その患者さんの診察を初めて行ったのは、2019年の1月のことでした。初めて、「起立性調節障害」と診断されてから3年が経過していました。それまで、考えられるあらゆる治療を試みてこられましたが、病気が治るかどうか以前の状態、まず病態を理解してもらうことができなかったのです。

今回体験談を読ませていただいて、当院に来られるまでに、こんなに辛い思いをされていたのかととても胸が痛みました。そして、1年半が経過して元気になってくださった今は、治療を継続してくださって本当に良かったという気持ちがこみ上げてきます。

少し長い体験談ですが、削除するにはとても忍びないので、できるだけ原文を損なわないようにして掲載します。

起立性調節障害と診断された方の体験談

小学3年生になって、子供が、「寝ているとき以外、頭がずっと痛い。頭のいろんな所がいつも痛い。1日の内で数回、棒で殴られるように痛いこともある。」と言いました。大きな病気かな?と思い、総合病院に行きました。

でも、すぐに診断は出ず、その時の検査では異常なしで、先生から、「本当に痛いのか、わからないですよ。」と、子供を疑うように言われてしまいました。

うそをつくような子供ではありません。むしろ、昔から、気持ちが優しくて、真面目過ぎるくらいの、子供でした。そして、起立性調節障害の子供は、そんな性分の子が多い気がします。

小学6年生の新学期に、クラブ活動の今年の抱負欄のところに、「体力がいつまで持つかわからないけど、頑張りたいと思います」と書いていました。最初は冗談かな?と思っていましたが、体力がなかったのだなと、後になって思います。

中学生になると、明らかに悪化しました。朝の起床がつらく、2階の寝室から、着替えて降りてくる姿は、まるで映画の貞子でした。「おはよう」と声をかけても、うなずくのがやっとのことで、朝食や水分を摂ることもできませんでした。朝は、水すら飲めませんでした。

だんだんと病院を信用できなくなっていました。

それから全部の薬をやめ、生薬を煎じる漢方に切り換えました。脈を診てもらい、子供を観察してもらい、体を温めて、体力をつける治療を始めました。しかし、「夜寝られない」と問診しても、「それは家庭でなんとかしないと」と、言われてしまい、ここでも治せないな、と感じてやめました。

家庭でなんとかできるのなら、高い漢方の薬は選択しません。そんなレベルの症状ではありませんでした。

整体にも通い始めました。1週間に1回、30分の施術で3000円支払って、母親が悪いという話を子供の前でされ、親子共々、「全然よくならないし、ここに通うのも、精神的にも悪いな」、と感じながらも、2か月、整体を続けてみましたが、お金と時間の無駄でした。

実家の親からも、「母親の叱り方がきついから、子供があんなことになるんだ。子供は甘えているんじゃないか?」とも言われ、つらい思いをしました。

その当時、ツイッターで、起立性調節障害の患者が、中高生だけでなく、大人になっても患っている方々が沢山いることを知りました。

そこで、「起立性調節障害の学生日記」というアカウントを見て、闘病中の日記や自己紹介を読み、これはうちの子供と同じだと感じ、ダイレクトメールで小西統合医療内科を教えてもらいました。

2019年1月31日の初診のみ、大阪まで電車で子供を連れて行きました。

なんとか病院にたどり着き、問診を受けて、最後に小西先生が、「よくここまで来れましたね。大変だったね。今からよくなっていくからね。」と、子供に言ってくれた時は、本当にうれしかったです。

「よくなっていくからね」と、言ってくれる医者に初めて会えたからです。

また、起立性調節障害の患者が、初めての場所へ遠出するのがどれだけ大変なことなのか、理解してくれているんだな、と思いました。でも、帰宅して翌2日間は、自宅でぐったりしていました。

乗り物酔いがひどいのも、起立性調節障害の症状で、子供はひどい乗り物酔いと疲労で寝込むのが分かっていたのに、私を信用して大阪までついて来てくれたんだ、と思いました。

小西統合医療内科では、治療の前に、血、尿、便、髪の毛、唾液 を検査します。

全部自宅で採って、検査機関に、宅配便で送ることができるので、子供の負担が少なくて済みました。この時、採便をしましたが、子供の便がウサギの便の様にコロコロの丸い石状のものが固まっていたのをみて、涙が出ました。

家庭内での、食事改善、体操、の努力では無理なレベルだったと思います。

治療内容に適した、医療用サプリの処方のおかげで、2020年の6月の体調は、頑固な頭痛もなくなっています。

天気による、体のだるさはありますが、毎日、5時半に起床して、今まで学校に通えなかった分の遅れを少しでも取り戻すため、勉強し、途中山道の上り坂を5分ほど登って、自転車通学をしています。

コロナ休校で、休みが多かったのですが、今新学期から、おかげさまで、遅刻も早退もしていません。子供の努力もありますが、そこまで体調が回復したんだな、と思います。

金額の方は、最初の検査料は、ホームページに記入されている通りで、うちはリーキガット症候群ではなかったのですが、4週間毎の治療は、1回2万円から5万円くらいの支払いでした。

医薬サプリも、一時期は、8種類ありましたが、治療が進んだ現在は、3種類に減りました。

サプリも不要になると、「これは家にあるのが飲み終わったらもう飲まなくていいからね。」と、無駄に飲まされることはありませんでした。これから子供の体調に合わせて、医薬サプリも減っていき、治療終了へと進んでいくと思います。

子供の体調が回復するにつれ、子供の良さが、また表面に出てきました。頑固なところもあったように思えますが、あの時は、子供も体がつらかったんだな、親や周囲の無理解でしんどい思いをさせたのかもしれないな、本当はこんなに素晴らしい子供だったんだな、良く頑張っているな、と感じる毎日です。

泥に埋もれて身動きの取れなかった体がきれいに洗い流され、本来の姿を取り戻したかのようです。

まだ治療途中ですが、先日も、「体育の時間に100メートル走をしたよ、今度はリレーするんだって。」とうれしそうに言っていました。

学生生活をまた送ることができて、よかったです。

長い文章になりましたが、記憶に忠実に書いたつもりです。

少しでも同じ病気に苦しんでいる方の力になればと思います。

読んでいただいて、ありがとうございました。

病気を治療する以前に、理解してもらえない苦しみ

これまでたくさんの「起立性調節障害」と診断された患者さんを診てきました。そして、学校や医師からもなかなか理解してもらえない病態だということは、私も分かっていたつもりでした。しかし、体験談を読んでこんなに切ない思いをしたのは始めてです。そして、きちんと患者さんの病態を理解しようとせず、自分の理解できない病態を簡単に、「気のせい」だとか「親の接し方」のせいにしてしまう、周りの人間や治療関係の人間に激しい憤りを感じないで入られません。

私も、自分の行なっている治療が絶対的だとか、100%治るとかは思っていません。しかし、ただ一つ言えることは、「患者さんは嘘をつかない」ということです。医者から見て、信じられないような訴えであっても、患者さんにとっては絶対的な真実だということです。どうして、わざわざお金を払ってまで嘘をつきに来るでしょうか。

なんともやるせない気持ちにならずにはいられません。

私には、一人でも多くの患者さんが、この泥沼から抜け出せるようにお手伝いをさせていただくことしかできないです。