バブル崩壊後の「失われた30年」は日本の安全保障にも影を落としています。


日本は、防衛費を長らくGDPの1%以内にとどめてきました。


GDPの成長率の伸びが低調なら、防衛費も伸びない関係にあります。


「失われた30年」の間、ITの普及やAIといった科学技術の進展で世界の経済・社会構造は様変わりしました。


冷戦終結に伴い安保環境も大きく変化し、ロシアに代わって、中国が軍事大国として台頭してきました。


一方米国は、世界の警察官の役割から退きつつあります。


日本は、2015年に安全保障関連法を成立させ、2022年12月に防衛費をGDP比2%に増やす方向を決定しました。


防衛装備品の輸出拡大に道を開き、日本は大きくカジを切りました。


ストックホルム国際平和研究所が公表した、2023年の世界の総軍事支出額は、1988年の統計開始以降で最大の2兆4,430億ドル(約380兆円)に達しました。


支出額のトップは米国で、中国、ロシア、インド、サウジアラビアと続き日本は第10位でした。


世界銀行の統計でも、日本の防衛費は2022年に10位に落ちています。


バブル崩壊から間もない1995年には、日本の順位は米国に次ぐ2位でした。


1995年の日本のGDPは5兆5,000億ドルで世界の18%を占め、こちらも米国に続いて第2位でした。


当時の日本の防衛費は、GDP比1%以内の4兆7,000億円でしたが、世界全体の7%を占めていました。


GDP比で2.5%だったフランスや、2.9%の英国の額を上回っていました。


現在は上位の中国とインドは、ともに上位10位には入っていません。


日本のGDPは、2010年に中国に抜かれ、2023年にはドイツより少なくなり、1人当たりのGDPは、主要7ヶ国(G7)の中では最下位です。


中国をみると、経済成長と軍事力の関係がよくわかります。


中国の名目GDPは、この30年間で35倍以上になり、国防費も同様に膨らんでいます。


日本が防衛費をGDPの2%まで増やせば、日本の順位は上がります。


防衛は、技術革新の中核分野で、防衛を単なる防衛ととらえるのではなく、技術革新のけん引役として位置付ける意識改革が重要です。