聞きなれた靴音。



「きた・・・・」



と言って、パニックになる私をみて

婦警さんもあわててカレの方を見る。



その時点で、もう遅かった・・・



カレは私の腕をつかんでいて

私は怯え、婦警さんに叫んでいた



「だからイヤだって言ったのに!」

「だから来るかもしれないって!!」



つかまれた腕を振りほどこうと

暴れる私とカレの間に

婦警さんやら警官やらが

何人もロビーに集まった・・・・



婦警さんは私をカレから引き離し

カレはたくさんの警官に押さえつけられていた



「だから・・・・だから・・・・」



と泣きながら繰り返す私を見て

婦警さんはごめんねと言いながら

ようやく部屋を与えてくれた。



そして

カレとは別々に話を聞く事になった。




今でも私は納得がいかない。

その時点で

訴えると私が署内で言っていて

更に、カレが追いかけてきているのだから

現行犯で捕まえる事が出来たのではないか?と





ここまでされているのだから

警察も何かしら動いてくれると

まだ思っていた。




婦警さんに事情聴取をされている時

カレもまた同じようにされていたのだろう



しかし

カレの担当者が私のところへ来て

「最近私がウソをつく事が多くなったと

 カレが言っているけども」

といわれた。




私は呆然とした・・・




「仮にウソを付いていたとして

 そのウソが詐欺になる程なら

 事件として扱えばいい。


 でも、ウソなんてついてない。


 じゃあ、私がウソをついていたら

 殺されそうになる程の思いをしても

 仕方がないと・・・

 あなたはそう思うって事?

 だから、わざわざ伝えに来たんですよね?」


そう答えると


さすがに婦警さんも

その担当者に首をかしげ

わたしに目配せをしてきたが



私は、やっぱり警察はあてにならない・・・と

この時感じた。


首の跡や

あちこちのアザ

いつのまにか出来た傷を

婦警さんに見せながら


「これもウソをついたら

 仕方がないって言ってるんですか?」


と泣きながら訴えていると


またカレの担当者が私のところへ来て


「カレが何もしないから話がしたいといっている」


と言ってきた。




あれだけの恐怖を与えられた人に

逃げても逃げても追いかけてきた人に

何もしないといわれて信用なんて出来るわけがない。



イヤだと拒絶すると



カレの担当者はまた戻って来て

カレが何も出来ないように

立ち会うから、婦警さんと4人で・・・といわれ





カレのいる場所へ連れて行かれた。




あれだけの事をしたのだから

犯罪にしてもらいたくなくて

立ち振る舞っているのだろうと



そんなんじゃ許さないと思っていると

カレの最初の言葉は




「これだけの人に迷惑をかけたのだから

 ちゃんと謝りなさい」だった・・・・



まだ、私が悪いと思っているの?

それとも

警察の人達にまで

私が頭がおかしいと思わせようとしてるの?




やはり、カレの顔をみると

蘇るつい何時間か前の出来事

あの目が怖い

どんなに冷静な言葉をかけられようとも

怖くて目もあわせられない・・・・




「とりあえず、家に戻ろう?」

「戻って二人で話をしよう?」



そう繰り返すカレに、私は


「何であんな事したの?

 あんな事されて

 私があなたと二人きりになろうだなんて

 思えるわけがないじゃない。

 もうイヤなの・・・

 怖いの・・・

 あなたがそこにいるだけで・・・」


必死な思いで答えると


「確かに俺はお前を殺そうとした。

 でも、それは

 お前がいなくなりたいと口にしたから・・・

 だったら、俺が・・・」


そう口にした彼をみて

婦警さんは


「この人には何を言っても伝わらないわ・・・

 あたまおかしいんじゃないの・・・」


と、私に耳打ちしてきた。



それからも

カレは私を連れ戻そうと

一生懸命何かを言っていた。


でも、私はカレの本気で殺そうと思ったという

発言から、何も耳に入らず


呼吸が乱れだし

過呼吸になった・・・・


それに気づいた婦警さんが

私を連れ出そうとすると


誰よりも俺が一番心配していると

いわんばかりに


「ふくろ!何でもいいから袋もってきて!!

