモスの異能。それをと廃棄された工場に残っていた金属材などを用いて彼が作りだしたのは、大容量のデータディスクだった。既存のどの記録媒体よりも高性能の処理速度を持っている。

港人は設計図の知識を頭から呼び起こし紙にまとめた。普通は逆なのだが、目測で数学の答えを求めた後で途中式を強引に考えるような作業が妙に楽しかった。

……完成した。港人の理想はあの時牧菜に語った夢と同じ。多くの人間を、そして牧菜を救う事。その為には自分の技量も必要だが、それ以上に多種多様な材料を必要とする。こんなすぐにでも手に入る雑多な材料だけではどうあっても自分の理想には届かないのだ。


『これを君が?』
『はい……十分実用できると』
『却下だな』
『何でやっ!!!!!!!!!』

企業に売り込もうと持ちこんだ港人だったが、軽くあしらわれてしまった。相手は明らかに自分を軽く見ている。それは仕方のない事なのだが、割り切りたくは無かった。

『これを実用化して販売した所で、誰が責任を取る? お前のような子供が作った物など信用できない』
『……だったらええわ。別の所をあたる』

道具と資料を封筒に仕舞い、港人はオフィスを後にする。彼が居なくなると、担当の男は資料のコピーを見てにやついた。

これほどまでに優れた頭があっても所詮は子供、そしてこの商品を売りに出せば必ず利益が出るはずだ。

『追い返されたのですか?』

女性社員が入ってくる。彼女は男に気付かれないようにこっそりとポケットの中の機械のスイッチを入れた。

『ああ……この図をすぐに下に回して作らせろ』
『これは先程の少年の発案でしょう。彼に無断で、何の報酬も渡さず扱うと言うのは酷いのでは?』
『御託を並べる暇があったらさっさと作業に戻れ』
『……はい』

かちゃっ、スイッチを切る。そして彼女は辞表を提出した。


『助かりましたよ、いえホントに』
『あんた、何者やねん……?』
『とある組織のエージェントですよ、分かりやすく言えばね。そして、貴方と同じ異能者でもある』

夜、近くの割としっかりしたレストランで港人は先程の女性と食事をしていた。元々これを持ちかけられたのは会社の外だった訳で、協力してくれたら色々といい話を持ってくると言う事だったのだけれど。

彼女の顔は、いや顔だけでなく声も体つきもさっきとは全くの別人だった。それが彼女の言う『異能』なのだろうか。

『異能についてはさっき説明したけど、秩序の神と混沌の神、二柱の神の闘争の果ての副産物、戦いの決着がつかない神々は自分の力を細分化して人間に与え戦わせることにした、最後の勝者が使っていた異能が勝敗を分かつってわけね』
『アンタは混沌の神・ケイオスの使徒なんやろ。秩序の神・コスモスの使徒の俺とも戦わなあかんのか?』
『大丈夫ですよ、私達が本能のみで動くけだものならばそうなるでしょうが、決してそんな事はありません。まあ、逆にコスモス同士、ケイオス同士で戦う事も多分にあるのですが』

彼女はニコニコ笑ってばかりでどうにも胡散臭い。それに彼女の話している内容もどうにも信用できない。だが異能の存在は自分で証明したし、この力を使って人を殺すのは難しくないのも自分で理解している。

『と言う訳で、本題に映らせていただきますが……私達は異能を持った人間を集めて適切な訓練を施し、各人が力を最大限発揮できる環境を作ることにも力を注いでいるのです』
『どうにも信じられないんやけど……そう言う施設があるんやな?』
『施設と言いますか、学園ですね。一般の生徒はが大多数ですから、基本的に敷地内で異能を使う事は厳禁ですが。と言う事で……聖鈴学園(せいれいがくえん)に入ってはいただけませんか?』
『それが俺にどんなメリットがあるんや? 一応俺もこの町の生まれ、損得勘定には厳しいで』
『貴方の力に対し正当な報酬を支払います。先程のような事は絶対に無いと約束しましょう。また、貴方が望むのならば研究や実験の資金も提供しましょう。ただし、その見返りとして研究の成果は頂きますが。失敗続きで資金ばかり食いつぶされた時はまた考えますよ』
『悪くない話や……せやけど、俺かてこの町を離れたくは無いんや』
『本当に……そうでしょうか?』

悪魔のようなにやついた笑み。彼女は名刺を渡すと、静かに言った。

『貴方も薄々気づいているのではないですか? 貴方の居場所がこの町には無い事くら』
『言うな!!!!!!! ……そうや、家族も、学校も、頼れないのは分かってるんや……』

