このこめかみに
 
静けさが縫い込まれたこめかみに
 
雪ぞ降る
 
純白の世界からどす黒い世界へ
 
お前は何を知らせようというのか
 
 
 
この街の轟音と無数の足跡の真ん中に
 
一つの愛の印となって降り注ぐのか
 
雪ぞ降る
 
本物を装うFAKEにも
 
FAKEを装う本物にも
 
 
 
この浜辺の波間に溶けて
 
もう海を真っ白に変貌させるくらい溶けて
 
俺たちの罪と愚かさが魚に食われて
 
深海魚みたいに深く黒く潜行していく
 
海底は俺たちの無知の牧場ではなかった!
 
 
 
真っ黒い情報をさらさらの純白にして
 
降りしきる雪はすべてを吸い取ってくれる
 
雪ぞ降る
 
とんでもないものと共謀しているお前ら
 
許しがたいものと共謀しているお前らの胸の真ん中に
 
 
 
渦巻く針になって粉雪が吹き込む
 
ほら心臓が痛いだろう?
 
ほら心臓がバクバク苦しいだろう?
 
そんなことおかまいなしに
 
法雨となった純白の雪は降り続く
 
 
 
簡単にはやまないぜ
 
お前らがくたばるまではやまないんじゃないの?
 
もうシャーベット状にどさんと固まったまま
 
お前らの脳天の上で爆発している
 
むしろ純白の花火みたいに
 
 
 
本当はしずしずと降りたいのさ
 
本当は微笑みながら降りたいのさ
 
花火みたいにどかんと原色に変貌して
 
古代のボクサーの重いパンチみたいに
 
俺たちをぶちのめしたいわけじゃない
 
 
 
ああ、静かな女がいるな
 
この雪の重さと軽さを見極めて
 
静かにたなごころで受けとめている女が
 
こんなにFAKEな世界に住んで
 
まだ純白の雪の魂を持っている女が
 
 
波間の雪はこんなにも静かで
 
波間の雪はこんなにも重たい
 
俺たち不純な深海魚は
 
いつも新たな神を祀り上げては
 
オナニーしながら悦に入っている
 
 
 
あの古代の埴輪のような顔をした国会議員が
 
シャーベット状に溶けていく総理を殴るけれど
 
残るのはかすかなピストン音だけ
 
すーーっと消えていく風船の泡さ
 
青ざめた馬の背は一面の雪の原野
 
 
 
静かな女がこっちを見ている
 
雪のカーテンの向こうに隠れて
 
古い歌を歌っている
 
雪ぞ降る
 
雪ぞ降る
 
 
見知らぬ世界から降りしきる
 
この絶対零度の冷たさをこめかみに浴び
 
砕け散る波間に身を投じる少年のように
 
真っ赤に全細胞が沸き立っている
 
雪ぞ降る
 
 
 
恵みと
 
恩寵と
 
沈黙と
 
光輝をもって
 
雪ぞ降る
 
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