大人の発達障害

最近は大人の発達障害というのが注目されてきています。発達障害といえば、通常は子供の頃に気づかれることが多いのですが、最近では大人になってきてから診断される場合も増えてきています。

アスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動障害)あるいはADD(注意欠陥障害)といわれるもので、他人の気持ちが理解できず、人間関係がスムーズにいかなかったり、注意力が続かず仕事などでもトラブルを起こす場合があります。体のどこかが痛んだり、不具合の症状があるわけではないので、「生きづらさ」を一人で抱え込んでしまう場合も少なくありません。

これまでは、そういう性格だからということで諦めざるを得なかったのですが、これもある種の病気であるということがわかってきて、薬物療法を行われる場合も出てきたのです。

機能性医学から見た発達障害

大人の発達障害が一つの疾患として、治療対象となると認められるようになってきたことは大きな進歩であると思います。ただ、薬物療法はどうしても対症療法的なものにならざるを得ません。「どうして発達障害が起こるのか?」という疑問に対しては何も答えてくれないからです。

しかし、欧米で発展してきた機能性医学の立場から見ると、発達障害や自閉症スペクトラムと言われるものは、いくつかの複合的な原因が重なって起こってきた病態であることが分かってきています。そして、欧米では、子供や大人を含めた発達障害、自閉症スペクトラムに対しての「根本的治療」が行われているのです。

今回、当院で「自分は発達障害ではないか?」と疑われ、受診された方の治療体験の感想をいただきました。治療を受けようと決心されるまでには、きっと自分一人で色々と悩まれてきたのだと思います。3年という経過の中で、徐々に改善して来られました。

発達障害と診断されて

私は結婚して関東から大阪に来ました。新しい職場で仕事をしている中で自分の体の異変を感じるようになりました。
前職では防毒マスクをして色々な薬品を扱ったり防塵マスクをして粉塵が多い環境で仕事をする時間が多く体によくないだろうなとは思っていました。また食生活も自分の好きな物ばかり食べていて健康的とは言えない状況でした。それでも健康診断ではコレステロールが高めという事だけで異常がなかったので安心していました。
新しい職場で仕事に慣れてきた頃、自分の意見や考えを相手に伝える時や注意された時、会議の時などで頭が真っ白になり言葉が出なくなったり適当な相槌を打って誤魔化す事が多くなりました。それに伴い簡単なミスを繰り返したり集中出来ない状況が続きました。
インターネットで調べるとADHD、発達障害などに当てはまり絶望的になっていました。そんな中、妻が他の可能性もあるのではないかと一生懸命調べてくれてそこで小西統合医療内科を見つけてくれました。
気になる症状をノートに書き出して小西先生に見せて話した時、きっと治りますよ、発達障害ではないと思います、一緒に治していきましょうと言ってもらえました。この時の気持ちは忘れる事はないと思います。
検査の結果を見て驚いたのは重金属の値がかなり高かった事と小麦粉へのアレルギー反応が高く出ていた事でした。リーキーガット状態になっているのではという診断でした。前職の仕事、偏った食生活で私の体はボロボロでした。
小西先生の指導の下、サプリを中心とした治療が開始されましたが途中、これで本当に治るのかと思った時期があり通院に行かずサプリも切らす事がありました。その時、治すのは自分なんだから受け身じゃなく自分から積極的に治療した方が良い、本気で治したいなら通院を続けるべきと妻が言ってくれました。小西先生からもせっかく治療をしているのにサプリを切らしてはかけてきた時間もお金も無駄になってしまう。だから最後まで治療を頑張りましょうと、注意と励ましを頂きました。
そこからはサプリを飲んだ時に自分がどういう状態になるか、サプリが合わないから変更できないか、サプリを減らせないかなど先生に言えるようになりました。私の話を聞いて柔軟に対応して頂いた事で治療が継続できたと思います。
サプリでの治療で一番辛かったのはカンジダ除去の際のダイオフでした。私の場合、頭痛やメンタルの上げ下げ、体臭の変化など様々な形で出ました。面白い所ではカンジダの好物、甘い物やラーメンやパンやパスタなどの小麦粉製品が無性に食べたくなりました。そんな時はカンジダの最後の足掻きだと言い聞かせて気持ちをコントロールしました。
重金属の治療が終わった頃には頭が真っ白になる事は少なくなり、カンジダ除去の治療によって状態はかなり改善されました。
小西先生にだいぶ良くなりましたね、頑張りましたね、まだ自分の事を発達障害と思いますか?と言われた時に小西先生、そして食事や気持ちの面で支えてくれた妻への感謝の気持ちで溢れました。まだある状況では頭がフリーズする事もありますが、そこは認知行動療法を試してみたらどうかという提案を小西先生から受けました。せっかくやるならマイナスに捉えずに楽しむ気持ちで頑張りましょうと言って頂きました。残りの治療は楽しみながらやり切ってみようと思います。
最後に、私のような症状の場合治療の効果はすぐには現れない事が多いが、継続する事で治る可能性が高くなるのだと思いました。また家族などの支えなくしてここまでの改善はなかったと思います
小西先生はその支えの1人になってくれる方だと思います。
そして治療を続けた自分にも頑張ったねと言ってあげたいです。

治療の経過を振り返って

発達障害の原因としては、腸内環境や腸管カンジダ症、重金属や環境汚染物質の蓄積などいくつもの因子が複合的に重なって起こるとされています。これらの因子が体全体や脳に炎症を起こすことが原因であると考えられています。

これらの炎症の原因を根気よく取り除いていくことが「根本的治療」にとって重要です。

具体的な治療の参考として重金属のキレーション治療を行なったので、治療前後での検査結果を提示します。

上の図は治療前の「尿中重金属排泄試験」です。体内に溜まった重金属を排出するためにキレート剤をいうのを内服します。キレート剤を1錠負荷した時に、どれほどの重金属が排泄されたのかを見ることができます。治療前はかなり多量の鉛と水銀が排出されました。つまり、体内にかなりの鉛と水銀が蓄積しているということを意味します。

キレーション治療により、重金属を排出した後の検査結果です。同じ量のキレート剤を負荷しても排出された鉛と水銀の量は減っています。つまり、体内に蓄積した鉛や水銀がかなり減ったということを意味します。

この患者さんの場合は、決して重金属だけが原因で発達障害のような症状が起こっていたわけではありません。それ以外の要因についても治療を行ないました。

治療は決して、直線的に進むのではなく、よくなったかと思えば、また元に戻ってしまったと感じることがあります。それは実際には元に戻ったのではなく、先のステップに進むための一時的な「試練」なのですが、そこで挫折してしまう方もおられます。

診察をするたびごとに、今起こっていることは何故なのかを説明し、決して諦めないでくださいと励ますのが、私の日常になっています。患者さんからの体験談をいただくたびにいつも思うのですが、よくぞ諦めずに治療を継続してくださったと、頭の下がる思いです。

「治療を諦めずに、続けてくださってありがとうございます。」

体験談をいただいたU氏にも心から感謝の言葉を送りたいと思います。