港人は自分に言い聞かす。一度失おうとした命だ、いくらでもやってやろうじゃないか。それに自分のしようと思っている事は夢物語では無い。この異能があれば、きっと……

『金田真由……はん、お願いがあるんや。さっきの話やけど、今から少し資金を提供して貰ってもええやろか?』
『……貴方も中々にあざとい事を言いますね。良いですよ、ただ言っときますけど、貸すだけなんですからね。馬車馬のようになってでも借りた物は返してもらいますよ』
『……ああ、別に人としての尊厳なんていらんわ』


『お前は……どの面下げて此処に戻って来た』
『マキナの父ちゃん……お願いがあります』

港人は牧菜の病室に行くと、そこで絶望に打ちひしがれていた牧菜の父親に封筒を渡した。その中には確実に100万以上のお金。明らかに動揺していたが、憮然とした態度で振る舞う。

『こんな金をどうした。家から盗んで来たのか?』
『違います、これは俺が後で働いて返す金なんやけど……慰謝料も入院費も俺が全部払います。いつか俺の力でマキナを絶対に目覚めさせてみせます。せやから……そのために此処を離れないといかん俺の代わりにマキナを守っていて下さいっ!!!!!!!』

沈黙が広いはずの病室(4人部屋だが牧菜だけしか病人がいない)を埋め尽くす。重い空気、その沈黙を切り開いたのは父親だった。

『お前の両親には悪いが、牧菜の事を忘れて勝手に生きればお前自身は何も背負わなくて良いはずだ。どうしてそこまでする?』
『俺、マキナの意識を取り戻したいんや。申し訳なさもあるんやけど、もう一度マキナの笑った顔が見たいから……俺、マキナの事が好きです。マキナを忘れて、俺は生きていけないんや』
『……信じられない事だが、牧菜はこんな物を用意していたらしい。いつ書いたんだろうな、何時死んでも良いようにだろうが』

父親はベッドの隣の引き出しから手紙を取り出して港人に手渡す。表には鉛筆で、丸っこい独特の字で『ミナト君へ』と書かれていた。

『ミナト君
 何時死んじゃうか分かんない私だから、早めにこう言うの作っておきたくて。
 こっちに移ってきてからずっとミナト君は私に付き合ってくれたね。
 身体が弱くて学校にも満足に行けない私だったけど、ミナト君が色んな話をしてくれたから本当に楽しかったよ。私も教室で勉強してるみたいで、こんな病院で一人きりの時も本当に嬉しかったんだ。
 正直言って、ミナト君の事は少し心配です。でも誰かのために一生懸命になれるミナト君ならきっともっとスマートなやり方で皆を救えると信じてるよ。
 ミナト君、大好き。

 だけど、私が居なくなったら、私の事は忘れて欲しいんだ。その方が私も幸せにミナト君を見守れると思うから。だから、可愛い彼女をあの世の私に早く見せてね』

言葉が出ない。港人はその場に泣き崩れた。恥も外聞も捨てただただ泣いた。彼女に感じていた後悔など、今までは大した事で無かった事を思い知らされた。

彼女は死してなお自分の事を案じてくれていたのだ。それなのに自分は何て小さい人間なのだと思い知らされる。

『私にも手紙を残していて、牧菜はお前を絶対に怒らないでくれと書いていた。お前が今までどれほど牧菜の支えになっていたのかも今更になって知ったよ』
『俺、俺……』
『この金は受け取る、ちゃんとしたお金ならな。だから……お前が出来ると言ったのなら、やってみせろ』
『……はい』

港人は決意する。何時か彼女をかならず救うと。その静かだが力強い一言を聞いてか聞かずか、金田真由が病室に入って来た。

『こう言う事ですか、港人君……私、こう言う者です。彼の言った事は嘘偽りではありません』
『真由はん……』
『……そう言う事なら』

港人は牧菜の頬に触れる。彼女はまだ生きている、死んでいないならまた何時か会えるはずだ。

……気のせいだろうか。彼女が笑った気がした。出来れば長い眠りだ、夢の中では幸せで居て欲しかったのだ。


『此処が中等部かいな……真由はんも適当やな、『この辺で時間つぶせ』やなんて』

長い旅路の末、港人は遠く離れた島の学園にやって来ていた。島全体が巨大な都市となっており、幾つもの学園を有する学園都市となっているこの島は学生の年と言っても過言ではない。

