麻杏甘石湯
感冒の時の代表的な漢方薬である麻杏甘石湯は、
麻黄、甘草、杏仁、石膏の4つの生薬からなる処方で、
初期のカゼによく使われますが、
百日咳・喘息発作・急性肺炎・気管支炎にも用いられます。
熱を発散させて肺部の消炎を行い、喘息を鎮めるものです。
ただ、
風邪や咳といっても、
ゾクゾクしたさむけがある場合は使われません。
火照った感じが強い場合で、
特に体力のある方に使うと著効があります。
その構成生薬のひとつ
「石膏」は、
天然の含水硫酸カルシウムで
どんなところでも採れる鉱物ですが、
急性病の時にはとても素晴らしい薬効を発揮します。

面白いことに、
石膏を煮詰めて飲むと甘辛い味がしますが、
その後、
残った残留物を集めて、重さを計っても、
少しも減っていないんですね。
にもかかわらず、
とても大きな効果があります。
使いかたを間違えば(副作用で)
人を死にいたらしめることもあるんですね。
石膏には、
解熱、消炎、止渇、清性(色欲の異常亢進を抑える)
という4つの働きがあります。
さて、
もう一つ特徴的な生薬は麻黄です。
麻黄は華北でとれるシナマオウの茎がよく使われます。


喘息や咳に使われる発汗剤です。
麻黄と杏仁はセットで使われることが多く、
麻杏組とも言われています。
杏仁は
アンズの種の中の仁と言われる部分です。



喘息や咳止めに使われますが、
腸に潤いを与えて便秘を治す効果もあります。
さて、
急性的な病はいろいろありますが、
体温上昇(稽留熱)や頭痛などを伴う
感冒や肺炎などは、
発汗させてしまうとたいてい
様々な症状は消えてしまうんですね。
あとは体力衰弱だけを回復すれば
治ってしまうものなんです。
しかし
発汗したにもかかわらず、
喘ぎや喘息が治らなかったり、
一向に回復のきざしがないような時には、
さらにこれでもか!
と発汗させるような漢方薬を飲んではいけません。
このような場合は
原因が別にあるとみていいのです。
熱があって喘ぐのは当たり前ですが、
たいした熱もないのに喘ぐのは、このあえぎは
全身的な体温上昇からきたものではなくて、
肺に熱が鬱滞しているのが原因です、
つまり熱証ということです。
このような場合に『麻杏甘石湯』を用いるのですね。
古典の誤解
さて、漢方の有名な書物「傷寒論」では・・・
「發汗後,不可更行桂枝湯。汗出而喘,無大熱者,可與麻黄杏仁甘草石膏湯主之」とあります。
その意味は、
「発汗したあと、喘ぐ人には、さらに『桂枝湯』を与えてはなりません。汗が出て喘ぐ人で、たいした熱がない場合には『麻杏甘石湯』を与えるのがよいでしょう。」ということです。
ところが、この条文は
大きな誤解を与えてしまっていると言われています。
というのも
この条文には、「汗が出て喘ぐ人で…」とあるために、
日本では、麻杏甘石湯は汗が出ている人に使うものだ、
という誤解が広がっているのです。
実は、
この条文の前後には、
様々な発汗剤を用いたらどうなった、こうなった
ということがつらつらと書かれているんですね。
つまり、
熱があったので、発汗剤を用いたところ、汗は出たが、
喘ぎが停まらない…そんな時は…という内容なのです。
普通の場合、大抵は発汗してしまえば、
頭痛、身体痛をはじめ、いろいろな症状がとれて
やがて病気は治るものであるのに、
発汗しても尚、喘いでいるというのであれば、
与えた薬が間違っていたというわけですから、
再びその薬を与えてはいけない、という意味ですが、
説明が丁寧すぎるため誤解されやすく、
日本では「汗が出ている」ということを
麻杏甘石湯の投与条件にしている
ことが多いので問題なのです。
本当は
麻黄や石膏などの発汗剤が入っている以上、
むしろ汗が出ていないほうが
投与の場合の目標になるべきなのです。
表熱実症の昇的症状を治す方剤なのですから、
体表の熱ではなく、体内の肺部に鬱滞している熱を
追い出すことが主な投与であり、
本当は汗はあってもなくてもどちらでもよい
ということのほうが正しいわけですね。
麻杏甘石湯を使う場合は、
まず寒気より熱感の方が強い場合、
そして喉の渇きがあって、
咳が出たり呼吸がせわしいときと言えるでしょう。
ピタリと合わせれば、
素早く著効が出る漢方薬のひとつです。
漢方の宮崎薬局
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