高校生になっても彼女のことを忘れられず、
誰と仲良くなっても恋愛の話をしない僕に、
同性愛者なのではないかという噂が流れた。
小学生の時のトラウマが蘇ってきて、
僕は一番仲の良かった男友達を好きだということにした。
周りに毎日からかわれるようになって、
すごく面倒臭くなって告白をして終わらせた。
ふられたけど全く悲しくなくて、それが逆に辛かった。
そしてある日、
シャワーを浴びる前にふと鏡を見て吐き気がした。
こんなものがあるから苦しいんだ、辛いんだ。
そう思って、傷付けた。
軽傷だったけど少し痛くて、
血を拭いながら涙が止まらなくなった。
もう疲れた。
楽になりたい。
助けてほしい。
ずっと目を逸らしてきたけど、認めるしかなかった。
僕はトランスジェンダーだ。
僕はどうしても自分を女だと思えない。
僕は、このままじゃ生きていけない。
けど助けを求める勇気なんかなくて、
それまでと同様にいつも笑って誤魔化して...
「お前はいつも楽しそうだなぁ」とか、
「お前悩みとかあんのかよ!笑」とか、
そんなこと言われるくらいには上手くやれていて、
器用な自分が嫌になったりもした。
高校二年生になって、トラシャツを知って希望を感じた。
親に内緒で購入して、少しでも平らに見えるようにと小さいサイズを着て、
その分胸が圧迫されて苦しかったけど、それまでの息苦しさよりマシだった。
毎日使ってもいない女性用の下着を洗濯に出して、
トラシャツは手洗いをして母に見えない場所に干して…
けどそんな努力をしても、周りは女性として扱ってくる。
こんなに苦しい思いをしても、
娘として紹介されたら何の意味もない。
男に恋愛対象にされたら何の意味もない。
女として認識されたら、何の意味もない。
そんな僕の悩みなんか知らずに、
化粧をしろとか、可愛い服を着ろとか、
大好きな人達でさえも嫌いになりそうで、苦しかった。
でもきっと、それが普通なんだ。
僕には世間が決めた「普通」から外れる勇気はない。
カミングアウトなんかして、親の泣く顔も見たくない。
だから大学を卒業したら心を殺して望まれる通りに生きるか、
この世から消えるかの二択から選ぼうと思っていた。
そして高校三年生になって、
後輩の女の子と仲良くなった。
それまでに好きな人もできたりしたけど、
僕はずっと最初の彼女を忘れられないままで、
その子に出会って初めて忘れられそうな気がした。
告白をして、カミングアウトもした。
初めてするカミングアウトは震えるほど緊張したけれど、
恐怖を笑って誤魔化す僕を、彼女は抱きしめて受け入れてくれた。
初めて本当の自分を受け入れてもらって、欲が出たのかな。
この人と一緒に生きていきたいと思った。