もう、涙は出ないと思っていた。


カレといた時間

あれだけ泣き叫んだ日々。


自分自身とカレとの狂気の時間から

ようやく逃れる道を見つけたと

前を向いて進もうとしているのに。


一番最初に動いてくれなくちゃいけないはずの

今までの警察の対応。


一番最初に動くなんて・・・・

テレビで勝手に思い込んでいただけだったのかもしれない






なんどここへ来て同じ話をさせられただろう。


その度に、あの恐怖を何度も思い出させられる。


そして、刑事のこの質問。




私は泣きながら訴えた。



「初めから首を絞められるとわかっていたら

 私だって抵抗します!

 まさかそんな事になると思っていなくて

 逃げられない状況で首を絞められて

 相手の気持ち次第で

 自分が殺されるんだと思った時に

 抵抗したら、確実に殺されると思いませんか?!


 とりあえず、落ち着いてもらって

 手を離してもらえる確立と

 抵抗して余計逆上して殺される確立

 あなただったらどっちを取りますか?!


 現に私は、逃げようとしてから

 首を絞められている時は

 抵抗しているんです!!


 自分より体格も良くて、力もある人が

 向かってくるとわかっていたら

 なんとか抵抗は出来ても

 もうされてしまっている事に

 抵抗するのは無謀だと思えませんか?!」




もう、刑事だろうが

なんだろうがどうでもよかった。


それ以上何か言われたら

私は暴れていたかもしれない。




そして、刑事さんの答えは


「自分は同じ目に合ったことはないので

 なんとも言えませんが

 そう言われれば、そうかもしれませんね」・・・・だった。


錯乱気味の私に

刑事さんはセンターの女性を呼んで来て

今日の所は、もういいですと帰された。



震えながら泣いている私を見て

センターの女性は驚いていた。


車に乗り

私がどんな事情聴取を受けたかを聞いて

センターの女性も怒っていた。



なぜ、加害者がのうのうとしているのに

被害者がこんな目に合わなくてはいけないのか。



まるで被害者にも非があるでしょうと

言わんばかりの対応の仕方。


だから

猥褻行為などされた女性はみな

訴えを取り下げるんだ。と・・・・・


私もそれには納得出来た。



どんな事情があるにせよ

悪いことをしたのだから

まず、それを取り締まるのが先で

後から事情を考慮していくべきなのではないか。


なによりも、事情があれば

殺す事すら許される世の中なのではないかと

今回の刑事の対応で思わされた。



その日から私は眠れなくなった。


そこで初めて事件として扱う為の

事情聴取が始まった。




最悪な事情聴取

最低な刑事・・・・



何月 何日 何時頃。

何をされたか。

その原因は。


一回目の首を絞められていた時間は

どのくらいだったか。


二回目の時間はどのくらいだったか。


三回目の時間はどのくらいだったか。


ガス会社の人は何時頃家に来たのか。


一回目の外に逃げる際は

どのぐらいの時間家の中で揉めていたのか。

家の中ではどんな状況だったのか。

どうされて、どう抵抗したのか。


外ではどのぐらいの時間暴れたのか・・・・



すべて時間時間だった。



「何分?

 何十分?

 何十分なわけは無いですよね。

 5分も締められてましたか?」




一連の出来事が起きた時間ならわかる。

家に帰ってから警察に来るまでの時間。

でも

ひとつひとつの出来事がどのくらいだったかなんて

どんな風に抵抗して

どんな風に襲ってきたかなんて

はっきりと覚えてる方がキセキだと思った。

ましてや・・・・・

首を絞められてた時間なんて覚えてるわけがない。



抵抗すら出来なくて

抵抗しても必死になっていて

時間なんて誰が見ると言うのだろう。





「・・・・・わかりません。」




こう答える私に

担当の刑事は「大体でいいから。」

と軽く口にした。



大体って何?



私は、大体○分ぐらい首を絞められました。

って訴える人っているの?



全ての状況を詳しく聞かなくては

聴取の意味が無いのもわかる。


みんな、同じように聞かれて

ちゃんと答えられているのだろうかと

私は目一杯考えてみた。



確かに

10分も首を絞め続けられる事は

ありえない事だろうが


私にとっては

たとえ5分の事だったとしても

10分にも20分にも感じられて

一連の流れを思い出す事は

とても困難な事だった。




さらに

担当の刑事はこう言ってのけた。



「最初に首を絞められた時

 なんで抵抗しなかったの?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



私の心は壊れた・・・・。



それにしても

一向に警察からは連絡が来なかった。


センターの人が

私の変わりに診断書を持って

どこまで進んでいるのか

確認してもらえることになった。



・・・・・が。



警察署から戻って来たセンターの人が

私に言った一言にまた驚いた。



「まだ正式に訴える手続きに入ってないって・・・・」




え?!・・・・どうして?!・・・・




何がどうなっているのか

センターの人も、私にすらもわからなかった。



証拠の写真も撮ったし

事情聴取もしたはずだし

あとは、

診断書が出来たら本人じゃなくてもいいので

持って来てください。

と言われていただけだった。



私が、事件当日

傷害で訴えると言ってから

もう何日経っているのだろう。



警察は何をしていたの?

とりあえず、やっとけみたいなものなの?

生きてるんだからいいじゃん。みたいな?

これで、入院していたら別なんだろう

ただ、アザだけで他には何も無い。

警察は血を流さなくちゃ動かないんだ・・・・・




またしても、私は警察にがっかりさせられた。




私が、警察の対応に愕然としていると

センターの人もそんなのおかしいと

抗議の電話をかけてくれたらしい。



警察が紹介する程の団体から

直々に抗議が来たら

警察だって何もしないわけにはいかなかったのだろう。



次の日警察から呼び出しがかかった。



「傷害で訴える手続きをとりますので。」

との事だった。



センターの人に車で警察署まで送ってもらい

刑事課の担当の人が出迎えてくれていて

個室へ通された。


ただでさえ警察では同じ話を

もう4回もしているのだし

前回も刑事課で話をしているのだから

事情聴取はもう終わったと思っていた。


だから

書類のような物にサインして

終わるのかと勝手に思っていた。



しかし



5回目の話をさせられる事になった・・・・




事件として扱うのなら

時系列で聴取しなければならないと

そこで初めて言われたのだった。



って事は

やっぱり初めから事件として

扱うつもりはなかったと

そう言われてるような気がして

私の中で何かが崩れた・・・・・



あの恐怖を軽く見られているんだ・・・と。