過去2回にわたり慢性疲労症候群について、その疾患概念や症状、診断基準などについて書いてきました。
この症候群では内外のストレスが持続することで身体のバランスが崩れて起こります。つまり「自己治癒力が低下した状態」なのです。そのストレスの原因を見極め取り除くことが何よりも大切な治療法になることは言うまでもありません。それを前提として、他にどのような治療が可能かを考えることが重要です。
「病気になるプロセス」を考慮すると、下流に起こるいろいろな症状からだけでは治療が困難で、中流の自己治癒力が低下した状態や、上流の心身のストレスにも目を向ける治療が必要なのです。

*「病気になるプロセス」についてはこちらをご覧ください。

現時点では慢性疲労症候群の治療は、決定的な治療薬があるわけではありません。実際は漢方を中心とした薬物療法が中心に行なわれることが多いようです。これは「中流」に働きかけて自己治癒力を高めようとする方法です。「捕中益気湯」などの漢方薬を用いて、身体の免疫力を高めたり自律神経のバランスを整える治療法が一般的です。

最近、この症候群では「自己治癒力」のバランスが乱れた結果「炎症」が強くなっていることが分かって
きました。ここでいう「炎症」とは炎症性サイトカインと言われる物質や活性酸素が増えている状態のことを意味します。
参考サイト:
http://bit.ly/1heLmAv

「抗酸化治療」「抗炎症治療」が今後有効であることが示されてくる可能性があります。例えば、体内の炎症性サイトカインや活性酸素による細胞の障害を防ぐため、抗酸化作用をもつビタミン
CやコエンザイムQ10などのサプリメントによる治療が有効であるという報告も見られます。
参考サイト:http://bit.ly/1exer26

また、分子栄養学的な観点から、慢性疲労をミトコンドリアの機能障害ととらえることも可能です。その場合は鉄やビタミンB群などのエネルギー代謝に関係するミネラルやビタミンを補う必要があります。
参考サイト:http://bit.ly/1btr1Fa

もちろん、長期間にわたって
内外のストレスにさらされていることに対して、精神的なサポートが重要であることは言うまでもありません。
これらのいろいろな方法を用いて治療にあたることは、まさしく病気になるプロセスに寄り添い、「自己治癒力を高める治療」の実践に他ならないと考えています。

慢性疲労症候群に良く似た疾患群として副腎疲労症候群、また起立性調節障害といった病態がありますが、これらは医者の間でもまだまだ一部でしか認識されておらず、その病因や病態については不明な点が多いことも事実です。これらのそれぞれの疾患の関連性についての私の推論は次回に書かせていただきます。