先日Instagram経由で投稿しましたが、とちぎ健康の森で開催されたNPO法人ピンクリボンうつのみや主催「第4回ピンクリボンセミナー」に参加してきました。
最新の乳ガンの診断や治療法等について知ることが出来る貴重なセミナーということで、中には難しい用語や治療方法の紹介などもありましたが、私が興味・関心を持った点を中心にご紹介したいと思います。
会場となった「とちぎ健康の森」講堂のフロアでは、NPO法人ピンクリボンうつのみやによる“みんなでピンクリボンツリーを作ろう”や書籍やグッズの販売の他、
乳がん模型で触診を体験することが出来ました。
触ったり、外見上の変化などを知ることが出来るこの模型は、もっとあちこちに設置され、気軽に触ったりすることが出来ると良いなぁと思いました。
他にも有志の方々のブースがあって、在宅緩和ケア支援センターの情報や
女性クリエイターの作品の展示販売(売上の一部をピンクリボンうつのみやに寄付)
エスティティック協会による、身近なモノ(レンゲ)を使ってのマッサージのレクチャー
などがありました。
「第4回ピンクリボンセミナー」は3名の先生によるリレー講演でした。
【第一部】
「遺伝性乳癌と画像診断」
佐藤俊彦先生(ピンクリボ
今回、佐藤先生は乳がんの中でも『遺伝性乳がん(HBOC)』についてお話をしてくださいました。
あまり馴染みのない『遺伝性乳がん(HBOC)』ですが、日本人女性の乳がん生涯発症リスクは9%だそうですが、遺伝性乳がん(HBOC)の生涯発症リスク推定値は40〜90%と、リスクがある程度予測出来るのだそうです。
※セミナーの際にも名前が挙がっていた、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、BRCA1という遺伝子に変異が見つかり生涯で乳がんが発症するリスクが87%あるとの診断を受け、そのためがんを予防するために両乳房を切除したそうです。
遺伝性乳がん(HBOC)は、乳がんや卵巣がんの発症と関連している遺伝子が関係しているそうですが、この遺伝子は男女関係無く持っているとのこと。
遺伝性乳がん症候群として、女性だけでなく男性にも乳がんあるいは卵巣がんなどを発症する可能性があり、さらに部位別ではなく遺伝子による多発がんなので、膵臓がんや前立腺がんにも関連するそうです。
常染色体優性遺伝なので、男女の区別なく遺伝確率50%という数字にも驚きましたし、「家系図」を作ることの必要性も感じました。
遺伝学的検査・診断についてはガイドラインがあり、一般的な診療の中で行うことが可能とのこと。
欧米は保険診療の範囲なのですね。
日本でHOBC遺伝子検査を行うとどの位かかるのか、料金的なことも知りたいと思いました。
乳がんの検診方法としてはマンモグラフィ、超音波、MRIなどがありますが、
遺伝性の乳がんについてはX線感受性が高いのでマンモグラフィよりもMRIがファーストチョイスとなるそうです。
造影剤を使用したMRI検査において、乳がんが見つかる確率はマンモグラフィよりも高いことが知られており、欧米ではすでに2004年よりHBOCの検診はMRIがファーストチョイスとなっているそうです。
MRIの弱点としてはホルモン周期などによって正常乳腺にも造影剤が入るなどして正確な診断の妨げになることがあるのだとか。
乳がんに関する画像検査には色々あります。
それぞれについてどんな場合、症状の時の診断に適しているか、理解するのは難しいのですが、選択肢としてその存在を知っておくことは重要だと思いました。
昨年のセミナーでも「高濃度乳腺(デントブレスト)」に有効だと佐藤先生からお話があった、最新の画像診断検査「PEM(乳房専用PET検査装置)」について。
乳房の手術前など必要に応じてPEMを行うことの重要性についても改めて触れていました。
これまで乳がん=女性特有の病気と思っておりましたが、男性でも発症する可能が遺伝性の場合考えられること。そしてそれは乳がんだけでなく他のがんの発症にも関連することこと、加えて常染色体優性遺伝であることから、家族の問題、家系の問題として捉え、家系図等を作る必要性を強く感じました。
そしてこうした遺伝性乳がんを疑った場合、どこで検査を受ければ良いのか、何よりどこに相談したら良いか、さらに詳しく知りたいと思いました。
【第二部】
「標準的でないがんや痛みの治療の最前線」
血管からがんを治す、痛みを治す
奥野哲治先生
(Clinica E.T. EAST 院長)
“全身の腫瘍に対応する血管内治療”を始められたという、日本での血管内治療のパイオニアである奥野先生。
セミナーでは、がんそのものの治療法ではなく、“異常な血管を減らす”という血管から治す治療法についてお話しくださいました。
