
↑まあ、たまにはこういうのも。
っつー訳で公式ですがまどかED。これ歌いたいけどヒトカラ専用だろうな。後確実に練習が要る。
-------------------------------------------------------------------------------
『止めて』
「……え?」
「どうしたんだい、上条沙弥」
「やめなさいっ!!!!!」
天から現れた巴真由はあの夜出会った時と同じ魔法少女の衣装に身を包んでいた。白い獣の首根っこを掴み投げ飛ばす。激しく鉄のフェンスにぶつかったキュゥべえはそれでも表情一つ変えずに静かに言う。
「巴マユ、君はこんな所で油を売っていていいのかい? この町に魔法少女は君だけなのに」
「っ……サヤ、こいつの言う事聞いちゃ駄目。こいつの言う事はとても優しく魅力的に聞こえるかもしれないけど、それはただの幻想なの」
「幻想……?」
「だから、絶対に契約しちゃ駄目……魔女は皆私が倒すから、貴方は普通に生活して普通に大人になりなさい」
そう言って諭そうとする彼女は妙に大人びて見えるとともに、何か突き放されるような物を感じた。彼女はまた青空の中へと消えて行った。
「魔女……?」
「全く……そう言えば、何も説明していなかったね。契約って事が先行してたけど、魔法少女になると上条沙弥、君の願いを何でも一つだけかなえる代わりに、魔女と戦う使命を与えられるんだ」
「それって、何なの? この前夜道で人形に襲われたけど、あれが魔女なの?」
「それは最近巴マユが追ってる魔女、『人形の魔女』リーゼロッテの使い魔だよ。使い魔は魔女を倒さない限り無限にわいてくるんだ」
キュゥべえは淡々と喋りながらも表情を変えない。何を考えているのか分からなかった。確かに動物の表情を読み取るのは人間のそれよりも難しいが、人語を普通に喋っているからこそそれが奇妙に見えるのかもしれない。
「……少し、待ってもらえるかな?」
「……良いよ、契約は君が同意しなければ完遂しない。本当にどんな願いもかなえるから、願いが決まったら意識の中でボクを呼ぶと良い。それから……」
キミガハヤクマホウショウジョニナッテクレレバ、巴マユダッテタスカルンダヨ……それだけ言って、キュゥべえはフェンスを飛び越えどこかへ消えて行った。
「マユちゃん……そうだよね、大変だよね。でも、私の願いって何だろう……」
何でも持っている満たされた自分。沢山の物を奪われてそれでも生きている巴真由とは対極にあった。自分の他にも魔法少女になるべき人間は沢山いるのではないか。
同時に、それは魔女との戦いに対する逃げではないかとも思った。あの日の恐怖をまだ沙弥は覚えている。だが、力があれば怖さも無くなるのだろうか……
「いけない、次の授業はじまっちゃう……」
時計を見てもうあまり時間が無い事に気がつく。結論が出ないもやもやした状況の中、彼女は次の授業へ向かった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「お疲れ様、巴マユ」
「キュゥべえ、また、あんたか……」
「君が大変そうだから、君の親友を魔法少女に誘ったのに。強情だよ、君は」
夕方。廃屋の中、巴マユは息を荒げて立っていた。何百体もの使い魔を虐殺しても、魔女には届かない。
胸に下げた魔法少女の証、ソウルジェムを見つめる。金色に輝いていたはずの宝玉は随分と色あせていた。
「こんな辛い事、背負うのは私だけで良いの……あんたは、大人しくしてて」
「分かったよ……でも、早く魔女を倒さないと」
「黙っててって言ってるでしょ!!!!!! ……消えなさい」
過労とソウルジェムの穢れにより真由の精神は壊れかけていた。キュゥべえはそれを分かっているためか別段声を荒げるでもなく言葉を紡ぎ続ける。
「仕事が上手く進まないのは君の過失だよ。全く、ボクに八つ当たりしないでほしいな。やっぱり、上条沙弥の力を借りるしか……」
「ふざけるなぁあああああっ!!!!!!」
真由の周囲に8本の杖が出現し、キュゥべえの周囲を取り囲んだ。先端からは光の矢が突き抜け、キュゥべえは回避しようとした物のいくつか掠ってしまう。
「痛いなぁ、巴マユ。君の相手はボクじゃない……っ?」
「この気配……今までの比じゃない、これだっ!!!!!」
真由は誰に言うでもなく自分に言い聞かせて、廃屋を出て空へ消える。キュゥべえは焼けて焦げた表皮を見つめて静かにため息をつく。
「さて、上条沙弥の所へ……」
「ちょっ、どうしたのキュゥべえ!!?」
家で勉強をしていた沙弥の目の前の窓の外に現れたキュゥべえ。ためらいもせず沙弥は死神を家に招き入れる。
「大変だ、巴マユが魔女の所へ向かった」
「どうしたの、その怪我!!!?? まさか、その魔女に……」
