分籍 | トランスぽてと

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FtMの僕が思うこと。

分籍とは
親の戸籍から抜け、自分が筆頭者となる新しい戸籍を編製すること。
注意点として、既婚者&未成年者はできません。

親の戸籍から抜けるとありますが、
自分が筆頭者である戸籍が新しく作られるということです。

変更されるのは筆頭者と本籍地だけなので、
それを必要としない人には意味がないかと思います(僕個人の意見です)。

そして更に情報として、
分籍の受理&反映には時間がかかるし、
性別変更後は自動に分籍されるらしいです。

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では、僕は何故分籍するのか。
戸籍上だけでも、家族を守りたいと思ったからです。

戸籍変更前の自主分籍と、戸籍変更後の自動分籍。
この二つの大きな違いは、戸籍変更後に親の戸籍に記載される内容です。

まず、自動に分籍される場合。
性同一性障害者が戸籍上の性別を変更すると、
家族の戸籍に「性同一性障害で性別変更をした為、除籍」と記されます。

一方、最初に分籍をした場合、
家族の戸籍には「分籍により除籍」と記されるだけであり、
戸籍変更後の変更内容は自分が筆頭者である戸籍にだけ反映されるそうです。

つまりは、「性同一性障害」である事実を残すか否か。

僕の両親は僕がGIDであることを受け入れています。
しかし「できるなら娘であって欲しかった」とは思っているでしょう。
実際に言われたことはありませんが、なんとなくそう感じます。
両親は僕に隠れて涙を流しながら、色々な言葉を飲み込みながら、
ただ僕の幸せだけを願って戸籍変更を許してくれています。

そんな両親の戸籍にまで「性同一性障害」という文字を残していいのか。
僕にはどれだけ考えても"Yes"という答えが出ませんでした。

戸籍謄本なんて使うことも見ることも殆どありません。
だけどそれでも、たくさんの想いが詰まっているものです。

僕が生まれたことを心から喜んでくれた。
時間をかけて考えてくれた愛の詰まった名前や、
「娘」として大切に育ててくれた20年間。

娘として生きていくことはできないし、
その名前で生きていくこともできないけれど、
戸籍上でくらいは大切にしたいなって思いました。

そして、弟と妹のことも理由のひとつです。

戸籍上の性別を変更しても、
僕の「長女」の欄が消えることはありません。
妹は「次女」のままであり続け、
弟は「長男」のままであり続けるそうです。

二人ともこれから大学生活を楽しんで、
就職をして、結婚をして、長く長く生きていきます。

その過程で戸籍謄本提出を求められる時があるかもしれない。
そんな時、物事をスムーズに進められるように。

GIDに対する理解が深まってきている日本でも、まだまだ偏見や差別はあります。
そんな世の中で、GID当事者が家族ということは、
ネガティブではなくてもポジティブなイメージではありません。

僕自身のことが彼らの壁になってしまう可能性があるなら、
できるだけそれから彼らを守る努力はしたいと思いました。

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そんなこんなで決めた分籍ですが、手続きは驚くほど簡単でした。

まず、役所で分籍届をもらいます。
必要事項を記入し、提出するだけです。

提出する場所は
本籍地、住民票登録地、新本籍地のいずれかであり、
本籍地以外の場所であれば戸籍謄本を持参すること。
印鑑も忘れずに持参してください!

その他の必要事項としては、
記入者が分籍者本人であること、20歳以上であること、結婚していないこと、
が挙げられています。

僕の場合は本籍地も住民票登録地も大阪で、
分籍後に本籍地変更希望もないので大阪で申請するのですが、
現在は東京にいるので実家に送り母に代理人を頼みました。

明日出しに行ってもらえるそうで、
後は反映を待つだけです!

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すでに長い記事に追加なのですが、
この記事を読んで一人で分籍を決めて欲しくないです。

僕は上に書いた理由で分籍を決めましたが、
親とも話して家族了承済みの上での決定です。

中にはその事実が記載されたとしても、
同じ戸籍でいたいと思う親もいるかもしれません。

当事者の意見が人それぞれであれば、
その親の想いも人それぞれです。

人それぞれに色々な事情がありますが、
もし家族を思っての分籍なのであれば、
家族と話し合ってから行動に移すことをお勧めします。