途中専門的な内容が含まれていましたが、がんあるいは痛みについて“血管”からアプローチする、というのはとても興味深かかったです。
“痛み”も“血管新生(血管密度)”という側面から診断・治療しているそうです。
血管を除去すると約70%満足するとのこと。
がんの血管内治療においても、腫瘍を支える異常な血管だけを狙ってその血流を断ち、血管内の密度を減らすのだそうです。
そして、手術を行わず血管内治療と高密度焦点式超音波治療機(HIFU)治療を併用する効果について
あるいはナノ化薬剤を用いた治療などについてのお話がありました。
今回初めて“血管内治療”というのを知りましたが、痛みや腫瘍に“血管”からアプローチするということは、患者さんの身体への負担も少ないとのこと。
“標準的な治療法”ではないとのことですが、最前線の治療法として今回セミナーで知ることが出来たのは、とても貴重な機会だと思いました。
【第三部】
「乳がん治療における放射線治療の役割」
若月優先生
(自治医科大学 放射線科/中央放射線部 教授)
すでに100年を超える歴史があり、機器等の進歩によって発展を遂げているという放射線治療は、切らずにがんを治す治療法の1つです。
しかし、放射線治療を受けている患者の割合が欧米では50-60%に対し、日本ではまだ30%程度なのだとか。
全ての人が当たり前に放射線治療を受けられる環境づくりが必要とのこと。
そんな “がん治療”の中で放射線治療の役割について、
*放射線とは
*放射能と放射線
*放射線治療とは(胸のレントゲン写真との違い)
といった基本的な事などについて、普段患者さんに対して説明している内容を含めながら分かりやすく話してくださいました。
こうしてお話を伺うと、納得し安心して治療を受けられますね。
放射線治療の役割は温存治療後の再発予防、再発・転移時の症状緩和等にあるそうです。
なぜ細胞に放射線が当たるとがんが治るのか、乳がんについての放射線治療やその効果について説明がありました。
一度にたくさん当てすぎるとがん細胞だけでなく正常な細胞も死んでしまうため、スケジュールを組んでより副作用を出さないよう効果的に行われるそうです。
気になる副作用ですが、放射線治療の副作用は照射した部分に生じ、いわゆる頭の毛の脱毛や下痢といったお腹の症状など他の部分から生じないのだとか。
具体的な副作用と現れる時期について
副作用は全員に出るわけではないそうです。
そして、乳がんの手術後に放射線治療を行わない方がよい(禁忌)患者さんについての解説も。
これも知っておきたい項目ですよね。
最後に、栃木県に導入されるという最新の放射線治療機 サイバーナイフとトモセラピーについての解説がありました。
*トモセラピー
*サイバーナイフ
今後、こうした最新の放射線治療機が全国各地に設置されていくのでしょうか?
先生のお話をうかがい、漠然と不安に感じていた放射線治療ですが、‟切らずに治すがん治療“として副作用が少なく、効果的な治療法の1つであるのだと知ることが出来ました。
***
今回セミナーに参加し、「遺伝性乳がん」「血管内治療」「放射線治療」といった乳がんに関する最新の情報について知ることが出来ました。
先日のブログでセミナーを紹介した際に「乳がんの罹患率こそ高いものの、死亡率はがんの中でも低い状態にあり、実は乳がんは早期治療ができると90%治る」と書きましたが、早期に発見し、また治療を受けるためには、こうした最新の情報を知ることも必要だと思いました。
それは決して女性だけの問題ではなく、男性にとっても必要な情報であり、遺伝性であった場合子ども達にも関係する問題でもある、ということも痛感しました。
***
3人の先生のセミナー後、NPO法人ピンクリボンうつのみやによるピンクリボン活動についての報告があったのですが、乳がん検診受診率は約30%と依然として低いのだとか。
NPO法人ピンクリボンうつのみやでは全国初の検診受診率50%を目指していますが栃木県でも33%とのこと。
乳がんステージと10年生存率をみると、検診の必要性そしてそれを周知することの重要性を感じます。
改めて乳がん検診の必要性を女性をはじめ、多くの人が理解し、行動に移すことが大切だと思いましたし、治療等については信頼のおけるところから最新の情報を得ることも合わせて必要だと思いました。
昨年に引き続きセミナーに参加して良かったです。
****
NPO法人ピンクリボンうつのみやでは今回のようなセミナー以外にも乳がんに関する知識を広く伝えたり、乳がんの早期発見を啓発する様々な活動を行っているとのこと。
また、宇都宮セントラルクリニックブレストセンターの専門医による「乳がん専門医が教える乳がんのブログ」では、乳がんの基礎知識やセルフチェック、あるいは最新の治療法など様々な情報が掲載されているそうなので、私もチェックしようと思います。