夫の入院4日目。
私は病院に行き、
転院先の返事を聞いたが、
まだ決まっていなかった。
会うことが出来ない
夫の様子を聞き、
昨日の手紙(メモ)を
渡してから、
彼の寮の部屋に向かった。
寮母さんは、
残暑の厳しい中、
私が倒れたりしないだろうか?と
ちょくちょく部屋を訪れて、
声を掛けてくれた。
私は黙々と、
彼の部屋を片付けながら
掃除をして夕方まで過ごした。
「あ、この服は、
東京の本社にいた時の服!」
物持ちが良いのか、
整理下手なのか、
着なくなった服も捨てずに
多数あった。
ほとんど、クリーニングが
済んでいて、クローゼットに
これでもかというほど、
並んでいた。
私は趣味にあわないと、
ポンポンと処分して
しまうので、
彼とよく喧嘩になった。
以降は、彼のものには、
手をつけないと決めていた。
今回も、彼の意思を
尊重して、
車に載る程度の段ボールに
まとめた。
過ぎる時間との戦い。
コンビニのサラダと
おにぎりを持ち込み、
一歩も外に出ることなく
夕方まで片付けた。
昨日と同様、
昔の楽しかった思い出で、
今の不安な気持ちを
癒そうとしている自分がいた。
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ホテルに戻ると同時に、
夫から電話がきた。
希望していた病院から、
転院受け入れの通知がきたという。
入院からちょうど一週間後に
転院することが決まったのだ。
ひとつ問題をクリアして、
夫の声は明るかった。
引っ越しと転院を
一緒に行う手筈も、
もう付けたという。
夫の会社が協力してくれたのだ。
私には、あと2日で、
部屋を片付けるという
ノルマが課せられたが、
家に戻れることの方が、
数段嬉しかった。
コロナ禍で転院が
難しいと言われていたが、
ともかくプッシュして
下さった病院の関係者様には、
本当に感謝の気持ちで
いっぱいになった。
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そして、その夜は、
夫を通して、
夫の直属の部下二人から、
食事会に誘われた。
数日、ちゃんとした食事
摂っていなかった私を
心配してのことだった。
一人は20年近く、
夫の近くで
支えてきた後輩。
もう一人は、
退職を控えた夫の仕事を
引き継ぐために、
春に転勤してきた後輩。
元々私が
同じ会社にいたこともあり、
夫が家庭の出来事も、
酒のつまみしていたものだから、
初対面の私を
以前から知っているような
感覚で迎えて下さった。
彼らの名前は、
時折夫の話に出てくる。
そして、
私の知らない夫の世界を
知っている人物。
彼らは、開口一番、
あれほど、病院へ…って、
言ったのに…。
あと半年で退職という時、
病に倒れたことが、
惜しいし、悔しいし…と。
社の皆様も心配して
下さっていたのだ。
夫が今の赴任先での
10年の話を伺うことが出来た。
営業でバリバリ
新規開拓した話。
人の上に立ってからは、
部下の皆様の
小さな変化も目配りしていたという。
企業としてボランティア活動にも
尽力して、商工会の皆様にも
好かれていたとのこと。
会社の人、社外の人、
多く人に愛されていた。
それを聞いて、ほっとした。
夫から、
上部の取締役に意見したり、
噛みついたりという話を
聞くたびハラハラして、
大丈夫だろうか?と
心配していたが、
意見して覆った事案の
見返りはきちんと
果たしていたという。
入院騒ぎから、
ずっと気が張っていたし、
すごく疲れていた。
美味しい食事と
お話に救われた。
悪いことばかりではない。
悲しいことばかりではない。
いつも、
誰がが気遣って下さる、
助けて下さると、
思った一日だった。
つづく。


