私は何も考えられなくなっていた。

結局カレは変われない。


後は、カレが気づくか気づかないか

私と自分の現状が異常だと

カレが認められるかどうかしかない。



私という存在を押さえ込まれる状態に

私に侵食してくるカレに

私は感情が無になっていった。



カレが私から離れてくれなくて

更にカレを追い詰めているのであれば

カレと同じ空間で動いてはいけないと

私はそこからいなくなりたいと

心の底から思い始めていた。




それまで、何度か別れ話は出た。




私は心底疲れていた。

だから、カレが出て行く事を止めはしなかった。



しかし、それすらも

カレには怒りの種になった。



そんなに、俺が必要ないなら

お前の前で死んでやる。

俺が死ぬのを見届けろと

私の腕をひっぱり連れ出そうとする事もあった。



それがイヤなら

どんな事をしても俺を引き止めろと。



カレの愛は全力で

私に対しての気持ちは本当で

ただ歪んでいるというか

私との愛とは種類が違った。



その歪んでいる事は

信頼で治るんじゃないかと思っていた。

だから、カレにはとことん向き合ってきた。





なんどもカレには言っていた。

あなたの愛は深いけど

私の愛は広いのだと・・・・・


カレは自分の気に入った所は

とことん引き出そうとした。

そして、そこだけを愛した。

それ以外は認めなかった。

そこだけを深く深く賞賛した。


しかし、私は

カレのいい所も悪い所も含めて

カレの事を愛そうとしていた。


すべて、自分の思い通りになる事なんてない。

どれだけ相手を理解し、共存していけるか。

これが愛だと思っていたから。


だから、その違いに気づいて欲しかった。

何度も何度もその言葉の意味も

カレには理解しやすいように例えて話て来た。



そして、病院の一件以来

カレは考えてくれるかもと望みをかけた。

でもカレが選んだのは

私を侵食していく方法だった。



その方がカレには楽だったのだろう。



私にはもう、どうする事も出来なくなっていた

カレへの対処の仕方がわからず

こんな状態になるくらいなら

私はカレに侵食されてしまえばいい。

私が私の色を保とうとするから

こんな事になるのであれば

私は私を殺せばいいんだと思った。




あまりのお互いの違いに

カレの訴えるお前の為の愛に

私の訴える愛を受け入れられないカレに

絶えられなくなった私は、カレに言った。




もう。全てあなたの言うとおりにするよ。

わたしの心はもう笑えない・・・

心が壊れてしまったよ。




これが私の最後の賭けだった。




今までの私を見てきた彼ならば

私を見てきて私の事を愛しているならば。

私の反応や行動でわかると思っていた。

この発言で私が私じゃなくなるのは確実だと。




心の底から出た言葉だった・・・




あなたの愛に答えろというなら

私はあなたの人形になる。

あなたが私を操ればいい。

あなたの思い通りになってあげる。

私の感情なんて消してあげる。




そう言った私に

カレは俺だって壊れているんだと言った。



お前だけじゃない・・・と。



カレは私の何を望んでいるのだろう・・・・

何をどうしたくて、私を愛しているのだろう・・・・・

私のどこを愛していると言えるんだろう・・・・










精神的なもの・・・・




精神的なものだけで人はここまで

体に異変が起きるものなのか?


私には納得がいかなかった。


まだ、病気で吐き気が出ている方がよかった。



こんなに体調がおかしくて

病気じゃないとしたら

精神的にどうしたらよくなるの??




またもや吐き気止めの点滴を受けている私の横で

カレは自分を反省していた。



「ごめん。

 俺がお前をここまで追い詰めたんだね。」



そう言って、落ち込み反省し

これから自分は変わると言った・・・




しかし

心療内科の受診は却下された。


その代わり

そこの内科で安定剤を出してもらった。


デパス


カレは、その薬も管理した。

私が勝手にたくさん飲んだりしないようにと

カレが私にその都度渡す事になった。



私はカレに望みをかけてみようと思った。

いくらカレが狂気の世界にいようとも

私の異変を目の当たりにして

医師にじかに精神的なものと言われれば

カレだって何かしら気づいてくれるだろうと・・・・・



実際それ以来

少しだけカレは変わったように見えた。

現に、カレの反省の言葉を聞いてから

私の吐き気も不思議と治まりつつもあった。



しかし

カレの私の対応は威圧するのが減っただけで

理不尽な事で怒る事は変わらなかった。

人間、根本的な所など変われるわけがないのだ・・・



私はもう体力的にも精神的にも

これ以上辛い思いはしたくなかった。

私をわかってもらいたくて

冷静に、半ば懇願するようにカレと話し合った。



現に、パニック・過呼吸・吐き気と

私の異変は目に見えて出ているのだから

カレの求めているものを聞きたかった。


それに対して、私がどう与えらるか

カレに理解してもらうしかなかった。



話し合ううちに

今度はカレが吐き気でトイレに駆け込む・・・


トイレでゲェゲェしているカレに

私はカレが私に同調しすぎていると感じた。



必ず私が落ち着いた後

カレは同じような状態になった。




こんなのおかしい・・・・




依存?