「巴マユだけじゃ危険だ、君の力を貸してほしい」
「その事なんだけど……お願いごと、何も決まって無いの」
「……ついて来て、魔女の居る場所、徒歩だとかなり遠いんだ。その間に考えると良い」
怪我の内容をキュゥべえは伝えない。それは『聞かれなかった』からだ。聞かれていない事にまで答える必要は彼には無い。勝手に沙弥の中で解決してくれるならそれはそれで都合が良かった。
彼女が傷を見たくらいで躊躇しないと言うのはキュゥべえも分かっていたので、あえて身体を修復しなかったのだ。
少女は走る。その先に何が待つかも分からずに……
「こいつが……やっぱり、一筋縄じゃいかないか」
ファンシーな装飾で彩られた不思議な異空間。今まで倒して来た使い魔と同じような奴らに前衛を防備させた小さな蒼い頭巾の人形。これが探していた魔女リーゼロッテである事は容易に分かった。
「雑魚ばっか並べても無駄だっての……『陽の終局』(シャイン・フィナーレ)!!!!!!」
上空に16本の杖を投げ飛ばし、それが天高く上り太陽のように先端を外側に向け回転する。回転の速度は急激に速まり、橙赤の光が降り注ぐ。
人形は光に焼かれ次々に散っていく。その間にも無傷の人形は真由の元へと攻め込んできた。それを残りの16本の杖で迎撃する。杖で殴り光の矢で貫き接近を一切許さない。数分で使い魔の数が激減した。魔女への道が出来る。真由は天高く跳び、杖を回収する。
「これで終わらせる……」
「マユちゃんっ!!!!!!!」
「サヤっ!!!!!?」
「私も、戦うから……マユちゃんばっかり背負おうとしないで!!!!!」
「くっ……」
真由は後ろから現れた沙弥に驚きの色を隠せないでいたが、このチャンスを逃すわけにもいかなかった。
32本の杖を一斉に束ねる。巨大な大砲が彼女の目の前に出現した。真由は力を込める、エネルギーが高密度に集束された。
「『最後の銃撃』(ティロ・フィナーレ)!!!!!!!!!!!」
巴マユは知っているだろうか。その技をかつて誰か別の魔法少女が使っていた事を。そして……
太い砲身の大砲から圧縮され放たれた光の槍がリーゼロッテを貫き弾ける。倒した、沙弥はそう思った。だが、貫かれた穴から巨大な化け物が姿を現す。それは凄まじいスピードで真由の眼前に迫り……
真由の頭の奥底に、頭を食いちぎられ死んだ魔法少女の姿がよぎった。顔は既に喰われており確認できなかったが、それのお陰で身体が唐突な現実について行かせた。
「ぐっ、ああぁあああっ!!!!!!!」
「マユちゃんっ!!!!!!」
「まずい、早く契約を」
「しちゃ駄目っ!!!!!!! 倒してやる、こんな奴私一人でぇええええっ!!!!!!」
噛みつかれようとした刹那に大砲を杖の形状に戻し口の中に放り込み顎を下ろさせない真由。だが32本の杖を持ってしてもその口は強烈に異物を噛み砕こうとする。
真由は一旦引き、杖を回収する。思いっきり空を噛み砕き悶絶する化け物、だが次の瞬間には杖の先端が化け物に突き刺さっていた。
「死ねぇええええぇえええええっ!!!!!!!!!!!」
光の矢が全身を至る所から貫き、人形の魔女は粉々に炸裂した。その瞬間に使い魔も空気の抜けた風船のようにしぼむ。
「やった、やったねマユちゃんっ!!!!!」
「逃げて……」
「……え?」
「あぐっ、うぁああぁあああああああーーーーーっ!!!!!!!!!!」
真由の胸の宝玉が真っ黒に染まる。苦痛に喘ぐ真由、キュゥべえがそれを静かに説明した。
「巴マユは助からない、君がボクと契約して魔法少女になって、魔女に止めを」
「サ、ヤ……逃げて、貴方は、幸せに生きる、権、り、がぁ……」
「……どう言う事なの? 訳が分からないっ!!!!!!」
「魔法、少女に、なるって……こう言う事なの。魔女を倒、して、ソウルジェムの穢れを払わないと、魔女に堕ちてしまう……私は、それを、最近、知った、か、ら……」
「キュゥべえ、どう言う事なのっ!!!!!!???」
「聞かれなかったからだよ。ボクは『魔女と戦う使命を与えられる』とは言ったけど、詳しい事は聞かれなかったし。君達はいつもそうだ、都合の悪い事があるとそうやって憤慨するんだから」
『ァアアアアァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ』
一人の勇敢な少女の末路、彼女は32本の黒い翼を背中に宿した堕天使の姿を取る。表情は悲しみに沈んだ表情のまま固定され、両目から流れ出る涙が蝋のように固まっている。
「ボクと契約をっ!!!!!!!」
「嫌ぁ……キュゥべえ、マユちゃんを助けて!!!!!!」
「それは偽善だね」
「何よそれ!!!!!??」
「自分の為に願うんだ、君のやってる事は何の願いでも無い」