 はやく!!!」

と叫んでいた。



しかし

私はカレが近くに来る程に


体が震えだす


呼吸が出来なくなる




手足がしびれはじめる・・・




カレが原因だと気づいてくれた婦警さんは

カレから私を離そうと

何かを叫んでいる彼から

私を抱き抱えて移動させてくれた。




しばらくして

落ち着いた私は婦警さんを責めた



なぜ一連の話を聞いていて

コレだけの証拠があるのに

あなた達は何の為に警察をしているの?と・・・




訴えると決めた私は

警察署の駐車場に車を止めると

署内に駆け込んでいた。



駆け込んで一番近くにいた人に

今日、日中に来た事と

その結果訴える事にした事を伝えた。



訴えると決めたら

そこからスムーズに話は進むのだと思っていた。





・・・・が、それは間違いだった。





電話でカレに怒鳴られ

パニック気味になっていた私に

婦警さんが出てきて

また新たに

何が、どうして、どうなったかを聞かれた。



「日中来てるんです。

 そこで全部話してあるんです。」



そう伝えても



「すみませんが

 もう一度お話してもらえますか?」

と、とりあえずロビーに座らされた・・・




パニックだったからなのか

恐怖心だらけだったからなのか

私はそこにいるのがイヤだった。


なぜかカレが追いかけて来そうな気がした。




だから


「ここは怖いからイヤなんです。」と

何度も訴えた。



しかし婦警さんは

私がパニックになっているからだろうと

そこまでする人は滅多にいないと

そう踏んでいたのだろう



「ここは警察署だから大丈夫。

 何かがあったとしても

 警官がいっぱいいるんだから・・・ね?」

と私をなだめた。



そして

また初めから説明・・・

同じ質問・・・




私の体に残された跡を見れば

一目瞭然の話なのに

その人はただ話を聞きながら

手帳にメモをとる





そんな時だった





私には聞き覚えのある

あの忘れられない足音がした。




音がした方を振り向くと

私に向かって走ってくる彼がいた・・・

あの正気じゃない目つきで・・・・





気づくと仕事も終わりの時間が来ていた。

帰り支度をし、会社を出て車に乗り込むと


また、がたがたと震えだす体。



とりあえず

仕事が終わり次第電話をすることになっていたので

友達に電話をかけた。



「自分はどうしたいと思ってる?」


そんな質問をされて



もうカレには会いたくない。

カレと別れたい。



まずはそれしか浮かんでこなかった。



それに対して友達はこう提案した。



もしかしたら、もう出て行っていないかもしれない。

電話をして確認して

それから、ちゃんと別れたいと伝えなさい。と・・・


それで、カレの反応をみて

もう一度考えようと・・・・



そう言われて

とりあえず、何かをしなくちゃと思い


私は震える指で

震える体で

震える声でカレに電話をかけた・・・・




「はい・・・」




一瞬私は

なんで、この人は電話に出れるんだろう。と思った



「今どこにいるの?」


と問う私に

カレは普通にあっさりと



「家にいるけど・・・・」



と答えた。



出て行くと言ったのに

平然と家にいる彼

殺そうとしたのに

帰ってくるのがあたりまえだと思ってる彼



一瞬。

あれは私の妄想だったのか?とすら思えた。

カレに向き合えないと感じた

私が作り出したカレへの拒否反応から幻想でも見たのか?と・・・・



でも

実際残っているあちこちの傷。

喉についたカレの手形・・・・


もう一度バックミラーでそれを確認して

あれは現実だと引き戻される。





やっぱり私にはもう手に負えない・・・・




「なんで、家にいるの?・・・」

「出て行くって言ったじゃない・・・」



カレの理解出来ない行動に

電話をしているだけでも吐き気がした。



「お前、今どこにいる?」

「とりあえず、帰ってこい」



なんでこんな事が言えるの?

何時間か前に起きた出来事は

カレにとってなんでもないことなの?




・・・・・・狂ってる・・・・・・




そう考えただけで、乱れだす呼吸。



「私・・・もうあなたが怖いの・・・」

「あなたと一緒にはいられない・・・」

「あなたと別れたいの・・・・」

「お願いだから・・・お願いだから出て行って・・・」



泣きながら懇願する私に



「お前!今どこにいる!!」

「いいから帰ってこい!!」





怒り出すカレに怖くて返事が出来ない私に



「てめー!今すぐ帰ってこい!」

「ふざけんなよ!!」



暴言を吐き出すカレ・・・・






カレにはもう何を言っても通用しない。

自分がしたことを考えたら

謝ることぐらいあたりまえだ。


謝ったとしても、許される問題ですらない。



なのに、カレは電話の向こうで

狂ったように戻ってこいと怒鳴ってる。




カレが怒り出すと現れる

私の拒否反応



乱れる呼吸を自分で落ち着かせながら

私の車は警察署へ向かっていた。





カレを傷害で訴えるため・・・・