藤吉side
階段を駆け上がり、立て付けの悪い扉を何とかこじ開けると、冷たい風が顔を刺した。
だだっ広い屋上には、一人の小さな背中。
「ひかる。」
なんとなく、走ってきた事を知られたくなくて、息が切れそうになるのを抑え、彼女の名前を呼んだ。
名前を呼ばれても、彼女は俯いたままで、時折顔を体操着の袖で拭っていた。
小さい背中に近づき、肩をトントンと叩く。
それでもこっちを向かないので、後ろから胴体に両手をまわし、軽く抱き締めた。
すると、向こうをむいていたひかるは、素早く振り返って、私の胸に顔を埋めた。
ジャージが若干後ろに引っ張られる感覚があった。
ひかるが後ろの裾を固く握り締めているのだ。
「ここ寒いから中入らない?」
くぐもった声で、ん、と返ってきた。
ひかるは私の事を離す気配もないので、ひかるをくっ付けたまま、ズリズリとドアの方まで移動した。
中に入って、ドアを閉めたあとも、ひかるはくっ付いたままだった。
「くっつき虫やな。」
頭を撫でながらそう言っても、ひかるから返事はなかった。
「球技大会負けたぐらいでそんな泣くことないやろ。レクリエーションやん。その泣き方は引退試合やで。」
ひかるには大した事だったようで、ジャージを握る力が一層強くなった。
「、、、だって。4組に負けたし。体育祭でも負けたじゃん。」
私の胸に顔を押し付けたまま、ボソボソと悔しい言い分を呟いた。
「そうだっけ?」
「、、そうだよ。覚えてないの?」
「そうだったかも、、。っていうかそこで喋られるとこしょばいんやけど。」
すると、少し不服そうに顔を離した。
俯いたひかるの鼻もほっぺたも赤くて、いつもより幼く見えた。
「ひかるの泣き顔って可愛いんやな。」
「、、さいてー。」
「褒めとるんやで。」
目の下まで伸びたひかるの前髪を人差し指と中指で挟んで上にあげると、まだ潤んでいる大きな瞳がこっちを見つめていた。
「前髪上げた方が可愛いで。」
そう言うと、また私の胸に顔を埋めてしまった。
「ひかるってさ、なんでそんなになんでも全力なの?」
「、、悪い?」
「だから褒めてるって笑」
「、、、バレーはどうだったの」
「バレー部の子が大活躍してな、」
「勝ったの?」
「、、、、勝ったけどさ」
「何組に?」
「、、、、4組やけど。」
ひかるがズーンと落ち込んでいるのがよく分かった。
「ほら、午後もあるやん。頑張ろ、な?」
背中をポンポンと叩きながらひかるを慰める。
「もう頑張れない、」
「なんで急にスイッチ切れるねん」
「夏鈴ちゃんがチューしてくれないと頑張れない。」
「なんやそれ。ここ学校やし、、、なぁ。」
くっ付いているひかるを離して肩を揺すりながら問いかけるが、俯いたまま動かない。
仕方ないので、下から覗き込むようにして、唇を重ねた。
顔を離すと、まだ顔がほんのり赤いひかるが、悪戯っぽく笑っていた。
「ほんまになんやねん。」
「元気でた。」
「そ、そりゃよかった」
「もう一回」
「無理。」
「え〜、もう一回。」
「無理やって。」
ひかるが急に顔を近づけてきたので、慌てて背筋を伸ばして、顔が届かないようにする。
「残念やったな。」
「と、届くし!」
ひかるは、うんと踵を上げたが、私の顔にはまだまだ届かなかった。
何とか首を伸ばして届かせようとするも、私が少し上を向くと離れてしまう。
私の肩に手をかけて、しばらくぴょんぴょんしていたが、しばらくして、拗ねた。
「もう、夏鈴ちゃん意地悪。」
私の肩に手をかけたまま、ひかるは下を向いてしまった。
「一回したやろ?」
「、午後頑張れない。」
「午後は夏鈴と一緒にドッジボールやん、頑張れるやろ?」
「ちゅーも欲しい」
唇をとんがらせて言うひかるが可愛いから、もう一回してあげることにした。
ひかるの腰に手を当て、高く持ち上げた。
「わっ、ちょっと、夏鈴ちゃん!」
動揺するひかるに、もう一度唇を重ねた。
ひかるはいつもと違う景色に目を輝かせ、私の頭を撫でた。
ゆっくりとひかるを下ろすと、いつもの上目遣いのひかるがいた。
「ひかるはちっちゃい方が可愛い」
「今ちょっと私の事バカにした?」
「だから褒めてるって笑」
すると遠くから、森田さん居たー?と、クラスメイトの声がした。
「おったでー、今行くね」
ひかるは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
手を繋いで、階段を2人で駆け下りた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初の学パロです。
タイトルは未定です。
Twitter▶️https://twitter.com/nemu_insui