手元資金とは 企業の貸借対照表(バランスシート)上にある現預金と短期保有の有価証券などを合算したもので、企業が比較的、自由に使えるお金を表します。


手元資金が潤沢な企業ほど財務が強固で、業績や資金繰り悪化などのリスクにも対応力が高いと判断されます。


2024年3月末、上場企業の手元資金が、前年比9%(9兆円)増の114兆円となり、過去最高となりました。


プライム上場の3月決算企業980社の手元資金は5年連続で、過去最高を更新し、初めて110兆円を超えました。


値上げや生産回復のほか、外貨建て資金の円換算額の増加も寄与しました。


2024年3月期の平均レートは、1ドル=約145円と約9円の円安でした。


32業種のうち22業種で手元資金が増加しました。


最も増えたのは自動車で、3兆7,200億円増え、残高は22兆8,500億円となり、全体の20%を占めました。


電機が1兆5,100億円、電力が1兆900億円、サービスが8,300億円、石油が5,100億円それぞれ増えました。


個別企業で最も増えたのは、トヨタ自動車で、1兆8,950億円増えて、9兆4,120億円となりました。


北米でのHV車の好調や値上げに加え、販売金融の資金が膨らみました。


ホンダも1兆円超増え、残高が5兆円に迫りました。


東京電力ホールディングスは、燃料価格の下落による収支の改善や借入金の増加などで残高が1兆2,425億円と5,246億円増えました。


ENEOSホールディングスは、4,643億円増の7,759億円でした。


石油製品の利幅が改善したことが大きく影響しました。


一方、商社や医薬品などは手元資金が減少しました。


三井物産は、負債の返済や投資の拡大で支出が増え、手元資金が4,919億円減って8,982億円となり、9四半期ぶりに1兆円を割りました。


課題は資金をどう活用するかです。


利益剰余金が積み上がって資本効率の改善が鈍っています。


上場企業の2024年3月期の自己資本比率は、42.4%と過去最高になりました。


成長投資や株主還元などに資金を配分するなど、中長期的な企業価値の向上につなげることが求められます。