この状況で彼だけが冷静に言葉を紡いでいく。この時分かった、真由が止めようとした理由、この獣に感じた不気味な違和感も。
この獣は……敵だ。
「……す」
「ん、何だって?」
「マユちゃんの無念を晴らす……私は、マユちゃんを傷つけた奴らを絶対に許さない!!!!!!!!!!!!」
「復讐か……面白い、君の願いは強い、その願いならエントロピーを凌駕出来るよ」
光が満ち、沙弥の胸元に紫のソウルジェムが宿る。最初からかなり濁っていたが、それは願いの質の問題なのだろう。真由のソウルジェムは彼女の髪の色にも負けない金色の輝きを放っていたのに。
沙弥の衣服は魔法少女の物に変化し、右手には剣が握られていた。自分はこの使い方を知っている、沙弥は高く跳びあがった。
「はぁああああああっ!!!!!!!!」
上条沙弥の武器は連接剣、通常時は普通の剣だが、振り回す事で刃が外れ鞭のようになる。鞭でありながらそれは沙弥の意思に従い自在に暴れる。
『孤高の魔女』は周囲に黒いステッキを展開して放つ。それを沙弥は連接剣で弾き斬り裂き道を作った。伸びきった剣を再び元の形状に戻し至近距離で斜めに斬り裂く。そしてその距離から剣を伸ばし全身を縛り上げた。
「マユちゃん、敵は取るよ……散れっ!!!!!!!!」
刃が食い込み全身を細切れにする。覚醒前だったのもあるが、此処までたやすく倒せたのは沙弥の天性のセンスによるところが大きかった。
魔女がいた場所には二つの黒い宝玉が落ちていた。片方はリーゼロッテの、もう片方は孤高の魔女が落としたものだった。
「それはグリーフシード、それに自分のソウルジェムの穢れを移す事でまた戦えるようになるんだ」
「これが……マユちゃん、ありがとね」
沙弥は自分のソウルジェムをその宝玉に当て、穢れを移す。キュゥべえは完全に穢れたグリーフシードを渡させると、そのまま食べてしまった。
「よくやったね上条沙弥、この調子でこれからm」
ガシュッ……白い獣が縦半分に切り裂かれた。だが中には何も入っていない。それどころか紙きれのように破れ、風に乗って沙弥の懐を抜け飛んでいく。
「まだ力を制御出来ていないんだね、『敵でないはずの』ボクを『誤って』攻撃するんだから」
ぞっとした、キュゥべえは沙弥の背後にいたのだ。彼は今までキュゥべえだった自分の皮を喰らい、何事も無かったかのようにけろりとした表情をしている。
「さて、元の世界へ戻ろうか……」
こうして、巴真由はこの世から抹消された。彼女が自分を遠ざけたのはこのためだったと沙弥は解釈する。
今日は三年の始業式。クラス替えも行われクラスの顔触れも大分変わった。前のクラスで中の良かった人間は皆別のクラスで、割と新たな生活が始まったのだった。
彼女は誓う。もう誰にも頼らないと。誰ともかかわりを持たないようにと。
誓って、いたのに……
「今日から同じクラスだね、よろしく」
「あ、うん……」
……絶望は、再び輪廻する。
-------------------------------------------------------------------------------
此処で終わっても良いような気がしますが、一応自分の中にもテーマ性があるのでもう一つだけ続きます。
この作品の二次創作の肝は『どれだけQBを性悪に描けるか』『願いをどれだけ自然に描けるか』に尽きる気がするのですがどうでしょう。
ちなみにティロ・フィナーレの日本語訳は『最後の射撃』(イタリア語だよ)なのですが、大砲で射撃ってどうなのよとは思いますよ。
沙弥の武器は片手で扱う物なのですが、とりあえずさやかと酷似していながらも別の武器(マミが銃に対しマユがビームの出る杖であるように)が使わせたくて。
連接剣と言うとなじみが無いかもしれませんが、BLEACHの恋次が使ってるあれとかなのはA’sのヴォルケンリッターのリーダー、シグナムが使っていたデバイス『レヴァンティン』などを想像していただけると問題無いかと。今回一番難しかったのが連接剣の描写なのですが、やっぱり相手が知らない物の描写って難しいですよね。実際に存在しない武器だしさ。
リーゼロッテはシャルロッテの亜種です。赤が青に変わっただけで基本的に変わりません。ちなみにマミの記憶が何故マユに継承されているかはご想像にお任せします。それがあったから彼女は死なず、代わりに力を使いはたして魔女になってしまいます。しかし、これが最善の選択だったのでしょうね。
今回は大分書きやすいです。すらすらと物語が頭の中に湧いてくる。と言う事で、11話12話が解禁されるまでにティロ・フィナーレしたいところです。

おまけ。花咲くいろは2話より。確かにこの場面『下衆が』と言ってるように聞こえます。『ですが』って言ってるんですがね、何も間違ってはいない。