緑豊かな校舎裏、広葉樹が規則正しく並べられた道をゆっくりと歩いてみる。それにしても手入れの行きとどいた木だ……ん、んんっ!!!!!!??』

『う、うおぉおおおおっ!!!!!!!!!』
『なっ、何やねん……お~い、大丈夫か~!!!!!!!???』

木の上に乗っていた少女が、足を滑らせて落ちようとしていた。この学園の制服を着ているから此処の生徒なのだろうが、華奢で小さな体、スカートの中身が丸見えだった。

『うっ、うわ~~っ変態~~~~~っ!!!!!!!!!』
『おい、初対面やぞ。とにかく、俺が受け止めたるから、飛び降りろ!!!!』
『オイオイヨ? にゃに言ってんのさこの空気が』
『てめっ……もうええわ、てめぇで勝手にしいや!!!!!』
『させてもらうわぁあああああっ!!!!!!!!!』

少女は思いっきり飛び降り、港人を踏み台にして落下の勢いを殺した。

『ふう……はにゃしは聞いてるよ。あにゃたが転校生だよね?』
『あ、ああ……近衛港人や、大阪から来てん』
『ほうほう、関西か。私も兵庫の出身だからさ。私、生春美弥って言います、よろしくにゃ』

そう言って笑う顔は、牧菜を思わせた。粗暴でがさつで品が無くて、それでもその笑顔は彼女との思い出をよみがえらせた。

『生』きている『春』、それが港人が出会った、この町で最初の友だった。







その友に恋する事も、刃を向ける事も、今の港人には想像もつかなかったのだけど。

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とりあえずこの回想編はこれで終了となります。いやぁ長かった、でも実際本にまとめると大した長さじゃ無かったりします。
港人が美弥と出会うまでの話、美弥は勝手に動いてくれるキャラNo1なのですが、今回は少し出番を少なめにしてとにかく港人の人間性を掘り下げてみました。
手紙は私の常套手段です。ほぼ必ずと言っていいほど登場します。別サイトで連載中の本編一期ラストのように遺書と犯人の暗号を兼ねた物だったり(あの時は頭文字を拾うとヒロインが犯人と思っていた人物の名前になったり)、今回のようにもう会えない人から前もって書かれていた手紙など汎用性抜群です。初心者にありがちな『会話の乱立』も防げますし、それはもう初心者から上級者まで幅広く使えるのです。
エージェント真由さんの名字(きんたって言うな!!! とか知らないよね、テンション高い妹役ならお任せ萌えゲ声優金田(かねだ)まひる朕の、ゲストに呼ばれて名前を読み間違えられた時のお約束)、美弥の飛び降りろに対する返答は完全にお遊びです。こう言うどうでもいい部分に私の精力が無駄遣いされていたり。

最後の一文ですが、既に構想は練っているのです。何時でもどこでもキーボードかちゃかちゃで小説が書ける素敵なツールが手に入ったのでもっと更新速度を上げて頑張りますともさ。

それでは皆さん良い夢を。


PCで見てる方はこのBGMを聞きながらだと臨場感があふれるかもしれません。また、これはG線上の魔王のネタバレをガチで含みますので、G線プレイ中またはプレイするつもりの人は絶対に見てはいけません。







まずい、港人の頭はフル回転して最善策を導き出す。牧菜をここで守ろうとしても守れない、たまたますれ違ったクラスメイトのような体で彼女を見捨て別の場所に引きつけ後で迎えにいくか、だがきっとそれは叶わないだろう。

『彼女とデートかいな、随分なご身分やなぁ……』
『(くそっ、何人おんねや……)烏合の衆ってやつか、雑魚の考え丸出しやなぁ!?』
『残念なことに、今回は高校の先輩方にも支援を依頼しててな。中坊の分際で偉そうにしてる奴おる言うたら今のうちにシメといてくれるそうや』

確かに制服の違う、やけに背の高い奴も混じっていた。総勢十人以上、統制なんて取れていないだろうから一人ずつ潰していけばまともにやり合ってもたぶんどうにか出来る、だが後ろには……

『あのなぁ、お察しの通りサービス中なんや。やから折角来てくれて悪いねんけど……うちの彼女に、格好いいとこ見せる生贄になってくれや』

言い終わるより先に港人は走り、一番背の高い高校生を殴り飛ばした。倒れ込んだところに蹴りを入れ昏倒させる。一番強そうな相手を狙ってくるなど予想だにしていなかった彼らは完全に不意をつかれた。彼らが体勢を立て直す前に港人は手近な相手につかみかかり一撃で制す。今の一撃は相手の関節を外した、かなり強引で暴力的だが致し方なかった。

