中国のベンチャー市場で、投資資金が激減しています。


米国の金利上昇という世界的要因に加え、米中経済のデカップリングや、不動産不況という中国固有の要因が重くのしかかっています。


香港取引所は6月13日、久々の注目企業、AI技術で創薬プロセスを迅速化する晶泰科技のIPOに沸きました。


香港は、2023年3月にAIなど特定分野を対象に、新規上場基準を緩和しましたが、ようやく適用第1号の晶泰科技が新規上場しました。


中国のIPOセンターだった香港は、取引所別のIPO調達額で2010年代には、5回も世界トップに立ちました。


しかし、大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングによれば、2024年1~6月は、欧米だけでなく、インドにも抜かれ10位に沈む見込みです。


中国当局は、IPO規制を強めており、上海は6位、深圳は9位と振るいません。


海外マネーの中国離れで、地盤沈下が進んでいます。


2023年の中国のベンチャー投資額は、141億ドル(約2兆2,000億円)と、直近のピークである2021年に比べ、66%減少しており、世界全体の5割減に比べ、落ち込みが大きくなっています。


2024年に入っても、5月末まで前年比3割減と、下げ止まる兆しが見えません。


とりわけ米国など外資が絡むベンチャー投資は、2021年比で9割近く減少しています。


米中のデカップリングの現実を反映していると言えます。


米連邦議会では、2020年ごろから、年金などの資金が中国の成長資金に回ることに疑問視する声が高まり、2023年にはバイデン政権が、対中国投資規制を打ち出し、先端半導体やAIや量子技術への投資を規制しました。


外資の撤退で、中国国内のベンチャーキャピタルも、投資に慎重な姿勢を強めています。


これまで、ベンチャーキャピタルの資金の出し手となってきた地方政府は、コロナ禍で財政が悪化し、不動産不況で不動産収入が減少、苦境は深まっています。


国内で資金調達が困難になったため、多くの新興企業は海外に活路を求め始めています。


国内で資金調達が難しい企業と、国内で利益を上げられない投資家の両方が海外に出ようとしています。


すでに多くの起業家や技術者が、中国から日本に移っています。


しかし、厳しい状況にもかかわらず、中国のベンチャー産業が、本格的に没落するとの声は聞かれません。


起業家や技術者など人材の厚みは圧倒的で、半導体や電気自動車など戦略分野は政府が手厚く支援します。


中国ベンチャーの海外シフトがどれだけの規模になるか不明ですが、将来の変化を示唆する変化が起きていることは確かです。