3回にわたって、「慢性疲労症候群」について書いてきました。
朝が起きにくい、なんとなく気分が落ち込んでしまう、一日中身体がだるい、といった慢性疲労を呈する症候群ですが、同じような症状を起こす病態としてほかに「副腎疲労症候群」と「起立性調節障害」があります。

これらは、慢性疲労症状を主症状とするより大きな病態の一部分を見ているのではないかと私は思っています。つまり、人によって症状の出方が違っているので、いろいろと分類されているけれど、おおもとの原因は共通するのではないかということです。

一言でいうと「自己治癒力の低下した状態」ということです。

自己治癒力とは、私たちの身体の中にある自然のバランスを取る精妙なシステムのことです。これらがきっちりと働くことで私たちの身体は「健康な状態」を維持できるのです。「身体の状態をある程度一定の範囲に維持するシステム」は、古来から「ホメオスターシス(恒常性)」と言われてきましたが、自己治癒力が低下した状態というのは、「ホメオスターシスのバランスの崩れた状態」ということが出来ると思います。


このシステムは具体的には「自律神経」「ホルモン」「免疫」という3つのシステムから成り立っています。これらのシステムが絶妙にバランスを取りながら私たちの自己治癒力を維持してくれているのです。最近では「抗酸化系」という第4のシステムの重要性も分かってきました。

私たちは外からストレスを受けると「自己治癒力」がそのストレスを軽減するように働きます。ストレスがある期間続くと、「自己治癒力」のバランスが崩れどこかに支障を来しますが、その支障の来し方によって病態が変わってくるのではないかと思います。
つまり、自律神経に支障が強く出ると「起立性調節障害」となって立ちくらみなどの症状が強く出ます。
ホルモン系の支障が強く出ると「副腎疲労症候群」として全身倦怠感が強く出ます。
そして、免疫系に支障が強く出ることで既感染のウイルスの活性が高まり、炎症症状が前面に出るというわけです。


最近、マスコミでも報じられるようになってきましたが、これらの「慢性疲労」などの症状で本来の活動が出来ない人が潜在的な患者さんを含めると100万人規模でおられると言われているのです。社会的に見ても大きな損失であると言わざるを得ません。

当院には、例えば「慢性疲労症候群」や「起立性調節障害」と診断されているけれど、治療を受けても一向によくならないといった患者様が来られます。そういう場合は「副腎疲労」はどうだろうかといった、少し角度を変えた観点から診察することが有用です。そして、それに合った治療をすることで症状が劇的に改善されることが決して少なくないのです。

一つの診断名に囚われるのではなく、「自己治癒力が低下した状態」という大きな観点から全体を見た統合的な治療が必要とされるのではないかと感じています。
今回発刊された新刊「自己治癒力を高めるための医療」には、このような視点からの治療について具体例を挙げながら書いています。
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