相手もバカでは無い、背後から入った蹴りに港人は吹き飛ばされる。しかし痛みは無かった。少し視界がふらつくくらいだった。

『それがどうしたんやあぁあぁあぁっ!!!!!!』

自身を鼓舞する。そうでなければ意識を闇に持って行かれる所だった。あらゆる方向に気を集中させ、どんな酷い攻撃を受けてもひるまず一人また一人と打ち倒していった。


『さて、お前が港人の女かいな』
『貴方、最低だね』

最初に言葉を発した男はごたごたを利用して牧菜の元へ歩み寄っていた。右手には鉄の棒を持っている。

『ミナト君にあれだけ威勢の良い事言っておいて、自分はミナト君と戦いもせずに私を狙うんだね。そんな武器まで持って、カッコ悪いよ』
『別にお前を如何こうしたいわけやないわ……』
『っ……』

ひんやりとした鉄の棒が牧菜の頬を撫でる。無機質な冷たさに牧菜は寒気を覚えた。

『……………』
『……何や、少しは喚き散らすと思たんやけど』
『それが貴方の狙いでしょ?』

男は狼狽する。と同時に逆上した。底の浅い男だと言う事は容易に理解できた。

『私が喚き散らせば、どんなに気が高ぶっていてもミナト君は私の方に注意を向けてくれる……でも、きっと私を助けに来る事は出来ない、その瞬間きっとミナト君はボコボコにされちゃう』
『……どいつもこいつも、ほんまにむかつく野郎やなぁあああっ!!!!!!』
『んぐっ!!!!!!』

無機質な棒が横薙ぎに牧菜の腕に打ちつける。あまりの痛みに腕がかーっと焼けつくように痛み、その痛みに彼女は車椅子から落ちた。

『へぇ……良い場所でデートでんな~……』
『っ、止め、て……っ!!!!!』

牧菜の首根っこを掴み、そのまま川まで引っ張って行く。たかだか数mの距離だったが、その先に意味する物は分かっていた。

『ミナトっ!!!!!!! 愛しの彼女が川に沈んでもええんか!!!!!!!??』
『なっ、てめ……ぐふっ、んがっ!!!!!!!』
『ミナト君っ!!!!!!!!』

牧菜の方に気を取られた港人は蹴りと腹打ちを喰らって地に伏す。しかしそれでも立ち上がり、不良達の包囲をかいくぐり走った。

『てめぇええええっ!!!!!!!!!!』
『なっ……く、っ、そがぁあああっ!!!!!!!!』
『ミナト君っ!!!!!!!』
『マキナっ!!!!!!!!』

牧菜は氾濫する川へと落ちた。それを追って港人も川に飛び込む。彼女は肺が弱いのだ、長時間薄汚れた奔流の中で体温を奪われては命が持たないだろう。

彼女はもうすぐ手術をするんだ、無事に終わって、そして帰ってきたら必ず彼女が行きたい所へ彼女と一緒に行くんだ……



それがかなうなら、命なんて要らない。













意識を取り戻した時、港人は牧菜の寝ている病室にいた。自分の足で此処まで歩いてきたはずなのに、意識を失ってから取り戻すまでの道程がまるで思い出せないでいた。

牧菜は青ざめた表情で静かに眠っていた。呼吸器を付けられ、息のリズムも安定しないまま。

『やってくれたな……どうして、どうしてこんな真似をしたぁあああああっ!!!!!!!!!』

主治医が怒るのも無理は無かった。無断で彼女を連れ出し、結果がこれだ。誰だって怒るにきまっている。

『俺は……俺、は……』
『彼女は打撲による諸器官の損傷、体温の低下による発熱と循環器のダメージにより意識を失っている。何年経っても意識は戻らないかもしれない。先程春風の両親から連絡があった。慰謝料を請求すると言う話だ。お前の両親にもその話は行っている』

最悪のシナリオだった。牧菜が口を開く事が出来ればもう少し事態は好転したかもしれない。だが彼女は口を開かない。生きていても死んでいるのと同じだ。

彼女の幸せを願っていた港人が、彼女の未来を奪ってしまった。誰を恨めばいいのかも分からない。


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……はい。

あんまり細かい事は言わないでおきますが。この結末が私のひとまず書きたかったものです。

自治都市さんにはこんな構想ってのは言ってたんですが、『不条理な現実』と言うのがテーマになってたりします。港人は純粋で誠実な人間ですが、それ故に大人達から受け入れられず、そのせいで牧菜の為に良かれと思ってしたことが全てを壊してしまうと言う筋書きですね。

ちなみに牧菜と言う名前にも深い意味があります。タイトルとの関連性で今後どうなるか予想が当たった人は神。と言う訳で、もうちょっと続きます。