もう五年以上前になるが、ある市民団体が主催した、「共謀罪」に関する集まりに参加したこ

とがある。呼ばれて話したのは、監視社会論が専門の富山大学教授、小倉利丸さんだった。当日

のレジュメがどうも見当たらないのだが、当時正体不明のネット上のハッキングに悩まされ続け

ていて、どうもやっているのは個人のハッカーではなく、国家権力らしいと思い始めた頃だった

ので、共謀罪を実施する上で前提となる、公権力の監視の問題についての小倉さんの話は大変参

考になった。その頃は日本の監視社会化に対し、まだそれほど強い危惧は覚えていなかったもの

の、その後のサイバーテロの問題や、特にスノーデンが暴露したアメリカのNSAなどの監視、

盗聴活動などの実態によって、次第にマスコミなども取り上げるようになり、日本社会での関心

も高まってきた。

 ただ、私の個人的な生活においては、公安部に代表されるような公権力の監視の問題は、知識

としてマスメディアやネットの情報で知る物ではなく、まさに日常生活の中の大問題として日々

不安と怒りの対象になってきた。私の二年半にわたるブログを読んでいただければ、それはわか

ることだと思う。私は買ってから一回もネットにつないでいないPCがある。大事なことは絶対

にネットにつながっているPCでは書かない。またノートPCに付いているカメラは紙を貼って

ふさいである。PCのカメラが監視カメラになって機能するのを防ぐためだ。もう数年間もこの

状態が続いているので慣れてしまい、最近は不安や恐怖はあまり感じなくなってしまっているが

公権力の監視というのは、監視されている側の内面に入り込み、内面の自由や創造性を奪う実に

危険で許しがたいものだ。

 共謀罪を警察、特に公安警察が遂行するにあたって問題化してくるのは、このような人間の内

面の心理の監視につながる、盗聴、メール、インターネット、監視カメラ、尾行などによる、ト

ータルな監視である。


 






 昨日の朝日新聞と東京新聞によれば、現在、犯罪における実行行為がなくても、犯罪の謀議に

加わるだけで処罰対象になる「共謀罪」が、2020年の東京五輪のテロ対策強化につなげると

いう名目で、議論の対象になっているという。特定秘密保護法案の成立が共謀罪へのハードルを

下げたのだろう。2003年から自公政権が三度この法案を国会に提出したが、野党や世論から

反対され廃案になっている。東京新聞によれば、管官房長官は「来年の通常国会に提出する予定

はない」と明言したものの、いずれかのタイミングで共謀罪が政治日程に上ってくるのは間違い

ないという。

 これをどう考えるのか?海渡雄一弁護士は、「特定秘密保護法、共謀罪、通信傍受法は三位

一体であり、共謀罪を創設した後、それを取り締まるための通信傍受法の範囲拡大に突き進む

だろう」と朝日新聞で述べている。こうなってくるともう公安警察のやりたい放題である。個人

も市民団体も好きなように監視することが合法化され、彼らの職務となる警察国家の誕生であ

る。オリンピックのテロ防止なというのは単なる名目に過ぎない。こんなに一般市民のコミュニ

ケーション行為を妨げ、冤罪を生み出すような法案は絶対に通してはいけない。まったく安倍政

権は日本をどんなに息苦しい社会にすれば気が済むのか?戦後最悪のとんでもない政権である。


 11日の東京新聞によれば、現在、ドイツのギュンター・グラスやトルコのオルハン・パルク

など五人のノーベル賞作家を含む、世界八十カ国以上の著述家たちが、政府や企業の個人情報

の監視に反対し、インターネット時代に合った新しいプライバシー保護の確立に向けて、新たな

人権規約を作る運動を始めたとのこと。日本でもこのような運動が高まることが期待される。




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