同調?




そうすることで

ワタシを理解していた?




・・・・・わからない。



カレはよく言っていた。



ワタシになりたいと

自分だけのものにしたいと

食べてしまいたいと



こうすれば、私が悪いと思うだろうと

反省するだろうと

同じ思いをするだろうと?


それとも

本当に私と同化したいとでも?



頭では考えてはいなかったかもしれない



もしかしたら

カレも自分の異常に気づいていたのかもしれない

それを突きつけられると拒絶したくて

自分自身と戦っていたのかもしれない。



愛してるのに、自分が彼女を壊している事を

認めたくなかったのかもしれない・・・・・・



だからカレはいつも同じように

自分の体調不良を訴えたのかもしれない。



私がプラスでカレがマイナスだとしたら

カレがプラスに引き寄せられているのか

私がマイナスに変わってしまったのか


いずれにせよ

私とカレは

確実に同じ空気の中にいた・・・・・・

なんとも言えない、奇妙な空気の中に・・・・



絵の具の白が私で

黒がカレだとしたら

乾いていない白の横に

黒を塗ったとしたら

にじんで色が混ざっていくのと同じで



グレー色を作り出してしまっていたような気がする。

その侵食がカレの私への同調だったのだろう・・・・・









言う事を聞いている私には

カレは優しい。


これ以上ないくらい・・・

異常なくらい・・・


いつも姫のような扱いだった。



他の人からみたら

私がお嬢様で、カレはナイトのつもりだったのだろう。


カレの私への愛情は

他人から見てもわかる程だったのだから

逆にうらやましがる人もいたぐらいだった。



だから、こんな状態になっているなんて

誰にも相談できなかった。

誰も信用してくれるなんて思えなかった。



ただ、カレに反抗しなければ

優しい人なんだから

普段のカレを見ている周りの人は

誰も信じてなんてくれない・・・・






この頃には

私もカレをどうにかしてあげたいというエゴが

消えかけていた。

何度も別れた方がいいのではないかと思った。



そうなると

私はカレを投げ出す事になるような気がして

結局私もカレにトラウマを植えつけるようで

どれが正解なのかわからなくなっていた。


私といる事で

カレがこうなるのなら別れる事が

お互いにとっていいのではないかと・・・・



でも、カレは私がそう考えていると察知するのか

自分を自傷するような態度を取り出す。


時には私の前で泣く事もあった。

今まで生きて来た自分の環境や

カレ自身が戦っている

カレの気持ちの戦いに崩れそうな時。

ボロボロと涙をこぼして

私に抱かれながら眠る事もあった。


そんなカレに私も同調していたのだ。


だからこそ

カレを私がどうにかしてあげたいと思っていたし

試されているのなら受け止めてあげようと思ってもいた。




そんな事が日常化していった頃

私はある時、吐き気に襲われた。







意味がわからない。






優しく接してくれる彼に吐き気を感じた。



あわててトイレに駆け込む私。



それを見た彼は、病院に行こうと言った。


私は、自分が壊れていることに気づいていた。

だから、心療内科に行きたかった。



でも、カレは病気だと困るからといって

内科につれて行き、全てを検査させた。



病院では吐き気止めの点滴だけの処置で終了。





あたりまえだ。


あきらかに精神的なものなのだから・・・




しかし、次の日も吐き気は止まらなかった。

止まらないどころか、更に悪化した。


何も食べられないし

水分を取っても、すべて吐いてしまう。


私自身も、これは病気なんじゃないか?

と思うぐらい、ずっと吐き気が続くのだ。


吐いて、すっとして

しばらく経つとまた吐き気が・・・・


会社でばれないようにしていたが

何度もトイレに立つ私に

不審なのはあきらかだった。


こんなんじゃ

会社どころかお店すらも行けない。

そして、カレに電話をかけ

もう一度、検査の結果を聞きがてら

同じ内科に連れて行ってもらった。




もう、フラフラだった。

看護士さんが血圧を測ろうとしても

計れないぐらい体に異変が起きていたのだろう

頭をかしげて、何度も測定を試みる。



診察室に呼ばれた。

カレも一緒に入って来た。





検査の結果。





「精神的なものでしょう。」





と医者に言われた。