眠い……既に病的なまでに
例によって、ようやく更新。
興味ない人はバックプリーズ!!
【狐と鬼と人間と 二】
余り遠くへ行ってはいけないと、よく言われてはいた。
ただ、それを理解し納得するには少しだけ知能が低かったのだ。
興味本位で追いかけた蝶は、今なお風に流されるように飛んでいる。
もう、自分の居場所の詳細は半分以上分からない。
それでもただひたすらに一つのものを追い求めるのは、狐の悪い習性だった。
「ねぇ……どこまでいくの?」
問いかけてみても、羽の綺麗な虫は答えない。
「おうちに、かえるの?」
返事がない故に重ねて聞いても、耳に入るのは風の音だけ。
手持ち無沙汰に振り回す枝で虚空に幾重も円を描き、気の向くままに揺れる尾も端から見れば迷子のそれだ。
頼りなく、心許なく、それなのに尽きない好奇心が取り巻く不安を曖昧なものに変えている。
今なお目の前で揺らめくようにして飛ぶ蝶が、まだ幼いそれを導いているのか、はたまた翻弄しているのかは定かではないが、どちらにせよ行き着く場所に保証はない。
やがて、緑の茂る草原が途絶え、人間の使う細い道がぼんやりと姿を現した。
「……?」
ちらちらと揺れる黄色い羽から視線を外し、絶えず進んでいた歩みを止めれば気を引いたのは取り分け大きな一枚岩。
荒いながらもしっかりと踏み固められている道の脇に佇み、陰さえ刻んでいるそれは大人が二人両腕を広げて漸く抱え込めるほどの大きさで、確かに存在感はある。
けれど、狐である正就が興味を見せたのはその外見ではなく。
徐に岩へと近づき、手にした小枝を差し出すがなにが起こる訳でもない。
次いで足元に転がる小石を拾い、放り投げても放物線を描いて再び地面に落ちるだけ。
暫し考え込むように宙を見据え、不意に背を向けると狐は己の三つの尻尾を岩肌の方へと近づけた。
途端にパチリと何かがはねるような音をつれて小さな青い光が散る。
「っわ……?!」
思わず零れた声は驚きだけが際立っている。
もう一度、と恐る恐る尾を近づければ、今度は少し長く光が走った。
興味ない人はバックプリーズ!!
【狐と鬼と人間と 二】
余り遠くへ行ってはいけないと、よく言われてはいた。
ただ、それを理解し納得するには少しだけ知能が低かったのだ。
興味本位で追いかけた蝶は、今なお風に流されるように飛んでいる。
もう、自分の居場所の詳細は半分以上分からない。
それでもただひたすらに一つのものを追い求めるのは、狐の悪い習性だった。
「ねぇ……どこまでいくの?」
問いかけてみても、羽の綺麗な虫は答えない。
「おうちに、かえるの?」
返事がない故に重ねて聞いても、耳に入るのは風の音だけ。
手持ち無沙汰に振り回す枝で虚空に幾重も円を描き、気の向くままに揺れる尾も端から見れば迷子のそれだ。
頼りなく、心許なく、それなのに尽きない好奇心が取り巻く不安を曖昧なものに変えている。
今なお目の前で揺らめくようにして飛ぶ蝶が、まだ幼いそれを導いているのか、はたまた翻弄しているのかは定かではないが、どちらにせよ行き着く場所に保証はない。
やがて、緑の茂る草原が途絶え、人間の使う細い道がぼんやりと姿を現した。
「……?」
ちらちらと揺れる黄色い羽から視線を外し、絶えず進んでいた歩みを止めれば気を引いたのは取り分け大きな一枚岩。
荒いながらもしっかりと踏み固められている道の脇に佇み、陰さえ刻んでいるそれは大人が二人両腕を広げて漸く抱え込めるほどの大きさで、確かに存在感はある。
けれど、狐である正就が興味を見せたのはその外見ではなく。
徐に岩へと近づき、手にした小枝を差し出すがなにが起こる訳でもない。
次いで足元に転がる小石を拾い、放り投げても放物線を描いて再び地面に落ちるだけ。
暫し考え込むように宙を見据え、不意に背を向けると狐は己の三つの尻尾を岩肌の方へと近づけた。
途端にパチリと何かがはねるような音をつれて小さな青い光が散る。
「っわ……?!」
思わず零れた声は驚きだけが際立っている。
もう一度、と恐る恐る尾を近づければ、今度は少し長く光が走った。
早く、もっと、もっと早く
昨日、本気で今の職場に幻滅した。
もう、私の存在意義はあそこにはない。
既に四月の半ばに退職希望は出し終えた身だ。
一度だけ遠まわしに引き止められ、しかしその言い回しも気に食わないやり口だったが、どちらにしろ前言撤回の余地はない。
早く、あそこから逃げ出したい。
否、切り捨てたい。
頑張る仲間は大好きだけど、頭に居座る人間が嫌だ。
奴も店を去るという。
けれど、私もほとほと愛想が尽きた。
私は、私が好きな子達が救われるなら何でもしよう。
だから、その子達が無駄に苦しむ原因を作る奴が嫌いだ。
何より、その場しのぎの言葉は許すことができない。
私は、新しく入ってきた面子に楽しく仕事をしてもらいたいだけ。
もう、私に時間は残されてはいないから、出来る限り残せることを残したい。
そう思ってきただけ。
でも、奴がそれをねじ曲げるなら私はもう、何もしないよ。
勝手に崩れ落ちればいい。
客を神と煽てることも、部下を労うことさえも心の底から出来ないのなら、人を相手に仕事なんてしなければいい。
楽しくない仕事をして、相手を楽しくさせることなんかできないんだよ。
職場の環境が良くて、仕事が楽しく思えてきて、初めて良い接客ができる。
誰に何を言われようと、私はそれを貫いていく。
だから、この職場は大嫌い。
あんなに、大好きだったのに。
だからこそ、今は大嫌い。
もう、私の存在意義はあそこにはない。
既に四月の半ばに退職希望は出し終えた身だ。
一度だけ遠まわしに引き止められ、しかしその言い回しも気に食わないやり口だったが、どちらにしろ前言撤回の余地はない。
早く、あそこから逃げ出したい。
否、切り捨てたい。
頑張る仲間は大好きだけど、頭に居座る人間が嫌だ。
奴も店を去るという。
けれど、私もほとほと愛想が尽きた。
私は、私が好きな子達が救われるなら何でもしよう。
だから、その子達が無駄に苦しむ原因を作る奴が嫌いだ。
何より、その場しのぎの言葉は許すことができない。
私は、新しく入ってきた面子に楽しく仕事をしてもらいたいだけ。
もう、私に時間は残されてはいないから、出来る限り残せることを残したい。
そう思ってきただけ。
でも、奴がそれをねじ曲げるなら私はもう、何もしないよ。
勝手に崩れ落ちればいい。
客を神と煽てることも、部下を労うことさえも心の底から出来ないのなら、人を相手に仕事なんてしなければいい。
楽しくない仕事をして、相手を楽しくさせることなんかできないんだよ。
職場の環境が良くて、仕事が楽しく思えてきて、初めて良い接客ができる。
誰に何を言われようと、私はそれを貫いていく。
だから、この職場は大嫌い。
あんなに、大好きだったのに。
だからこそ、今は大嫌い。
